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外伝・過去(語り)
『全能の魔法使い』 第一章、第四節。
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『剣の英雄』ジャック・リジェル。西の大陸にある大きな都市・リヨンで生まれ育ち、貴族として何不自由ない暮らしをしてきた。剣の才能にも恵まれ、親の束縛もなく、対人関係も何ら問題ない、幸せと言う言葉が相応しい状況であった。
だが、そんな暮らしは長く続かない。幸せは、不幸せがあることで存在価値があるもので、不幸せが永遠に来ないことなどあり得ない。
そう、中央大陸にいた魔神王率いる魔神王軍が、まず初めに西の大陸を攻め込んできたのだ。
まだ魔神王が人類排他的思考だと分かり切っていない時であったから、戦える状態ではなかった西の大陸はすぐに壊滅寸前まで追い込まれた。ジャック・リジェルは自身の国を守るために戦ったが、それもむなしく西の国はどんどんと追い込まれていった。壊滅する前に、他の大陸からの援軍で難を逃れたが、死傷者がかなりの数になった。街も人の心も壊れ、壊滅と言っても良いくらいであった。
何ら後遺症がなく生き残ったジャック・リジェルだが、彼の家もその例にもれず、家が破壊され身内も少なからず死していった。その悲しみに暮れる暇もなく、次の争いが起こった。魔神王軍は東西南北すべてを一斉に攻め込んできたのだ。北と南と東は自国の防御で手一杯で、壊滅寸前の西の国は壊滅の一歩を辿ると思われた。
そんな時に、どこからともなく彼が現れた。彼は魔神王が攻め込んできた方向から、身に着けている黒のコートをなびかせながら現れたのだ。彼は人間を襲っている魔族を次々に殺しながら、敵将の元へと歩き進んだ。
そんな彼を見たジャック・リジェルは、敵将と戦いながらも見惚れてしまった。彼のその強さ、そしてその優雅さに。あんなにも魔族に圧倒することができるその力は誰もが手を止めてしまうほどのものであった。敵将もその例外ではなく、唖然としていた。
彼の次の言葉と敵将を打ち取る光景は、私は生涯忘れることができないものになった。
『君が、ここに攻め込んできている魔神王軍の将軍だね。何の恨みもないけど、僕は君を殺さなければならない。恨むなら恨んでくれて構わない。ただ、僕だけにしてほしい』
それを言った彼は、目にもとまらぬ速さによって持っていた剣で敵将を縦に真っ二つにした。その鮮やかさは『剣の英雄』となった今の私でもできないだろう。私は本気で彼に一目ぼれしてしまった。この時は戦いや強さによるものであったが、彼と旅をするにつれて彼の内面にも惚れてしまった。
その後、西の大陸の復興は『全能の魔法使い』の彼の魔法ではかどり、西の大陸は全大陸随一の要塞都市へと変貌した。
だが、そんな暮らしは長く続かない。幸せは、不幸せがあることで存在価値があるもので、不幸せが永遠に来ないことなどあり得ない。
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まだ魔神王が人類排他的思考だと分かり切っていない時であったから、戦える状態ではなかった西の大陸はすぐに壊滅寸前まで追い込まれた。ジャック・リジェルは自身の国を守るために戦ったが、それもむなしく西の国はどんどんと追い込まれていった。壊滅する前に、他の大陸からの援軍で難を逃れたが、死傷者がかなりの数になった。街も人の心も壊れ、壊滅と言っても良いくらいであった。
何ら後遺症がなく生き残ったジャック・リジェルだが、彼の家もその例にもれず、家が破壊され身内も少なからず死していった。その悲しみに暮れる暇もなく、次の争いが起こった。魔神王軍は東西南北すべてを一斉に攻め込んできたのだ。北と南と東は自国の防御で手一杯で、壊滅寸前の西の国は壊滅の一歩を辿ると思われた。
そんな時に、どこからともなく彼が現れた。彼は魔神王が攻め込んできた方向から、身に着けている黒のコートをなびかせながら現れたのだ。彼は人間を襲っている魔族を次々に殺しながら、敵将の元へと歩き進んだ。
そんな彼を見たジャック・リジェルは、敵将と戦いながらも見惚れてしまった。彼のその強さ、そしてその優雅さに。あんなにも魔族に圧倒することができるその力は誰もが手を止めてしまうほどのものであった。敵将もその例外ではなく、唖然としていた。
彼の次の言葉と敵将を打ち取る光景は、私は生涯忘れることができないものになった。
『君が、ここに攻め込んできている魔神王軍の将軍だね。何の恨みもないけど、僕は君を殺さなければならない。恨むなら恨んでくれて構わない。ただ、僕だけにしてほしい』
それを言った彼は、目にもとまらぬ速さによって持っていた剣で敵将を縦に真っ二つにした。その鮮やかさは『剣の英雄』となった今の私でもできないだろう。私は本気で彼に一目ぼれしてしまった。この時は戦いや強さによるものであったが、彼と旅をするにつれて彼の内面にも惚れてしまった。
その後、西の大陸の復興は『全能の魔法使い』の彼の魔法ではかどり、西の大陸は全大陸随一の要塞都市へと変貌した。
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