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騎士と主
027:騎士と使用人。
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ランベールさまへの説明は成功に終わり、俺たち三人はランベールさまの書斎から退室した。さすがにあの状態でランベールさまが何かするとは思えないから、今は安心していていいだろう。だが、今後また同じようなことがあれば、どうなるか分からない。だから早めに手を打たないといけない。
「ありがとう、アユムくん。お父さまを落ち着かせてくれて」
「シャロン家の危機かもしれなかったので、自分がお手伝いできることがあってよかったです」
退室してからルネさまにお礼を言われたが、結局は俺がランベールさまに伝えたことであったから、俺が始末をつけることができて良かった。
「それにしても、よくフローラが〝マジェスティ・ロードパラディン〟になることを許したよね? 私に仕える時間が少なくなるとか言い出しそう」
さすがルネさま、フローラさまが言いそうなことを理解されている。
「説得には時間がかかりましたけど、何とかご理解いただきました。・・・・・・言っておきますけど、ルネさまとニコレットさんのことは言っていませんよ?」
ニコレットさんが少しだけこちらに疑惑のまなざしを向けてきたため、反論はしておく。どれだけ俺のことを信じてくれていないのか。・・・・・・いや、先のフローラさまの件があるから、少しだけ疑惑のまなざしを向けてきたのだろう。
「分かっている。言っていれば、フローラさまがすぐに私たちを問いただしに来るだろう。私が思っていることは、ブリジットに言っていないかどうか心配になっただけだ」
フローラさまに言えば、烈火のごとき怒りを相手に向けるだろう。あの人もあの人で家族を大切にしているからな。だが、ブリジットに話しても、おそらく今は何もしない。ニコレットさんと同じで表情が分かりづらいからな。
「言っていませんよ。スアレムに言った方が何をしでかすか分かりませんから」
「人の妹に向かって言う言葉ではないが、同意見だ。あいつはあいつで闇を抱えているからな」
ニコレットさんの方がひどいことを言っている。そんなことを話してる間に、分かれ道にたどり着いた。ランディさまとルネさまのお部屋は分かれた場所にそれぞれある。
「それでは、自分はここで」
「うん、お仕事頑張ってね」
ルネさまにお仕事頑張ってと言われて、俺は頑張る気があふれてきた。今はフローラさまのことで頭がいっぱいだが、自分がどうこう思っていても仕方がない。幸い、ニコレットさんがさっきの件を忘れていれば――
「アユム、今日の夜は私の部屋に来い。忘れるなど許されないぞ?」
「・・・・・・はい」
まぁ、ニコレットさんが忘れているわけがなかった。これで俺が行かなければ、地の果てまで追いかけられそうだから、今日の夜は大人しく向かうことにしよう。
そうして、俺はランディさまのお部屋に、ルネさまとニコレットさんはルネさまのお部屋へと向かう道に分かれた。ランディさまのお部屋に向かっている途中で、俺はあることに気が付いた。≪感知≫のスキルでランディさまのお部屋に、プレヴォーさんがいるのだ。そう言えば、プレヴォーさんがこの屋敷で何をしているのか聞いていなかったな。入りたてだから掃除などの雑用と思っていた。
俺は真相を知るために、ランディさまのお部屋に気持ち早めに歩いてお部屋の前にたどり着く。俺はノックをして入っていいかを確かめる。
「ランディさま、アユムです。入ってもよろしいでしょうか?」
「良いよ、入って!」
お部屋の中からランディさまの許可をいただいて、俺はランディさまのお部屋に入る。部屋の中には、下着姿のランディさまと、ランディさまの身体を採寸しているメイド姿のプレヴォーさんがいた。
「アユム、少し待ってて。今はマルトさんにお洋服を作ってもらうために採寸してもらっているから」
「お洋服を、作ってもらうのですか?」
「うん、そうだよ。マルトさんはすごいんだよ。本当に素敵なお洋服を作ってくれるから、僕はマルトさんに頼んでいるんだ」
