全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
107 / 117
都市開発本格始動

107:迷宮へ。

しおりを挟む
「だあああああぁ! 本を読むのはやめだ! 外に遊びに行こうぜ!」

 俺に完全敗北したグレゴリーは体を動かすことを提案してきた。

「私はいいわ」
「行かない」
「私もここにいたいな!」

 しかしアヤとアリスとヘルに断られて再び撃沈した。

「僕と一緒に行く?」
「行かねぇよ! 誰が行くかよ!」

 まあ承諾されてもヘルに止められていただろうな。

「グレゴリー、少しはヒルくんみたいに文字を覚えたらいいじゃない」
「うるせぇ、アヤだって読めないだろ」
「そうかしら? 試してみる?」
「よっしゃ! 俺が勝ったら一緒に外に遊びに行くぞ!」
「負けることがないからいいわよ」

 アヤとグレゴリーが勝負をしていると、ヘルがすぐそばまで来た。

「アーサーさま、この秘密基地はどういうことですか?」
「あっ、やっぱり気が付いた?」
「当たり前です」
「前に来た時に僕も気が付いていたから、危なそうな自爆スイッチとかは消しておいたよ」
「ですが、この秘密基地はランスロット家まで繋がっていますよ? これはアーサーさまの仕業ですか?」
「それは違うよ。たぶんランスロット家に襲撃しようとしていた人たちの秘密基地だろうね。何か起こってたの知ってる?」
「……いえ、知りません。この場所が閉鎖されていないということは、犯人はこの進入路を使わずに捕まったか、計画をやめたかになりますね」
「そっか」

 ベラが知らないということは、これができたのは少なくとも五年以上は前になるな。

「危険は取り除いているから、アリスたちの秘密基地は許してね」
「……かしこまりました」

 すごく迷っている感じだったが納得してくれたベラ。

「はい、私の勝ちね」
「……いつも俺の方が勉強しているのに……」
「グレゴリーは才能がないのかもしれないわね」
「うぐっ!」

 アヤとグレゴリーの勝負はアヤが勝ち、さらにグレゴリーに追い打ちをかけるアヤ。

 文字を覚えるのに才能はいらないと思うし、追い打ちは死体撃ちだぞ。好きな子にそんなことを言われるグレゴリーの身にもなってみろ。

「うがぁ! もうやめだ! 外に行ってくる!」

 走り去ったグレゴリーを、誰一人として止める者はいなかった。

「あんな感じだから嫌いなのよね」
「私も」

 哀れ、グレゴリー。

「でもあの年頃の男の子はあんな感じだと思うよ?」
「いやいやいや、それより年下のヒルくんが言うことじゃないわよ? あれがうるさいだけよ」

 あれ、これ、グレゴリーの好感度を下げている要因って俺なんじゃないか……? いや、グレゴリーが悪いことにしておこう。

 でも少しだけ罪悪感はあるし、ちょっとやってみたいことがあるからグレゴリーがいない間にグレゴリーのために秘密基地を少し改造してあげよう。

「あれ? 何かここに押せる場所があるよ?」

 俺が秘密基地を改造したことにヘル以外誰も気づくことはなく、唯一気が付いたヘルは何をしているのかと聞いてくる前にそう言い放った。

「どこ?」
「ここだよ」
「本当ね。何かしら?」
「押してみる」
「不用心すぎるわ!」

 アヤの制止を無視してスイッチを押したアリス。

 すると地下へと続く道が現れた。

「……どこに続いているのかしら?」
「分からない。だから行ってみる」
「あなたのそういうマイペースなところはすごいと思うけど、状況が違うとバカにしか思えないわよ」
「大丈夫。それで秘密基地を見つけれたから」
「……そうだったわ」

 アヤはアリスに納得させられていた。

「わぁ! こんなところ今まで見つかってなかったんだ!」
「そうよね。不思議ね」

 ヘルちゃんによる遠回しな文句が俺に向かってきた。

「行こう」
「あっ、もう……」

 いつもアリスが先行して、それにアヤが付いて行くのが普通なんだろうな。

 俺もヘルもアリスに付いて行くが、ヘルがまた俺の近くによってきた。

「どういうことですかアーサーさま。秘密基地を改造なされて」
「いや、こういう感じにやってみたかったからね」
「……まさか、屋敷でもやっていますか?」

 おぉ、鋭いなベラは。

「それはどうかな?」
「帰ったらくまなく調べます」

 ベラに見つけられるかどうか、見ものだな……!

 少し階段を降りたところで、上の広間よりも広い空間につながった。

「うわぁ……」
「……なにここ、すごいわね」

 アリスとアヤが見ている光景は、様々な道に分岐している迷宮だった。

 ここはさっきの秘密基地よりも下の空間ではなく、異次元に作られた空間になっている。

 改造したのは下に続く道を作ったことで、この空間はすぐに作り終えることができている。

 まあこの空間に俺の秘密基地を繋げることができるから、アリスの秘密基地からランスロット家につながる道は完全に塞いでおこう。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

2回目の人生は異世界で

黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。

みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい! だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……

処理中です...