H・I・M・E ーactressー

誠奈

文字の大きさ
上 下
530 / 688
第29章  日常14:はじめの一歩

しおりを挟む
  「あのね、智樹?  父ちゃんも私も、そうじゃないかな……って思ってたのよ」

  僕と似て口下手な父ちゃんの代わりに、母ちゃんが言う。

  当然、二人が気付いてたなんて全然知らなかった僕は、目ん玉が落っこちるくらいの勢いで驚いて……

  「思ってた……って、え……、嘘、え、何で?」
  「何でも何も……、親だもの、分かるわよねぇ、父ちゃん?」

  母ちゃんに肩を揺らされ、父ちゃんが心做しか赤くなったお顔で頷く。

  「だからね、あんたは翔真くんをお友達だって紹介したけど、私はピンと来てたって言うか……」
  「そう……だったんだ?」


  なんだ、だったら最初から「恋人です」って紹介すれば良かったじゃん。

 
  「でもまさかこんな風にご挨拶されるなんて、ねぇ……?  何だか息子を嫁に出す気分だわ」

  よ、よ、よ、嫁って……!

  そりゃさ、たかだか恋人としてお付き合いするってだけで、三指ついて親に挨拶……ってのも大袈裟だとは思うけどね?

  でも嫁って……まだエッチもろくにしてないし、そこまでの関係じゃないから、翔真くんだってきっと困って……

  「嫁……、智樹が俺のYOME……、悪くないかも♡ 」


  あはは……、なかったみたいだ。


  でも翔真くんがニヤケてたのはそこまで。

  直ぐに真剣な顔に戻して、また額を床に擦り付けた。

  すると、その様子を見ていた父ちゃんが、ぬるくなったコーヒーを一気に飲み干し、カップをテーブルに置いてから、また両腕を組んだ。

  「あのな、二人とも……。俺は、男が男に惚れるっつーのがどんなもんかは分かんねぇ。けどな、簡単な事じゃねぇってことはだけは、よーっく分かる」
  「父ちゃ……ん?」
  「相当な覚悟が必要だってこともな……?」
  「うん……」
  「おめぇらにその覚悟はあんだよな?」

  父ちゃんにそう問われて、僕は思わず翔真くんを振り返った。

  僕はずっと自分の性癖と向き合って生きてきたから、それなりに色々覚悟はして来てるけど、果たして翔真くんはどうなんだろう、って……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...