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騎士と神器

068:騎士と学園。③

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 俺とルネさまがしばしば見つめ合っていると、フローラさまが少しいら立った声音で話を切り出してこられた。

「で? あの大公の一人娘はルネお姉さまに何をしたの?」

 フローラさまの言葉に、俺はニコレットさんの方を見た。ニコレットさんは仕方がないという表情をして頷いて、ルネさまも覚悟を決めた表情をしておられる。お二人は話しずらいと思うから、ここは俺から話すことにした。

「実は――」

 俺は学園に来てボロボロになっていたルネさまとニコレットさんを発見したことから、今まで大公の一人娘に暴力などを受けてい事をフローラさまに伝えた。フローラさまは俺の話に黙って聞いておられた。俺の話が終わると、フローラさまは口を開いた。

「それをどうして私に黙っていたのかしら? 主であり、妹である私に伝えるのは当然だと思うけれど?」
「フローラさま、それは私からアユムに口止めをお願いしていました」

 フローラさまが鋭い目つきで俺に問いかけた言葉にはニコレットさんが弁明した。ニコレットさんに口止めされていたけれど、フローラさまが何をしでかすか分からなかったという点で俺も同感だったから、俺も同罪だ。

「ふぅん、お父さまは知っているの?」
「はい、ランベールさまはご存じです。先日、シャロン家に帰宅した際にアユムからランベールさまにご説明させていただきました」
「つまり、私だけがその件でのけ者だったわけ?」
「いえ、そのようなことはございません。当事者を除いてアユムとランベールさまだけが、この件に関わっていただけです」

 ニコレットさんが今にもキレそうな雰囲気のフローラさまに弁明しているが、そんな弁明は無力なようでフローラさまはニコレットさんではなく俺を睨めつけてこられた。・・・・・・あぁ、知ってる。これは俺が怒られる。

「アユム、こっちに来なさい」
「・・・・・・はい」

 フローラさまがご自身のそばを指さしてここに来るようにとのことなので、俺は大人しくそちらに向かうことにした。フローラさまの前に立つと、フローラさまは俺の頬を拳で殴ってこられた! 拳で⁉ いや、痛くないけれども、いや、心は痛いけれど、そこは平手打ちじゃないんですね!

「ルネお姉さまのことを知っておきながら、どうしてあの場であいつを同じ目に合せなかったの!」

 フローラさまがこう仰ることは何となく分かっていた。フローラさまは家族のこととなると、見境がなくなるからな。だからニコレットさんがフローラさまに黙っておいたんだ。ランベールさまもフローラさまほどではないが、そういうところがあるが、前回は俺が明確な解決方法を示したから納得なされた。

「いずれは同じ目に合せるつもりですが、それは今ではございません」
「なら、その状況はいつできるのかしら? やり続けたままで、私が納得すると思っているの?」
「いいえ、思っていません。・・・・・・しかし、近いうちにでもあいつや、大公には地獄を見てもらいます。今はこの言葉だけでご納得ください」

 今のフローラさまに言葉はあまり通じないだろう。だから、ルネさまとニコレットさんが受けた痛みを思い出しながら、絶対にあいつらを殺してやるという決意を言葉に乗せてフローラさまにお伝えした。その言葉も、相手が何もしてこなかったらの話であって、あちらから何かしてこようものなら、次はないとも思った。それを感じ取ったフローラさまは、ため息を吐いて頷かれた。

「・・・・・・分かったわよ。その言葉で納得してあげる」
「ありがとうござい――」
「だけど、今まで黙っていたことについては、許すつもりはないわよ? 主に隠し事なんて、騎士のやることではないわよね?」

 笑みを浮かべているのに、目が笑っていないフローラさまに、俺は寒気を覚えた。この流れで何もかもうやむやにならないかと思ったが、そうはいかないらしい。ふぅ、最初から分かっていたことだから、覚悟はできている。

「・・・・・・はい、その通りでございます」
「なら、覚悟はできているのよね?」
「はい、覚悟はできています。どんなことでも甘んじて受けます」

 俺がフローラさまにそう伝える周りでは、ニコレットさんが申し訳なさそうな顔をしており、ルネさまとブリジット、サラさんは何故かうらやましそうな顔をしておられる。この状況でうらやましそうな顔をする要素があるのか? 全く分からない。



 フローラさまのお仕置きが無事に終わり、俺の心は弱っていた。何せ、フローラさまのお仕置きというものが周りの視線がある中でするものではなかったからだ。エロいことでは・・・・・・、いや、一歩間違えればそれに部類されてしまう。フローラさまの足を舐めるなど、騎士の忠誠を見せろ、だと仰られた。見せるのは良いが、それをここでするのは間違っていると思う。

 それをしている中で、周りの女性から黄色い声が上がっていた。そして、凝視するのもやめてほしかった。それだけで俺の心はえぐられている。そんな昼休みを終えて、フローラさまのクラスは体育の授業を受けていた。貴族だから体育などないと思っていたが、体たらくにならないようにしているようだ。

 体育の授業であるから、授業を受ける生徒たちは動きやすい格好に着替えるわけで、その際にフローラさまが俺を教室に留まらせようとした。しかし、他の生徒たちが俺を見て怪しく目を光らせていたのを見て無理やり外へと出て難を逃れた。

 女性が男の中に一人いる気持ちが良く分かった。あの得物を狙う肉食獣の視線の前では、俺は野兎に他ならない。やはり同じ立場にならないと分からないものだな。そう思いながら、俺はグラウンドで準備運動をしているフローラさまを少し遠くから見つめている。

 ブリジットはフローラさまのストレッチに付き合っており、他の貴族たちも従者と一緒に準備運動をしている。・・・・・・ただ一人だけを除いて。黒髪のハーフアップの女性、サラさんであった。サラさんはその場に立ち尽くして、ただ時間を過ぎるのを待っているように見える。

 そんなサラさんを見て、居ても立っても居られなくなり俺はサラさんの元に向かった。だって、あの姿は過去の俺の姿に他ならない。今も変わらないが、あの姿を見逃すほど俺の心は鉄でできてない。

「サラさん、自分がお手伝いしましょうか?」
「ッ! ほ、本当ですか⁉ あ、ありがとうございます!」

 俺がサラさんにそう声をかけると、サラさんは俺の姿に気が付いて満面の笑みを浮かべて俺の言葉を快く受けた。それを見ていたフローラさまからの視線が痛かったが、こんな姿を見て放っておく方が心が痛む。

「では、始めましょうか」
「はい、お願いします」

 俺とサラさんは準備運動を始めた。サラさんが一人ではできないストレッチを、俺が手を貸してストレッチを行っていく。開脚でサラさんの背中を押すが、サラさんの服が少しだけめくれた時に青くなっている肌が見えた。・・・・・・これは、人がつけた跡だな。ただの痣じゃなくて、骨折しているのか? 人の拳と同じ形と大きさをしている。これをよく我慢していた。

 他にもないかと、サラさんの準備運動を手伝いながらさりげなくサラさんの身体をくまなく嘗め回すように見た。背中以外にも、チラリと見えただけで複数のあざがあるのが確認できた。だから、俺はサラさんに気が付かれないように≪自己犠牲≫を使いサラさんの怪我を治していく。

 何も言わないのだとすれば、サラさんは気が付かれてほしくないと思うから、俺もサラさんが気が付かれないようにする。・・・・・・サラさんの話からすると、父親がやったのか? それはサラさんに聞かないと分からないことだ。

「ッ・・・・・・アユムさん」
「大丈夫ですよ、もう治しました」

 さすがに骨折している場所を治したのだから、サラさんは気が付いたようで恐る恐る俺に話しかけてくるが、俺はサラさんに密着しそうな距離で大丈夫だと言った。

「こんな傷があって、何もないとは言わせませんよ。ですが、サラさんから何も言ってこなかったのですから、サラさんが話してくれるまで待ちます」
「・・・・・・ありがとうございます。そうしてください」
「はい、そうします。でも、いつかは話してくださいよ。それとも、そんなにも自分が頼りなくて信用できませんか?」
「そ、そんなことはありません! アユムさんはとても頼りになりますし、信用しています!」
「まぁ、頼りにして信用できていても、話せるかどうかは別問題ですから、今話せとは言いません。ですが、サラさんが話してくれた時には絶対にサラさんをお守りします。騎士の覚悟にかけて」

 俺ができることはそれしかない。結局はサラさんが話してくれないと始まらないし、俺ができることはサラさんを守ることしかできない。力だけの存在など、何の意味があるのだろうかと思ってしまう。それでフローラさまなどを救えているのかと、おこがましいことを思う。

「はい、その時は、絶対に守ってくださいね」

 そんな俺の言葉に、サラさんは微笑んで答えてくれた。本当に、この笑顔だけで俺がどれだけ救われたことか。フローラさまやルネさま、ニコレットさんやブリジットのみんなが、笑顔を浮かべてくれるだけで、俺の心は救われる。本当に救われている方は、俺だというのに。

「アユム」

 少しの間俺とサラさんが接近していたからか、フローラさまのお声が後ろから聞こえてきた。俺はゆっくりとフローラさまの方を向くが、そこには仕方がないと言わんばかりのフローラさまが立っておられた。あれ? 怒られると思ったが、そうではないのか?

「さっきから何をしているのかしら?」
「大したことではありませんでしたが、サラさんが怪我をしていたので自分が治していました」

 サラさんが今回の件を誰にも知らせていないのだから、フローラさまにも言うわけにはいかない。あぁ、またフローラさまに隠し事が増えたな。ばれた時に絶対に何かお仕置きされるが、誰かを守るために負う傷なら、騎士として誇らしいじゃないか。その相手が主でなければ、なお良いがな。

「そうなの。それなら早く言いなさいよ。すぐにでもアユムに治してもらえたのに」
「い、いえ、そういうわけにはいきません。何の恩も返せず、今まで迷惑をかけているにもかかわらず、これ以上迷惑をかけるわけにはいきませんから」

 サラさんは俺の話に何とか合わせてくれたようだが、迷惑の話については本当のことのようだ。ていうか、そんなことを思っていたのか。今更の話だし、フローラさまの話し相手になってくれているだけで俺としては満足だ。同世代の女性がフローラさまの周りにはそんなにいなかったから、サラさんには俺の方が感謝している。

「何を言っているの? 私は一度もあなたのことを迷惑だと思ったことはないわ。もうあなたは私の友達なのだから、何をためらう必要があるのかしら?」

 お、おぉっ⁉ ふ、フローラさまが、誰かのことを友達だと言った⁉ それにこの状況でその言葉を言えるとは、俺より男前だぞ! 俺がいる必要があったのかと思うほどだ。

「そ、そうですか。あ、ありがとう、ございます。そう言ってもらえると、嬉しいです」

 ほら、何かサラさんが頬を赤めている。俺の言葉がすでに前座となっている。これはフローラさまとサラさんの組み合わせになってくるのか。・・・・・・ふっ、所詮俺はこの程度の男なんだ。

「ほら、アユムも何かサラに言いなさいよ」
「え、えぇ⁉ じ、自分がですか⁉」

 フローラさまはどこか恥ずかしそうな顔をされて俺に振ってこられた。振られたけど、どうすれば良いのか見当がつかない。それにフローラさまが知らないだけで、俺はすでにサラさんに守ると言ってしまっている。これ以上言う言葉はない。それをサラさんに向けて言ったはずだが、なぜかサラさんは期待のまなざしでこちらを見ている。

「・・・・・・ッ⁉」

 サラさんへの言葉を考えていた最中、ルネさまとニコレットさんが、忘れもしない気配であるユルティスたちと共に教室から離れてどこかに向かっている。まさかこんなにも早く行動を起こすとは思わなかったが、何かすることは予想できていた。

 だけど、この時点では俺は何もしないとニコレットさんと約束している。ニコレットさんからは、ルネさまが危険な目にあいそうになったら助けに来いと言われた。今すぐにでも助けに行ってはいけないのかと聞いたが、それだと相手をボコボコにする大義名分を得れないだろう? とのことだ。

 それはルネさまも納得済みだとのことだが、俺としては今すぐにでもルネさまとニコレットさんを助けに行きたい。ルネさまが嫌な思いをされているのだから、俺が助ける理由はそれだけで十分だが、それではまたルネさまとニコレットさんがあいつらに何かされるかもしれない。

 だから、ここは俺も耐えて助けに行く覚悟をしておく。いつでもユルティスを半殺しにすることができるくらいの力の制御もしないといけない。

「アユム? さっきから険しい顔をして何を考えているの? まさかサラにかける言葉が見つからないとでも言わないでしょうね?」

 俺の様子を不審に思ったフローラさまが、最後の方は鋭い目つきで聞いてこられた。見つからないと言えば見つからないが、今はそれは置いておくとして、フローラさまに報告しておかないといけない。

「ユルティスたちが、ルネさまとニコレットさんに接触しています」
「ッ! そう、案外早く来たのね」

 ルネさまとニコレットさんはみんながいる前でユルティスが来た時の対処をお話になったから、フローラさまも俺が待つということを理解している。だから多少冷静にお答えになった。

「危なくなったら、私に何も言わずに行きなさい」
「はい、承知しています」

 フローラさまにもう一度許可をいただくが、今にもルネさまとニコレットさんの元に行きたい。お二人を囮にする必要があるのか? お二人を不安な気持ちにさせて、得るものは確かに大きい。だけど、そんな気持ちにさせてしまっているのだから、俺は騎士の責務を果たせていない。

 それでも、お二人が身体を張って囮をやられている。俺は拳から血が出るほど手を握り締めてその時が来るのをじっと待つ。しばらく待ち、お二人とユルティスたちが校舎の裏で止まったのが理解できた。そしてニコレットさんの気配に変動があることに気が付いた。

 これはニコレットさんの身に何か起こったことを示している。気配からすると、ユルティスの取り巻きに殴られているのだろう。今すぐにでも行きたいが、これでは早すぎるだろう。ニコレットさんが言っていたが、来るのならもっと遅く来て構わないとのことだった。だから、俺は我慢し続ける。ルネさまとニコレットさんの我慢に比べれば、俺の我慢など些細なものだ。

 ニコレットさんが少しの間痛めつけられ、ついにルネさまに被害が及んだことで、俺の我慢が限界を達した。おそらく、今の俺は騎士ではなくひどい顔をしているだろう。ユルティスたちを半殺しで済ませる自信がない。今にも殺してしまいそうだ。

 俺はすぐにその場から離れてルネさまとニコレットさんの元に走り始めた。その際にクラウ・ソラスを出現させ、ユルティスを殺す気で向かう。学園の中であるから、俺はすぐにお二人の姿とユルティスたちの姿が見えた。

 ニコレットさんは殴る蹴るをされたのか、身体中ボロボロになっており顔には痛々しく殴られた跡が分かる。そしてルネさまはまだ頬を殴られているなど傷が少ないものの、髪が引っ張られている最中であった。俺はユルティスたちに全身から殺気を放って俺の存在を知らせる。奴らが振り返ったと同時に、俺は声を出した。

「おい、死ぬ準備はできているんだろうな?」

 あぁ、俺はこいつらを殺す気でここにいるんだ。
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