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06:ヤンデレヒロインのターン。
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最初に椿先輩、次に日向、その次に佐倉、その次に大石、そして最後に木間の順で俺に近づいてきたわけで、俺のモブライフを脅かそうとしているゲームヒロインたちだ。
もう本当に俺のプライベートの時間がダンジョンくらいしかなくなっているから、本格的にどうするかを考えないといけないと思っている今日。
それとなく彼女たちに気になっている男たちを聞いてみたが、全くいないと全員から同じ答えを貰った。だが俺は諦めない。
このゲーム世界の男主人公、甲子純は見たところ普通の男子高生だから、何とか彼女たちと引き合わせて彼女たちが甲子に目を移さないかと画策している。
だがな、それだとモブという地位が脅かされてしまうのだが、もうこの際仕方がない。少しくらい目立っても彼女らが俺から離れてくれればどうということはない。
「甲子とお友達になって、連絡先を交換して、甲子と遊ぶ約束をしつつ彼女たちの誰かとも遊ぶ約束をして甲子と彼女たちを引き合わせるか……」
それか学校で会った時でも紹介すればいい。
あれ、何だかできる気がしてきたな。俺は主人公補正と底力を妄信しているからこう言っているのか分からんが、何か行けそうな気がする。
だってゲームの主人公って結局そういう力を持っていないと誰も女の子を落とせないじゃん。だからできる気がする、いやできる。
「これで彼女たちが離れてくれれば、俺はモブだ……!」
別に彼女たちが嫌いなわけではないし、彼女たちに好感を持っている。
でもそれだと色々なイベントに巻き込まれるし、それでやりたいことができなくなるかもしれないと考えたら、やっぱり前世で悔いがあって死んだからこの世界では悔いを残したくない。
「そうと決まれば、明日からでも甲子とお友達になってくるか」
あー、何だか寒気がするなぁ。風邪でもひいたのか? とりあえずダンジョンにでも行ってから休もう。
☆
俺が甲子とお友達になって甲子に彼女たちを惚れさせる計画を立ててから数日が経ち、あの日の寒気がどういうことか理解できた。
『白木レンをSランク冒険者に任命する』
この文字と共に俺の顔写真がドドン! と校内掲示板に張り出されていたことに、俺は絶望してしまった。
まずどういう理由でこんなことになっているのかが分からない。
それにランクをあげるためには年に一回行われる試験でしかあがらないはずだ。
そして誰がこんな悪意のあることをしたのかが分からない。
こんなことをされたら、俺のモブライフが一気に瓦解することになるのは明白だ。今もなお張り出されている俺の顔があるせいで、俺の方に視線が集まっている。
周りはざわついていて、大半が「こんな奴がどうして……」とか、「何かの間違いなんじゃ?」とか「インチキをしたんだ」とか言われたい放題だ。
うん、本当にそうだと思うな。これは何かの間違いで俺は一モブに過ぎないのだからこんな発表は間違いだ。
「お、俺がSランク……?」
というわけで戸惑っている感じしかできないのである。それもお粗末な演技で。
「おい! 何でてめぇみたいなカスがSランクなんだよ!」
「ひっ! そ、そんなことを言われても……!」
いきなり胸倉をつかまれていかにも不良みたいな男子生徒にキレられているんだが。
別にお前にカスって言われる筋合いはないし、俺がSランクだろうと何だろうとお前には一切関係がない話だが、一応モブという体裁は保っておく。
何だかこいつの顔、見たことがあるなぁ。
あぁ、そうか、あれか。『恋とダンジョン』では恋愛ゲームだがそのゲーム性質上、敵という概念が設定されている。
それは俺が危惧しているイベントの敵もしかり、こういう奴みたいにからんでくる奴しかり。
ネームドキャラであるが、ゲームをしていると主人公が強くなりすぎて一撃で沈めていて忘れるくらいにこいつは弱い。
「ここでてめぇが弱いことを証明してやるよ!」
あー、これはボコボコにされるパターンですか? でもごめんね? 俺のDEFだと痛いフリはできるけど傷は全くつかないんだよ?
弱いフリはできるけど弱くなることはできない。ということはもし全力で殴ったのなら――
「ああぁぁぁぁっ!?」
拳が変な方向に曲がるよな。これ、もう避けてもダメで受けてもこうなるのだからどうしようもなくないか? 衝撃をどうにか分散させるのもちょっと面倒だなと思った俺も悪いんだが。
……えっ、ちょっと待って。何してんの俺? 何で面倒だとか思ってんの? いくら顔がうざくて言ってることもうざい奴だからと言っても、モブライフを自分で潰しに行ってどうするんだよ!?
「何をしているの?」
そんな大きな声でもないのに周りに響き渡る声を出した人物、椿冬花生徒会長が人波を分けてこちらに歩いてきた。
うわぁ、何だかややこしくなりそうな気がするんだがそれは気のせいだろう。
だって彼女らには俺がモブとして生活できるように表では俺をモブとして扱うように取引しているのだから。
「こいつがはっちゃんの拳をこんなにしたんだよ!」
「そうだ! はっちゃんは何もしていないのに!」
拳を破壊されている男の取り巻き二人がそう言って俺を悪者にしようとしてくる。
こいつらは名前も立ち絵も出てきていなかった気がする。舎弟Aと舎弟Bだったか。
「何を言っているのかしら? どうせそれが殴りかかって自滅しただけでしょ?」
椿先輩が驚くほど冷たい声音をその舎弟たちに言い放ったことで周りは静寂が支配した。
「レンくん。今日からSランクね、おめでとう」
「い、いや、Sランクなんて何かの間違いですから! それに、初めて会いましたよね……?」
あれれ? おかしいぞぉ? どうしてそんな笑みを浮かべてくるのか全く分からないなぁ。しかもこんな大衆の前で。
「何を言っているの? 私とレンくんは朝起きてから、夜寝るまで一緒にいる関係じゃない」
椿先輩がそんなことを言ったせいで、静寂からの騒音へと変化した。
どういうことだ!? どうして今までの取引を無視してこんなことを言ってくるんだ!? ……いや、待て。Sランク冒険者の件、椿先輩の仕業なのか?
とりあえずこの場をどうにかして収めないと俺のモブライフが……!
「そんなことを言ってからかわないでください! そんな事実はありません!」
かなりうるさい周りに聞こえるように大きな声で反論した。
だけどほぼ事実だということがかなり最悪だ。
「ふぅん、そんなことを言うのね。それなら私にも考えがあるわ」
あー、何かまずい選択肢をしたのか?
そう思って椿先輩を注視していると、俺の両頬を逃げられないように両手でがっちりと挟んだ。
今すぐにこの力がかなり入った手から離れたいのだが、Sランクの椿先輩から逃れたらどう言われるか分からないし、さっきの不良男の攻撃を考えなしで受けてしまったことが脳裏によぎったことでその場から動けなかった。
椿先輩の顔がどんどんと近づいてきて、俺の唇と椿先輩の唇は重なった。
椿先輩の唇は、何とも言えない感じだ。おそらくこれ以上の唇はないだろうと思うくらいで……童貞には刺激が強すぎるものだ……!
「ふふっ、これで分かってもらえたわね」
唇をはなした椿先輩はかなり色気を振りまいている表情をしており、その表情を見た男女問わずその色気に当てられていた。
さらに憧れの生徒会長とパッとしないモブがキスをしたのだから、周りは阿鼻叫喚になっている。
「ふぁ、ファーストキスがッ!」
でも俺としてはそんなことよりも自身のファーストキスがこんな形で失ってしまわれたことにショックを受けてしまった。
「レンくんのファーストキスはとっくに済ましているわよ?」
「えっ」
えっ、俺のファーストキスがいつの間にかなくなっていた件。
ま、まあそんなものは本人が忘れたらファーストキスは復活するからこのことは忘れよう。
ていうか今はそんなことよりもどうにかしてこの状況をどうにかしないと! モブは無理にしても、椿先輩から離れることを考えないと。
「今、私からどうやって離れようかって考えているわよね?」
「当たり前じゃないですか……!」
周りは阿鼻叫喚の騒ぎだから俺が今何を言っても椿先輩にしか聞こえていないのが幸いだから、恨みを込めて言い返す。
「レンくんが悪いのよ。レンくんが私から離れようとしたんだから、仕方がないのよ」
椿先輩のその言葉は、全身を震えさせてくれた。
どこまで行っても絡みつくような、そんな感じがしてならなかった。
もう本当に俺のプライベートの時間がダンジョンくらいしかなくなっているから、本格的にどうするかを考えないといけないと思っている今日。
それとなく彼女たちに気になっている男たちを聞いてみたが、全くいないと全員から同じ答えを貰った。だが俺は諦めない。
このゲーム世界の男主人公、甲子純は見たところ普通の男子高生だから、何とか彼女たちと引き合わせて彼女たちが甲子に目を移さないかと画策している。
だがな、それだとモブという地位が脅かされてしまうのだが、もうこの際仕方がない。少しくらい目立っても彼女らが俺から離れてくれればどうということはない。
「甲子とお友達になって、連絡先を交換して、甲子と遊ぶ約束をしつつ彼女たちの誰かとも遊ぶ約束をして甲子と彼女たちを引き合わせるか……」
それか学校で会った時でも紹介すればいい。
あれ、何だかできる気がしてきたな。俺は主人公補正と底力を妄信しているからこう言っているのか分からんが、何か行けそうな気がする。
だってゲームの主人公って結局そういう力を持っていないと誰も女の子を落とせないじゃん。だからできる気がする、いやできる。
「これで彼女たちが離れてくれれば、俺はモブだ……!」
別に彼女たちが嫌いなわけではないし、彼女たちに好感を持っている。
でもそれだと色々なイベントに巻き込まれるし、それでやりたいことができなくなるかもしれないと考えたら、やっぱり前世で悔いがあって死んだからこの世界では悔いを残したくない。
「そうと決まれば、明日からでも甲子とお友達になってくるか」
あー、何だか寒気がするなぁ。風邪でもひいたのか? とりあえずダンジョンにでも行ってから休もう。
☆
俺が甲子とお友達になって甲子に彼女たちを惚れさせる計画を立ててから数日が経ち、あの日の寒気がどういうことか理解できた。
『白木レンをSランク冒険者に任命する』
この文字と共に俺の顔写真がドドン! と校内掲示板に張り出されていたことに、俺は絶望してしまった。
まずどういう理由でこんなことになっているのかが分からない。
それにランクをあげるためには年に一回行われる試験でしかあがらないはずだ。
そして誰がこんな悪意のあることをしたのかが分からない。
こんなことをされたら、俺のモブライフが一気に瓦解することになるのは明白だ。今もなお張り出されている俺の顔があるせいで、俺の方に視線が集まっている。
周りはざわついていて、大半が「こんな奴がどうして……」とか、「何かの間違いなんじゃ?」とか「インチキをしたんだ」とか言われたい放題だ。
うん、本当にそうだと思うな。これは何かの間違いで俺は一モブに過ぎないのだからこんな発表は間違いだ。
「お、俺がSランク……?」
というわけで戸惑っている感じしかできないのである。それもお粗末な演技で。
「おい! 何でてめぇみたいなカスがSランクなんだよ!」
「ひっ! そ、そんなことを言われても……!」
いきなり胸倉をつかまれていかにも不良みたいな男子生徒にキレられているんだが。
別にお前にカスって言われる筋合いはないし、俺がSランクだろうと何だろうとお前には一切関係がない話だが、一応モブという体裁は保っておく。
何だかこいつの顔、見たことがあるなぁ。
あぁ、そうか、あれか。『恋とダンジョン』では恋愛ゲームだがそのゲーム性質上、敵という概念が設定されている。
それは俺が危惧しているイベントの敵もしかり、こういう奴みたいにからんでくる奴しかり。
ネームドキャラであるが、ゲームをしていると主人公が強くなりすぎて一撃で沈めていて忘れるくらいにこいつは弱い。
「ここでてめぇが弱いことを証明してやるよ!」
あー、これはボコボコにされるパターンですか? でもごめんね? 俺のDEFだと痛いフリはできるけど傷は全くつかないんだよ?
