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第8章  009

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 当然だ、何しろ黒瀬が指を差したのは、他の誰でもない誘拐された張本人である岸本だったのだから。

「あ、あの……、ちょっと何のことだか……」

 そして岸本自身も、心底驚いた様子で目を見開き、フルフルと首を横に振っている。

「そうだよ、だ、だって、ソイツは俺らが………………」


 誘拐したんだから……


 言いかけたところで、翔真は続く先の言葉を飲み込んだ。
 岸本を誘拐したことを口にすれば、自分達が罪に問われることを恐れてのことだろう。

 尤も、プリペイド式携帯電話に残されたメールの文面を見る限り、翔真と智樹が岸本の誘拐に関わっていることは明白なのだから、今更隠す必要もなければ、事実を偽ったところで何の効力も成さない。

「不思議に思われるのも当然です。ですが、先程私が送ったメールを受け取ったこのスマホ自体が、確かな証拠にはなりませんか?」

 そう言って黒瀬はメールの受信画面を、再び二人に向けた。

「そ、それはそうだけど……」
「つか、何か? ってことは、自作自演だったってこと……なのか?」
「え、そ、そういうことなの? え、意味分かんないんだけど……」

 直感で黒瀬の意図を察した智樹の横で、翔真は更に深く頭を抱え込み、両手で髪をぐしゃぐしゃに掻き混ぜた。
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