226 / 369
第19章 Clue
5
しおりを挟む
知ってる、智樹の親父さんは、この男の正体を知ってる。
親父さんの反応からそう確信した俺は、更に深い話を投げかけてみることにした。
「確実ではないんですが、今智樹はこの写真の男性の元にいるという噂を耳にしまして……」
確証が無いわけではない、二人並んで写る写真を見れば、二人が一緒にいることは一目瞭然だ。
ただ、現状得ている情報を、智樹が今置かれている状況をありのまま打ち明けるのは、あまりにも酷だ。
智樹が売春紛いの仕事をさせられていると知ったら……
こんな仕事を生業としている俺ですら、強い衝撃を受けたんだ、親ともなればそのショックの大きさは計り知れない。
「あの、もしやこの男性をご存知なのでは? もし知っていることがあれば……」
何でもいい、教えて欲しい。
「この写真はいつ頃撮られた物なんですか?」
「恐らく、ここ一ヵ月の間だと思いますが、どうして?」
質問に質問で返した俺に、親父さんは一言「そうですか」と言ったきり、無精髭を生やした口元をキュッと結んだ。
そして、一瞬天を仰いだかと思うと、俺に向かって椅子に座るよう言った。
俺は言われるまま勉強机の椅子に腰を下ろすと、ベッドに座った親父さんの方へ、身体ごと向きを変えた。
「もう二度と彼の顔を見ることはないと思ってたんですがね。まさか日本に帰って来てるとは……」
親父さんは膝の上に置いた手を強く握り締めると、信じられないとばかりに首を振った。
「桜木さん……でしたね? 貴方が智樹からどこまで話を聞いてるかは知りませんが、彼は智樹の昔のその……恋人ってやつでしてね……」
「智樹の恋人……ですか? それなら、一人だけ……」
言いかけたところでハッとした俺は、親父さんの手から写真を引き取ると、写真の中の横顔をまじまじと見つめた。
「まさか、そんなこと……」
どうして今まで気が付かなかった。
何度も何度も、それこそ目を皿のようにして見てきた筈なのに、どうしてこの写真の人物が、松下潤一だと言うことに気付けなかった!
「松下潤一、ですか? この写真の男が松下潤一だと?」
「そうです。ご存知だったんですね」
親父さんはベッドから腰を上げ、窓辺に立つと、閉め切ったままの窓を開けた。
すると途端に吹き込んで来た秋の冷たい風が、俺の体温を全て奪って行くような、そんな気がした。
親父さんの反応からそう確信した俺は、更に深い話を投げかけてみることにした。
「確実ではないんですが、今智樹はこの写真の男性の元にいるという噂を耳にしまして……」
確証が無いわけではない、二人並んで写る写真を見れば、二人が一緒にいることは一目瞭然だ。
ただ、現状得ている情報を、智樹が今置かれている状況をありのまま打ち明けるのは、あまりにも酷だ。
智樹が売春紛いの仕事をさせられていると知ったら……
こんな仕事を生業としている俺ですら、強い衝撃を受けたんだ、親ともなればそのショックの大きさは計り知れない。
「あの、もしやこの男性をご存知なのでは? もし知っていることがあれば……」
何でもいい、教えて欲しい。
「この写真はいつ頃撮られた物なんですか?」
「恐らく、ここ一ヵ月の間だと思いますが、どうして?」
質問に質問で返した俺に、親父さんは一言「そうですか」と言ったきり、無精髭を生やした口元をキュッと結んだ。
そして、一瞬天を仰いだかと思うと、俺に向かって椅子に座るよう言った。
俺は言われるまま勉強机の椅子に腰を下ろすと、ベッドに座った親父さんの方へ、身体ごと向きを変えた。
「もう二度と彼の顔を見ることはないと思ってたんですがね。まさか日本に帰って来てるとは……」
親父さんは膝の上に置いた手を強く握り締めると、信じられないとばかりに首を振った。
「桜木さん……でしたね? 貴方が智樹からどこまで話を聞いてるかは知りませんが、彼は智樹の昔のその……恋人ってやつでしてね……」
「智樹の恋人……ですか? それなら、一人だけ……」
言いかけたところでハッとした俺は、親父さんの手から写真を引き取ると、写真の中の横顔をまじまじと見つめた。
「まさか、そんなこと……」
どうして今まで気が付かなかった。
何度も何度も、それこそ目を皿のようにして見てきた筈なのに、どうしてこの写真の人物が、松下潤一だと言うことに気付けなかった!
