307 / 369
第25章 End of Sorrow
5
しおりを挟む
俺の涙をその頬に受け止めながら、智樹は何を思っていたのか……
月明かりの下で、俺は閉じていた瞼が開かれるのを、じっと見下ろし、待った。
そして、薄らと影を落とす睫毛がピクリと揺れ、ゆっくりと瞼が開かれた時、俺はゾクリ……と背中が震えるのを感じた。
俺を見上げる両の目に、それまでステージで幾度も見せてきた、欲情を煽る顔とも違う、妖艶な……そう、まるで娼婦のように欲の色を濃く乗せ、俺を誘う智樹がそこにいた。
その瞬間、智樹の俺に対する拒絶を感じると同時に、失望感に身体を震わせた。
お前はそうまでして俺を……?
もし仮に俺のことを思ってそうしたのであったら、それほど残酷で、悲しいことはない。
それなのに、智樹は更に追い打ちをかけてくる。
「手、放して? じゃないと服脱げないよ」
そう言って智樹は、赤く熟れた舌先で自身の唇をなぞった。
無性に腹が立って仕方なかった。
出来ることなら殴り倒してでも、俺はお前が相手にしてきた数多の客とは違うんだ、と怒鳴り付けてやりたかった。
でもそれも出来ないくらい、俺は智樹に対して嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
かつては……いや、今でも俺は智樹を恋人だと思っているが、その俺をまるで客のように扱う智樹が、悍ましいとさえ思ってしまったんだ。
指の先ですら触れていたくなくて、俺はとうとう智樹をの戒めを解いた。
本当は離しちゃいけなかったのに……
ずっとこのまま俺の手で縛り付け、一生俺の腕の中から逃げ出せないよう、捕らえておくべきだったのに……
分かっていながら俺は、欲情を煽るように艶めかしくシャツのボタンを外して行く智樹を、ただただ黙って見下ろすことしか出来なかった。
それでも首筋に唇を寄せられた時には、流石にその余りにも近過ぎる距離感に、「やめ……ろ……」と声を振り絞った。
知られたくなかったんだ。
こんな状況で、触れることすら悍ましいと思っている智樹を相手に欲情している自分を、智樹には知られたくなかった。
「望んだのは翔真だよ?」
そう、確かにこの状況に持ち込んだのは、他でもない俺自身。
少々強引でも、身体さえ繋げてしまえば、智樹を引き止めることが出来る……そもそもそれが、その考えこそが間違いだったんだ。
身体を繋げようが繋げまいが、智樹が俺から離れて行くことは、最初から決まっていたのに……
月明かりの下で、俺は閉じていた瞼が開かれるのを、じっと見下ろし、待った。
そして、薄らと影を落とす睫毛がピクリと揺れ、ゆっくりと瞼が開かれた時、俺はゾクリ……と背中が震えるのを感じた。
俺を見上げる両の目に、それまでステージで幾度も見せてきた、欲情を煽る顔とも違う、妖艶な……そう、まるで娼婦のように欲の色を濃く乗せ、俺を誘う智樹がそこにいた。
その瞬間、智樹の俺に対する拒絶を感じると同時に、失望感に身体を震わせた。
お前はそうまでして俺を……?
もし仮に俺のことを思ってそうしたのであったら、それほど残酷で、悲しいことはない。
それなのに、智樹は更に追い打ちをかけてくる。
「手、放して? じゃないと服脱げないよ」
そう言って智樹は、赤く熟れた舌先で自身の唇をなぞった。
無性に腹が立って仕方なかった。
出来ることなら殴り倒してでも、俺はお前が相手にしてきた数多の客とは違うんだ、と怒鳴り付けてやりたかった。
でもそれも出来ないくらい、俺は智樹に対して嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
かつては……いや、今でも俺は智樹を恋人だと思っているが、その俺をまるで客のように扱う智樹が、悍ましいとさえ思ってしまったんだ。
指の先ですら触れていたくなくて、俺はとうとう智樹をの戒めを解いた。
本当は離しちゃいけなかったのに……
ずっとこのまま俺の手で縛り付け、一生俺の腕の中から逃げ出せないよう、捕らえておくべきだったのに……
分かっていながら俺は、欲情を煽るように艶めかしくシャツのボタンを外して行く智樹を、ただただ黙って見下ろすことしか出来なかった。
それでも首筋に唇を寄せられた時には、流石にその余りにも近過ぎる距離感に、「やめ……ろ……」と声を振り絞った。
知られたくなかったんだ。
こんな状況で、触れることすら悍ましいと思っている智樹を相手に欲情している自分を、智樹には知られたくなかった。
「望んだのは翔真だよ?」
そう、確かにこの状況に持ち込んだのは、他でもない俺自身。
少々強引でも、身体さえ繋げてしまえば、智樹を引き止めることが出来る……そもそもそれが、その考えこそが間違いだったんだ。
身体を繋げようが繋げまいが、智樹が俺から離れて行くことは、最初から決まっていたのに……
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
八尺様♂と男の子くん。
うめしゅ
BL
八尺様♂とそれに救われてる男の子くんの純愛です。
■公園で友達と遊んでた男の子くん。5時の鐘がなり、門限を守る友達らは各々帰っていく。友人らと別れの挨拶をし、ポツンと公園に残された男の子くん。両親は共働きで、門限があってもどうせ家に誰もいない。それが分かってるし嫌で公園でひとり伸びてく影をじっと見つめていると、後ろに人の気配がする。
振り向いてみると背が高い帽子を被った男の人がじっとこっちを見ていた。なんだろうと思うけれど、思ったまま。そのまま電柱の影が伸びてく地面をみている。「ぽ」後ろで音がした。振り向いてみたら、さっきの人が屈み込んでこっちをみてる。長いサラサラの髪の毛が真っ黒で吸い込まれそう。
じっと黒々とした目が男の子を見つめている。髪も目も吸い込まれそうなくらい黒くて何だか目が離せない男の子くん。「ぽ。ぽ。」男の人がまた口にする。「…ぽ?」思わず同じ言葉を返してしまう男の子くん。「ぽぽぽ」気に入ったのか何なのか同じ音を繰り返す男の人。不思議な人だなぁと思った。
◾︎ちまちまと漫画の方も描いておりますので、プロフィール欄から是非。
ドMな二階堂先生は踏まれたい
朝陽ヨル
BL
ドS生徒会副会長×ドM教育実習生
R18/鬼畜/年下攻め/敬語攻め/ドM受け/モロ語/愛ある暴力/イラマ/失禁 等 ※エロ重視でほぼ物語性は無いです
ゲイでドMな二階堂は教育実習先で、生徒会副会長の吾妻という理想の塊を発見した。ある日その吾妻に呼ばれて生徒会室へ赴くとーー。
理想のご主人様とドキドキぞくぞくスクールライフ!
『99%興味』のスピンオフ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる