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三歳児編
保健室
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コンコン
「どうぞ」
『せんせいはなかにいます』とこちらの言葉で書かれた木製の引き戸をノックすると、中から声が聞こえた。
「しつれいします」
少し高い位置にある取っ手を、怪我をしていない左手で引く。ガラガラと音を鳴らして扉が開くと、変な臭いが鼻に突き刺さった。こっちの保健室にも消毒液があるのかな、なんて思いつつ中に入って扉を閉める。窓にカーテンがかけられた部屋からは、昼間なのに薄暗い印象を受けた。
「どうしたのかな?」
「はい、じつは、っ!」
一瞬、呼吸が止まった。というのも、目の前にいる保険室の先生、白衣を着たまだ若そうな女の人の下半身が、まるで蛇のようだったからだ。
こ、これが蛇人族……! 生で見たのは初めてだ。
「ああ、すまない。怖がらせてしまったかな?」
眼鏡の奥の瞳にどこか理知的な光を宿らせた緑髪のその人は、椅子に腰かけたまま困ったように笑った。
「いえ、おどろきましたけど、こわくはないです。ぎゃくに、うれしいです」
「……そうか?」
「はい!」
俺は興奮ぎみに頷く。ああ、前世じゃゲームの中でしかお目にかかれなかった半人半蛇の存在が今目の前に! 本当に足? を床に這わせているんだなぁ。一体どんな感覚なんだろう? 階段を上り下りするどころか、普通の道を歩くのさえ大変そうだけど、その辺りどう思っているんだろうか? それに、こっちでも蛇が変温動物かどうかは知らないけど、蛇人族の人は冬眠とかしないんだろうか? あー興味が尽きない!
「変わっているね。君くらいの子は恐がりそうなものだけど……というか君、本当にここの生徒かい? 随分と小さい……」
「あ、え」
まずい、相手は保健室の先生だった。一般的な小学一年生の体について詳しいであろう相手には、本当の年齢が看破されてしまうんじゃ……!?
「……まあいいか。ところで、どこが痛いんだい?」
先生は椅子から立ち上がる(?)と、ゆっくりと俺に近づいてきた。一先ず体の大きさについてはスルーしてくれたようだ。心の中で胸を撫で下ろしながら、右手を広げてみせる。
「……痛くないのかい?」
血塗れの手を見て、屈んで(?)頭の位置を低くした先生が眉をひそめる。
「いたいです」
「だったらもう少し、いや、そうかなるほど、君が例の転入生か。ふむふむ」
どうやらこの先生にも、俺が魔物と契約しているとは伝えられているらしい。納得したように頷きながら、先生は尻尾の先で器用に引き出しを開ける。
「それじゃあ先ず、手を拭くよ」
「はい。……っ」
清潔そうな白い布で手を拭われる。痛みを我慢していると、先生は次に茶色の瓶を手に取った。独特な香りが強くなる。
「消毒するよ」
「は、っ!」
瓶から垂れた滴が傷口に触れると、刺されたような痛みが走る。消毒液ってこんなに滲みたっけ!? いや、こっちの世界だとこれが当たり前なのか。うぐぐ、我慢我慢……!
「あとは布を巻いて」
痛みをこらえていると、先生は手早く細長い布を俺の手に巻きつけた。……絆創膏じゃないのか。あ、そもそも存在しないのかもな。
「はい、おしまい。よく我慢できたね」
なんてことを考えている間に、先生は処置を終える。しっかりと結ばれた布は、傷口を完全に覆っていた。
「ありがとうございました」
「うん、どういたしまして。私もやりやすくて助かったよ。普通はもっと暴れたりするものだけど」
「そうなんですか」
ああ、やっぱりこの痛みは普通の子供にはキツいんだな。自分が痛がりじゃないと分かり少し安心する。
「それで、どうしてこんな怪我をしたんだい?」
「オードくんと、あくしゅして、ベルクくんが、うえからギュッてして、そしたら、ケガしました」
用意しておいた答えを口にすると、先生は小さくため息をついた。
「やっぱりそうか。経緯はどうあれ、二ヶ所も刺すなんてね……」
「あ、ちがいます」
「ん? ちがう?」
「そのときにいっかい、そのあと、てをつないで、そのとき、せんせいにしかられて、それでもういっかい、です」
「……そう、いや、ということは、怪我したのにもう一度手を繋いだってことかい?」
頷くと、先生は悲しそうに目を細めた。
「今、君は本当に君かい?」
「は、はい」
契約している魔物じゃないかって意味だよな? 一体何を言われるんだろう?
「そうか。なら一つ、先生と約束してくれないかい?」
「やくそく、ですか?」
「うん。痛かったり、苦しかったりしたら、ちゃんと周りに言うこと。約束、できるかな?」
「……はい」
この人もレイズと同じで、俺の自傷行為を見とがめたのか。そう思い至りながら、頷く。
「ありがとう」
先生は笑うと立ち上がって、うん、もう立ち上がったと見なすことにしよう、とにかく立ち上がって、入り口近くの長椅子を手で示した。
「今から授業に出てもすぐに終わってしまうから、鐘が鳴るまでそこで待ちなさい」
「はい」
俺は大人しく、少し高い椅子に腰掛ける。先生は満足そうに頷くと、元いた椅子に座って何やら書類仕事を始めた。ようやく落ち着くことができそうだ。俺は静かに息を吐く。
(どうやら魔法の使い手というわけではなさそうだな)
落ち着いた矢先、心の中でレイズが話しかけてくる。
(魔法って、回復魔法みたいなものか?)
(ああ。軍隊では勿論、兵を育成するような場であっても回復魔法の使い手は必要不可欠なのだがな。設備も見たところ、大怪我の治療などは想定されていないようだ)
(そりゃそうだろ。普通の学校でそんな大怪我しないだろうし)
答えながら、一方で胸を撫で下ろす。どうやらここは本当に、前世の小学校と似たような環境のようだ。怪我なんて当たり前、教師の言うことには絶対服従、甘えなど見せようものなら懲罰を与え弱肉強食の掟を骨の髄まで染みさせる、なんて実力主義万歳な学校とかじゃなくて本当に良かった。
(となると、生徒同士で戦闘能力を競うなどということもないのか)
(そんな乱暴な競い合いがあってたまるか)
分かっていたけど、レイズは実力主義万歳の学校がお望みのようだった。まったく、もう少し穏やかに過ごそうって気持ちは出てこないものかね。
(乱暴には思えぬがな。幼き頃より生きる力を身に付けさせねば、大人になってから苦労するというものだ)
(生きる力は何も、腕っぷしだけじゃないんだよ)
……とは言え、そう断じられるのは俺が平和な世界で生きていたからか。明日を無事迎えられるかすら分からない環境で生きてきたら、俺も実力主義万歳派になってたかもな。そんなことを考えながら、心の中の言葉を続ける。
(戦いに限ってもそうだ。常に一対一ってわけじゃないだろ? 多対多の戦闘だったら、個人の強さよりも集団としてどう動くかが重要になってくる。その作戦を決める指揮官としての能力や、作戦を立てるために必要になる情報収集能力は、単純には測れない。戦闘能力を競わせるのも大事だろうけど、それが全てだなんて思わせるのは良くないはずだ)
レイズの武勇伝は一人で大暴れする話が多いけど、中には仲間と協力しているものもあった。大暴れするにしても、それができる状況にまでもっていくために、誰かが頭脳労働していたであろうことは想像に難くない。
(お主、前世で軍隊指揮でも経験したことがあるのか?)
(ゲームの中でならな)
どんな英雄でも単騎で運用するなんてまず無理だったよなぁ。寡兵で大軍を打ち負かすために何度リセットしたことか。
おっと、少し的が外れてきてるな。そういうことが言いたいんじゃなくて。
(それはそれとして、戦闘能力を競う場があってもいいかもしれないけれど、大怪我するようなものがあったらまずいだろ。成長途上なら尚更、下手に怪我したら後遺症が残る可能性もあるんだし)
(ううむ、そうか……)
レイズは残念そうだった。俺の体を心配して魔法を使わせようとした割には、危険なことが規制されるのは嫌なのか? よく分からないな。
(まあいいだろ。俺が大怪我することもないってことなんだからさ)
(しかしだな、生ぬるい戦いでは相手の心をへし折ることなどできぬではないか)
んん?
(上下関係をはっきりさせるためにも、決闘のようなものはあっても良いはず、いやあるべきなのだ。でなければ、ただ体が大きい、ただ年をとっている、それだけのことで偉ぶる輩がでてくるからな。そういった手合を実力で叩きのめす機会が無いとなると、学校の支配など不可能ではないか)
(あー)
成程、そういう観点か。そりゃ学校の支配を目論んでいるレイズからしたら大きな問題かもな。
(何より……あの生意気なガキ三人に身の程を分からせてやることができぬ)
「っ」
その言葉からは微かな、それでも確かな、殺意のような暗い意思が感じ取れた。一瞬こっちを向いた先生と目が合う。
(……相手は子供だぞ)
(だから何だと言うのだ? 年など知ったことか。我らに危害を加えたものには相応の報いを与えねばならん。それはヘツェトも許可したことだ)
(きっかけはベルクたちでも、この傷をつけたのはオードくんで、つけられた俺も不注意だった。やり口は陰湿だったけど、そこまで目くじらを立てるほどじゃないだろ)
(ふざけるな。そう日和見していたせいで奴らが調子に乗ったのだぞ? その結果がこれだ。やはり魔法を使って痛い目を見せてやる必要があったのだ)
(落ち着けって)
(いいや、こればかりは譲れぬ)
うーん、かなり怒っているみたいだな。何も怪我させることないだろうに……っていうのは甘すぎるのかな? こっちだと。
だけど、うん、俺も頭にきていたし、少しくらいなら仕返ししてもいいかもな。
(分かった。なら今度、あいつらに少し痛い思いをしてもらおう)
(良し、ようやく分かってくれたか。しかし今度というのはいつだ? 可能な限り早い方が良いのだが)
(それはまあ、機会が来てからかな)
具体的には、今日の午後とか。
「どうぞ」
『せんせいはなかにいます』とこちらの言葉で書かれた木製の引き戸をノックすると、中から声が聞こえた。
「しつれいします」
少し高い位置にある取っ手を、怪我をしていない左手で引く。ガラガラと音を鳴らして扉が開くと、変な臭いが鼻に突き刺さった。こっちの保健室にも消毒液があるのかな、なんて思いつつ中に入って扉を閉める。窓にカーテンがかけられた部屋からは、昼間なのに薄暗い印象を受けた。
「どうしたのかな?」
「はい、じつは、っ!」
一瞬、呼吸が止まった。というのも、目の前にいる保険室の先生、白衣を着たまだ若そうな女の人の下半身が、まるで蛇のようだったからだ。
こ、これが蛇人族……! 生で見たのは初めてだ。
「ああ、すまない。怖がらせてしまったかな?」
眼鏡の奥の瞳にどこか理知的な光を宿らせた緑髪のその人は、椅子に腰かけたまま困ったように笑った。
「いえ、おどろきましたけど、こわくはないです。ぎゃくに、うれしいです」
「……そうか?」
「はい!」
俺は興奮ぎみに頷く。ああ、前世じゃゲームの中でしかお目にかかれなかった半人半蛇の存在が今目の前に! 本当に足? を床に這わせているんだなぁ。一体どんな感覚なんだろう? 階段を上り下りするどころか、普通の道を歩くのさえ大変そうだけど、その辺りどう思っているんだろうか? それに、こっちでも蛇が変温動物かどうかは知らないけど、蛇人族の人は冬眠とかしないんだろうか? あー興味が尽きない!
「変わっているね。君くらいの子は恐がりそうなものだけど……というか君、本当にここの生徒かい? 随分と小さい……」
「あ、え」
まずい、相手は保健室の先生だった。一般的な小学一年生の体について詳しいであろう相手には、本当の年齢が看破されてしまうんじゃ……!?
「……まあいいか。ところで、どこが痛いんだい?」
先生は椅子から立ち上がる(?)と、ゆっくりと俺に近づいてきた。一先ず体の大きさについてはスルーしてくれたようだ。心の中で胸を撫で下ろしながら、右手を広げてみせる。
「……痛くないのかい?」
血塗れの手を見て、屈んで(?)頭の位置を低くした先生が眉をひそめる。
「いたいです」
「だったらもう少し、いや、そうかなるほど、君が例の転入生か。ふむふむ」
どうやらこの先生にも、俺が魔物と契約しているとは伝えられているらしい。納得したように頷きながら、先生は尻尾の先で器用に引き出しを開ける。
「それじゃあ先ず、手を拭くよ」
「はい。……っ」
清潔そうな白い布で手を拭われる。痛みを我慢していると、先生は次に茶色の瓶を手に取った。独特な香りが強くなる。
「消毒するよ」
「は、っ!」
瓶から垂れた滴が傷口に触れると、刺されたような痛みが走る。消毒液ってこんなに滲みたっけ!? いや、こっちの世界だとこれが当たり前なのか。うぐぐ、我慢我慢……!
「あとは布を巻いて」
痛みをこらえていると、先生は手早く細長い布を俺の手に巻きつけた。……絆創膏じゃないのか。あ、そもそも存在しないのかもな。
「はい、おしまい。よく我慢できたね」
なんてことを考えている間に、先生は処置を終える。しっかりと結ばれた布は、傷口を完全に覆っていた。
「ありがとうございました」
「うん、どういたしまして。私もやりやすくて助かったよ。普通はもっと暴れたりするものだけど」
「そうなんですか」
ああ、やっぱりこの痛みは普通の子供にはキツいんだな。自分が痛がりじゃないと分かり少し安心する。
「それで、どうしてこんな怪我をしたんだい?」
「オードくんと、あくしゅして、ベルクくんが、うえからギュッてして、そしたら、ケガしました」
用意しておいた答えを口にすると、先生は小さくため息をついた。
「やっぱりそうか。経緯はどうあれ、二ヶ所も刺すなんてね……」
「あ、ちがいます」
「ん? ちがう?」
「そのときにいっかい、そのあと、てをつないで、そのとき、せんせいにしかられて、それでもういっかい、です」
「……そう、いや、ということは、怪我したのにもう一度手を繋いだってことかい?」
頷くと、先生は悲しそうに目を細めた。
「今、君は本当に君かい?」
「は、はい」
契約している魔物じゃないかって意味だよな? 一体何を言われるんだろう?
「そうか。なら一つ、先生と約束してくれないかい?」
「やくそく、ですか?」
「うん。痛かったり、苦しかったりしたら、ちゃんと周りに言うこと。約束、できるかな?」
「……はい」
この人もレイズと同じで、俺の自傷行為を見とがめたのか。そう思い至りながら、頷く。
「ありがとう」
先生は笑うと立ち上がって、うん、もう立ち上がったと見なすことにしよう、とにかく立ち上がって、入り口近くの長椅子を手で示した。
「今から授業に出てもすぐに終わってしまうから、鐘が鳴るまでそこで待ちなさい」
「はい」
俺は大人しく、少し高い椅子に腰掛ける。先生は満足そうに頷くと、元いた椅子に座って何やら書類仕事を始めた。ようやく落ち着くことができそうだ。俺は静かに息を吐く。
(どうやら魔法の使い手というわけではなさそうだな)
落ち着いた矢先、心の中でレイズが話しかけてくる。
(魔法って、回復魔法みたいなものか?)
(ああ。軍隊では勿論、兵を育成するような場であっても回復魔法の使い手は必要不可欠なのだがな。設備も見たところ、大怪我の治療などは想定されていないようだ)
(そりゃそうだろ。普通の学校でそんな大怪我しないだろうし)
答えながら、一方で胸を撫で下ろす。どうやらここは本当に、前世の小学校と似たような環境のようだ。怪我なんて当たり前、教師の言うことには絶対服従、甘えなど見せようものなら懲罰を与え弱肉強食の掟を骨の髄まで染みさせる、なんて実力主義万歳な学校とかじゃなくて本当に良かった。
(となると、生徒同士で戦闘能力を競うなどということもないのか)
(そんな乱暴な競い合いがあってたまるか)
分かっていたけど、レイズは実力主義万歳の学校がお望みのようだった。まったく、もう少し穏やかに過ごそうって気持ちは出てこないものかね。
(乱暴には思えぬがな。幼き頃より生きる力を身に付けさせねば、大人になってから苦労するというものだ)
(生きる力は何も、腕っぷしだけじゃないんだよ)
……とは言え、そう断じられるのは俺が平和な世界で生きていたからか。明日を無事迎えられるかすら分からない環境で生きてきたら、俺も実力主義万歳派になってたかもな。そんなことを考えながら、心の中の言葉を続ける。
(戦いに限ってもそうだ。常に一対一ってわけじゃないだろ? 多対多の戦闘だったら、個人の強さよりも集団としてどう動くかが重要になってくる。その作戦を決める指揮官としての能力や、作戦を立てるために必要になる情報収集能力は、単純には測れない。戦闘能力を競わせるのも大事だろうけど、それが全てだなんて思わせるのは良くないはずだ)
レイズの武勇伝は一人で大暴れする話が多いけど、中には仲間と協力しているものもあった。大暴れするにしても、それができる状況にまでもっていくために、誰かが頭脳労働していたであろうことは想像に難くない。
(お主、前世で軍隊指揮でも経験したことがあるのか?)
(ゲームの中でならな)
どんな英雄でも単騎で運用するなんてまず無理だったよなぁ。寡兵で大軍を打ち負かすために何度リセットしたことか。
おっと、少し的が外れてきてるな。そういうことが言いたいんじゃなくて。
(それはそれとして、戦闘能力を競う場があってもいいかもしれないけれど、大怪我するようなものがあったらまずいだろ。成長途上なら尚更、下手に怪我したら後遺症が残る可能性もあるんだし)
(ううむ、そうか……)
レイズは残念そうだった。俺の体を心配して魔法を使わせようとした割には、危険なことが規制されるのは嫌なのか? よく分からないな。
(まあいいだろ。俺が大怪我することもないってことなんだからさ)
(しかしだな、生ぬるい戦いでは相手の心をへし折ることなどできぬではないか)
んん?
(上下関係をはっきりさせるためにも、決闘のようなものはあっても良いはず、いやあるべきなのだ。でなければ、ただ体が大きい、ただ年をとっている、それだけのことで偉ぶる輩がでてくるからな。そういった手合を実力で叩きのめす機会が無いとなると、学校の支配など不可能ではないか)
(あー)
成程、そういう観点か。そりゃ学校の支配を目論んでいるレイズからしたら大きな問題かもな。
(何より……あの生意気なガキ三人に身の程を分からせてやることができぬ)
「っ」
その言葉からは微かな、それでも確かな、殺意のような暗い意思が感じ取れた。一瞬こっちを向いた先生と目が合う。
(……相手は子供だぞ)
(だから何だと言うのだ? 年など知ったことか。我らに危害を加えたものには相応の報いを与えねばならん。それはヘツェトも許可したことだ)
(きっかけはベルクたちでも、この傷をつけたのはオードくんで、つけられた俺も不注意だった。やり口は陰湿だったけど、そこまで目くじらを立てるほどじゃないだろ)
(ふざけるな。そう日和見していたせいで奴らが調子に乗ったのだぞ? その結果がこれだ。やはり魔法を使って痛い目を見せてやる必要があったのだ)
(落ち着けって)
(いいや、こればかりは譲れぬ)
うーん、かなり怒っているみたいだな。何も怪我させることないだろうに……っていうのは甘すぎるのかな? こっちだと。
だけど、うん、俺も頭にきていたし、少しくらいなら仕返ししてもいいかもな。
(分かった。なら今度、あいつらに少し痛い思いをしてもらおう)
(良し、ようやく分かってくれたか。しかし今度というのはいつだ? 可能な限り早い方が良いのだが)
(それはまあ、機会が来てからかな)
具体的には、今日の午後とか。
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