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第13章
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「ねぇ、雅也……」
和人の声に我に返った俺は、慌ててマグを口に運んだ。熱いコーヒーを一口啜ると、苦味だけが口の中に広がる。
「こんなこと言うのなんなんだけど、そろそろ限界なんじゃないの?」
「限界って? 何が言いたいの?」
和人が言いたいことなんて本当はもう分かってる。でもあえて聞いたのは、自分の中で限界を認めたくなかったからだ。
「これからもっと大変になってくわけじゃない? 今後さ、今日みたいなことが頻繁に起きるようになったら、雅也もたないんじゃないか、って……」
和人が視線をガラス戸の向こう側へと向ける。
「俺は大丈夫だよ。俺、頭は悪いけど、大量だけは自信あるからさ」
「だから、体力のこと言ってんじゃなくてさ、ココの問題?」
拳で自分の胸を軽く叩き、一瞬切なげに笑う。でも強がることしか出来ない俺は、
「心配してくれるのは有難いけどさ、俺、この性格じゃん? 大丈夫だよ、安心して?」
和人に向かって精一杯の笑顔を向けた。
本当は声を上げて泣きたいくらい、胸が苦しくて堪らないのに……
それでも無理にでも笑ってないと、自分がおかしくなって行くんじゃないか……そう思っていた。いや、もしかしたらもうおかしくなってんのかもしれない。
「そっか、分かった。でも何かあったら、遠慮せず俺を頼って? いいね?」
俺は和人の真剣な眼差しに、ただただ偽りの笑顔を浮かべ、無言で頷いて見せた。
和人の声に我に返った俺は、慌ててマグを口に運んだ。熱いコーヒーを一口啜ると、苦味だけが口の中に広がる。
「こんなこと言うのなんなんだけど、そろそろ限界なんじゃないの?」
「限界って? 何が言いたいの?」
和人が言いたいことなんて本当はもう分かってる。でもあえて聞いたのは、自分の中で限界を認めたくなかったからだ。
「これからもっと大変になってくわけじゃない? 今後さ、今日みたいなことが頻繁に起きるようになったら、雅也もたないんじゃないか、って……」
和人が視線をガラス戸の向こう側へと向ける。
「俺は大丈夫だよ。俺、頭は悪いけど、大量だけは自信あるからさ」
「だから、体力のこと言ってんじゃなくてさ、ココの問題?」
拳で自分の胸を軽く叩き、一瞬切なげに笑う。でも強がることしか出来ない俺は、
「心配してくれるのは有難いけどさ、俺、この性格じゃん? 大丈夫だよ、安心して?」
和人に向かって精一杯の笑顔を向けた。
本当は声を上げて泣きたいくらい、胸が苦しくて堪らないのに……
それでも無理にでも笑ってないと、自分がおかしくなって行くんじゃないか……そう思っていた。いや、もしかしたらもうおかしくなってんのかもしれない。
「そっか、分かった。でも何かあったら、遠慮せず俺を頼って? いいね?」
俺は和人の真剣な眼差しに、ただただ偽りの笑顔を浮かべ、無言で頷いて見せた。
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