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第5章
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余程泣き疲れたのか、俺の腕の中でウトウトし始めた翔真さんをベッドへと促した。
「疲れたでしょ? 少し休んで下さい」
ベッドに横たわった翔真さんに布団をかけてやると、心細そうな目が俺を見上げた。
「大丈夫ですって。どこにも行きませんから。ね?」
布団から出した顔が小さく頷くけど、その手は俺のトレーナーの裾をしっかり握っていて……
「分かりましたよ。翔真さんが眠るまで、俺ここにいますから」
頭をそっと撫でてやると、漸く安心したのか、翔真さんが静かに瞼を閉じ……、暫くすると安定した寝息が聞こえてきた。
「寝た……の?」
俺は立てた人差し指を口元に、トレーナーの裾を握った手をそっと解き、なるべく物音を立てないように、静かに物が散乱したキッチンへと移動した。
「なあ、どう思う?」
足元の物を一個一個拾いながら、単刀直入に聞く。
和人は勘のいい奴だから、事細かに説明しなくても、簡単に質問の意図を汲み取ってくれる。それは昔から変わってない。
「う~ん、どうって聞かれたら、やっぱりおかしいって答えるしかないんだけど……」
やっぱそうだよな……
和人だって、高校時代の翔真さんを全く知らない訳じゃないから、寧ろ知らない方がおかしいってもんだ。
「で、どうすんの? 行くの? 行かないの? どっち?」
そうだった。この状況にビックリし過ぎて、肝心なことをすっかり忘れてた……
「疲れたでしょ? 少し休んで下さい」
ベッドに横たわった翔真さんに布団をかけてやると、心細そうな目が俺を見上げた。
「大丈夫ですって。どこにも行きませんから。ね?」
布団から出した顔が小さく頷くけど、その手は俺のトレーナーの裾をしっかり握っていて……
「分かりましたよ。翔真さんが眠るまで、俺ここにいますから」
頭をそっと撫でてやると、漸く安心したのか、翔真さんが静かに瞼を閉じ……、暫くすると安定した寝息が聞こえてきた。
「寝た……の?」
俺は立てた人差し指を口元に、トレーナーの裾を握った手をそっと解き、なるべく物音を立てないように、静かに物が散乱したキッチンへと移動した。
「なあ、どう思う?」
足元の物を一個一個拾いながら、単刀直入に聞く。
和人は勘のいい奴だから、事細かに説明しなくても、簡単に質問の意図を汲み取ってくれる。それは昔から変わってない。
「う~ん、どうって聞かれたら、やっぱりおかしいって答えるしかないんだけど……」
やっぱそうだよな……
和人だって、高校時代の翔真さんを全く知らない訳じゃないから、寧ろ知らない方がおかしいってもんだ。
「で、どうすんの? 行くの? 行かないの? どっち?」
そうだった。この状況にビックリし過ぎて、肝心なことをすっかり忘れてた……
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