それを聞いた俺はプレヴォーさんの方を見る。採寸を終えたプレヴォーさんは俺の視線に恥ずかしそうに顔を赤くして下を向いた。
「プレヴォーさんはお洋服を作れるのですか?」
「は、はい・・・・・・。その、将来のために、素敵なお洋服を作れる練習を、と思いまして作っていたら、上達してしまいました」
将来のため。それはおそらく歌声を披露するためなのだろう。もしかして舞台か何かに立つことが目標なのだろうか。それなら素晴らしいことだ。歌声も美しくて、裁縫もできる女子力の高さ。これは非常にポイントが高いですね。
「聞いて聞いて、アユム! 今までにマルトさんが色々なお洋服を作ってくれたんだよ!」
そう言って、ランディさまが開け放った俺が開けたことのないクローゼットには様々なお洋服が並んでいた。どれもランディさまの可憐さを引き立てることのできる、良いお洋服になっている。これをプレヴォーさんが一人で作ったとなると、プロと言っても過言ではない腕前だ。
「・・・・・・すごいですね。プレヴォーさんにこんな特技があったとは、素敵ですよ」
「ッ⁉ ・・・・・・あ、ありがとう、ございます。嬉しいです」
プレヴォーさんは顔を一層真っ赤にして、ついには手で顔を隠した。こんなに素晴らしい女性が、美醜逆転世界によって台無しになりそうになるとは、本当にふざけた世界だ。
「マルト~、洋服の材料を持ってきたよ~」
そう言いながら茶髪のツインテールの女性が扉を開けて入ってきた。その手には色とりどりの布があり、その女性が言った通りのお洋服の材料に使うものなのだろう。そんなツインテールの女性と目が合った。この女性もどこかで見たことがあり、あちらは俺のことに気が付いているようであった。
「あっ、アユムさん! 帰ってきてたんですね!」
さっきのダルそうな声とは打って変わり、俺に話しかける時の声はかわいらしい声であった。これがいわゆる猫を被っているという状況なのか。アニメでは見たことがあるが、現実で見るのは初めてだ。さすが異世界、何でもアリだな。
「はい、昨日帰ってきました」
「へぇ、そうなんですね。いつまでここにいるのですか?」
「どうですかね、一週間くらいだと見ていますけど」
「そんなに短いのですね。せっかくアユムさんが帰ってきているのに」
・・・・・・あっ、話している中で一生懸命記憶をたどっていると、今思い出せた。この人は前に俺の世界で言う不細工に絡まれていたところを助けた女性、ロレーヌ・キッテさんであったか。思い出せたから良しとしよう。
「キッテさんはお洋服の材料を持ってきたのですよね?」
「あ、良かった! 名前を覚えておいてくれたのですね」
さっきまで忘れていましたけどね。でも、すぐに思い出したからセーフだと言い聞かせておこう。
「はい、同じ職場の同僚なので、覚えていますよ」
「良かったぁ、忘れられていたら少し傷ついていました。・・・・・・それで、お洋服の材料についてでしたね。私は見ての通り、ランディさまがお召しになるお洋服を作る素材を、そこにいるマルトに頼まれて運んで来ています」
ランディさまのお洋服作りには、プレヴォーさんとキッテさんが携わっているのか。それにしても、ランディさまの俺がいない間のお世話役は誰だったのだろうか。・・・・・・まさか、この二人なのか? それは十分にあり得るだろう。だって、お洋服を作るくらいなのだから。
「キッテさんとプレヴォーさんの二人はランディさまの専属メイドなのですか?」
「はい、そうです。アユムさんがいない間は、私とマルトがランディさまのお世話を承っています。アユムさんが帰ってきているのなら、私たちは必要ないはずですが・・・・・・」
「今日は新しいお洋服を作ってもらうの! だから、アユムとマルトさんとロレーヌさんの三人には今日一日付き合ってもらうから!」
どうやら、ランディさまのおかげで今日の夜までの予定は埋まってしまったらしい。フローラさまのことが気になるが、こちらからはどうすることもできない。待つことしかできなくなっている。
「あっ! せっかくだから、アユムのお洋服も作ろうよ! アユムはいつも執事服しか着てないけど、他の服を持っているの?」
ランディさまの質問は、とても素晴らしいところをついてくる。あいにく俺が持っている服は、この執事服が何十着と、俺が異世界に来た時に来ていたあちらの私服しかない。だから持っている服は実質執事服だけということになる。
「いいえ、執事服しか持っていません」
「それなら、一緒にアユムのお洋服も作ってもらおうよ。そのお洋服を着て、ここにいる全員でピクニックに行けたら最高だね!」
「自分は良いですけど、プレヴォーさんはどうなのですか? あまり無茶をされるようでしたら、帰ってこちらが気負いしてしまいますので、遠慮なく言ってきてください」
俺の言葉に、プレヴォーさんは首を横に振って否定した。それはどちらの否定なのだろうか。
「・・・・・・いえ、大丈夫です。一人分のお洋服が、増えたとしても、問題ありません。それに、私もピクニックに行きたい、ですから、頑張ります」
「そ、そうですか。じゃあ、お願いします、プレヴォーさん」
何やら気合が入っているプレヴォーさんに疑問を感じながら、プレヴォーさんにお洋服を作ってもらうことになった。まぁ、服を一から自分専用に作ってもらうのだから、採寸から始まるわけで、俺はパンツ以外をすべて脱いで、俺の半裸をランディさまとプレヴォーさんとキッテさんの前でさらしたり、プレヴォーさんが服を作るのに夢中になっていて気が付かなかっただろうけれど、胸が良い感じで俺の身体に当たって、俺の下半身が反応しないように苦労した。
今日で服を完成させられなかったが、プレヴォーさんが徹夜で完成させると言い出したのでさすがにそれは止めた。メイド業務に支障をきたしてしまうからな。
そんな楽しい時間はあっという間に終わり、俺は夜遅くにニコレットさんの部屋の前にいる。ニコレットさんが中にいることは確認済みで、俺は今からこの部屋の中に入らなければならない。フローラさまと何があったのかを細部までハッキリと。
俺は深呼吸を一つして、ニコレットさんの扉をノックする。すると部屋の中からニコレットさんの許可が下りて俺はニコレットさんの部屋に入る。ニコレットさんの部屋は至ってシンプルで、ベットに机とテーブルと本棚くらいしかない部屋だ。
「よく来たな、まぁ座れ」
しかし、そんな質素な部屋の中で一際異彩を放っている場所があった。いつもしているポニーテールを解いてベットに腰かけているピンク色に薄い寝間着姿のニコレットさんがいた。寝間着でいるとは思わなかったため、俺は目を見開いている。
「・・・・・・私がこんな色の寝間着を着ているのは悪いか?」
「いえ、悪くないです。とてもよく似合って可愛いですよ」
「そうか、それは何よりだ」
髪を下ろしていつもの服ではないニコレットさんを見ていると、本当に新鮮だ。どうして俺から話を聞き出そうとしているのに、こんなラフな格好でいるのだろうか。
「私がどうしてこの姿をしているのか疑問に思っているだろう。それは、お前が少しでも話しやすくするためだ。どうだ? 話しやすくなったか?」
「話しやすくなったとは言い難いですけど、緊張はほぐれました」
話すための緊張はほぐれたが、ニコレットさんを女性として意識してしまう緊張は高まっている。いつもは服装もきちんとしていてクールなニコレットさんであるが、そんなニコレットさんが男性を誘惑するような服装を着ていると、ギャップですごく萌える。
「早くここに来い」
「えっ? あ、はい」
ニコレットさんが指定した場所は、ベットに腰かけているニコレットさんの隣であった。そこにテーブルがあるのに、どうしてそちらなのだろうと戸惑いながら、ニコレットさんの隣に腰かける。ニコレットさんの近くに行くと、ニコレットさんの女性特有の香りがしてきた。そんな誘惑にも耐えて、俺はニコレットさんの隣に座り続ける。
「それで、フローラさまと何があったんだ? ブリジットからはアユムから聞けと言われたからな、お前からしかフローラさまとの件を聞けないんだ。聞かせてもらおうか」
ニコレットさんは俺に身体を寄せてきて、俺に問いただしてくる。そんなニコレットさんの顔が、心なしか赤い気がするのだが、気のせいだろうか?
「・・・・・・分かりました。話します」
「最初からそうしていればいいんだ」
話すのは良いですよ、ニコレットさん。でも、どんどんと俺に近づいてきているのは何なのですか? 俺とニコレットさんの距離は、もう密着していると言える距離で、ニコレットさんは俺が太ももに置いてある手を握ってきた。・・・・・・ど、どういうことなんだ? いつもすました顔をしているニコレットさんが、どうしてこんなことを。
「さぁ、早く言え。今更言わないという選択肢はないだろう」
「わ、分かっていますよ」
俺がニコレットさんからさりげなく距離を離そうとすると、ニコレットさんが俺の腰に手を回してきて逃がさないようにしてきた。・・・・・・俺は、この状況の方を説明してほしい。困惑しかないんだが。もしかしてニコレットさんの偽物か⁉
「・・・・・・昨日、フローラさまのお部屋に就寝のご挨拶に向かいました」
この、ドキドキしかない状況の中で、俺は昨日の夜のことを話し始める。その間、ニコレットさんは俺の身体に密着している。・・・・・・ニコレットさんは、俺の頭を真っ白にするつもりでこんなことをしているのか? 全く意図が分からない。
「そこで、フローラさまに告白されました」
「ッ⁉ ・・・・・・ついに、告白されたんだな」
この言葉で、ニコレットさんがすでにフローラさまが俺のことを好きだということを知っているようであった。俺が気が付かないふりをしていたから、周りで見ていた人が知っているのは当然と言えば当然か。
「でも、自分はフローラさまの告白を断りました」
「・・・・・・まぁ、フローラさまのあの状況を見れば告白を断られたのは分かっていた。だが、どうして断ったんだ? お前もフローラさまのことを愛しているだろう?」
ニコレットさんにフローラさまのことを愛しているのかと聞かれて、素直に愛しているとは言いにくかった。あんなに酷い断り方をしたのに、と思っていると、ニコレットさんが俺の顔に顔を近づかせてきた。
「愛しているのだろう?」
「・・・・・・はい、愛しています」
「それならどうしてフローラさまの告白を断ったんだ? お前の過去に何があったとしてもフローラさまは受け入れてくれるし、お前の性格はここで働いていて分かっている。少々、性格に難があるのは知っているが、それは許容範囲内だ。それを踏まえて、どうして告白を断ったりしたんだ。もしかして、本命はフローラさま以外にいるのか?」
「それは、いないはずです。フローラさまのことを一番愛しています」
「そこで私や他の名前を出されていたら、困っていたが、それならどうして告白を断ったんだ? お前と私の仲だ、すべて素直に話せ。そうした方が少しは気分が収まるだろう」
ニコレットさんがものすごく顔を近づけてきて話せと言ってくる。・・・・・・ここまで来れば、異世界のことを言おう。ニコレットさんは数年の付き合いだけど信用できる人だ。今はどうしてこんな状況になっているのか未だに分かっていないけれど。
「ありがとう、アユムくん。お父さまを落ち着かせてくれて」
「シャロン家の危機かもしれなかったので、自分がお手伝いできることがあってよかったです」
退室してからルネさまにお礼を言われたが、結局は俺がランベールさまに伝えたことであったから、俺が始末をつけることができて良かった。
「それにしても、よくフローラが〝マジェスティ・ロードパラディン〟になることを許したよね? 私に仕える時間が少なくなるとか言い出しそう」
さすがルネさま、フローラさまが言いそうなことを理解されている。
「説得には時間がかかりましたけど、何とかご理解いただきました。・・・・・・言っておきますけど、ルネさまとニコレットさんのことは言っていませんよ?」
ニコレットさんが少しだけこちらに疑惑のまなざしを向けてきたため、反論はしておく。どれだけ俺のことを信じてくれていないのか。・・・・・・いや、先のフローラさまの件があるから、少しだけ疑惑のまなざしを向けてきたのだろう。
「分かっている。言っていれば、フローラさまがすぐに私たちを問いただしに来るだろう。私が思っていることは、ブリジットに言っていないかどうか心配になっただけだ」
フローラさまに言えば、烈火のごとき怒りを相手に向けるだろう。あの人もあの人で家族を大切にしているからな。だが、ブリジットに話しても、おそらく今は何もしない。ニコレットさんと同じで表情が分かりづらいからな。
「言っていませんよ。スアレムに言った方が何をしでかすか分かりませんから」
「人の妹に向かって言う言葉ではないが、同意見だ。あいつはあいつで闇を抱えているからな」
ニコレットさんの方がひどいことを言っている。そんなことを話してる間に、分かれ道にたどり着いた。ランディさまとルネさまのお部屋は分かれた場所にそれぞれある。
「それでは、自分はここで」
「うん、お仕事頑張ってね」
ルネさまにお仕事頑張ってと言われて、俺は頑張る気があふれてきた。今はフローラさまのことで頭がいっぱいだが、自分がどうこう思っていても仕方がない。幸い、ニコレットさんがさっきの件を忘れていれば――
「アユム、今日の夜は私の部屋に来い。忘れるなど許されないぞ?」
「・・・・・・はい」
まぁ、ニコレットさんが忘れているわけがなかった。これで俺が行かなければ、地の果てまで追いかけられそうだから、今日の夜は大人しく向かうことにしよう。
そうして、俺はランディさまのお部屋に、ルネさまとニコレットさんはルネさまのお部屋へと向かう道に分かれた。ランディさまのお部屋に向かっている途中で、俺はあることに気が付いた。≪感知≫のスキルでランディさまのお部屋に、プレヴォーさんがいるのだ。そう言えば、プレヴォーさんがこの屋敷で何をしているのか聞いていなかったな。入りたてだから掃除などの雑用と思っていた。
俺は真相を知るために、ランディさまのお部屋に気持ち早めに歩いてお部屋の前にたどり着く。俺はノックをして入っていいかを確かめる。
「ランディさま、アユムです。入ってもよろしいでしょうか?」
「良いよ、入って!」
お部屋の中からランディさまの許可をいただいて、俺はランディさまのお部屋に入る。部屋の中には、下着姿のランディさまと、ランディさまの身体を採寸しているメイド姿のプレヴォーさんがいた。
「アユム、少し待ってて。今はマルトさんにお洋服を作ってもらうために採寸してもらっているから」
「お洋服を、作ってもらうのですか?」
「うん、そうだよ。マルトさんはすごいんだよ。本当に素敵なお洋服を作ってくれるから、僕はマルトさんに頼んでいるんだ」
それを聞いた俺はプレヴォーさんの方を見る。採寸を終えたプレヴォーさんは俺の視線に恥ずかしそうに顔を赤くして下を向いた。
「プレヴォーさんはお洋服を作れるのですか?」
「は、はい・・・・・・。その、将来のために、素敵なお洋服を作れる練習を、と思いまして作っていたら、上達してしまいました」
将来のため。それはおそらく歌声を披露するためなのだろう。もしかして舞台か何かに立つことが目標なのだろうか。それなら素晴らしいことだ。歌声も美しくて、裁縫もできる女子力の高さ。これは非常にポイントが高いですね。
「聞いて聞いて、アユム! 今までにマルトさんが色々なお洋服を作ってくれたんだよ!」
そう言って、ランディさまが開け放った俺が開けたことのないクローゼットには様々なお洋服が並んでいた。どれもランディさまの可憐さを引き立てることのできる、良いお洋服になっている。これをプレヴォーさんが一人で作ったとなると、プロと言っても過言ではない腕前だ。
「・・・・・・すごいですね。プレヴォーさんにこんな特技があったとは、素敵ですよ」
「ッ⁉ ・・・・・・あ、ありがとう、ございます。嬉しいです」
プレヴォーさんは顔を一層真っ赤にして、ついには手で顔を隠した。こんなに素晴らしい女性が、美醜逆転世界によって台無しになりそうになるとは、本当にふざけた世界だ。
「マルト~、洋服の材料を持ってきたよ~」
そう言いながら茶髪のツインテールの女性が扉を開けて入ってきた。その手には色とりどりの布があり、その女性が言った通りのお洋服の材料に使うものなのだろう。そんなツインテールの女性と目が合った。この女性もどこかで見たことがあり、あちらは俺のことに気が付いているようであった。
「あっ、アユムさん! 帰ってきてたんですね!」
さっきのダルそうな声とは打って変わり、俺に話しかける時の声はかわいらしい声であった。これがいわゆる猫を被っているという状況なのか。アニメでは見たことがあるが、現実で見るのは初めてだ。さすが異世界、何でもアリだな。
「はい、昨日帰ってきました」
「へぇ、そうなんですね。いつまでここにいるのですか?」
「どうですかね、一週間くらいだと見ていますけど」
「そんなに短いのですね。せっかくアユムさんが帰ってきているのに」
・・・・・・あっ、話している中で一生懸命記憶をたどっていると、今思い出せた。この人は前に俺の世界で言う不細工に絡まれていたところを助けた女性、ロレーヌ・キッテさんであったか。思い出せたから良しとしよう。
「キッテさんはお洋服の材料を持ってきたのですよね?」
「あ、良かった! 名前を覚えておいてくれたのですね」
さっきまで忘れていましたけどね。でも、すぐに思い出したからセーフだと言い聞かせておこう。
「はい、同じ職場の同僚なので、覚えていますよ」
「良かったぁ、忘れられていたら少し傷ついていました。・・・・・・それで、お洋服の材料についてでしたね。私は見ての通り、ランディさまがお召しになるお洋服を作る素材を、そこにいるマルトに頼まれて運んで来ています」
ランディさまのお洋服作りには、プレヴォーさんとキッテさんが携わっているのか。それにしても、ランディさまの俺がいない間のお世話役は誰だったのだろうか。・・・・・・まさか、この二人なのか? それは十分にあり得るだろう。だって、お洋服を作るくらいなのだから。
「キッテさんとプレヴォーさんの二人はランディさまの専属メイドなのですか?」
「はい、そうです。アユムさんがいない間は、私とマルトがランディさまのお世話を承っています。アユムさんが帰ってきているのなら、私たちは必要ないはずですが・・・・・・」
「今日は新しいお洋服を作ってもらうの! だから、アユムとマルトさんとロレーヌさんの三人には今日一日付き合ってもらうから!」
どうやら、ランディさまのおかげで今日の夜までの予定は埋まってしまったらしい。フローラさまのことが気になるが、こちらからはどうすることもできない。待つことしかできなくなっている。
「あっ! せっかくだから、アユムのお洋服も作ろうよ! アユムはいつも執事服しか着てないけど、他の服を持っているの?」
ランディさまの質問は、とても素晴らしいところをついてくる。あいにく俺が持っている服は、この執事服が何十着と、俺が異世界に来た時に来ていたあちらの私服しかない。だから持っている服は実質執事服だけということになる。
「いいえ、執事服しか持っていません」
「それなら、一緒にアユムのお洋服も作ってもらおうよ。そのお洋服を着て、ここにいる全員でピクニックに行けたら最高だね!」
「自分は良いですけど、プレヴォーさんはどうなのですか? あまり無茶をされるようでしたら、帰ってこちらが気負いしてしまいますので、遠慮なく言ってきてください」
俺の言葉に、プレヴォーさんは首を横に振って否定した。それはどちらの否定なのだろうか。
「・・・・・・いえ、大丈夫です。一人分のお洋服が、増えたとしても、問題ありません。それに、私もピクニックに行きたい、ですから、頑張ります」
「そ、そうですか。じゃあ、お願いします、プレヴォーさん」
何やら気合が入っているプレヴォーさんに疑問を感じながら、プレヴォーさんにお洋服を作ってもらうことになった。まぁ、服を一から自分専用に作ってもらうのだから、採寸から始まるわけで、俺はパンツ以外をすべて脱いで、俺の半裸をランディさまとプレヴォーさんとキッテさんの前でさらしたり、プレヴォーさんが服を作るのに夢中になっていて気が付かなかっただろうけれど、胸が良い感じで俺の身体に当たって、俺の下半身が反応しないように苦労した。
今日で服を完成させられなかったが、プレヴォーさんが徹夜で完成させると言い出したのでさすがにそれは止めた。メイド業務に支障をきたしてしまうからな。
そんな楽しい時間はあっという間に終わり、俺は夜遅くにニコレットさんの部屋の前にいる。ニコレットさんが中にいることは確認済みで、俺は今からこの部屋の中に入らなければならない。フローラさまと何があったのかを細部までハッキリと。
俺は深呼吸を一つして、ニコレットさんの扉をノックする。すると部屋の中からニコレットさんの許可が下りて俺はニコレットさんの部屋に入る。ニコレットさんの部屋は至ってシンプルで、ベットに机とテーブルと本棚くらいしかない部屋だ。
「よく来たな、まぁ座れ」
しかし、そんな質素な部屋の中で一際異彩を放っている場所があった。いつもしているポニーテールを解いてベットに腰かけているピンク色に薄い寝間着姿のニコレットさんがいた。寝間着でいるとは思わなかったため、俺は目を見開いている。
「・・・・・・私がこんな色の寝間着を着ているのは悪いか?」
「いえ、悪くないです。とてもよく似合って可愛いですよ」
「そうか、それは何よりだ」
