S/T/R/I/P/P/E/R ー踊り子ー

第７章 Fate

４

　翌朝、俺は智樹が目を覚ます前に、ある人に電話をかけた。

　その人は、俺が翔真さんの劇場でストリッパーになるよりも以前に世話になった人で、ゲイバーを経営していて、ヤツらの元から逃げた俺を、理由も聞かずにショーダンサーとして雇ってくれた、俺にとっては恩人とも言える人だ。

　勿論、後々ちゃんと理由は話したけどね。

　だから今度も、

　「ごめん、また茂美さんの世話になってもいいかな？」

　図らずも……ではあったけど、結局は頼ってしまうことになった俺に、とくに理由を問うことなく、快く受け入れてくれた。

　俺は電話を切ってすぐ、そう多くはない私物をボストンバッグとキャリーケースに纏め、玄関の外へと運び出した。そうすれば、もし俺が部屋を出る前に智樹が目を覚ましたとしても、適当な言い訳だけで済む。


　出来れば誰にも気付かれずに出て行きたいけど……


　俺は茂美さんが迎えに来るまでの間、智樹と、それから翔真さんに宛てた手紙を書いた。
　別にメールでも良かったんだけど、散々世話になった二人には、自分の言葉でちゃんとお礼を言いたかったから……

　そして手紙を書き終えた時、茂美さんの到着を知らせるメールにスマホが震えた。

　俺は二人に宛てた手紙と部屋の鍵をテーブルの上に置くと、ベッドで寝息を立てる智樹の髪を指で掬った。

　「ごめんね、智樹……」

　俺の借金の肩代わりをしてもいいと言ってくれた智樹の気持ちは、今まで感じたことがないくらいに嬉しかった。
　友達だ、って言ってくれたことも。


　でもね、智樹……だからこそ、智樹には……智樹だけには、迷惑かけたくなかったんだ。
　だってもし俺が智樹の申し出を受けてしまったら、俺達もう友達じゃいられなくなっちゃうもん。

　だからごめんね、智樹。

　バイバイ、俺の一番大切な友達……