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第19章 Clue
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聞けば、智樹が実家に電話をかけて来たのは、智樹が丁度二十歳の誕生日を迎えた頃だったそうで……
『やっとやりたいことが見つかった。だから心配すんな』
時間にしたら一分にも満たなかったそうだが、それまで聞いたことのないような、とても明るい声で言ったそうだ。
「そうですか、アイツそんなことを……」
智樹のやりたいことってのは、おそらくダンスのことなんだろうな。
当時のアイツは、ダンスのことに話が及ぶと、いつだって生き生きと目を輝かせていた。
「他には? 他には何か言ってませんでしたか?」
何でもいい、ほんの些細なことでかまわない。
アイツの……智樹のことが聞きたい。
でも、俺の願いも虚しく、二人は顔を見合わせると、そっと瞼を伏せ、小さく首を横に振った。
「そうですか……」
元々口下手な奴だから、それも仕方ないか……
「あの、もし迷惑でなければ、智樹の部屋を見せては頂けませんか? それから出来ればアルバムなとかあれば、それも……」
あの写真に、智樹と一緒に写っていた男、あの男がもし智樹の昔からの知人だとしたら、手掛かりになるような物が残されているかもしれない。
「ええ、構いませんが。その、なんでまた? まさか智樹がどうかしたんじゃ……」
途端に曇った二人の顔に、俺は一瞬の迷いを感じた。
出来ることなら、「心配するな」その一言を信じているこの人達を悲しませるようなことはしたくない。でも事実を隠した所で何の解決にもならないし、後で知らされる方がよっぽど悲しませることになる。
俺は出されたお茶を飲み干すと、グラスをテーブルに置き、膝の上で両手を組んだ。
「その智樹なんですが、突然姿を消してしまったんです」
「それは一体どういう……」
「理由は分かりません。二か月程前に家を出てったきり、行方が分からなくなってしまって……」
実際には、分からないんじゃなくて、ある程度の見当はついている。ただ、ハッキリとした確証が得られない以上、そう言うしかなかった。
「そんな、あの子また……」
信じられないとばかりに顔を覆ったお袋さんの肩を、親父さんの油の染み込んだ手が抱いた。
二度も息子が姿を消したんだ、ショックを受けるのも当然か……
「すみません、俺の責任です」
俺は支配人としての管理不足を詫びた。
『やっとやりたいことが見つかった。だから心配すんな』
時間にしたら一分にも満たなかったそうだが、それまで聞いたことのないような、とても明るい声で言ったそうだ。
「そうですか、アイツそんなことを……」
智樹のやりたいことってのは、おそらくダンスのことなんだろうな。
当時のアイツは、ダンスのことに話が及ぶと、いつだって生き生きと目を輝かせていた。
「他には? 他には何か言ってませんでしたか?」
何でもいい、ほんの些細なことでかまわない。
アイツの……智樹のことが聞きたい。
でも、俺の願いも虚しく、二人は顔を見合わせると、そっと瞼を伏せ、小さく首を横に振った。
「そうですか……」
元々口下手な奴だから、それも仕方ないか……
「あの、もし迷惑でなければ、智樹の部屋を見せては頂けませんか? それから出来ればアルバムなとかあれば、それも……」
あの写真に、智樹と一緒に写っていた男、あの男がもし智樹の昔からの知人だとしたら、手掛かりになるような物が残されているかもしれない。
「ええ、構いませんが。その、なんでまた? まさか智樹がどうかしたんじゃ……」
途端に曇った二人の顔に、俺は一瞬の迷いを感じた。
出来ることなら、「心配するな」その一言を信じているこの人達を悲しませるようなことはしたくない。でも事実を隠した所で何の解決にもならないし、後で知らされる方がよっぽど悲しませることになる。
俺は出されたお茶を飲み干すと、グラスをテーブルに置き、膝の上で両手を組んだ。
「その智樹なんですが、突然姿を消してしまったんです」
「それは一体どういう……」
「理由は分かりません。二か月程前に家を出てったきり、行方が分からなくなってしまって……」
実際には、分からないんじゃなくて、ある程度の見当はついている。ただ、ハッキリとした確証が得られない以上、そう言うしかなかった。
「そんな、あの子また……」
信じられないとばかりに顔を覆ったお袋さんの肩を、親父さんの油の染み込んだ手が抱いた。
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