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第8章
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すっかり言葉に詰まってしまった俺は、和人に助けを求めた。
どう……したらいい?
そんな俺の気持ちを察したのか、和人が小さく息を吐いた。
「実は、翔真さんのことで、ちょっとお知らせしたいことがありまして……。翔真さんのご両親は……」
「は、はあ、ご在宅ですが……」
怪訝そうな顔で、女性が玄関の方を振り返った。
「会わせて頂くことって、出来ないですか?」
「ちょ、ちょっとここでお待ち下さい。確認して参りますので……」
それだけを言い残して、女性は玄関に向かってまた草履の踵を鳴らした。
「とりあえず第一関門突破、ってとこだね?」
それまで真剣な表情を崩さなかった和人の顔に、漸く安堵の色が浮かんだ。
「でもさ、仮にさ、ご両親に会えたとしてさ……」
その後は? 正直、現状を上手く説明する自信は、俺にはない。
それに、いきなり「お宅の息子さんは若年性アルツハイマー型認知症です」なんて言われたら……
俺の親なら間違いなく卒倒するだろう。
「深く考えても仕方ないんじゃない? だってこのまま、ってわけにはいかないんだし」
「それはそうなんだけど……」
見ず知らずの俺達がありのままを話したとして、果たして翔さんのご両親はすんなり聞き入れてくれるんだろうか……
不安だけがどんどん募っていく。
どう……したらいい?
そんな俺の気持ちを察したのか、和人が小さく息を吐いた。
「実は、翔真さんのことで、ちょっとお知らせしたいことがありまして……。翔真さんのご両親は……」
「は、はあ、ご在宅ですが……」
怪訝そうな顔で、女性が玄関の方を振り返った。
「会わせて頂くことって、出来ないですか?」
「ちょ、ちょっとここでお待ち下さい。確認して参りますので……」
それだけを言い残して、女性は玄関に向かってまた草履の踵を鳴らした。
「とりあえず第一関門突破、ってとこだね?」
それまで真剣な表情を崩さなかった和人の顔に、漸く安堵の色が浮かんだ。
「でもさ、仮にさ、ご両親に会えたとしてさ……」
その後は? 正直、現状を上手く説明する自信は、俺にはない。
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不安だけがどんどん募っていく。
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