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第7章

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 「ここに出した物、言って貰えますか?」

 俺が椅子に座るのを見計らったように、眼鏡の男がテーブルを指差し言う。


 何を言っているんだろう……


 首を傾げる俺に、レンズの向こう側の目が細められる。

 「どうしました?」

 答えを急かしているわけではないのは、その口調からも読み取れる。

 ただ、何のために、この男はこんなことをしているのか、俺にはこの男の意図が分からない。


 分からない、この眼鏡の男は一体何を俺に求めている……?


 心の中で次々湧き上がってくる不安が、膝の上で固く結んだ両手に震えとなって現れる。


 それに、

 「翔真さん、どうしたの?」

 俺の隣にいるこの男は一体誰だ……


 こんな男、俺は知らない……


 それでも誰かに縋りたくて、誰かに助けて欲しくて、自然と熱くなった目頭が、俺の視界を歪ませた。

 「この人おかしいんだ。おかしなことばっか言って。最初っから何もなかったのに、あったって……」

 そう……、眼鏡の男が指差すテーブルの上には、最初っから何もなかった。
 それなのにこの男はあったと言い張る。

 俺のこの不安を伴う混乱は、この男の理解不能な言動が原因だ、そう自分を納得させたその時、

 「何か喉乾いちゃったな。一緒に飲み物買いに行きましょうか?」

 俺の前にもう一人の小柄な男がしゃがみ込み、俺の震える手にその男の手が重なった。

 俺の手を包み込んだその手は、男のわりには柔らかでとても暖かくて、気付いた時には、俺はその手をギュッと握っていた。
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