S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

誠奈

文字の大きさ
上 下
238 / 369
第20章   Omen

しおりを挟む
 「そ、それで、佐藤様は何て?」

 俺の問いかけに、光司は記憶を数分前まで遡るように視線を巡らせた。
 ただ、様子を限りでは気が動転して、ろくに覚えちゃいないかもしれない。


 残念だけど期待は出来ないな……


 その俺の予想は見事的中。

 「それがその、あんまり覚えてなくて……」

 案の定、光司は佐藤との会話を殆ど記憶していなかった。

 「あ、でも、佐藤様も酷く慌てた様子だったことは覚えてます。いつも冷静沈着な方なのに、早くしろ……なんて声を荒げられたりして……」

 俺も実際に佐藤と会ったことはないけど、智樹から話を聞く限り、光司の佐藤に対する印象は間違っていないと思う。

 「そうか……、それで部屋に?」

 光司は無言で頷いた。

 「でも客は?」
 「それが変なんですよね。俺が佐藤様から連絡を貰って部屋に駆け付けた時には、お客様はもう帰られた後で。それに、智樹さんもいつも通りな感じで、佐藤様か心配されていたような様子は全然なくて……」

 それだけを言うと、訳わかんないっすよ、と光司は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。


 無理もないか……


 光司が混乱する気持ちは、俺にも分からなくもない。


 俺自身も、冷静を装ってはいるけど、内心では酷く動揺しているんだから。


 連絡を受けた時の光司の心境を考えると、それ以上話を聞くのは酷だと感じた俺は、光司と同じように俺もその場にしゃがみ込むと、ガックリと落ちた肩に手をかけた。

 「悪かったね、世話かけちゃって」
 「いえ、俺の方こそ和人さんに迷惑かけちゃって、すいませんでした」
 「いや、寧ろ教えてくれて助かったよ。あ、それでこのことは……」
 「分かってます。こんなことがオーナーの耳に入ったら、俺だって……」


 だよね……


 「あ、でも柳が……」
 「それなら大丈夫です。柳は喋ったりしませんから」
 「そう……なの?」

 不思議そうに首を傾げて見せた俺に、光司は今日初の笑顔を見せた。

 「そっか、光司がそう言うなら、先ずは安心か。それにしても、智樹遅くない?」

 俺達が部屋を出てから、もう随分経つのに、智樹が部屋から出てくる気配は一向にない。

 「そうですね。あ、もしかして倒れてるとか……」
 「えっ、まさか……」

 言われて急に不安が過ぎる。


 俺が駆け付けた時には、そんな素振りは見せなかったけど、もしかして……


 立ち上がったその時、それまで閉じていたドアがゆっくりと開いた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺の番が変態で狂愛過ぎる

moca
BL
御曹司鬼畜ドS‪なα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!! ほぼエロです!!気をつけてください!! ※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!! ※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️ 初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀

ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話

さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ) 奏音とは大学の先輩後輩関係 受け:奏音(かなと) 同性と付き合うのは浩介が初めて いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく

【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集

夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。 現在公開中の作品(随時更新) 『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』 異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ

鬼騎士団長のお仕置き

天災
BL
 鬼騎士団長のえっちなお仕置きの話です。

ドSな義兄ちゃんは、ドMな僕を調教する

天災
BL
 ドSな義兄ちゃんは僕を調教する。

モルモットの生活

麒麟
BL
ある施設でモルモットとして飼われている僕。 日々あらゆる実験が行われている僕の生活の話です。 痛い実験から気持ち良くなる実験、いろんな実験をしています。

八尺様♂と男の子くん。

うめしゅ
BL
八尺様♂とそれに救われてる男の子くんの純愛です。 ■公園で友達と遊んでた男の子くん。5時の鐘がなり、門限を守る友達らは各々帰っていく。友人らと別れの挨拶をし、ポツンと公園に残された男の子くん。両親は共働きで、門限があってもどうせ家に誰もいない。それが分かってるし嫌で公園でひとり伸びてく影をじっと見つめていると、後ろに人の気配がする。 振り向いてみると背が高い帽子を被った男の人がじっとこっちを見ていた。なんだろうと思うけれど、思ったまま。そのまま電柱の影が伸びてく地面をみている。「ぽ」後ろで音がした。振り向いてみたら、さっきの人が屈み込んでこっちをみてる。長いサラサラの髪の毛が真っ黒で吸い込まれそう。 じっと黒々とした目が男の子を見つめている。髪も目も吸い込まれそうなくらい黒くて何だか目が離せない男の子くん。「ぽ。ぽ。」男の人がまた口にする。「…ぽ?」思わず同じ言葉を返してしまう男の子くん。「ぽぽぽ」気に入ったのか何なのか同じ音を繰り返す男の人。不思議な人だなぁと思った。 ◾︎ちまちまと漫画の方も描いておりますので、プロフィール欄から是非。

ドMな二階堂先生は踏まれたい

朝陽ヨル
BL
ドS生徒会副会長×ドM教育実習生 R18/鬼畜/年下攻め/敬語攻め/ドM受け/モロ語/愛ある暴力/イラマ/失禁 等 ※エロ重視でほぼ物語性は無いです  ゲイでドMな二階堂は教育実習先で、生徒会副会長の吾妻という理想の塊を発見した。ある日その吾妻に呼ばれて生徒会室へ赴くとーー。  理想のご主人様とドキドキぞくぞくスクールライフ!  『99%興味』のスピンオフ作品です。

処理中です...