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序章:平穏の終わり

6/3(火):未知のウイルス

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 アイテムシンセシスブースに向かって解毒、浄化、初級ヒールでできるアイテムが何かを確認する。

 このボトルたちでできるボトルって治療関係しかないだろ。それがヒールとは違う何かであれば今の輝夜を回復させることができるかもしれない。

『状態異常回復
 初級ヒール×解毒×浄化』

 良かった、あった。ヴェノムビーから落とさなければ解毒と浄化を使っているからできないところだった。

『状態異常回復
 分類:魔法
 ランク:7
 消費MP:24』

 魔法って詳細を書いてくれないからこれが効くかどうかは分からないけど一応十個作って一つ覚えておくか。

 ホントに何でもできる人になりつつあるけどオールラウンダーって憧れるんだよな。だからこのままオールラウンダーで行こう。

 この状態異常回復、輝夜に効いたら危なかった。ヴェノムビーから落とさなかったら無駄に解毒と浄化を習得したことになったんだから。

 状態異常回復は莫大なレベルアップ報酬でもなかった。まだ状態異常無効とかならあるけど回復はない。全部報酬として出てくる勢いだったがそんなことはなかった。

 輝夜の家に帰り輝夜の様子を見る。

「輝夜?」

 俺が部屋を出た時と同じ状態だったが明らかに輝夜の様子がおかしかった。

 明らかに苦しそうで呼吸を荒くして顔を真っ赤にしていた。額を触ればかなり熱い。

 これで状態異常回復が効かなければ回復手段を探さないといけない。超級ヒールも手に入ったがヒールは病は治せそうにないからな。

 輝夜に状態異常回復をかけてみる。すると輝夜の顔色はみるみる良くなったことで顔色良く寝ている。

「ふぅ……良かった」

 タイミングが絶秒だったな。ヴェノムビーが解毒とかを落としてよかった。

 今はもう遅いだろうがヴェノムビーが落とした解析を習得して輝夜の状態を見る。

『解析
 分類:アビリティ
 ランク:6
 対象の情報を解析できる』

 解析で見た輝夜の状態はこう出てきた。

『月見里輝夜:487型完治前』
「……数字?」

 何だこの数字は。症状に数字が付いているのか? 俺は別に数字を付けた覚えはないから付けられていたんだよな。

 この症状の詳細を見たいところだがそれは解析の範囲外だ。

 しかしこの型は地球で存在しているものなのだろうか。輝夜から聞いたことがあるけどダンジョン産の病がある可能性があると言われているらしい。

 今はまだ確認されていないから分からないが病があってもおかしくはないらしい。それが輝夜がかかっている病かもしれない。

 まあ普通にひどい熱かもしれないし病院に行っていないから分からない。

 今日は輝夜のことを心配だからこれで終わりにすることにした。目標レベルはもう到達しているからというのもあるがさすがに心配だ。

 輝夜の汗を拭いて輝夜が起きた時大丈夫なように準備していると俺のスマホが鳴った。

 俺に連絡してくるのは家族か輝夜か輝夜の家族くらいしかいない。後は愛理と東雲さんだな。

 だけど知らない電話番号が画面に映っていた。出てみることにした。

「はい」
『新月学人団長のお電話でありますか?』
「朝日奈さん?」
『左様であります』

 昨日聞いたばかりの声だからしっかりと分かった。

「どうしましたか?」
『一点お聞きしたいことがあってお電話しました。団長殿と副団長殿は体調にお変わりありませんか?』
「俺は平気です。でも輝夜がさっきまで体調を悪くしていましたね」
『もしや高熱が出ていましたか?』
「はい。それがどうしましたか?」
『実はお嬢さまと隊長に同じような症状が出ております。お二人の体内を調べたところ発見されたウイルスは未知のウイルスでありました。昨日お二人と共に行動した団長と副団長もそうなっていると思い連絡した次第であります』

 まさかの本当にダンジョン産のウイルスだった。未知が来たということはそれだけ様々な物が地球に与えられるということか。魔石や素材などのいいものも然り、ウイルスなどの悪いものも然り。

