ＲｏｏｍＮｕｎｍｂｅｒ「０００」

第２章 ００２

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　バックミラー越しに覗き見る翔真の視線を感じながら、智樹は手際良く着替えを済ませた。
　可憐ささえ垣間見れたメイド姿から一転、ブルーのツナギと、同色のキャップを目深に被った智樹は、さっきとはまるで別人のようで……

「お前それ詐欺だって(笑) 」

　翔真は思わず苦笑いを浮かべた。

　勿論、揶揄われて黙っている智樹ではないから、

「うっせー、黙ってろ」

　当然のように反論はするけど、それだって翔真の性格上全く響いてはいない。

　翔真は智樹がシートベルトを締めたのを確認すると、シリンダーを回してエンジンをかけた。
　そしていよいよ車を発進させようかとした時、智樹の手がハンドルをにぎる翔真の手に重なった。

　一瞬……、本当にほんの一瞬だが、微かな期待を抱いた翔真だったが、すぐに勘違いだと気付いてアクセルを踏みかけた足をブレーキへと戻した。

「何？」
「い、いや、お前は着替えねぇのかと思って……」

　何だそんなことか……と、内心喜んだ自分を慰めつつ、翔真は小さく「ああ……」と答えると、再び足をアクセルへと戻した。

　頭から突っ込んだ車をバックさせ、進行方向に車を向けると、左右を確認してから一気に加速させて道路に飛び出す。

　それから漸く、自分が着替えをしない理由を、ポツリポツリと智樹に話して聞かせた。