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第13章

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 シンクに向かって洗い物をしていると、チャイムが一つ鳴った。

 「開いてるよ」

 確認なんて必要ない。この部屋を訪ねてくるのは、和人ぐらいのもんだ。

 「鍵ぐらいかけときなさいよ、不用心だから」

 ドアを開けるなり、和人が笑いながら言うけど、別に盗られて困るモンなんかこの部屋には……あったわ。
 翔真さんのお母さんから預かった通帳、あれだけは絶対に駄目だ。

 「そろそろ冷蔵庫の中、空になる頃でしょ?」

 そう言った和人の手には、大量の食材が入ったスーパーの袋が下がっていて、

「いつも悪いね」

 俺はそれを受け取ると、ダイニングテーブルの上に置いた。

 和人は、中々買い物にも出かけらない俺を気遣ってか、週に一度はこうして食材を届けてくれる。怪我をしたせいで、翔真さんの世話が出来なくなったことを、酷く気に病んでのことだった。

 「最近調子はどうよ?」

 勝手知ったる何とかってやつで、慣れた手つきで自分の分のコーヒーを煎れると、ダイニングチェアにドカッと腰を下ろした。

 「どうもこうも、何も変わんないよ」

 心配かけたくなくて嘘で誤魔化してみるけど、そんなの和人にはお見通しだよね。

 「ふーん、そ? ならいいんだけどさ……」

 嘘だと分かっていても、それを咎めることなく、黙って俺の嘘に付き合ってくれる和人。そんな和人だから、俺はついつい甘えたくなってしまうんだ。

 俺の我儘で始めた生活なんだから、甘えちゃいけない、頼っちゃいけないって、ちゃんと分かってるのに……
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