310 / 369
第25章 End of Sorrow
8
しおりを挟む
「追いかけなくていいのか? 今ならまだ間に合うぞ?」
それまで沈黙を貫いていた佐藤が口を開く。
その声は一見すれば穏やかにも聞こえるが、その反面、俺に選択を迫るような強さも込められていて、佐藤が暗に「追いかけろ」と、俺に迫っているようにも受け取れた。
でも俺は、一瞬天を仰いでからそっと瞼を伏せ、静かに首を横に振った。
追いかけたい。
今なら……佐藤の言う通り、今ならまだ間に合うかもしれない。
でもその後は?
仮に智樹を連れ戻したとして、それからどうする?
男娼に身を堕とした挙句薬物に溺れた自分を、智樹がこの先赦すことは、恐らくはないだろう。
底の知れない後悔に苛まれ、罪の意識に押し潰されながら、苦しみ藻掻くに決まってる。
俺はそんな智樹を見たくはない。
もう二度と同じ思いをするのはゴメンだ。
「もういいんです。もう終わったんです。だからもう……」
「本当にこれでいいのか? これを逃したら、もう二度と会えないかもしれないんだぞ? それでも?」
もう二度と智樹に会えない。
佐藤のその一言が、俺の胸にズンと突き刺さった。
「そっか、そうですよね……」
「翔真さん?」
自分の中で見切りを付けたつもりだった。
なのにどうして……
「なんだ……、こんなことになんなら、写真の一枚でも撮っときゃ良かった……」
そうすれば、例え肉体が離れたとしても、俺の心の中で智樹は存在し続ける。
そう、智樹が潤一の写真を肌身離さず持っていたように……
「馬鹿だな、俺は……。そんな簡単なことも気づかないなんてな……」
熱い物が込み上げ、俺は思わず両手で顔を覆った。
「本気で馬鹿だ……」
「だったら追いかけなよ。今ならまだ……、ね?」
和人が、男にしては柔らかな手で俺の背中を摩る。
その指から、その手のひらから、和人の苦悩が伝わってくる。
苦しいのは俺だけじゃないんだ、って……
親友が出て行くのを、黙って見送ることしか出来なかったんだから、和人が自責の念にかられるのも当然のことなのかもしれない。
そしてその根源を作ったのは、他でもない、この俺だ。
あの時、智樹がどんな思いで最後のステージに立ったのか、気付いてやれていれば、もしかしたらこんなことにはなっていなかったかもしれないのに……
悪いのは……俺だ。
それまで沈黙を貫いていた佐藤が口を開く。
その声は一見すれば穏やかにも聞こえるが、その反面、俺に選択を迫るような強さも込められていて、佐藤が暗に「追いかけろ」と、俺に迫っているようにも受け取れた。
でも俺は、一瞬天を仰いでからそっと瞼を伏せ、静かに首を横に振った。
追いかけたい。
今なら……佐藤の言う通り、今ならまだ間に合うかもしれない。
でもその後は?
仮に智樹を連れ戻したとして、それからどうする?
男娼に身を堕とした挙句薬物に溺れた自分を、智樹がこの先赦すことは、恐らくはないだろう。
底の知れない後悔に苛まれ、罪の意識に押し潰されながら、苦しみ藻掻くに決まってる。
俺はそんな智樹を見たくはない。
もう二度と同じ思いをするのはゴメンだ。
「もういいんです。もう終わったんです。だからもう……」
「本当にこれでいいのか? これを逃したら、もう二度と会えないかもしれないんだぞ? それでも?」
もう二度と智樹に会えない。
佐藤のその一言が、俺の胸にズンと突き刺さった。
「そっか、そうですよね……」
「翔真さん?」
自分の中で見切りを付けたつもりだった。
なのにどうして……
「なんだ……、こんなことになんなら、写真の一枚でも撮っときゃ良かった……」
そうすれば、例え肉体が離れたとしても、俺の心の中で智樹は存在し続ける。
そう、智樹が潤一の写真を肌身離さず持っていたように……
「馬鹿だな、俺は……。そんな簡単なことも気づかないなんてな……」
熱い物が込み上げ、俺は思わず両手で顔を覆った。
「本気で馬鹿だ……」
「だったら追いかけなよ。今ならまだ……、ね?」
和人が、男にしては柔らかな手で俺の背中を摩る。
その指から、その手のひらから、和人の苦悩が伝わってくる。
苦しいのは俺だけじゃないんだ、って……
親友が出て行くのを、黙って見送ることしか出来なかったんだから、和人が自責の念にかられるのも当然のことなのかもしれない。
そしてその根源を作ったのは、他でもない、この俺だ。
あの時、智樹がどんな思いで最後のステージに立ったのか、気付いてやれていれば、もしかしたらこんなことにはなっていなかったかもしれないのに……
悪いのは……俺だ。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
俺☆彼 [♡♡俺の彼氏が突然エロ玩具のレビューの仕事持ってきて、散々実験台にされまくる件♡♡]
ピンクくらげ
BL
ドエッチな短編エロストーリーが約200話!
ヘタレイケメンマサト(隠れドS)と押弱真面目青年ユウヤ(隠れドM)がおりなすラブイチャドエロコメディ♡
売れないwebライターのマサトがある日、エロ玩具レビューの仕事を受けおってきて、、。押しに弱い敏感ボディのユウヤ君が実験台にされて、どんどんエッチな体験をしちゃいます☆
その他にも、、妄想、凌辱、コスプレ、玩具、媚薬など、全ての性癖を網羅したストーリーが盛り沢山!
****
攻め、天然へたれイケメン
受け、しっかりものだが、押しに弱いかわいこちゃん
な成人済みカップル♡
ストーリー無いんで、頭すっからかんにしてお読み下さい♡
性癖全開でエロをどんどん量産していきます♡
手軽に何度も読みたくなる、愛あるドエロを目指してます☆
pixivランクイン小説が盛り沢山♡
よろしくお願いします。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる