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序章:平穏の終わり
5/28(水):ボトル売却
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メイドさんこと東雲早紀さんの運転で東江家に向かう。
東江は東雲さんが持ってきた服に着替えた上で聖者のコートを着ている。このままもらっていいのかと聞かれたがそんな手放したくないという顔をされては断れない。
ただLv240到達報酬で『賢者のローブ』が手に入って魔法使いの輝夜も使わないからな。もちろん俺も使わないし使うとしても寒い時にしか使えない。
「ねぇ、あのボトルはもっと売ってくれないの?」
「もうない」
「……ウソだよね?」
俺が嘘をついた途端に機嫌が悪くなる東江。しかもすぐに嘘を見抜くとは。
「あぁ、嘘だ。でも馬鹿正直にボトルがあるとかは言わないだろ」
「大丈夫。私は口が堅いから!」
「私も堅いです」
初対面の俺にそんなことを言われてもだろうが。
「そのアイテムは世の中にとんでもない衝撃を与えるものだってことはわかるよ。でもそれがあれば私みたいにされる人が減ると思う。それに才能ナシで苦しんでいる人も救える」
説得にその話を出すとは強靭な精神だ。
「だがそれで悪用されたらどうするって話だ。それにそこまで信用できていないのだからアイテムをもっと手に入れるために身内に危害を加えようとする相手かもしれないだろ」
「それでも信用して。あたしたちは絶対に学人くんやその付近に危害を加えないから」
ま、こればっかりはどうしようもないよな。
東京ダンジョンから都内を抜けどんどんと人気はなくなっていく。
「家って山奥の中にでもあるのか?」
「そうだよ」
「何でそんなところにあるんだ?」
「さぁ?」
不便だろうに。でもお金持ちの屋敷とかってそういうところにあるイメージだ。
山の中に入る手前で大きな門が構えていた。車が一時停止するとすぐに大きな門は開き、中に進んでいく。
「ここから私有地なのか?」
「うん」
「お金持ちなんだな」
「だからいっぱいお金出せるよ? ボトルをいっぱい売ってくれてもいいよ?」
ぶっちゃけ今の段階だとお金を出してくれるのならボトルを売ってもいいとは思っている。そこら辺の有象無象よりかは面白くはなりそうだし。
少なくとも小さな混沌では済まないわけだ。身内に危害を加えられそうになったら物理的に破壊しよ。そうすれば見せしめになる。
「あの豪邸がそうか?」
「そうだよ。でもここはあまり大きくないよ」
「へぇ……俺は気にしないけどマネーハラスメントな気がする」
遠くからでもよく分かる山奥の中に大きく建っている豪邸があった。
それにしても私有地がデカいな。ここら辺なら周りに迷惑をかけずに訓練とかができそうだな。
豪邸に近づくにつれ誰かが立っているのが見えた。豪邸の前に車が止まり俺と東江は車を降りる。
「大丈夫か!? 愛理!」
声がでかい袴姿で長い顎髭を生やしたお爺さんが東江の方に駆け寄ってくるが東江は避ける。
「キモいからやめて」
「なぬっ!? いつもの愛理なら受け止めてくれたはずだ! まさか事件のせいなのか!?」
「いやそんなわけないでしょ。いい加減なことを言わないで」
「ガハハハハハハッ! いつもの愛理だな!」
「うるさっ……」
お爺さんに対しては裏の顔を見せている東江に内心面白いと思っている。
「お客さんがいるんだからやめてよね」
「そうだったな! いやすまんすまん!」
お爺さんは俺を見た。その視線は少し俺を見定めている感じがする。
「ふむ。話は中でするか!」
「お邪魔します」
「ガハハハハハッ! 存分にお邪魔するがいい!」
面白れぇジジイだな。
俺と東江とお爺さんの三人で豪邸の中に入る。
意外にもこの豪邸は和風が主な感じではなく洋風だ。でも窓から見える庭園は和風だ。
ある部屋に入ると畳が敷き詰められた大広間だった。お爺さんは一段高くなった上段の間に座り、東江はその近くの一段下がった場所。俺は少し離れたお爺さんの正面になるように座った。
座布団があったから分かりやすかった。
「自己紹介がまだだったな! ワシは東江源三郎だ! 愛理の祖父で無月株式会社の当主をしておる!」
「自分は新月学人です。たまたま東江愛理さんを助けたただの冒険者です」
