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第13章

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 「風呂の用意して来てくれる?」
 「え……、ああ、分かっ……た」
 
 和人に言われて、俺はまるで棒のようになった足を、漸く動かした。

 蛇口を捻り、浴槽に湯を溜める。少しずつ増えていく湯を見ながら、俺は一つ息を吐いた。


 俺、何やってんだろ。
 翔さんに手を上げるなんて、どうかしてるよ……


 自己嫌悪に苛まれながら洗面所でタオルを濡らし、それを手に部屋に戻ると、和人の腕の中で、泣き腫らした顔の翔真さんが俺を見上げて……笑った。


 良かった……、もう忘れてる。


 何事もなかったように笑う翔真さんを見た瞬間、一瞬……だけど、俺の中から罪悪感が消えた。

 「風呂、すぐ湧くから。それとコレ……」

和人に向かって濡れたタオルを差し出すと、和人はそれを受け取り、翔真さんの腫れた頬に宛てがった。

 「翔真さん、風呂行こうか」
 「風……呂?」
 「そう、風呂。そのままじゃ気持ち悪いでしょ? 綺麗にして貰お?」

 意味が分かっているのかどうか……、和人の言葉に翔真さんが小さく頷くのを確認して、俺は和人の腕から翔真さんを抱き上げると、そのまま脱衣所へと運んだ。

 洗濯機に着いた手を支えに翔真さんを立たせ、茶色い染みを作ったスウェットの下と、紙オムツを一纏めに下すと、鼻をつく匂いに、思わず吐き気が込み上げたが、それを必死で堪えて、汚れた部分を濡れたティッシュで拭き取った。

 「後はシャワーで流そうね」

 着ていた服を全部脱がせ、俺も裸になると、翔真さんの身体を支えながら、風呂場に入った。
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