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第10章

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 俺の手の中で小刻みに震える指先が、翔真さんに与えたショックの大きさを物語っているような気がした。

 「大丈夫。俺がついてるから、ね? ほら、捕まって?」

 翔真さんの腕を俺の肩に巻き付け、胸に引き寄せてやる。

 「あの、翔真さんの部屋は……」

 お手伝いさんを振り返り訪ねると、お手伝いさんが慌てたように階段を指差した。

 「あ、は、はい、こちらです……」

 翔真さんを抱き上げ、お手伝いさんの案内で階段を、翔真さんの部屋へ向かって昇って行く。
 その間も、ずっと翔真さんは目を涙で潤ませたまま、俺を不安げに見上げていた。

 「こちらです」

 殆ど使われていないと言われたその部屋は、きちんと掃除が行き届いていて、とても長いこと無人だったとは思えない程整えられていた。

 「あの、宜しければシャワールームがこちらに……」

 流石金持ち、と言うべきだろうか……
 俺のアパートよりも3倍……は大袈裟だけど、2.5倍は広い部屋には、専用のシャワールームまで完備されてて、俺はそこを遠慮なく使わせてもらうことにした。

 「お着替え、用意しておきますので」
 「ありがとうございます。後は俺やりますんで……」

 翔真さんを見ては心配そうに表情を曇らせるお手伝いさんに軽く頭を下げ、俺は翔真さんを抱いたままシャワールームに入った。
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