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全能の爆誕
033:ステータス付与。
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クレアさんに課題を渡してから、クレアさんはかなり頑張っているようだった。
すべてのスマホの状態は俺やアイが確認することができるし、アイが昨日の夜はクレアさんに色々と聞かれたと言っていた。
そういうのは帰ってからして、今はランスロット家を楽しめばいいのに真面目だな。まあ真面目で、生きがいを感じているらしいから、止めるのもどうかと思った。
ただ、これで体を壊されたら元も子もないから……チートを使うしかない。
明日にはサグラモール家は帰るから、今日がサグラモール家がここに滞在する最終日。
俺の全能、というか魔道具があればクレアさんに会うことは簡単にできるけど、それが魔道具でできると分かればそれは問題になる。
まだグリーテンみたいな強い人が転移できるのはいい。だが魔道具となればそれ一つだけで争いが起こるかもしれない。
だから転移は俺が強くなってとか、交通手段を早々に作り上げるとか、そういう状況でなければ簡単にクレアさんには会いには行かない。
というわけで今日しかない。
今日はクレアさんと一緒に遊ぶことになっているから、いざクレアさんのところへ!
「遊びに来たよー!」
訪ねてきたノエルさんに出鼻をくじかれた。
「……お姉ちゃんたちと一緒に遊ぶと聞いていましたけど……」
「アーサーくんと遊びたいって言ったら快く返事をしてくれたよ?」
そんなわけがない。そんなことがあったとしても、最低でもルーシー姉さんが一緒に来ているはずだ。
「まあ、シルヴィーとルーシーと摸擬戦をして勝った、という前置きがあるけどね」
「そういうことですか」
それなら納得だ。
ブリテン王国では強い人がこういうことができるから弱肉強食が良く似合う。
さすがに問答無用というわけではなさそうだけど、それを許容してしまう姉さんたちがいるのも事実。
「というわけで一緒に遊ぼ」
「いえ、僕はクレアさんと一緒に遊ぶので」
「それに私も付いて行くね」
クレアさんにチートを与えたいと思っているからクレアさんは邪魔なんだが。
「さすがにクレアさんに悪いです」
「いいじゃーん。三人の方が楽しいよ?」
三人と言うかあなただけが楽しいだけでは?
「そんなに僕と一緒にいたいんですか?」
「そうだよ」
からかうようにそう言ってみると、ノエルさんはあっけらかんとして答えた。
「そ、そうなんですか……?」
「当然だよ。今までは全然面白くない人たちしかいなかったし、何をしてもつまらないと思っていたんだよ。でもね、そんな時にアーサーくんと出会ったんだから、一緒にいたいって思うのは当たり前でしょ?」
そう言ってウインクしてきたノエルさん。
真っすぐそう好意を向けられると恥ずかしくなってしまう。
「それはありがとうございます。嬉しいです」
「えっ、それなら私をお嫁さんにしてくれる?」
「何でですか?」
「嬉しいならお嫁さんにしてくれてもいいじゃん」
「飛躍しすぎですよ」
「クレアちゃんのサポートなら私が一番できるよ? 何たってお姉ちゃんなんだから」
その言葉がマジなのかは甚だ疑問だが、クレアさんを任せておけるのはノエルさんしかいないと思えるのが不思議だ。
何だかんだ言っても、クレアさんを構いたいのかもしれない。
そうなると、ノエルさんには一緒に来てもらった方がいいのか。
「分かりました。それなら一緒にクレアさんのところに行きましょう」
「さすがアーサーくん! 分かっているね!」
スマホをいじらずに脳内からクレアさんにメッセージを送る。
『ごめんなさい。ノエルさんが一緒に来ることになりました』
クレアさんからすぐに返事が来た。
『はい』
あれだな。前世でもそうだったけど、こういう感じで送られて来たら怒っていると思ってしまうよな。
でも本当に怒っている感じだから会った時に謝らないと。
☆
クレアさんと待ち合わせをしていたランスロット家の庭園のガゼボで、クレアさんは座っており、俺とノエルさんの方、というよりノエルさんの方を見て眉をひそめた。
「そんな顔をしなくてもいいじゃん、クレアちゃん」
「……別に、そんな顔はしていません」
「ウソだよね。かわいいー!」
クレアさんに抱き着くノエルさんだが、クレアさんは不機嫌な表情が増しただけだった。
「クレアさん。ノエルさんがついてきたのは僕が許可したからです」
「……アーサーさまが?」
「はい。クレアさんに力を差し上げようと思って」
俺の言葉にも首をかしげるクレアさんと、何が起きるのか興味津々なノエルさん。
今ここではベラもついて来ないように言っているが、少し遠くにいるのは分かっている。
でもここで何をしているのかは分からないように細工をしているから大丈夫だ。
ベラにも話していいような気がするが、ベラにそんなに負担をかけないようにするためと言い訳をしておく。
俺はクレアさんの隣に座り、ノエルさんはクレアさんとは反対側の俺の隣に座る。
「クレアさんの隣じゃなくて僕の隣ですか?」
「そうだよ。大丈夫、こうして見ておくから」
俺の頭にそのお胸さまを乗せて俺とクレアさんを見下ろすノエルさん。
それだけでもクレアさんが不機嫌になるし、それを分かってやっているノエルさんはヤバいだろ。
「アーサーさま。何をされますか? お姉さまがいるのなら私は勉強したいのですが」
「勉強? 何の勉強をするの?」
「お姉さまには関係ありません」
「えー。アーサーくん、勉強ってなに?」
どうせノエルさんにバレそうだからと思ったが、クレアさんの視線からそれが嫌だと理解した。
「それは教えられません。僕とクレアさんの秘密ですから」
「そうです。アーサーさまとの秘密です」
うん、選択肢は間違っていなかったようだ。
「なんだ、つまんない」
「それならお姉さまはどこかに行けばいいです」
「それもつまんない」
「それなら黙っていてください」
「……クレアちゃん、よく喋るようになったね」
「お姉さまの気のせいです」
いやこれは喋るようになったんだと思う。だってクレアさんは自信に満ちているのだから。
「それで、アーサーさま。どうなされますか?」
「あぁ、そうでした。クレアさんは僕が出した課題を頑張っているようですが、少し頑張りすぎているような気がします。初日でそれだと持ちませんよ」
「そんなことはありません。楽しくて仕方がないんですから」
そりゃそうだろうな。楽しそうなのは表情から分かる。
あとあれだ。スマホで見るのはあれだからタブレットを渡せば少しはやりやすくなるだろう。
できるだけクレアさんの環境を整えておきたい。
「クレアさんがそう言うのなら、僕から力をプレゼントしたいと思います」
「「力?」」
クレアさんとノエルさんの反応が重なる。
「はい。僕の固有魔法は『創造』で、スマホを作り出せるんですけど、それを応用すればクレアさんにこの貴族社会でも問題ないくらいに才能を付与することができます。そうすれば、勉強の時間も増えると思います。どうですか?」
「お断りします」
「えっなんで?」
「ぷっ」
即座に否定してくるクレアさんに思わず聞いてしまった。そして人の頭の上で笑いをこらえるのはやめてほしいんですけど? ノエルさん。
「私は私の力だけで頑張りたいんです。アーサーさまのお心遣いはとても嬉しいですけど、私自身が許せなくなりそうですから」
ふぅむ、簡単にチートを引き受けてくれると思っていたのにな。
「クレアちゃんって意外と頑固なところがあるから。それよりもどうやって力を付与するの?」
あなたは別に興味を示さなくていいんですよ。可愛いから許すけど。
しかし、それなら少しだけ変えたものを渡さないといけないのか。
「……分かりました。それなら頑張った分だけ報酬がもらえる形にしましょう」
「どういうことですか? 私は力はいりませんが……」
「僕が渡すものはただ力が得られるものではありません。力を引き出す力です」
俺はクレアさんの手を取り、クレアさんに俺の加護を与えた。
「ステータスと言ってみてください」
「は、はい……ステータス」
クレアさんがステータスと言うと、クレアさんと俺にのみ前世のラノベではお馴染みのステータスが出現した。
「これは……」
「これはクレアさんのステータスです。本人であるクレアさんと、与えた僕にしか見えないものですから安心してください」
「お姉さまは見えないんですか?」
「うーん、見えないね。二人で何を言っているんだろって感じ」
「これを指で操作しようとすれば、動かすことができるはずです」
