119 / 369
第11章 First contact
7
しおりを挟む
「じゃあ……、俺帰るわ……」
潤一が勢いよく腰を上げ、ズボンに着いた砂を手で払う。
「悪かったな、今まで練習の邪魔して……」
ベンチで背中を丸めたまま、動けなくなってしまった俺を振り返ることなく、感情を押し殺したような口調で言って、乱暴にスタンドを蹴り上げてから自転車に跨った。
違う……、そうじゃない……。
引き止めて、ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃ……!
思えば思う程、喉の奥に何かが引っかかったように声も出せないし、身体を動かすことすら出来ない。
「じゃあ……な」
潤一の足がペダルを漕ぎ出す。
駄目だ……、このままじゃ駄目だ……
「待てって……、俺の話も聞いてくれって……」
今にも走り出そうとハンドルを握った手を、咄嗟に掴んだ。
「違うんだ、誤解なんだって……」
「何が違うの? 誤解って何? 邪魔なら邪魔って言ってくれれば良かったじゃん。大体最初っから分かってたんだ、俺と智樹とじゃレベルが違うって……。でもいつかは俺もって、ちょっとは期待もしてた。でもさ……、やっぱ無理だわ……」
そんな……、潤一がそんな風に思っていたなんて…‥
潤一の手を掴んだ手からどんどん力が抜けて行き、俺の手はついには糸が切れたみたいにダラリと垂れ下がった。
そして言い訳をする気力すら失くした唇からは、「ごめん……」と、声とも吐息とも取れないような……、掠れた一言だけが零れた。
「謝んなって……。つか、謝るってことは、話受けるってことだよな?」
「あっ……」
「俺、さ……、これ以上惨めになりたくないんだよね……。だから行くね?」
潤一の手が伸びてきて、俺の頭をポンと叩く。その指先が震えてるのが、触れた部分からも伝わってくる。
駄目だ……、やっぱりこのまま誤解されたままなんて嫌だ。
潤一との関係をこんなことで終わらせたくはない。
なのに俺は、暗闇に紛れるように遠ざかって行く潤一の後ろ姿を、突然降り出した雨に打たれながら見送ることしか出来なかった。
潤一が勢いよく腰を上げ、ズボンに着いた砂を手で払う。
「悪かったな、今まで練習の邪魔して……」
ベンチで背中を丸めたまま、動けなくなってしまった俺を振り返ることなく、感情を押し殺したような口調で言って、乱暴にスタンドを蹴り上げてから自転車に跨った。
違う……、そうじゃない……。
引き止めて、ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃ……!
思えば思う程、喉の奥に何かが引っかかったように声も出せないし、身体を動かすことすら出来ない。
「じゃあ……な」
潤一の足がペダルを漕ぎ出す。
駄目だ……、このままじゃ駄目だ……
「待てって……、俺の話も聞いてくれって……」
今にも走り出そうとハンドルを握った手を、咄嗟に掴んだ。
「違うんだ、誤解なんだって……」
「何が違うの? 誤解って何? 邪魔なら邪魔って言ってくれれば良かったじゃん。大体最初っから分かってたんだ、俺と智樹とじゃレベルが違うって……。でもいつかは俺もって、ちょっとは期待もしてた。でもさ……、やっぱ無理だわ……」
そんな……、潤一がそんな風に思っていたなんて…‥
潤一の手を掴んだ手からどんどん力が抜けて行き、俺の手はついには糸が切れたみたいにダラリと垂れ下がった。
そして言い訳をする気力すら失くした唇からは、「ごめん……」と、声とも吐息とも取れないような……、掠れた一言だけが零れた。
「謝んなって……。つか、謝るってことは、話受けるってことだよな?」
「あっ……」
「俺、さ……、これ以上惨めになりたくないんだよね……。だから行くね?」
潤一の手が伸びてきて、俺の頭をポンと叩く。その指先が震えてるのが、触れた部分からも伝わってくる。
駄目だ……、やっぱりこのまま誤解されたままなんて嫌だ。
潤一との関係をこんなことで終わらせたくはない。
なのに俺は、暗闇に紛れるように遠ざかって行く潤一の後ろ姿を、突然降り出した雨に打たれながら見送ることしか出来なかった。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる