全能で楽しく公爵家!!

山椒

文字の大きさ
上 下
91 / 109
王都でも渦中

091:未来図。

しおりを挟む
 馬車が動き出してもベラのお尻を叩き続けたこと約百回をして罰を終えた。

「ありがとうございます。これから何かすればまた罰をお与えください」
「罰って意味知ってる? 今後やらないためにやるんだよ?」

 また罰を受けるために何かしでかしそうで怖いんだが。何が怖いかって、どんな罰を要求してくるかだよね。受ける側なのにおかしいよね。

「ッ……!」

 俺の正面に座ろうとしたベラだが、お尻が痛いのか顔をしかめたのが分かった。微妙な顔の動きだったが分かった。

「大丈夫? 治そうか?」
「いいえ、これは罰なので大丈夫です。アーサーさまに与えられた傷を刻み付けておきます」
「あー、うん」

 どうしてこうなった。もしかしてグリーテンと会話してそっち方面に向かってしまったのではないか? 俺が監視していたはずだが、俺のいないところで何か話していたのかもしれない。

「でも座ると痛いんだよね?」
「はい。ですがそれも罰の一部ですから」

 ベラに言われるがままにお尻を叩いていたし、何なら少しだけ楽しいと思っていた自分がいたことに恐怖を覚えたが、それでも少しだけ罪悪感がある。

「膝枕をしてあげるよ」

 座席の端によって、俺の膝の上をポンポンとする。

 だがベラは俺の膝の上を凝視するだけで何も答えようとはしなかった。

「もしかして嫌だった?」
「い、いえ……お言葉に甘えます」
「うん、そうしたらいいよ」

 ベラは俺の横に来て、おそるおそる俺の膝の上に頭を乗せた。

「何だかこうしていると変な感じだね。いつもは膝枕をしてもらっているのに、今日は僕がしてる」
「私も同じ気持ちです。……少し、眠たくなります」
「いつでも寝ていいよ」
「それはあり得ませんので」

 ベラが寝ているところは七天教会にカチコミに行った時しか見たことがないからな。

 俺の膝枕ごときで眠るとは思えない。

 ベラの頭を見ていると、何だか頭を撫でたくなってきた。でも女性の頭を撫でるのはあまり良くないからな。

 男性が女性の頭を撫でる時はイケメンに限ると相場が決まっている。

 だが、俺には主という立場があるし、何よりほぼ全能があるから撫でても全く問題ないようにできるのだ!

「あっ……」
「ダメだった?」
「いいえ、少し驚いただけです」

 ベラの綺麗な髪にそって頭を撫でる。

 何だかいつもは逆の立場だから変な感じになるが、それでもベラの頭を撫でたいという欲求は止まらない。

 どうせだからベラを眠らせるつもりで撫でていると、急にベラが起き上がった。

「アーサーさま」
「どうしたの?」
「その撫で方は気持ちが良すぎるのでおやめください」
「あっ、うん。ごめんね?」
「いえ、アーサーさまの才能に感服いたしましたが、今はおやめください」

 ベラの目が本気だったから手加減をして撫で続けることにした。

 また三日もかけて帰らないといけないのかと考えると、少しだけ時間の無駄だと思ってしまう。

 こういう時間は別に嫌いではないが、三日もいらない。一日くらいで十分だ。

 ランスロット家も飛行船を持ってもいいのかもしれない。でもどうせだから考えていた空飛ぶ列車を作ってもいいような気がする。

 だがそれをするのなら、絶対に公表しないといけないから厄介ごとになりそうなんだよな。だから飛行船を作った方が簡単に済む。

 でも文明を発達させるということは、物流も活発にさせないといけないから、人と物を短時間で運ぶ移動手段は重要だ。

「ねぇ、ベラ」
「はい」
「ベラはこういう移動する時の時間は好き?」
「アーサーさまが一緒なら、好きです」
「それはありがとう」
「アーサーさまはお好きではありませんか?」
「僕も好きだけど、一日くらいがちょうどいい気がする」
「やることもなければ退屈でしょうね」

 ベラに少しだけこれからのことを話しておくか。

「僕はね、人とか物が簡単で短時間で移動できるものを考えているんだ」
「どんなものですか?」
「先端以外は同じ箱がいっぱい連なっているものだよ」
「あまり想像ができないですね。それで人や物を運ぶのですか?」
「箱と言っても、一つ一つがこの馬車より大きいものだよ」
「それをマンガとかでかいてくだされば、分かるかもしれません」

