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第13章

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 ウトウトしかけた翔真さんを抱いて風呂から上がると、和人がバスタオルを手に翔真さんの髪と身体を拭いてくれた。
 俺はその間に自分の着替えを済ませ、和人か翔真さんを受け取ると、弛緩しきった身体にスウェットを着せ付けた。

 「さっぱりして良かったね、翔真さん」

 和人の言葉に、翔真さんの閉じかけていた瞼が僅かに持ち上がり、小さく微む。でもそれはほんの一瞬のことで、開いたと思った瞼はすぐに閉じてしまう。

 「疲れたんだね、翔真さん。少し休ませてやったら?」


 散々泣き喚いて、暴れて……、疲れて当然だよな。


 「そうするよ」

 和人に短く答えると、俺は翔真さんを抱き上げ、寝室へと運んだ。
 脱力しきってズッシリと重くなった身体をベッドに横たえ、薄手の布団をかけてやると、無意識なんだろうか……翔真さんの手が俺のシャツの裾を握った。


 あんな酷いことをして翔真さんを怖がらせてしまったのに、それでもまだ俺を許してくれるの?


 申し訳なさとやるせなさが同時に込み上げてきて、複雑な気持ちに胸が締め付けられそうになる。

 「おやすみ、翔真さん」

 俺はシャツの裾を握った手をそっと解くと、額に一つだけキスを落とし、数分と待たずに聞こえてきた寝息が安定するのを確認して、俺はキッチンへと戻った。

 まだ後始末が残っているから……
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