43 / 369
第5章 Time
6
しおりを挟む
一緒に暮らし始めた当初の智樹は、兎に角何をするにも投げ槍で、息をするのでさえ面倒だと言わんばかりだった。
まるで生きることを自ら拒絶しているような……、そんな風にも見えた。
尤も、それは全くの間違いではなくて、時折ベランダに出ては柵から身を乗り出し、遥か遠い地上を虚ろな目で見下ろしていたことだってあった。
そんな時、智樹は必ずと言って良い程、「潤一に会いたい……、潤一の所に行きたい……」、そう譫言のように繰り返した。
その度に俺は、泣き崩れる身体を抱き締め、涙が枯れるまで背中を摩りながら、高所恐怖症の自分が、ただ見栄のためだけに高層階に部屋を借りたことを後悔した。
「連れてってやるから……、いつか、俺が……」
出来もしない約束を口にしながら……
そんなことが半年は続いただろうか。
半年経っても智の自殺願望は失せることはなく、行動にこそ起こすことは少なくなったが、隙あらば……と言った感じだった。
そんな日々の中、ある時俺はたまたまショーで使う曲をPCで聴いていた。
するとそれまで洗濯物を干していた智樹の足が、最初は静かに……、でもその内に小刻みなステップを踏み始めた。
その時俺は直感した。
もしかして智樹、ダンスの経験があんじゃねぇか……、ってね。
ただの勘じゃない、劇場支配人として何人ものダンサーを見て来た俺がそう思ったんだから、間違いはない筈。
それから俺は、事あるごとに音楽をかけた。
智樹の好みが分かないから、それこそ演歌からクラシック、ジャズもロックもポップスも……、ありとあらゆるジャンルの音楽をかけ続けた。
最初こそ俺の行動を訝しんでいた智樹だったが、元来生まれ持った性質なのかなんなのか……、溢れるリズムに合わせて身体を揺らし、その足は華麗なステップを踏み始めた。
まるで生きることを自ら拒絶しているような……、そんな風にも見えた。
尤も、それは全くの間違いではなくて、時折ベランダに出ては柵から身を乗り出し、遥か遠い地上を虚ろな目で見下ろしていたことだってあった。
そんな時、智樹は必ずと言って良い程、「潤一に会いたい……、潤一の所に行きたい……」、そう譫言のように繰り返した。
その度に俺は、泣き崩れる身体を抱き締め、涙が枯れるまで背中を摩りながら、高所恐怖症の自分が、ただ見栄のためだけに高層階に部屋を借りたことを後悔した。
「連れてってやるから……、いつか、俺が……」
出来もしない約束を口にしながら……
そんなことが半年は続いただろうか。
半年経っても智の自殺願望は失せることはなく、行動にこそ起こすことは少なくなったが、隙あらば……と言った感じだった。
そんな日々の中、ある時俺はたまたまショーで使う曲をPCで聴いていた。
するとそれまで洗濯物を干していた智樹の足が、最初は静かに……、でもその内に小刻みなステップを踏み始めた。
その時俺は直感した。
もしかして智樹、ダンスの経験があんじゃねぇか……、ってね。
ただの勘じゃない、劇場支配人として何人ものダンサーを見て来た俺がそう思ったんだから、間違いはない筈。
それから俺は、事あるごとに音楽をかけた。
智樹の好みが分かないから、それこそ演歌からクラシック、ジャズもロックもポップスも……、ありとあらゆるジャンルの音楽をかけ続けた。
最初こそ俺の行動を訝しんでいた智樹だったが、元来生まれ持った性質なのかなんなのか……、溢れるリズムに合わせて身体を揺らし、その足は華麗なステップを踏み始めた。
0
お気に入りに追加
34
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
男の子たちの変態的な日常
M
BL
主人公の男の子が変態的な目に遭ったり、凌辱されたり、攻められたりするお話です。とにかくHな話が読みたい方向け。
※この作品はムーンライトノベルズにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる