H･I･M･E ーactressー

第28章 日常13：夢なら醒めないで…

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　漸く電話が出来るようになったものの、僕は二階へ上がるのが面倒で、リビングのソファー……翔真くんの隣で和人に電話をかけた。

　僕からの電話に、和人はすっごく驚いた様子…で…


　そりゃそうだよね、心配してるのは分かってても、肝心な連絡手段がなかったせいで、あれきりずっと連絡も取れないままになってしまったんだもん。


　「ごめんね？　でももう大丈夫だから……」

　僕が言うと、和人が「良かった｣」と電話越しに胸を撫で下ろしたのが分かった。
　でもその後ろでは、何故か号泣してる相原さんの声がしてて……

　ちょっと笑っちゃいそうだったけど、それだけ心配させてたんだと思ったら、ちょっぴり胸が痛くなった。

　それから翔真くんとのことも、母ちゃんが傍にいるから、あんまり詳しくは話せなかったけど、簡単に報告した。

　すると今度は和人が、鼻を啜りだして……

　「良かった……、本当に良かったね」って……
　「おめでとう」って言ってくれて……

　たった一言なんだけど、それだけで和人が心から喜んでくれてるのが分かった。

　僕は近いうちに帰ることを約束して電話を切った。

　「ＫＡＺＵさん、何だって？」
　「んとね、おめでとうって言ってくれた」
　「そっか」
　「うん」

　スマホをポケットに突っ込み、空いた手が僕の手をそっと握る。
　勿論、母ちゃんからは見えない場所で、こっそりとね。

　そしてまっすぐ前を向いたまま、急に真剣な顔をしたかと思うと、「次は俺の番だな」って、耳を澄まさなければ聞こえないような、とても小さな声で独り言のように呟き、こっそりと握り合った手にほんのちょっぴりだけど力をこめた。



　その時は、翔真くんが何を言いたかったのか……、翔真くんの言葉の意味が分からなかった。


　でもまさか、だよね……

　だって翔真くんがそんなこと考えてるなんてさ、夢にも思ってもなかったんだもん。

　ほんと、もうビックリで……

　僕は夢でも見てるんじゃないかって、何度も自分の頬を抓った。


　でも夢じゃなかったんだ。