髪を下ろしていつもの服ではないニコレットさんを見ていると、本当に新鮮だ。どうして俺から話を聞き出そうとしているのに、こんなラフな格好でいるのだろうか。
「私がどうしてこの姿をしているのか疑問に思っているだろう。それは、お前が少しでも話しやすくするためだ。どうだ? 話しやすくなったか?」
「話しやすくなったとは言い難いですけど、緊張はほぐれました」
話すための緊張はほぐれたが、ニコレットさんを女性として意識してしまう緊張は高まっている。いつもは服装もきちんとしていてクールなニコレットさんであるが、そんなニコレットさんが男性を誘惑するような服装を着ていると、ギャップですごく萌える。
「早くここに来い」
「えっ? あ、はい」
ニコレットさんが指定した場所は、ベットに腰かけているニコレットさんの隣であった。そこにテーブルがあるのに、どうしてそちらなのだろうと戸惑いながら、ニコレットさんの隣に腰かける。ニコレットさんの近くに行くと、ニコレットさんの女性特有の香りがしてきた。そんな誘惑にも耐えて、俺はニコレットさんの隣に座り続ける。
「それで、フローラさまと何があったんだ? ブリジットからはアユムから聞けと言われたからな、お前からしかフローラさまとの件を聞けないんだ。聞かせてもらおうか」
ニコレットさんは俺に身体を寄せてきて、俺に問いただしてくる。そんなニコレットさんの顔が、心なしか赤い気がするのだが、気のせいだろうか?
「・・・・・・分かりました。話します」
「最初からそうしていればいいんだ」
話すのは良いですよ、ニコレットさん。でも、どんどんと俺に近づいてきているのは何なのですか? 俺とニコレットさんの距離は、もう密着していると言える距離で、ニコレットさんは俺が太ももに置いてある手を握ってきた。・・・・・・ど、どういうことなんだ? いつもすました顔をしているニコレットさんが、どうしてこんなことを。
「さぁ、早く言え。今更言わないという選択肢はないだろう」
「わ、分かっていますよ」
俺がニコレットさんからさりげなく距離を離そうとすると、ニコレットさんが俺の腰に手を回してきて逃がさないようにしてきた。・・・・・・俺は、この状況の方を説明してほしい。困惑しかないんだが。もしかしてニコレットさんの偽物か⁉
「・・・・・・昨日、フローラさまのお部屋に就寝のご挨拶に向かいました」
この、ドキドキしかない状況の中で、俺は昨日の夜のことを話し始める。その間、ニコレットさんは俺の身体に密着している。・・・・・・ニコレットさんは、俺の頭を真っ白にするつもりでこんなことをしているのか? 全く意図が分からない。
「そこで、フローラさまに告白されました」
「ッ⁉ ・・・・・・ついに、告白されたんだな」
この言葉で、ニコレットさんがすでにフローラさまが俺のことを好きだということを知っているようであった。俺が気が付かないふりをしていたから、周りで見ていた人が知っているのは当然と言えば当然か。
「でも、自分はフローラさまの告白を断りました」
「・・・・・・まぁ、フローラさまのあの状況を見れば告白を断られたのは分かっていた。だが、どうして断ったんだ? お前もフローラさまのことを愛しているだろう?」
ニコレットさんにフローラさまのことを愛しているのかと聞かれて、素直に愛しているとは言いにくかった。あんなに酷い断り方をしたのに、と思っていると、ニコレットさんが俺の顔に顔を近づかせてきた。
「愛しているのだろう?」
「・・・・・・はい、愛しています」
「それならどうしてフローラさまの告白を断ったんだ? お前の過去に何があったとしてもフローラさまは受け入れてくれるし、お前の性格はここで働いていて分かっている。少々、性格に難があるのは知っているが、それは許容範囲内だ。それを踏まえて、どうして告白を断ったりしたんだ。もしかして、本命はフローラさま以外にいるのか?」
「それは、いないはずです。フローラさまのことを一番愛しています」
「そこで私や他の名前を出されていたら、困っていたが、それならどうして告白を断ったんだ? お前と私の仲だ、すべて素直に話せ。そうした方が少しは気分が収まるだろう」
ニコレットさんがものすごく顔を近づけてきて話せと言ってくる。・・・・・・ここまで来れば、異世界のことを言おう。ニコレットさんは数年の付き合いだけど信用できる人だ。今はどうしてこんな状況になっているのか未だに分かっていないけれど。
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