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序章:平穏の終わり

6/2(月):迫る時間の正体

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 ダンジョン都市にある中央の建物に入る。Lv100なんてもう遠い昔のようだ。

 ここでは操作はできないが外の光景を見ることができる。それと唯一触れることができるのはステータスを持っている人の情報を見ることができるところだ。

 レベル高い順にリストを並び替えると当たり前だが俺が一番上だ。その次はアシュリー・ファーマーという女性でレベルは前のままで82だ。

 その下はLv71でそこから大体50台の人がかなりいる。かなりと言っても世界人口で考えれば一握りであはる。

 日本はそんなにレベルが高い人はいないからな。あまり才能がある人がいないのかそれとも国や国民の人間性が出ているのか。

 まあこの俺が世界で一番のLv546だから日本は一番強い人間を有していることにはなる。日本人としての誇りはないんだけどね。

 そんなことよりも今は今まで行けなかったエレベーターらしき場所の前に立つと扉が開いた。

 一歩入ると転移した感覚があり、背後を見ればさっきの場所ではなくなっていた。このエレベーターは転移装置になっていたのか。転移ができるから今さら驚かないけどこういう技術はもらえないのだろうか。

 転移エレベーターを出て転移した先を見れば、さっきいたところとあまり変わりないモニターがたくさんある場所だった。

 変わらない場所であろうがこういう場所に入ると空気だけでワクワクが止まらないものだ。でも何ができるのかは調べないといけない。

「……世界地図だ」

 一番大きなモニターには世界地図が映し出されている。その世界地図の各地に何かのマークが入っているのが見える。

「……あれ、これって……ダンジョンがある場所か……?」

 世界にもダンジョンがあるのは知っているがそれがどこにあるのかは分からない。でも日本なら何県にダンジョンがあることは分かる。

 日本を見れば北海道、東京、広島の三つにマークが入っているのが分かる。その場所はダンジョンがある場所だからほぼ間違いなくダンジョンがある場所にマークが入っている。

 そのマークは意味がよく分からないが、それでも東京ダンジョンのマークと一緒に書かれている文字は見えた。その文字はこの世界のものではないが全言語のおかげが読み解くことができた。

「天魔球?」

 何だか野球の魔球の亜種かと思ってしまう名前だ。この東京ダンジョンの本来の名前がこの天魔球ということなのか?

「ふーむ……」

 でもどう考えてもダンジョンは球体ではない。どちらかと言えば塔と言うのが適切な気がする……あれ。

「一緒だ」

 世界地図の左上のモニターに時間が表示されておりその時間がシステム解放時から表示されている時間と一緒だった。

 これだけでは何とも言えないからどこか操作できない場所がないかと探してみる。

「……ふぅん、また操作権限がないと出るな」

 色々なところを操作しようとしても全く操作できないのはさっきの場所に初めて入った時と同じだ。

「残りはここか」

 一番操作できそうにない世界地図が映っているモニターを操作しようとした。

「ッ!? できる!?」

 まさかこれだけができてしまった。操作できても何ができるか分からないから適当に触ってみる。

「第一次侵攻?」

 天魔球こと東京ダンジョンにアクセスすれば第一次侵攻の文字と共に色々な情報が出てきた。この文字も日本語などではないから全言語があって良かった。

『第一次侵攻(天魔球封印迷宮)
 敵国:魔極帝国
 戦力:1000万人
 敵情報:残忍
 推奨Lv:100以上
 補足:魔法を主に使うため白兵戦は不得意』
「くはっ……時間が来たらこいつらが攻めてくるのか」

 一千万人の敵兵が東京ダンジョンから出てきたらまず間違いなく東京は落ちる。それに北海道と広島も敵も国も違えど大量に攻めてくる。

 そんな世紀末を想像したら笑いがこぼれてしまうが笑っている場合ではない。

 時間が一つしかないということは同時に来るのか。世界が混沌になるまで時間はなさそうだ。

「普通に悠長にしている場合ではないのか……」

 これが本当なら、ということを考えるだけ無駄だろう。このダンジョン都市がそんな嘘を示して何の得があるのかという話だ。

 俺はこのダンジョン都市でレベルが上がってサブステータスも獲得した。それはこれのためなのではないか? 何かしらの制約があって直接は言えないけどこうした情報は提供できるのかもしれない。

 こういう状況は面白そうだが異世界から来ているやつらがこの世界をどうにかしようとするのは面白くない。

 俺は自由が好きだ。それに面白いことも好きだ。でもそれを犯すものは何者であろうと許す気はない。

「ということは……増やさないといけないってことだよなぁ……」

 俺と輝夜以外にもサブステータスが充実してレベルが100以上の冒険者を追加しないといけないわけだ。

 幸い俺には上書きがある。つまらないやつがいたとしても貸力で回収すればいい。

「くはっ……!」

 世界の危機がかかっているが俺はこの状況が楽しくて仕方がない。

 ダンジョンが出てきた時と比べるのはあれかもしれないがその時は満面の笑みだったと輝夜に言われた。

 世界をどうこうされるのは気に食わないがその状況はワクワクする。

 戦いが好きなわけではないが勝つのは好きだ。その侵攻が経験したことのない体験だから楽しいのだろう。

 だが楽しむだけでは許されない。勝ってスッキリして終わらせる。それが気持ちのいい楽しみ方だ。

 そうと決まれば今日はダンジョン都市から出ることにした。

 俺が最高に強くなるのもいいがレベルだけはどうにもならない。EXP超ブーストを他の人に貸力で渡した方が時間は無駄ではない。

「ただいま」
「おかえりなさい。今日はもう終わりかしら?」
「あぁ、今日は終わりだ」

 輝夜は俺の言葉に虚を突かれた様子だった。

「……冗談で言ったのだけれど。私のことを気にしなくていいのよ?」
「いや言われなくても今日は終わりのつもりだった。とりあえずお昼だから作る」
「えぇ、お願い」

 俺がお昼を作り始めると輝夜はいつものように邪魔にならない程度に俺の近くに立っていた。

「今日で五百レベになったのね。おめでとう」

 俺のステータスを見てそう言ってくれる輝夜。

「ありがとう。でもまだまだだ」
「そんなスピードでレベルアップしていたら追いつけそうにないわね」
「それは分からないぞ」
「何か分かったの?」
「確証はないんだが、たぶんスキルとスキルは効果が重複するんじゃないか?」
「……あぁ、そういうこと。EXP超ブーストが重複するということね」
「たぶんな。それならダンジョン都市で百倍の経験値を獲得している俺よりも、二百倍から四千倍になるんじゃないかと思って。まあ二百倍+二百倍のEXPかもしれないけど」
「それでも上書きを九つすれば二千倍にできるということでしょう? やるべきね」

 俺に追いつくための策だからかなり乗り気だ。でもこれはやってみないと分からないからな。

 お昼を食べ終え俺から公認魔法使い、新米賢者、全知なる賢王を受け取った輝夜はかなり満足している顔だった。

 そんな顔をしている時に言い出すのはあれかなと思ったが大事なことだから口を開く。

「輝夜、前に時間が出ていることを言ったことを覚えているか?」
「えぇ、覚えているわよ。それが何か分かったの?」
「あぁ。まず間違いないということは分かった」
「……深刻なものなのね」

 俺の雰囲気で察したようだ。

「端的に言えば、各地のダンジョンから軍隊が攻めて来る」
「……うそでしょ?」
「うそなら良かったしそうだと明言されたわけではない。でもダンジョン都市でLv500以上でないと入れない場所で世界地図と一緒にその情報が載っていたんだよ。東京ダンジョンからは一千万の敵が出て来るってな。それで推奨Lvが100以上らしい」
「そう。それなら仕事をしている場合ではないわね」
「引継ぎは大丈夫なのか?」
「それで国が終われば苦労しないわ。というかもう引継ぎ自体は終わっているわ」
「えっ、そうなのか?」
「さっき終わったわ。だから今からダンジョンに行けるわ」

 輝夜はかなり仕事ができるらしい。普通の人は自分の仕事ぶりを自画自賛したがらない。それは輝夜も同じだ。

 でも俺は幼馴染だから分かっている。輝夜は仕事ができる。それを大学までずっと見てきた。

「なら今から東京ダンジョンに行くか」
「えぇ。行きましょう」
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