憧れと夢とハーレム

山椒

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04:スキル。

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 女性に手を引かれ冒険者ギルドを出る。

「どこかゆっくり話せれるところはないかしら?」
「……そこのカフェなら、いいかと」
「そうね、あそこにしましょう」

 冒険者ギルドから少し歩いたところにあるカフェに向かい、向かい合って座って紅茶を二つ頼んだ。

 すぐに紅茶が来たことで、それを一口飲んだ女性が口を開いた。

「自己紹介がまだだったわね。私はエヴァ。聖魔騎士団所属の聖道騎士よ。あなたは?」
「……Eランク冒険者のジャックです」

 聖魔騎士団、世間に疎い俺でも聞いたことがある騎士団だ。確か公爵家が作った騎士団だったか。

 それにしても、こうして女性と向き合うのは少し苦手だ。しかもこんなすごい女性と向き合うのがなおさら。

 だから目を合わせることができないし、目の前にある紅茶に視線を落としている。

「ジャック、人と話す時はちゃんと目を見なさい」
「……すみません、無理です」

 早速指摘されたが、会ったばかりの人にそんなことを言われても無理な物は無理だ。

「そう。それなら今はこれ以上言わないわ」
「そうしてください」
「それなら単刀直入に言うわ。ジャック、聖魔騎士団に来ない?」
「……Eランクの俺がですか?」
「そうよ。あなたのあの力、あれが欲しいわ」
「……すみません。その申し出は受けれません」

 あの聖魔騎士団に勧誘されるのはすごいことなのだろう。

 でも俺は騎士団に入る気なんかないし、またスキルを使わないといけない気がするから無理だ。

「理由を聞いてもいいかしら?」
「あの力をあなたが求めているのは分かりましたが、あの力を使う気はありません」
「どうして? 何か代償でもあるの?」
「いいえ、ありません」
「そう、ないのね」
「はい。……これはただのワガママで、最後のプライドですから」

 あのスキル、『女傑降臨』は一日の回数制限はあるがそれ以外に特にデメリットはない。

「理由を聞かせてもらってもいい?」
「……嫌です」

 この人、ずかずかと踏み込んでくるな。会ったばかりの人に教えるわけがないだろ、普通。

「そう。それなら質問を変えるわ」

 エヴァさんはテーブルに立てかけていた剣を鞘から引き抜いて俺の前に出した。

「私はSランクモンスターであるアビスドラゴンを一人で相手取っていたの」

 Sランクモンスターを一人で……つまりSランク冒険者並みの力を持っているということか、すご。

「ジャックと会った時にはもう刃こぼれして使い物にはならないものになっていたのよ。でも、あなたが力を使ったことで元に戻るどころか、使う前よりも切れ味が良くなっていたわ。あなたの力はなに?」

 へぇ、そうなるのか。

 一回も使ったことがないスキルだったからどうなるのか分からなかったが、納得はした。

「俺のスキルは『女傑降臨』、女性に対して有効のスキルです」
「女傑、女性の英雄のことね。先天的なスキルかしら?」
「はい。女傑降臨は対象の女性を女傑のごとき力、女傑に相応しい姿、女傑に相応しい道具を与えることができます。おそらく、力は長続きしないみたいですけど、道具は残るみたいですね」
「女傑は傷を受けていない、女傑は綺麗な状態、女傑は強い武器を持っている、というわけね。……力を増幅させるだけじゃなくて傷も治すなんて、反則みたいなスキルね」
「……まあ、そうですね」

 こんな他人にしか使えないスキル、俺にとっては何ら価値はない。
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