弱いフリはできるけど弱くなることはできない。ということはもし全力で殴ったのなら――
「ああぁぁぁぁっ!?」
拳が変な方向に曲がるよな。これ、もう避けてもダメで受けてもこうなるのだからどうしようもなくないか? 衝撃をどうにか分散させるのもちょっと面倒だなと思った俺も悪いんだが。
……えっ、ちょっと待って。何してんの俺? 何で面倒だとか思ってんの? いくら顔がうざくて言ってることもうざい奴だからと言っても、モブライフを自分で潰しに行ってどうするんだよ!?
「何をしているの?」
そんな大きな声でもないのに周りに響き渡る声を出した人物、椿冬花生徒会長が人波を分けてこちらに歩いてきた。
うわぁ、何だかややこしくなりそうな気がするんだがそれは気のせいだろう。
だって彼女らには俺がモブとして生活できるように表では俺をモブとして扱うように取引しているのだから。
「こいつがはっちゃんの拳をこんなにしたんだよ!」
「そうだ! はっちゃんは何もしていないのに!」
拳を破壊されている男の取り巻き二人がそう言って俺を悪者にしようとしてくる。
こいつらは名前も立ち絵も出てきていなかった気がする。舎弟Aと舎弟Bだったか。
「何を言っているのかしら? どうせそれが殴りかかって自滅しただけでしょ?」
椿先輩が驚くほど冷たい声音をその舎弟たちに言い放ったことで周りは静寂が支配した。
「レンくん。今日からSランクね、おめでとう」
「い、いや、Sランクなんて何かの間違いですから! それに、初めて会いましたよね……?」
あれれ? おかしいぞぉ? どうしてそんな笑みを浮かべてくるのか全く分からないなぁ。しかもこんな大衆の前で。
「何を言っているの? 私とレンくんは朝起きてから、夜寝るまで一緒にいる関係じゃない」
椿先輩がそんなことを言ったせいで、静寂からの騒音へと変化した。
どういうことだ!? どうして今までの取引を無視してこんなことを言ってくるんだ!? ……いや、待て。Sランク冒険者の件、椿先輩の仕業なのか?
とりあえずこの場をどうにかして収めないと俺のモブライフが……!
「そんなことを言ってからかわないでください! そんな事実はありません!」
かなりうるさい周りに聞こえるように大きな声で反論した。
だけどほぼ事実だということがかなり最悪だ。
「ふぅん、そんなことを言うのね。それなら私にも考えがあるわ」
あー、何かまずい選択肢をしたのか?
そう思って椿先輩を注視していると、俺の両頬を逃げられないように両手でがっちりと挟んだ。
今すぐにこの力がかなり入った手から離れたいのだが、Sランクの椿先輩から逃れたらどう言われるか分からないし、さっきの不良男の攻撃を考えなしで受けてしまったことが脳裏によぎったことでその場から動けなかった。
椿先輩の顔がどんどんと近づいてきて、俺の唇と椿先輩の唇は重なった。
椿先輩の唇は、何とも言えない感じだ。おそらくこれ以上の唇はないだろうと思うくらいで……童貞には刺激が強すぎるものだ……!
「ふふっ、これで分かってもらえたわね」
唇をはなした椿先輩はかなり色気を振りまいている表情をしており、その表情を見た男女問わずその色気に当てられていた。
さらに憧れの生徒会長とパッとしないモブがキスをしたのだから、周りは阿鼻叫喚になっている。
「ふぁ、ファーストキスがッ!」
でも俺としてはそんなことよりも自身のファーストキスがこんな形で失ってしまわれたことにショックを受けてしまった。
「レンくんのファーストキスはとっくに済ましているわよ?」
「えっ」
えっ、俺のファーストキスがいつの間にかなくなっていた件。
ま、まあそんなものは本人が忘れたらファーストキスは復活するからこのことは忘れよう。
ていうか今はそんなことよりもどうにかしてこの状況をどうにかしないと! モブは無理にしても、椿先輩から離れることを考えないと。
「今、私からどうやって離れようかって考えているわよね?」
「当たり前じゃないですか……!」
周りは阿鼻叫喚の騒ぎだから俺が今何を言っても椿先輩にしか聞こえていないのが幸いだから、恨みを込めて言い返す。
「レンくんが悪いのよ。レンくんが私から離れようとしたんだから、仕方がないのよ」
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