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第13章

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 「綺麗にしようね」

 薄汚れた服を脱がせ、裸にした翔真さんを片手で支えながら、少し温めのシャワーを全身に浴びせかけてやる。ボディーソープをたっぷりと染み込ませた柔らかめのタオルで身体を擦ってやると、翔真さんが擽ったそうに肩を竦めた。

 「ほら、じっとして?」

 俺の手から逃れようと、もぞもぞと動くのをしっかり抑え込んで、シャンプーまで済ませると、翔真さんを抱いて、温めの湯に浸かる。

 「気持ちいいね」

 足を伸ばせる程広い浴槽ではないけど、肩までしっかり湯に浸かっていると、全身の凝り固まった筋肉が解れて行くのが分かる。

 「翔真さん、さっきはごめんね。俺、どうかしてた……」

 俺の胸にピッタリと背中をくっつけ、肩口にコツンと頭を預けた翔真さんの首筋に仰け、そっと指を這わせてみる。そこに痕が残っていないことにホッと胸を撫で下ろす。

 「明日、天気よかったら、久しぶりに散歩でも行こうか? スーパー寄って買い物もしたいし……」

 ふと、洗濯用の洗剤が残り少ないことを思い出した。洗濯物は山ほど溜まってんのに、洗剤がなきゃ洗うことも出来ない。

 「そうだ、弁当でも買って、たまには公園で食べようか?」


 満開だった桜は、もうすっかり散ってしまって、葉だって落ちてしまっているけど……


 「こ……えん……?」

 俺の腕の中で微睡まどろみ始めた翔真さんが、少しだけ顔を上げて 俺を見た。


 久しぶりに聞いた翔真さんの声だった。
 久しぶりに見た翔真さんの笑顔だった。



 なのに、夜中に降り出した雨は、朝になっても昼になっても、一向に止むことはなかった。
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