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第13章

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 新たに処方された薬は、今までの物よりも記憶力や判断力の低下は抑えられるらしいが、それに付随する副作用もそれなりにあるみたいで、薬を飲み始めてからというもの、翔真さんはウトウトすることが多くなった。
 それはそれで、一見楽になったようにも感じるけど、実際はそうばかりではない。

 「翔真さん、ご飯食べるよ? 起きて?」

 声をかければ反応はするものの、また数分もしない内に眠ってしまう。そんなことも少なくはない。
 それでも、薬を飲む以前に比べれば、ほんの少しだけど、会話が出来るようになったことは、決して大きくはないけど、喜びではあった。

 「ご飯、食べようね?」
 「ご飯……?」
 「そ、ご飯」

 俺はスプーンに、少し柔らかめに炊いたご飯を掬い、それを翔真さんの口元に運んだ。

 「お口開けて?」

 そう言うと、小さく口を開けてくれるから、その隙にスプーンに乗せたご飯を口の中へと運び込む。それを何度も繰り返す。
 翔真さんが口を開けてくれなくなるまで、何度も何度も、何十分もかけて……

 「もうご馳走様?」

 汚れた口元をタオルで拭きながら訊くと、目尻を少しだけ下げて、「ありがとう、智樹」そう言って顔を綻ばせた。

 その笑顔を見るのが辛くて、苦しくて……

 「俺、コレ片付けちゃうね」

 俺は空になった食器を手に、キッチンへと逃げ込んだ。
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