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第6章  007

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 智樹は熱気で蒸れ始めたキャップを外すと、しっとりと濡れた髪を乱暴に掻き、再びキャップを被り直した。

「と、と、とにかく! その弁護士さんとやらに何を聞かれても、何も喋んじゃねぇ。分かったな!」

 まるで、翔真には一切口を利くんじゃないとばかりにピシャリと言いつけ、智樹はシャワーコックを捻った。

「おら、行くぞ」

 掃除とは言った手前、長居をすればそれだけ疑いの元になる。
 智樹は持ち込みはしたものの、全く使うことのなかった掃除道具を一纏めに持つと、翔真よりも一足先にバスルームを出た。

「ご苦労だった。〝迅速かつ丁寧に〟をモットーとする俺からすると、少々時間がかかり過ぎではあるが、仕事熱心なのは歓迎だ」

 すかさず労いなのか嫌味なのか……、声をかけて来た相原が智樹の肩をポンと叩く。

「は、はあ……、とうも……」

 適当に言葉を返す智樹だったが、実際には掃除なんてしていないのだから、返事に困るのも当然だ。
 それは、後に続いて出てきた翔真も同じで……
 相原に肩を叩かれても、頭を下げる以外のことはせず……というか、馬鹿正直な翔真だから、智樹に「喋るな」と言われたことが影響しているのかもしれない。

「じゃあ……、掃除終わったんで、俺達はこれで……」


 今度こそ……


 智樹は翔真に合図を送ると、二人して相原に頭を下げた。
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