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第7章  008

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「あちらでお話しますので、先に戻っていて頂けますか?」

 黒瀬に言われ、渋々翔真は全員が顔を揃えるリビングに戻った。

「何か見つかったのか?」

 ソファに腰を下ろした翔真に、智樹がすかさず耳打ちをするが、翔真は首を横に振るばかりで、何も答えようとはしない。

「なんだよそれ……。まさかヤバいモンでも見つかったんじゃないだろうな?」
「知らないよ……。だって見せてくれないんだもん……」

 不信を顕にする智樹に、翔真は唇を尖らせて見せる。

「は? 意味わかんねぇ……」
「俺だって意味わかんないよ……」

 翔真が不満を訴えるのも無理はない。
 黒瀬が弘行のポケットから何を取り出したのかは、翔真には一切知らされていないのだから。

 翔真が唇を尖らせ、頬を膨らませたその時、翔真の尻ポケットの中で、プリペイド式携帯電話がブルッと震えた……が、明らかにこれまでとは違う震え方に、翔真は若干動揺した様子でポケットを手で押さえた。

「何だよ、どうかしたのか?」

 異変に気付いたのは、智樹だった。

「良く分かんないだけど、多分電話かも……」
「え?」

 智樹が目を丸くするのも当然だ。
 これまでの連絡の殆どが、依頼者からのメールばかりで、電話がかかって来たことは、一度だってない。

 二人は顔を見合わせ、首を傾げた。
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