「松下潤一、ですか? この写真の男が松下潤一だと?」
「そうです。ご存知だったんですね」
親父さんはベッドから腰を上げ、窓辺に立つと、閉め切ったままの窓を開けた。
すると途端に吹き込んで来た秋の冷たい風が、俺の体温を全て奪って行くような、そんな気がした。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
俺の番が変態で狂愛過ぎる
moca
BL
御曹司鬼畜ドSなα × 容姿平凡なツンデレ無意識ドMΩの鬼畜狂愛甘々調教オメガバースストーリー!!
ほぼエロです!!気をつけてください!!
※鬼畜・お漏らし・SM・首絞め・緊縛・拘束・寸止め・尿道責め・あなる責め・玩具・浣腸・スカ表現…等有かも!!
※オメガバース作品です!苦手な方ご注意下さい⚠️
初執筆なので、誤字脱字が多々だったり、色々話がおかしかったりと変かもしれません(><)温かい目で見守ってください◀
ゆるふわメスお兄さんを寝ている間に俺のチンポに完全屈服させる話
さくた
BL
攻め:浩介(こうすけ)
奏音とは大学の先輩後輩関係
受け:奏音(かなと)
同性と付き合うのは浩介が初めて
いつも以上に孕むだのなんだの言いまくってるし攻めのセリフにも♡がつく
【R-18】♡喘ぎ詰め合わせ♥あほえろ短編集
夜井
BL
完結済みの短編エロのみを公開していきます。
現在公開中の作品(随時更新)
『異世界転生したら、激太触手に犯されて即堕ちしちゃった話♥』
異種姦・産卵・大量中出し・即堕ち・二輪挿し・フェラ/イラマ・ごっくん・乳首責め・結腸責め・尿道責め・トコロテン・小スカ
八尺様♂と男の子くん。
うめしゅ
BL
八尺様♂とそれに救われてる男の子くんの純愛です。
■公園で友達と遊んでた男の子くん。5時の鐘がなり、門限を守る友達らは各々帰っていく。友人らと別れの挨拶をし、ポツンと公園に残された男の子くん。両親は共働きで、門限があってもどうせ家に誰もいない。それが分かってるし嫌で公園でひとり伸びてく影をじっと見つめていると、後ろに人の気配がする。
振り向いてみると背が高い帽子を被った男の人がじっとこっちを見ていた。なんだろうと思うけれど、思ったまま。そのまま電柱の影が伸びてく地面をみている。「ぽ」後ろで音がした。振り向いてみたら、さっきの人が屈み込んでこっちをみてる。長いサラサラの髪の毛が真っ黒で吸い込まれそう。
じっと黒々とした目が男の子を見つめている。髪も目も吸い込まれそうなくらい黒くて何だか目が離せない男の子くん。「ぽ。ぽ。」男の人がまた口にする。「…ぽ?」思わず同じ言葉を返してしまう男の子くん。「ぽぽぽ」気に入ったのか何なのか同じ音を繰り返す男の人。不思議な人だなぁと思った。
◾︎ちまちまと漫画の方も描いておりますので、プロフィール欄から是非。
ドMな二階堂先生は踏まれたい
朝陽ヨル
BL
ドS生徒会副会長×ドM教育実習生
R18/鬼畜/年下攻め/敬語攻め/ドM受け/モロ語/愛ある暴力/イラマ/失禁 等 ※エロ重視でほぼ物語性は無いです
ゲイでドMな二階堂は教育実習先で、生徒会副会長の吾妻という理想の塊を発見した。ある日その吾妻に呼ばれて生徒会室へ赴くとーー。
理想のご主人様とドキドキぞくぞくスクールライフ!
『99%興味』のスピンオフ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる