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03:再開。
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わずかに残っていた夢と憧れを捨てることができたから、次の日の目覚めはスッキリしていた。
ドラゴンを倒した女性については心配していない。女傑降臨を使ったから心配はいらない。
「……ふぅ、行くか」
夢と憧れを完全に捨てることができた俺でも、冒険者稼業を続けないと将来が心配だから今日も冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに向かえばいつものように笑われるだろう。でもいつものようなちょっとした憂鬱はない。
夢と憧れを捨てた俺にプライドはない。自身が底辺だと認めてしまっているからな。
ちょっと足取りが軽く冒険者ギルドへと向かうと、何だか中が騒がしかった。
こんな状態の中に入るのはイヤだなぁ。でも特に俺と関係はないと思うから中に入る。
「なぁ、いいだろ?」
俺のことをいつも笑っている荒い感じの冒険者の男が、女性を口説き落としているようだった。
その口説き落としている女性にどこか見覚えがあるなと思って横目で見ながら依頼ボードに向かった。
「見つけたわ!」
その女性と視線が合い、仕事ができるといった感じの顔を破顔させてこちらに来た。
……あ、この人昨日会った人だった。やべぇ、逃げる隙を見失った。
「何で昨日は何も言わずに帰ったのよ」
「あー、いや、少し急ぎの用事があったので……」
「それでも声をかければよかったじゃない」
「まあ、すみません」
「分かってくれればいいのよ。それよりも昨日はありがとう。おかげで死なずに済んだわ」
「えっ、何のことですか?」
「私に魔法をかけてくれたの、あなたでしょ?」
「いいえ、違います」
「そんなわけないでしょ。私にあんな力はないんだから、あなたよ」
あー、どうやらバレているみたいだな。
でもここで認めるとこの感じは俺の力を必要だと言ってきそう。
「おいおい、何で俺じゃなくてそんな死にたがりに声をかけてんだ?」
さっきまでこの女性を口説いていた冒険者がこちらに来た。
「死にたがり?」
「そうだ! こいつは才能もないくせにずっと冒険者をしている冒険者の面汚しだ! そんな奴よりも俺にしとけよ」
そう言って女性の肩を触れようとした冒険者の腕が飛んだ。弾かれたとかではなく、文字通り体とおさらばしていた。
「許可なく触れないでくれるかしら? あなたが触れていいほど、安い体ではないわ」
「あっ、あああああああああああぁっ!?」
血がこちらに飛び散りそうだったが、女性が俺を抱き寄せながら後ろに下がってくれたおかげで血が来ることはなかった。
「それに、私の認めた人間を侮辱するのは許さないわ。分かったらさっさと消えなさい」
冷たい声音で腕を斬り落とされて悶えている冒険者の男にそう言いながら見下ろす女性。
この人、実は相当やばい人? ここまで手が早かったら怖いな。
「く、くそがぁっ!」
「あ――」
腕を斬り落とされたとは言え、万年Eランクの俺とは違いCランク冒険者をしている男が、俺目掛けて拳を向けてきた。
そんな拳を、俺は避けることができずにただただ見ているだけしかできなかったけど、その拳が来ることはなかった。
「聞こえなかったのかしら? 消えなさいって」
もう片方の腕も女性によって斬り落とされた冒険者の男。
さっきまで静寂だった冒険者ギルドの中が、主にこの冒険者の男の仲間たちによって騒がしくなってきた。
「この女! 何しやがんだ!」
「そうよ! ただで済むと思わないことね!」
武器を構えてこちらに来るお仲間たちに、女性は剣の切っ先を向けた。
「この世界にはね、味方か敵かの二種類しかいないのよ。あなたたちは敵、よね?」
恐ろしいほど美しい笑みを張り付けた顔をしている女性に、動けずにいる冒険者たち。
「ここでは騒がしいから、場所を移しましょう」
「あ、はい……」
えっ、これどうするんの? 俺ここで依頼を受けてるからもう一人でここに来れないんだけど。
ドラゴンを倒した女性については心配していない。女傑降臨を使ったから心配はいらない。
「……ふぅ、行くか」
夢と憧れを完全に捨てることができた俺でも、冒険者稼業を続けないと将来が心配だから今日も冒険者ギルドに向かう。
冒険者ギルドに向かえばいつものように笑われるだろう。でもいつものようなちょっとした憂鬱はない。
夢と憧れを捨てた俺にプライドはない。自身が底辺だと認めてしまっているからな。
ちょっと足取りが軽く冒険者ギルドへと向かうと、何だか中が騒がしかった。
こんな状態の中に入るのはイヤだなぁ。でも特に俺と関係はないと思うから中に入る。
「なぁ、いいだろ?」
俺のことをいつも笑っている荒い感じの冒険者の男が、女性を口説き落としているようだった。
その口説き落としている女性にどこか見覚えがあるなと思って横目で見ながら依頼ボードに向かった。
「見つけたわ!」
その女性と視線が合い、仕事ができるといった感じの顔を破顔させてこちらに来た。
……あ、この人昨日会った人だった。やべぇ、逃げる隙を見失った。
「何で昨日は何も言わずに帰ったのよ」
「あー、いや、少し急ぎの用事があったので……」
「それでも声をかければよかったじゃない」
「まあ、すみません」
「分かってくれればいいのよ。それよりも昨日はありがとう。おかげで死なずに済んだわ」
「えっ、何のことですか?」
「私に魔法をかけてくれたの、あなたでしょ?」
「いいえ、違います」
「そんなわけないでしょ。私にあんな力はないんだから、あなたよ」
あー、どうやらバレているみたいだな。
でもここで認めるとこの感じは俺の力を必要だと言ってきそう。
「おいおい、何で俺じゃなくてそんな死にたがりに声をかけてんだ?」
さっきまでこの女性を口説いていた冒険者がこちらに来た。
「死にたがり?」
「そうだ! こいつは才能もないくせにずっと冒険者をしている冒険者の面汚しだ! そんな奴よりも俺にしとけよ」
そう言って女性の肩を触れようとした冒険者の腕が飛んだ。弾かれたとかではなく、文字通り体とおさらばしていた。
「許可なく触れないでくれるかしら? あなたが触れていいほど、安い体ではないわ」
「あっ、あああああああああああぁっ!?」
血がこちらに飛び散りそうだったが、女性が俺を抱き寄せながら後ろに下がってくれたおかげで血が来ることはなかった。
「それに、私の認めた人間を侮辱するのは許さないわ。分かったらさっさと消えなさい」
冷たい声音で腕を斬り落とされて悶えている冒険者の男にそう言いながら見下ろす女性。
この人、実は相当やばい人? ここまで手が早かったら怖いな。
「く、くそがぁっ!」
「あ――」
腕を斬り落とされたとは言え、万年Eランクの俺とは違いCランク冒険者をしている男が、俺目掛けて拳を向けてきた。
そんな拳を、俺は避けることができずにただただ見ているだけしかできなかったけど、その拳が来ることはなかった。
「聞こえなかったのかしら? 消えなさいって」
もう片方の腕も女性によって斬り落とされた冒険者の男。
さっきまで静寂だった冒険者ギルドの中が、主にこの冒険者の男の仲間たちによって騒がしくなってきた。
「この女! 何しやがんだ!」
「そうよ! ただで済むと思わないことね!」
武器を構えてこちらに来るお仲間たちに、女性は剣の切っ先を向けた。
「この世界にはね、味方か敵かの二種類しかいないのよ。あなたたちは敵、よね?」
恐ろしいほど美しい笑みを張り付けた顔をしている女性に、動けずにいる冒険者たち。
「ここでは騒がしいから、場所を移しましょう」
「あ、はい……」
えっ、これどうするんの? 俺ここで依頼を受けてるからもう一人でここに来れないんだけど。
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