 あぁ、そうか。そうすればイザベルさんの説明やお父上様の説明も簡単にできるのか。

 それにマンガかアニメでそれを見せていれば、それを簡単に受け入れることが可能だ。どうしてそれを早く気が付かなかったんだ。

「ありがとう、ベラ。いいことを気が付けた」
「お役に立てたのなら何よりです」

 ランスロットの家を改良するのもしつつ、お父上様からどこか空いている土地があればもらいたいところだ。

 そこで前世の地球、いやそれ以上の文明を作り出すことは今の俺は可能だ。そこで自動運転を始め、地下をふんだんに使って超文明都市を作るのもアリだな。

 そしてそれをマンガやアニメの作品の舞台にして、何かの作品を作ればそこに興味を持ってくる人がいるだろう。

 それが一番手っ取り早い気がする。前世の世界では異世界ファンタジー系が人気だったけど、この世界はどういう作品が人気になるのか分からない。

 だからそこはイザベルさんに確認してもらって作品を出していこう。

「ランスロット領地で、どこか誰も住んでいなくて、何もない場所はあるのかな?」
「無駄にしている場所はあります。そんなところで何かをするおつもりですか?」
「うん。僕が都市を作りたいなぁって」
「……どういう都市をお作りになるおつもりですか?」

 前の世界の人間だと分かるが、こちらの世界の人間だとあまり分かりづらいから、ここは魔道具で分かりやすくすることにした。

 円盤のような形をした手のひらサイズの魔道具を作り出し、風魔法でゆっくりと足元に設置した。

 その魔道具を起動すると、俺とベラの前にホログラムで何もない大地が出現した。

「これは……リアルタイムマップのようなものですか?」
「ううん、違うよ。これは空想を可視化したもの。だからこの大地は僕の想像でできたもので、こうすればランスロットの屋敷も出てくる」

 俺がホログラムに触れて大地をタッチするとランスロットの屋敷が中央に現れた。

「僕が言いたかった、箱が連なっているものがこれだよ」

 前世の世界だとお馴染みな至って普通の列車を出現させた。

「これが……見たことがないものですね」
「列車って言うんだけど、これは線路の上を走るもので、特定の場所に停車して動き回る乗り物だよ」

 試しに線路を引いて列車を走らせておく。

「……これくらいの速さで動くのですね」
「これよりも速い列車、新幹線も考えているよ。列車って言っても、運行用途によっては多種多様な列車を用意しようかなって考えてるかな」
「それで人や物の移動を活発にするわけですね」
「そう思っているよ。だからその一歩に、僕が考えている都市を作りたいなぁって考えているところだよ」

 この世界で交通革命を起こそうとしているわけだ。できることなら色々な革命を起こしていかないと文明は発達しない。

 まあ、そこら辺は追々といこうか。色々と手を回しておいた方がいいだろう。

 前世の環境を整えてダラダラと暮らすのを目標にするのはいいが、それにしてはかなり文明が遅れていることを痛感してしまう。

 何でこんな世界で前世のような文明にしようと思ったのか。俺がダラダラしたいから。

 適当にホログラムをいじっていくと、段々と前世で見たような都市部のような高層ビルがあったり地下鉄が通っている場所になっていく、ランスロットの屋敷が中央にある状態でね。

「……変なところですね」

 そのホログラムの街並みを見たベラは、体を起こして興味津々な目をしていた。

「これは都市部だから、それ以外はこれみたいに賑やかではないよ」
「なるほど……」

 こういうところをクレアと一緒に見ようとしたのだが、最初に見るのがベラになってしまったか。

 でもこういうイメージ図を相手に共有するのはいいことだから、協力者には積極的に伝えて行こう。

 今までは小道具を作っていただけに過ぎないが、今度は大規模にするつもりだ。

 その後、一日も経たずしてグリーテンが馬車に転移してきて、このホログラムを見て興味津々に聞いてきたのは言うまでもない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

流石に異世界でもこのチートはやばくない?

裏おきな
ファンタジー
片桐蓮《かたぎりれん》40歳独身駄目サラリーマンが趣味のリサイクルとレストアの資材集めに解体業者の資材置き場に行ったらまさかの異世界転移してしまった!そこに現れたのが守護神獣になっていた昔飼っていた犬のラクス。 異世界転移で手に入れた無限鍛冶 のチート能力で異世界を生きて行く事になった! この作品は約1年半前に初めて「なろう」で書いた物を加筆修正して上げていきます。

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

処理中です...