「……あっ、動かせました」
「ねー、私だけのけ者にされてつまんなーい」
ごねているノエルさんを無視して、俺はクレアさんに説明を続ける。
「クレアさんに与えた力は引き出す力です。ここにある目標を達成すれば、ここにある報酬がもらえるようになっています」
ゲームみたいな感じだな。何だかこうしているとゲームがしたくなったから作ろ。
「この、絵を描けるようになるという目標を達成すれば、ここに書いてある筋力+100がもらえるということですよね?」
「そういうことです」
見た目標の中でこれしか分からなかったのだろう。
「これならクレアさんの力で達成しつつ、力を引き出すことができます。これで許してください」
「……ありがとうございます。私のワガママに付き合わせてしまって」
「いえ、大丈夫です!」
これで納得してくれて良かった。まあ引き出すと言ったけど、実際は与えているんだけどね。
でもクレアさんのそのやる気がとんでもないことになりそうで怖いから、ここはウソをついておく。
「……私もステータスが欲しい!」
「はいはい、あげますよ」
「さすがアーサーくん。分かってるね!」
これ以上無駄な力を使いたくなくてノエルさんにステータスを付与してしまった。
ノエルさんには個別の条件と報酬を与えているから、これはこれでとんでもない存在が出来上がりそうだ。
☆
最終日は子供たち五人で集合写真を撮ったり、家族写真やら集合写真を撮って記録を残すことができた。
そしてサグラモール家の人たちが帰る時間になった。
「エリオット、また来るといいよ。いつでも歓迎する」
「あぁ、また来るぞ。今度は美味い酒でも持ってくる」
「あーん! スザンヌと離れるなんていやよぉ!」
「も~、ゾーイは甘えん坊なんだからぁ」
大人たちは大人たちで言葉を交わし、子供たちは子供たちで集まっていた。
「また来るね! アーサーくん!」
「はい、また来てください」
「まぁでもスマホがあるからあまり別れって感じがしないよね」
「そこがスマホのいいところです。……言っておきますが、くれぐれも」
「大丈夫、そんなへまはしないから」
「ありがとうございます」
「こんなすごいものをタダでくれたんだから、それくらいは当たり前だよ」
ノエルさんと言葉を交わして、クレアさんの方を向く。
「次会う時、楽しみにしています」
「――はいっ。楽しみにしていてください。きっと失望はさせません」
「もっと肩の力を抜いてくれればなおいいんですけどね」
俺がふと他の方向に顔をやると、クレアさんが一歩踏み出してきて俺の頬に唇を当ててきた。
「……く、クレアさん?」
「これくらい、許してください」
はにかむクレアさんにしてやられてしまった。恥ずかしいな。
こちらを見ている大人たちもニヤニヤとしているところが少しイラっとする。
そしてサグラモール家の皆さんが馬車に乗り込んでノエルさんが窓から身を乗り出してこちらに手を振ってくる。
「またね~!」
ノエルさんに大きく手を振って応える。
クレアさんとノエルさん、いや主にノエルさんが帰ったからかなり屋敷が静かに感じるだろうな。
でもクレアさんがいなくなったことの方が寂しさを感じてしまう俺がいた。
頬に感覚が残ってしまっているから、恥ずかしさもあるか。
すべてのスマホの状態は俺やアイが確認することができるし、アイが昨日の夜はクレアさんに色々と聞かれたと言っていた。
そういうのは帰ってからして、今はランスロット家を楽しめばいいのに真面目だな。まあ真面目で、生きがいを感じているらしいから、止めるのもどうかと思った。
ただ、これで体を壊されたら元も子もないから……チートを使うしかない。
明日にはサグラモール家は帰るから、今日がサグラモール家がここに滞在する最終日。
俺の全能、というか魔道具があればクレアさんに会うことは簡単にできるけど、それが魔道具でできると分かればそれは問題になる。
まだグリーテンみたいな強い人が転移できるのはいい。だが魔道具となればそれ一つだけで争いが起こるかもしれない。
だから転移は俺が強くなってとか、交通手段を早々に作り上げるとか、そういう状況でなければ簡単にクレアさんには会いには行かない。
というわけで今日しかない。
今日はクレアさんと一緒に遊ぶことになっているから、いざクレアさんのところへ!
「遊びに来たよー!」
訪ねてきたノエルさんに出鼻をくじかれた。
「……お姉ちゃんたちと一緒に遊ぶと聞いていましたけど……」
「アーサーくんと遊びたいって言ったら快く返事をしてくれたよ?」
そんなわけがない。そんなことがあったとしても、最低でもルーシー姉さんが一緒に来ているはずだ。
「まあ、シルヴィーとルーシーと摸擬戦をして勝った、という前置きがあるけどね」
「そういうことですか」
それなら納得だ。
ブリテン王国では強い人がこういうことができるから弱肉強食が良く似合う。
さすがに問答無用というわけではなさそうだけど、それを許容してしまう姉さんたちがいるのも事実。
「というわけで一緒に遊ぼ」
「いえ、僕はクレアさんと一緒に遊ぶので」
「それに私も付いて行くね」
クレアさんにチートを与えたいと思っているからクレアさんは邪魔なんだが。
「さすがにクレアさんに悪いです」
「いいじゃーん。三人の方が楽しいよ?」
三人と言うかあなただけが楽しいだけでは?
「そんなに僕と一緒にいたいんですか?」
「そうだよ」
からかうようにそう言ってみると、ノエルさんはあっけらかんとして答えた。
「そ、そうなんですか……?」
「当然だよ。今までは全然面白くない人たちしかいなかったし、何をしてもつまらないと思っていたんだよ。でもね、そんな時にアーサーくんと出会ったんだから、一緒にいたいって思うのは当たり前でしょ?」
そう言ってウインクしてきたノエルさん。
真っすぐそう好意を向けられると恥ずかしくなってしまう。
「それはありがとうございます。嬉しいです」
「えっ、それなら私をお嫁さんにしてくれる?」
「何でですか?」
「嬉しいならお嫁さんにしてくれてもいいじゃん」
「飛躍しすぎですよ」
「クレアちゃんのサポートなら私が一番できるよ? 何たってお姉ちゃんなんだから」
その言葉がマジなのかは甚だ疑問だが、クレアさんを任せておけるのはノエルさんしかいないと思えるのが不思議だ。
何だかんだ言っても、クレアさんを構いたいのかもしれない。
そうなると、ノエルさんには一緒に来てもらった方がいいのか。
「分かりました。それなら一緒にクレアさんのところに行きましょう」
「さすがアーサーくん! 分かっているね!」
スマホをいじらずに脳内からクレアさんにメッセージを送る。
『ごめんなさい。ノエルさんが一緒に来ることになりました』
クレアさんからすぐに返事が来た。
『はい』
あれだな。前世でもそうだったけど、こういう感じで送られて来たら怒っていると思ってしまうよな。
でも本当に怒っている感じだから会った時に謝らないと。
☆
クレアさんと待ち合わせをしていたランスロット家の庭園のガゼボで、クレアさんは座っており、俺とノエルさんの方、というよりノエルさんの方を見て眉をひそめた。
「そんな顔をしなくてもいいじゃん、クレアちゃん」
「……別に、そんな顔はしていません」
「ウソだよね。かわいいー!」
クレアさんに抱き着くノエルさんだが、クレアさんは不機嫌な表情が増しただけだった。
「クレアさん。ノエルさんがついてきたのは僕が許可したからです」
「……アーサーさまが?」
「はい。クレアさんに力を差し上げようと思って」
俺の言葉にも首をかしげるクレアさんと、何が起きるのか興味津々なノエルさん。
今ここではベラもついて来ないように言っているが、少し遠くにいるのは分かっている。
でもここで何をしているのかは分からないように細工をしているから大丈夫だ。
ベラにも話していいような気がするが、ベラにそんなに負担をかけないようにするためと言い訳をしておく。
俺はクレアさんの隣に座り、ノエルさんはクレアさんとは反対側の俺の隣に座る。
「クレアさんの隣じゃなくて僕の隣ですか?」
「そうだよ。大丈夫、こうして見ておくから」
俺の頭にそのお胸さまを乗せて俺とクレアさんを見下ろすノエルさん。
それだけでもクレアさんが不機嫌になるし、それを分かってやっているノエルさんはヤバいだろ。
「アーサーさま。何をされますか? お姉さまがいるのなら私は勉強したいのですが」
「勉強? 何の勉強をするの?」
「お姉さまには関係ありません」
「えー。アーサーくん、勉強ってなに?」
どうせノエルさんにバレそうだからと思ったが、クレアさんの視線からそれが嫌だと理解した。
「それは教えられません。僕とクレアさんの秘密ですから」
「そうです。アーサーさまとの秘密です」
うん、選択肢は間違っていなかったようだ。
「なんだ、つまんない」
「それならお姉さまはどこかに行けばいいです」
「それもつまんない」
「それなら黙っていてください」
「……クレアちゃん、よく喋るようになったね」
「お姉さまの気のせいです」
いやこれは喋るようになったんだと思う。だってクレアさんは自信に満ちているのだから。
「それで、アーサーさま。どうなされますか?」
「あぁ、そうでした。クレアさんは僕が出した課題を頑張っているようですが、少し頑張りすぎているような気がします。初日でそれだと持ちませんよ」
「そんなことはありません。楽しくて仕方がないんですから」
そりゃそうだろうな。楽しそうなのは表情から分かる。
あとあれだ。スマホで見るのはあれだからタブレットを渡せば少しはやりやすくなるだろう。
できるだけクレアさんの環境を整えておきたい。
「クレアさんがそう言うのなら、僕から力をプレゼントしたいと思います」
「「力?」」
クレアさんとノエルさんの反応が重なる。
「はい。僕の固有魔法は『創造』で、スマホを作り出せるんですけど、それを応用すればクレアさんにこの貴族社会でも問題ないくらいに才能を付与することができます。そうすれば、勉強の時間も増えると思います。どうですか?」
「お断りします」
「えっなんで?」
「ぷっ」
即座に否定してくるクレアさんに思わず聞いてしまった。そして人の頭の上で笑いをこらえるのはやめてほしいんですけど? ノエルさん。
「私は私の力だけで頑張りたいんです。アーサーさまのお心遣いはとても嬉しいですけど、私自身が許せなくなりそうですから」
ふぅむ、簡単にチートを引き受けてくれると思っていたのにな。
「クレアちゃんって意外と頑固なところがあるから。それよりもどうやって力を付与するの?」
あなたは別に興味を示さなくていいんですよ。可愛いから許すけど。
しかし、それなら少しだけ変えたものを渡さないといけないのか。
「……分かりました。それなら頑張った分だけ報酬がもらえる形にしましょう」
「どういうことですか? 私は力はいりませんが……」
「僕が渡すものはただ力が得られるものではありません。力を引き出す力です」
俺はクレアさんの手を取り、クレアさんに俺の加護を与えた。
「ステータスと言ってみてください」
「は、はい……ステータス」
クレアさんがステータスと言うと、クレアさんと俺にのみ前世のラノベではお馴染みのステータスが出現した。
「これは……」
「これはクレアさんのステータスです。本人であるクレアさんと、与えた僕にしか見えないものですから安心してください」
「お姉さまは見えないんですか?」
「うーん、見えないね。二人で何を言っているんだろって感じ」
「これを指で操作しようとすれば、動かすことができるはずです」
「……あっ、動かせました」
「ねー、私だけのけ者にされてつまんなーい」
ごねているノエルさんを無視して、俺はクレアさんに説明を続ける。
「クレアさんに与えた力は引き出す力です。ここにある目標を達成すれば、ここにある報酬がもらえるようになっています」
ゲームみたいな感じだな。何だかこうしているとゲームがしたくなったから作ろ。
「この、絵を描けるようになるという目標を達成すれば、ここに書いてある筋力+100がもらえるということですよね?」
「そういうことです」
見た目標の中でこれしか分からなかったのだろう。
「これならクレアさんの力で達成しつつ、力を引き出すことができます。これで許してください」
「……ありがとうございます。私のワガママに付き合わせてしまって」
「いえ、大丈夫です!」
これで納得してくれて良かった。まあ引き出すと言ったけど、実際は与えているんだけどね。
でもクレアさんのそのやる気がとんでもないことになりそうで怖いから、ここはウソをついておく。
「……私もステータスが欲しい!」
「はいはい、あげますよ」
「さすがアーサーくん。分かってるね!」
これ以上無駄な力を使いたくなくてノエルさんにステータスを付与してしまった。
ノエルさんには個別の条件と報酬を与えているから、これはこれでとんでもない存在が出来上がりそうだ。
☆
最終日は子供たち五人で集合写真を撮ったり、家族写真やら集合写真を撮って記録を残すことができた。
そしてサグラモール家の人たちが帰る時間になった。
「エリオット、また来るといいよ。いつでも歓迎する」
「あぁ、また来るぞ。今度は美味い酒でも持ってくる」
「あーん! スザンヌと離れるなんていやよぉ!」
「も~、ゾーイは甘えん坊なんだからぁ」
大人たちは大人たちで言葉を交わし、子供たちは子供たちで集まっていた。
「また来るね! アーサーくん!」
「はい、また来てください」
「まぁでもスマホがあるからあまり別れって感じがしないよね」
「そこがスマホのいいところです。……言っておきますが、くれぐれも」
「大丈夫、そんなへまはしないから」
「ありがとうございます」
「こんなすごいものをタダでくれたんだから、それくらいは当たり前だよ」
ノエルさんと言葉を交わして、クレアさんの方を向く。
「次会う時、楽しみにしています」
「――はいっ。楽しみにしていてください。きっと失望はさせません」
「もっと肩の力を抜いてくれればなおいいんですけどね」
俺がふと他の方向に顔をやると、クレアさんが一歩踏み出してきて俺の頬に唇を当ててきた。
「……く、クレアさん?」
「これくらい、許してください」
はにかむクレアさんにしてやられてしまった。恥ずかしいな。
こちらを見ている大人たちもニヤニヤとしているところが少しイラっとする。
そしてサグラモール家の皆さんが馬車に乗り込んでノエルさんが窓から身を乗り出してこちらに手を振ってくる。
「またね~!」
ノエルさんに大きく手を振って応える。
クレアさんとノエルさん、いや主にノエルさんが帰ったからかなり屋敷が静かに感じるだろうな。
でもクレアさんがいなくなったことの方が寂しさを感じてしまう俺がいた。
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