「愛理を助けてくれたこと、本当に感謝する! ありがとう!」
お爺さんが深々と頭を下げてくるからよっぽど孫娘が大事なのだろう。
「いえ、通りかかっただけなので気にしないでください」
「それは殊勝な心がけだ! 才能アリの冒険者があまりにも倫理がなく怒っていたところだからな!」
「調子に乗っているのでしょうね」
「まさにその通りだ! 才能の有無で冒険者が決まる世界の法則も嘆かわしい!」
才能ナシの人はどの人もこうやって思っているのか。
「ウチは冒険者の出現で結構影響が出ているんだよ」
「あぁ……」
警備や護衛の人材派遣なのだからそれは影響が出るか。何せ冒険者がそういう仕事を奪っていくのだから。
「さて、謝礼を渡すか!」
「おじいちゃんちょっと待ってね」
「何だ!?」
「学人くん、ここでおじいちゃんに言わない?」
ここで言っていることはボトルの話だろうな。本格的に孫娘は俺に売れと言ってきているわけだ。面白い。
「どうかな……」
「ここで言えばおじいちゃんに直接言えるんだよ? 学人くんが今日私に持ちかけた話は、たぶん今後やろうとしていたことじゃないのかな? 私がこの会社なら大丈夫だって保障するから」
そこまで言うのならこの話に乗ろうか。元々乗るつもりだったけど。
「分かった。なら現当主にお話をつける」
「聞こうか! さっきから気になって気になって仕方がないぞ!」
「サブステータスを習得できるアイテム……買う気はありませんか?」
「買おう!」
「疑うことはしないんですか?」
「キミがウソを言っていないことは分かるからな! ガハハハハハッ! それに愛理はすでに習得しているのだろう!?」
東江愛理はお爺さんには言っていないがあの会話を聞いていれば分かるか。
「はい。一本分は確定で払ってもらいます」
「あるだけ全部買おう! 何がある!?」
ここからが問題だな。何をどれくらい売り出すのを考えないと。
まず一番持っているのは魔法だから魔法を売り出すつもりだ。そうなれば超級と上級は渡すつもりは一切ない。それから水魔法はなしの形で行こう。スライムはチンアントとハイピジンよりも集めにくいから。闇魔法はまだ渡さない。
となれば中級か初級の土魔法か風魔法になるわけだ。中級土魔法が481、初級土魔法が162、中級風魔法が379、初級風魔法が304だが……どれくらいで売れるのかも分からないからな。とりあえずは初級を五ずつ出すか。
そもそも魔法はすべて初級しか出ていなかったはず。だから中級はまだ温存だな。
「初級土魔法と初級風魔法が五個ずつあります」
「全部買おう! 早速見せてくれ!」
予め背負っていたカバンの中から取り出す風に見せてアイテムボックスから五個ずつ出す。
「これがサブステータスが習得できるアイテムのボトルです」
「ほぉ!?」
俺の近くに来て畳の上に並んでいるボトルを一つ手に持つお爺さん。
「いくらで売る!? 言い値で買うぞ!」
こう言われたら俺は困るんだよな。
「東江愛理さんにも言いましたがそちらの考える適正価格で売ります」
「ほぉ、つまりワシを試しているということだな!? ガハハハハハハッ! 良かろう! この十個と愛理に渡した一個を一つ一億で買おう!」
一億か……まあいいか。特に苦労せずに一つ一億で売れるのなら問題ない。
「はい。じゃあそれで」
「学人くん、一億って安いよ?」
俺のすぐ横に来た孫娘がそう言ってきた。
「まあ……俺の目標金額は達成しているからいいかなって」
「たぶん五億くらいでも安いくらいだよ?」
「きっと一億が源三郎さんが考える適正価格なんだろう。だから俺は何も言わない」
実際どれくらいの価格が適正なのか分かっていないからな。
今のところ俺がこの世界で唯一このアイテムを入手することができるのだからこれからのことを考えれば安い値段を提示しない方がいいだろうがそれでも一億と言ってきた。
「まだ話は終わっていないぞ! 十個ごとに二十億でどうだ!? つまり今回払うのは三十一億だ!」
「ほぉ、それはまた。太っ腹ですね」
三十一億あれば何があっても問題がない額だな。それにしてもお金持ちはいっぱい金を持っているんだな。
「自分はその値段で問題ありません」
「これで商談成立だな! また手に入ったらワシに売ってくれ!」
これ、世間では知られていない中級魔法を売ればどれくらいの値段になるか。それにさっきダンジョンで手に入った銀霊という金属はどうなるのだろうか。
まあ今はこの成果だけで十分か。焦りは厳禁だ。少しずつ楽しめばいい。
東江は東雲さんが持ってきた服に着替えた上で聖者のコートを着ている。このままもらっていいのかと聞かれたがそんな手放したくないという顔をされては断れない。
ただLv240到達報酬で『賢者のローブ』が手に入って魔法使いの輝夜も使わないからな。もちろん俺も使わないし使うとしても寒い時にしか使えない。
「ねぇ、あのボトルはもっと売ってくれないの?」
「もうない」
「……ウソだよね?」
俺が嘘をついた途端に機嫌が悪くなる東江。しかもすぐに嘘を見抜くとは。
「あぁ、嘘だ。でも馬鹿正直にボトルがあるとかは言わないだろ」
「大丈夫。私は口が堅いから!」
「私も堅いです」
初対面の俺にそんなことを言われてもだろうが。
「そのアイテムは世の中にとんでもない衝撃を与えるものだってことはわかるよ。でもそれがあれば私みたいにされる人が減ると思う。それに才能ナシで苦しんでいる人も救える」
説得にその話を出すとは強靭な精神だ。
「だがそれで悪用されたらどうするって話だ。それにそこまで信用できていないのだからアイテムをもっと手に入れるために身内に危害を加えようとする相手かもしれないだろ」
「それでも信用して。あたしたちは絶対に学人くんやその付近に危害を加えないから」
ま、こればっかりはどうしようもないよな。
東京ダンジョンから都内を抜けどんどんと人気はなくなっていく。
「家って山奥の中にでもあるのか?」
「そうだよ」
「何でそんなところにあるんだ?」
「さぁ?」
不便だろうに。でもお金持ちの屋敷とかってそういうところにあるイメージだ。
山の中に入る手前で大きな門が構えていた。車が一時停止するとすぐに大きな門は開き、中に進んでいく。
「ここから私有地なのか?」
「うん」
「お金持ちなんだな」
「だからいっぱいお金出せるよ? ボトルをいっぱい売ってくれてもいいよ?」
ぶっちゃけ今の段階だとお金を出してくれるのならボトルを売ってもいいとは思っている。そこら辺の有象無象よりかは面白くはなりそうだし。
少なくとも小さな混沌では済まないわけだ。身内に危害を加えられそうになったら物理的に破壊しよ。そうすれば見せしめになる。
「あの豪邸がそうか?」
「そうだよ。でもここはあまり大きくないよ」
「へぇ……俺は気にしないけどマネーハラスメントな気がする」
遠くからでもよく分かる山奥の中に大きく建っている豪邸があった。
それにしても私有地がデカいな。ここら辺なら周りに迷惑をかけずに訓練とかができそうだな。
豪邸に近づくにつれ誰かが立っているのが見えた。豪邸の前に車が止まり俺と東江は車を降りる。
「大丈夫か!? 愛理!」
声がでかい袴姿で長い顎髭を生やしたお爺さんが東江の方に駆け寄ってくるが東江は避ける。
「キモいからやめて」
「なぬっ!? いつもの愛理なら受け止めてくれたはずだ! まさか事件のせいなのか!?」
「いやそんなわけないでしょ。いい加減なことを言わないで」
「ガハハハハハハッ! いつもの愛理だな!」
「うるさっ……」
お爺さんに対しては裏の顔を見せている東江に内心面白いと思っている。
「お客さんがいるんだからやめてよね」
「そうだったな! いやすまんすまん!」
お爺さんは俺を見た。その視線は少し俺を見定めている感じがする。
「ふむ。話は中でするか!」
「お邪魔します」
「ガハハハハハッ! 存分にお邪魔するがいい!」
面白れぇジジイだな。
俺と東江とお爺さんの三人で豪邸の中に入る。
意外にもこの豪邸は和風が主な感じではなく洋風だ。でも窓から見える庭園は和風だ。
ある部屋に入ると畳が敷き詰められた大広間だった。お爺さんは一段高くなった上段の間に座り、東江はその近くの一段下がった場所。俺は少し離れたお爺さんの正面になるように座った。
座布団があったから分かりやすかった。
「自己紹介がまだだったな! ワシは東江源三郎だ! 愛理の祖父で無月株式会社の当主をしておる!」
「自分は新月学人です。たまたま東江愛理さんを助けたただの冒険者です」
「愛理を助けてくれたこと、本当に感謝する! ありがとう!」
お爺さんが深々と頭を下げてくるからよっぽど孫娘が大事なのだろう。
「いえ、通りかかっただけなので気にしないでください」