『ちょっと待ってください。輝夜殿は治ったでありますか?』
「はい。今さっき魔法で治しました。そちらに伺いましょうか?」
『お願いするであります!』

 聞いたのだからさすがに愛理と東雲さんを放置することはできない。

 朝日奈さんとの通話を切って、ふと四人のうち三人かかっていて俺は大丈夫なのかと自分自身を解析することにした。

『新月学人:487型排除前』
「排除って」

 どうやら三人よりも体が強くてこのウイルスは俺に一切勝てなかったみたいだ。これもHPに関係しているのかな? まあ状態異常回復を念のためにかけておこう。

「輝夜、少し出てくるからな」

 顔色を良くして寝ている輝夜にそう声をかけ転移を何度か使って最初のゲートをスルーして東江家の前にたどり着いた。

 だが俺はあまり東江家の中でも知られていない感じだから正面から入るのはあまり良くないだろう。それに俺には転移がある。

 コッソリ行ってコッソリ帰るか。

 転移で移動しつつ感知で二人がどこにいるのか探れば同じ部屋にいるようだった。今その部屋には愛理と東雲さんしかいないようだからそこに転移した。

 どうやら未知のウイルスみたいだから隔離されているみたいだ。ダンジョンから大軍が出てくる時、一緒にウイルスとかも持ち込まれるんじゃないのか? 相手が意図せずしてきてもヤバイな。

 かなりちゃんとした設備がある部屋で愛理と東雲さんが苦しそうにしている。

 まず俺や輝夜と同じなのか解析することにした。

『東江愛理:487型感染』
『東雲早紀:487型感染』

 やっぱり同じだった。これが死に至らしめるウイルスなのかは知らないが状態異常回復を二人にかけて回復させる。

 顔色をよくしている二人を見てひと安心しつつ上級ヒールを使って体力を回復させて浄化を使って部屋にいるかもしれないウイルスを排除する。

 この魔法を俺以外にも習得してもらっていた方がいいよな。そうじゃないとこういう時に俺が出張らないと大変なことになる。それから浄化もか。

 それを言い出せばヒールもいるのか。解毒は必要なさそうだ。状態異常回復で済むもんな。でも浄化やヒールのような効果は持っていないからその役割の人を作るには浄化と初級ヒールは倍いるのか。

 少し考えつつも東江家から転移で出て人気がないところで朝日奈さんに電話する。

『はい、朝日奈であります』
「新月です。二人はもう治しました」
『……はい? ど、どういうことでありますか?』
「言葉通りですよ。もう東江家を出たところです。確認してください」
『ただちに! 確認次第電話を折り返すであります』
「はい」

 朝日奈さんが確認している間に転移で輝夜の家に戻った。輝夜の部屋に入って輝夜の顔を見ればスヤスヤと眠っていた。

 強いサブステータスや面白そうなサブステータスを主に百の倍数報酬で選んでいたけどダンジョンという未知の場所が百種類以上存在しているから治す魔法も必要だな。

 一つのダンジョンが一つの世界であるからウイルスは星の数ほど存在しているのだろうな。それで人類全滅は笑えない。

 まあそれはこちらに来る異世界人にも言えることだろうな。

 朝日奈さんからの連絡を待つ間、ステータスで気になったものがあるからステータスで超越者を開く。

『超越者
 分類:スキル
 ランク:不明
 凡夫ではなく超越者として壁を超えたもの』

 俺のレベルが1000になる前にこの超越者のスキルが表示されて文字が変わったのは見えた。でも戦闘に集中していたから見ることはなかったけど。

 もしかしてLv999が常人の限界レベルでそれを超えるためにはこの超越者のスキルが必要なのではないか? それならこのスキルを何となくで手に入れておいて良かった。

 限界がなくなったからもう俺のレベル上限はなくなったのかな? それとも次は神みたいな名前のスキルがあるのかもしれない。

 それにしても二千六百までレベルを上げたから五の倍数報酬も何でもあるんじゃないかってくらいに手に入っている。それも百の倍数で選択する能力がほぼ出ている。

 一部は超越者みたいに出ない能力なのだろうな。超越者が出てから一切超越者は出てきていない。

 百の倍数報酬をどうしようかと考えていると朝日奈さんから電話が来た。

「はい、新月です」
『朝日奈であります。確認できたであります』
「どうでしたか?」
『お二人のお体に存在していたウイルスは取り除かれていました。さらには健康体そのものだと確認できたであります!』
「それなら良かったです」
『団長殿がなさったのでありますか?』
「そうですよ。そこら辺はまだ企業秘密にしておいてください。同じ症状の人が現れたら治療は引き受けますけど」
『ありがとうございます! 自分は心強いであります! では失礼します!』
「はい、また」

 朝日奈さんとの通話を切り、そう言えば昨日伝えた例の日はどうなったのだろうかと気になったが、今はいいか。
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