47 / 125
第8章
1
しおりを挟む
翔真さんの顔が真っ直ぐ見られなかった。
違うな、不安そうに俺を覗き込む翔真さんの顔を見るのが、辛かったんだ。
まさか翔真さんが……、俺があれ程憧れた、翔真さんが認知症だって?
詳しい検査をしてみないと、ハッキリとした診断は出来ない、確かに井上先生はそう言った。ただ簡単なチェックでも、かなりの確率でソレであることは間違いない、とも……
頭の中がグチャグチャで、翔真さんの手を引いて、二木の車に乗り込むのがやっとで、車が動き出すと同時に、ウトウトし始めた翔真さんの頭を肩に乗せ、車窓の景色に目を向けた。
「井上さん、何だって?」
二木とミラー越しに目が合う。
「ま、その顔見りゃ、大体想像は付きますけどね?」
なら聞くなよ……
俺は溜息を一つつくと、ミラーに映る二木から視線を逸らした。
「でもさぁ、真面目な話……、井上さんの診断が正しかったとして、雅也はどうするつもり?」
「それなんだよな……」
俺もソレを考えていなかった訳じゃないし、偶然とは言え、関わってしまった以上、このままにしておくつもりもない。
ただどうするのが良いのか……
「やっぱりちゃんとご両親に話した方が良いでしょうね。我々が面倒を見るのも、おかしな話ですから」
二木の言うことは、尤もだった。
認知症だと、仮にでも診断を下された今、最早この人は、俺の知っている桜木翔真であって桜木翔真ではないんだから……
違うな、不安そうに俺を覗き込む翔真さんの顔を見るのが、辛かったんだ。
まさか翔真さんが……、俺があれ程憧れた、翔真さんが認知症だって?
詳しい検査をしてみないと、ハッキリとした診断は出来ない、確かに井上先生はそう言った。ただ簡単なチェックでも、かなりの確率でソレであることは間違いない、とも……
頭の中がグチャグチャで、翔真さんの手を引いて、二木の車に乗り込むのがやっとで、車が動き出すと同時に、ウトウトし始めた翔真さんの頭を肩に乗せ、車窓の景色に目を向けた。
「井上さん、何だって?」
二木とミラー越しに目が合う。
「ま、その顔見りゃ、大体想像は付きますけどね?」
なら聞くなよ……
俺は溜息を一つつくと、ミラーに映る二木から視線を逸らした。
「でもさぁ、真面目な話……、井上さんの診断が正しかったとして、雅也はどうするつもり?」
「それなんだよな……」
俺もソレを考えていなかった訳じゃないし、偶然とは言え、関わってしまった以上、このままにしておくつもりもない。
ただどうするのが良いのか……
「やっぱりちゃんとご両親に話した方が良いでしょうね。我々が面倒を見るのも、おかしな話ですから」
二木の言うことは、尤もだった。
認知症だと、仮にでも診断を下された今、最早この人は、俺の知っている桜木翔真であって桜木翔真ではないんだから……
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
わたし沖縄で働くことにしました(沖縄の風や味が忘れられなくて)
なかじまあゆこ
ライト文芸
旅行で行った沖縄。沖縄で食べた美味しかった沖縄そば。そして、亜熱帯地域独特の風が忘れられない、みどりと真理子。
二人は自分たちのことを認めてくれない会社に愛想を尽かして、まだなんとか若いと言える今のうちにやりたいことをやってみようと、東京から沖縄の地にホテルの従業員として働くことに決めたのだった。
沖縄で働きながらほっこり癒やしの物語です。
読んで頂けると嬉しいです。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
輪廻の果てに咲く桜
臣桜
ライト文芸
「泥に咲く花」を直したものです。さらにこのお話を直したものがあります。それは後日公開致します。
現代にひっそり生きる青年吸血鬼・時人(ときひと)。吸血鬼が故に五感が発達しすぎ、人に関心を持てない。そんなグレーの世界に色を与えたのが、音大生の葵(あおい)だった。二人は結婚を視野に幸せな付き合いをしていたが――。
※数年前に書いたお話なので、色々設定が破綻している箇所などはご容赦くださいませ。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
ねえ当近さんちょっとレトロだけどわたしと交換日記をしない?
なかじまあゆこ
ライト文芸
ねえ、当近さんちょっとレトロだけど交換日記をしない」と美衣佐から誘われたこの時から悪意や憎悪が始まっていたのかもしれない。にっこりと微笑みを浮かべるその裏側に。本当の秘密が隠されていた。青春は痛くて辛い……。
最後まで読んでいただけとわかる作品になっているかなと思います。 楽しかったはずの交換日記が形を変えていく。
亜里砂はいつもお母さんの服を着ている
朝日みらい
ライト文芸
亜里砂は、いつもお母さんが選んだ洋服を着ています。ある時、友だちの早苗の家で、さつえい会に参加したところ、心境に変化が……。好きな服についての小さな温かい物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる