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第6章  007

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 どう理由を付けて岸本をこの場に留めようか……


 二人は顔を見合わせた。

 すると、二人の懸念を知ってか知らないでか、

「お気持ちは分かりますが、今この場を離れることは、状況から判断して不可能かと思います」

 本木が、眼鏡の奥の視線を弘行に向け、感情なく言い放った。

「え、で、でも、商談が延期になったことを、会社に伝えないといけないんだけど……。困ったなあ……」

 言葉とは裏腹に、ふにゃふにゃと笑う岸本の顔からは、とても困窮してる様子は窺えない。
 勿論、心の内まで見透かせるわけではないから、表面上のことだけなのかもしれないけれど……

「えっと……、じゃあいつになったら……?」
「そうですね、少なくとも後二、三時間は難しいかと……。そうでしたよね、相原社長?」
「ああ、そうだな」
「そ、そんなに……?」

 窓が無いため、外の景色がどうなっているのかは分からないが、スマホの時計を見る限りでは、そろそろ日も落ちかけて来る頃だ。

「何しろ忙しい男だからな、彼は……」
「か、彼……って?」

 彼……、その一言に真っ先に反応したのは、それまでずっと自身の足先に視線を落としていた翔真だった。

「誰か来る……ってこと?」

 相原と本木の登場だけでも計算外だったのに、この上また一人増えるとなると、更に面倒なことになる。
 二人は顔を見合わせると、同様に困惑の表情を浮かべた。
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