「それは殊勝な心がけだ! 才能アリの冒険者があまりにも倫理がなく怒っていたところだからな!」
「調子に乗っているのでしょうね」
「まさにその通りだ! 才能の有無で冒険者が決まる世界の法則も嘆かわしい!」
才能ナシの人はどの人もこうやって思っているのか。
「ウチは冒険者の出現で結構影響が出ているんだよ」
「あぁ……」
警備や護衛の人材派遣なのだからそれは影響が出るか。何せ冒険者がそういう仕事を奪っていくのだから。
「さて、謝礼を渡すか!」
「おじいちゃんちょっと待ってね」
「何だ!?」
「学人くん、ここでおじいちゃんに言わない?」
ここで言っていることはボトルの話だろうな。本格的に孫娘は俺に売れと言ってきているわけだ。面白い。
「どうかな……」
「ここで言えばおじいちゃんに直接言えるんだよ? 学人くんが今日私に持ちかけた話は、たぶん今後やろうとしていたことじゃないのかな? 私がこの会社なら大丈夫だって保障するから」
そこまで言うのならこの話に乗ろうか。元々乗るつもりだったけど。
「分かった。なら現当主にお話をつける」
「聞こうか! さっきから気になって気になって仕方がないぞ!」
「サブステータスを習得できるアイテム……買う気はありませんか?」
「買おう!」
「疑うことはしないんですか?」
「キミがウソを言っていないことは分かるからな! ガハハハハハッ! それに愛理はすでに習得しているのだろう!?」
東江愛理はお爺さんには言っていないがあの会話を聞いていれば分かるか。
「はい。一本分は確定で払ってもらいます」
「あるだけ全部買おう! 何がある!?」
ここからが問題だな。何をどれくらい売り出すのを考えないと。
まず一番持っているのは魔法だから魔法を売り出すつもりだ。そうなれば超級と上級は渡すつもりは一切ない。それから水魔法はなしの形で行こう。スライムはチンアントとハイピジンよりも集めにくいから。闇魔法はまだ渡さない。
となれば中級か初級の土魔法か風魔法になるわけだ。中級土魔法が481、初級土魔法が162、中級風魔法が379、初級風魔法が304だが……どれくらいで売れるのかも分からないからな。とりあえずは初級を五ずつ出すか。
そもそも魔法はすべて初級しか出ていなかったはず。だから中級はまだ温存だな。
「初級土魔法と初級風魔法が五個ずつあります」
「全部買おう! 早速見せてくれ!」
予め背負っていたカバンの中から取り出す風に見せてアイテムボックスから五個ずつ出す。
「これがサブステータスが習得できるアイテムのボトルです」
「ほぉ!?」
俺の近くに来て畳の上に並んでいるボトルを一つ手に持つお爺さん。
「いくらで売る!? 言い値で買うぞ!」
こう言われたら俺は困るんだよな。
「東江愛理さんにも言いましたがそちらの考える適正価格で売ります」
「ほぉ、つまりワシを試しているということだな!? ガハハハハハハッ! 良かろう! この十個と愛理に渡した一個を一つ一億で買おう!」
一億か……まあいいか。特に苦労せずに一つ一億で売れるのなら問題ない。
「はい。じゃあそれで」
「学人くん、一億って安いよ?」
俺のすぐ横に来た孫娘がそう言ってきた。
「まあ……俺の目標金額は達成しているからいいかなって」
「たぶん五億くらいでも安いくらいだよ?」
「きっと一億が源三郎さんが考える適正価格なんだろう。だから俺は何も言わない」
実際どれくらいの価格が適正なのか分かっていないからな。
今のところ俺がこの世界で唯一このアイテムを入手することができるのだからこれからのことを考えれば安い値段を提示しない方がいいだろうがそれでも一億と言ってきた。
「まだ話は終わっていないぞ! 十個ごとに二十億でどうだ!? つまり今回払うのは三十一億だ!」
「ほぉ、それはまた。太っ腹ですね」
三十一億あれば何があっても問題がない額だな。それにしてもお金持ちはいっぱい金を持っているんだな。
「自分はその値段で問題ありません」
「これで商談成立だな! また手に入ったらワシに売ってくれ!」
これ、世間では知られていない中級魔法を売ればどれくらいの値段になるか。それにさっきダンジョンで手に入った銀霊という金属はどうなるのだろうか。
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