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第二章 第三節
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「戦闘は中止だ。撤退しよう」
「この場所が先生達の行動範囲に入ってない保証はない」
森の中に響き渡っていた戦闘の音がピタリと止み、静寂の時が流れる。だが、その静寂を払うように動き始めたチームもあった。
「逃げるぞ」
「無理言うな。こいつらから逃げるんて不可能だ」
「クソ。こんな序盤にこのチームに会うなんて運がないにも程があるだろ」
四人チームは一瞬にして全員の魔法具が発動する。
「悪いな。お前らの分も俺らが頑張るから許してくれ」
「これで五チーム目だね」
「うん。先生達によって足を止めているチームはもっといると思う。今のうちに周囲のチームを減らしていこう」
マオ達は次のチームを狙うべく移動を開始する。だが、少し移動したところで三人は足を止めることになった。
「テン」
マオ達の上空から現れた人物は三人の中心にいたメルに向かって十六連撃を放つ。
「シール・・・」
咄嗟の出来事にメルのシールドは間に合わない。だが、マオが一瞬で二人の間に割って入り、全ての攻撃を防ぐことに成功した。
「そう簡単にメルはやらせないよ。ルイス」
「さすがマオ君」
「おらあああ」
隙を逃さないようにアーバが追撃を繰り出す。剣で防いだがルイスは遠くまで吹き飛ばされる。
「プラント」
ルイスの着地した木の枝が意思を持ったように足に絡みつく。
「本当に選択する魔法が厄介すぎるよ」
プラントは初級の魔法だ。発動が早い代わりに耐久力は殆どない。だが、一瞬でも相手の行動を封じられる。そのアドバンテージがどれだけ大きなものかをメルは知っていた。腕のいい者同士の戦いならば、それだけその隙は致命傷となる。
「七番 シエン」
ルイスを中心に魔法のように綺麗なシールドが出現する。それはルイスの超高速の連撃によって生み出されたものっだ。木の枝を一瞬で切り離し、接近していたマオ達の追撃を止めさせる。防衛を目的にルイスが新たに生み出した技だ。
「すごい」
マオから感嘆が漏れる。それがマオからなのか。マオの奥に残る先祖の言葉だったのか。それは誰にもわからない。
「足を離して技は使えないだろ」
「多分そうだと思う。移動できないなら絶対に技を解く時が来るからその時を狙おう」
「うん。分かった」
三人はルイスを囲うように立ち位置を変える。技を解くのを今か今かと集中する三人を巨大な氷が襲う。
「「シールド」」
マオとメルはシールドを使い、アーバは即座に反応して回避していた。
「さすが御三方やな」
三人の視線の先には、学年一のお調子者として有名なシーミラが立っていた。
「まさかルイスが誰かと手を組むなんてな」
「それはそれだけこの戦いにかけるものが大きいてことやろ。俺と組んでるんやから、ルイスはそう簡単にやらせへんで」
「アイシクルソード」
三人の頭上に氷の剣が出現する。難なく回避した三人の頭上には、さらに複数の氷の剣が現れ降り注いでいく。
「この魔法ってこんなに時間が長いのか?」
「そんなことないよ。多分、一度の詠唱を何重にも重ねてるんだ思う。それにしても長すぎるけどね」
氷剣による連撃に耐えられず三人はルイスから距離を離される。その隙を逃さずルイスは技を解除してシーミラと合流した。
「ブリザーガ」
シーミラを中心として吹雪が発生する。
「逃がすかよ」
「待って」
二人を追おうとするアーバをメルが制止する。
「やめたほうがいいよ。この魔法は視界だけじゃない。気配や魔力の感知まで妨害するように作られてる。無理に追ったら返り討ちにあう可能性が高いと思う」
「僕もメルに賛成だな。学年でも五本の指に入る剣と魔法の使い手が組んでいるんだ。二人は先生にも匹敵するかもしれない。その二人を深追いするのは少しリスクが大きすぎるかな」
「そうか」
「ごめん。アーバの活躍はまた後に取っておいて」
「大丈夫だ。今までは無駄に考えすぎてたからな。俺はマオの指示に従う」
「よし、作戦を続行しよう」
マオ達はルイス達と反対方向に進み、足を止めたチームを再び狙っていく。
「勘弁してくれーな。あんな勝手に突っ込まれたら援護のしようがあらへん」
「ごめん。つい先走っちゃった」
「俺とルイスが組んどるとは言っても、相手によっては突っ込むだけでは勝てへんで。これからはしっかり作戦を考えて行動しやんと。回復薬も無限やないんやから」
「そうだね。次から気をつけるよ」
「何に気をつけるんですかー?」
二人は背後に現れた女性の声に聞き覚えがあった。
「マジかよ。勘弁してくれーな」
一気に距離を取って二人は戦闘態勢に入る。
「常に気を張り巡らせて油断をしないこと。私はそう教えたはずですよー?」
「はは。先生優しーんやな。さっき攻撃してたらどっちかでもやれたかもしれんのに」
先生と呼ばれた女性はルイス・シーミラの担任ニーナだった。小柄でとても可愛らしい女性。だが、その背中には体に見合わないほどの長刀が携行されている。
「そうでもないと思いますよ?。私はそこまで二人を過小評価していません。それよりも、全力の二人と戦って見たかったと言うのが本音ですかね~」
「そうですか。なら、全力で行きます」
「あら? これは戦う流れなんかいな。まあ、本気の先生相手に逃げれるわけもないか」
「行きますよ。二人とも」
学年でも屈指の実力を持つ二人と、その二人を育てた担任。現状で最も苛烈になるであろう戦いの火蓋が切って落とされた。
「この場所が先生達の行動範囲に入ってない保証はない」
森の中に響き渡っていた戦闘の音がピタリと止み、静寂の時が流れる。だが、その静寂を払うように動き始めたチームもあった。
「逃げるぞ」
「無理言うな。こいつらから逃げるんて不可能だ」
「クソ。こんな序盤にこのチームに会うなんて運がないにも程があるだろ」
四人チームは一瞬にして全員の魔法具が発動する。
「悪いな。お前らの分も俺らが頑張るから許してくれ」
「これで五チーム目だね」
「うん。先生達によって足を止めているチームはもっといると思う。今のうちに周囲のチームを減らしていこう」
マオ達は次のチームを狙うべく移動を開始する。だが、少し移動したところで三人は足を止めることになった。
「テン」
マオ達の上空から現れた人物は三人の中心にいたメルに向かって十六連撃を放つ。
「シール・・・」
咄嗟の出来事にメルのシールドは間に合わない。だが、マオが一瞬で二人の間に割って入り、全ての攻撃を防ぐことに成功した。
「そう簡単にメルはやらせないよ。ルイス」
「さすがマオ君」
「おらあああ」
隙を逃さないようにアーバが追撃を繰り出す。剣で防いだがルイスは遠くまで吹き飛ばされる。
「プラント」
ルイスの着地した木の枝が意思を持ったように足に絡みつく。
「本当に選択する魔法が厄介すぎるよ」
プラントは初級の魔法だ。発動が早い代わりに耐久力は殆どない。だが、一瞬でも相手の行動を封じられる。そのアドバンテージがどれだけ大きなものかをメルは知っていた。腕のいい者同士の戦いならば、それだけその隙は致命傷となる。
「七番 シエン」
ルイスを中心に魔法のように綺麗なシールドが出現する。それはルイスの超高速の連撃によって生み出されたものっだ。木の枝を一瞬で切り離し、接近していたマオ達の追撃を止めさせる。防衛を目的にルイスが新たに生み出した技だ。
「すごい」
マオから感嘆が漏れる。それがマオからなのか。マオの奥に残る先祖の言葉だったのか。それは誰にもわからない。
「足を離して技は使えないだろ」
「多分そうだと思う。移動できないなら絶対に技を解く時が来るからその時を狙おう」
「うん。分かった」
三人はルイスを囲うように立ち位置を変える。技を解くのを今か今かと集中する三人を巨大な氷が襲う。
「「シールド」」
マオとメルはシールドを使い、アーバは即座に反応して回避していた。
「さすが御三方やな」
三人の視線の先には、学年一のお調子者として有名なシーミラが立っていた。
「まさかルイスが誰かと手を組むなんてな」
「それはそれだけこの戦いにかけるものが大きいてことやろ。俺と組んでるんやから、ルイスはそう簡単にやらせへんで」
「アイシクルソード」
三人の頭上に氷の剣が出現する。難なく回避した三人の頭上には、さらに複数の氷の剣が現れ降り注いでいく。
「この魔法ってこんなに時間が長いのか?」
「そんなことないよ。多分、一度の詠唱を何重にも重ねてるんだ思う。それにしても長すぎるけどね」
氷剣による連撃に耐えられず三人はルイスから距離を離される。その隙を逃さずルイスは技を解除してシーミラと合流した。
「ブリザーガ」
シーミラを中心として吹雪が発生する。
「逃がすかよ」
「待って」
二人を追おうとするアーバをメルが制止する。
「やめたほうがいいよ。この魔法は視界だけじゃない。気配や魔力の感知まで妨害するように作られてる。無理に追ったら返り討ちにあう可能性が高いと思う」
「僕もメルに賛成だな。学年でも五本の指に入る剣と魔法の使い手が組んでいるんだ。二人は先生にも匹敵するかもしれない。その二人を深追いするのは少しリスクが大きすぎるかな」
「そうか」
「ごめん。アーバの活躍はまた後に取っておいて」
「大丈夫だ。今までは無駄に考えすぎてたからな。俺はマオの指示に従う」
「よし、作戦を続行しよう」
マオ達はルイス達と反対方向に進み、足を止めたチームを再び狙っていく。
「勘弁してくれーな。あんな勝手に突っ込まれたら援護のしようがあらへん」
「ごめん。つい先走っちゃった」
「俺とルイスが組んどるとは言っても、相手によっては突っ込むだけでは勝てへんで。これからはしっかり作戦を考えて行動しやんと。回復薬も無限やないんやから」
「そうだね。次から気をつけるよ」
「何に気をつけるんですかー?」
二人は背後に現れた女性の声に聞き覚えがあった。
「マジかよ。勘弁してくれーな」
一気に距離を取って二人は戦闘態勢に入る。
「常に気を張り巡らせて油断をしないこと。私はそう教えたはずですよー?」
「はは。先生優しーんやな。さっき攻撃してたらどっちかでもやれたかもしれんのに」
先生と呼ばれた女性はルイス・シーミラの担任ニーナだった。小柄でとても可愛らしい女性。だが、その背中には体に見合わないほどの長刀が携行されている。
「そうでもないと思いますよ?。私はそこまで二人を過小評価していません。それよりも、全力の二人と戦って見たかったと言うのが本音ですかね~」
「そうですか。なら、全力で行きます」
「あら? これは戦う流れなんかいな。まあ、本気の先生相手に逃げれるわけもないか」
「行きますよ。二人とも」
学年でも屈指の実力を持つ二人と、その二人を育てた担任。現状で最も苛烈になるであろう戦いの火蓋が切って落とされた。
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