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第8章
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「今日は中止にします? その調子じゃ余計に混乱させるだけだし……」
和人が振り返る。その顔は、いつになく険しい。
俺も和人の意見には賛成だった。
これ以上、翔真さんを混乱させるのは、翔真さんにとっても”いいこと”ではない、そう思ったから。
でも翔真さんは……
「二……木?」
完全に……なのかどうなのか、冷静さを取り戻したようで、俺の胸の中で小さく呟き、
「俺は一体何を……?」
ゆっくり俺の背中に回した腕を解き、窓の外に視線を向けた。
「ここは……高校?」
後部座席の窓を開け、窓の外に顔を出す。
その様子に、俺と和人はルームミラー越しに顔を見合わせた。
この状況を、どう説明したらいい?
きっと今の翔真さんは、至って普通の状態、なんだと思う。
だとしたら、さっきまで自分があれ程取り乱していたなんて、思ってもいないだろうし、それを伝えたところでまた混乱させるだけかもしれない。
「あの、実は……」
窓の外に出していた顔を車内に戻し、翔真さんが俺を覗き込む。
「ドライブ、ですよ」
言いかけた俺の言葉を、和人が遮った。
「翔真さんが言ったんですよ? 仕事ばっかりで、たまには息抜きしたいって。ね、雅也?」
「えっ、あ、ああ、うん……」
咄嗟に機転を利かせてくれたんだとは分っていても、突然フラれて、一瞬慌てた俺の声は、自分でも驚く程ひっくり返っていた。
和人が振り返る。その顔は、いつになく険しい。
俺も和人の意見には賛成だった。
これ以上、翔真さんを混乱させるのは、翔真さんにとっても”いいこと”ではない、そう思ったから。
でも翔真さんは……
「二……木?」
完全に……なのかどうなのか、冷静さを取り戻したようで、俺の胸の中で小さく呟き、
「俺は一体何を……?」
ゆっくり俺の背中に回した腕を解き、窓の外に視線を向けた。
「ここは……高校?」
後部座席の窓を開け、窓の外に顔を出す。
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この状況を、どう説明したらいい?
きっと今の翔真さんは、至って普通の状態、なんだと思う。
だとしたら、さっきまで自分があれ程取り乱していたなんて、思ってもいないだろうし、それを伝えたところでまた混乱させるだけかもしれない。
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「ドライブ、ですよ」
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「翔真さんが言ったんですよ? 仕事ばっかりで、たまには息抜きしたいって。ね、雅也?」
「えっ、あ、ああ、うん……」
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