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第8章  009

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 豹変……とまではいかなくとも、態度を一変させた岸本に、黒瀬の鋭い眼光が向けられ…… 

「どういうことです?」

 短く言い放った言葉にも、若干の威圧感を含ませる。

「まず、誘拐の計画を立てたのは、確かにこの俺。身代金っていうの? それが目的だったのも事実。ほら、雅也さんて超金持ちじゃん? だから、ガッポリふんだくって、それで会社から盗んだ金返そうと思ったわけよ」

 大それたことをしておきながら、驚く程軽い口調で語る岸本に、翔真と智樹の冷めた視線が向けられる。
 それでも岸本は一切悪びれた様子もなく、くたびれたジャケットを脱ぐと、クスリと笑ってから、「でもさあ……」と再び話し始めた。

「弘行の奴、雅也さんからふんだくった金独り占めしようとしてさ、勝手に雅也さんとこ乗り込んでっちゃうんだもん、俺マジで焦ったよ」
「それは、岸本さん自身が、相原社長を騙していることを知られたくなかったから……ですか?」
「うーん、それもあるんだけど……つか、俺が雅也さんのこと好きなのは事実だよ? でも、流石に会社の金横領してる……なんて知られたらさ、いくら雅也さんが俺のこと好きだって言ってくれても、それはやっぱ無理じゃん?」
「確かに……、イデッ……」

 妙に納得した様子で頷いた翔真の後頭部に、智樹の鋭い平手が命中して、翔真は思わず頭を抱えた。
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