上 下
588 / 765
-第六章-ウィンタースノー連邦-スノーピース~霊峰ウルフハウリング・前編-

-第六章九十六節閑話 刀の修繕と知らない鉄と古代の遺物?…-

しおりを挟む



この話は第六章本編では綴られなかった空白のお話である。と言うのもこの話の

主人公はマサツグではなく!…その他モツ達でも無く!…ドワーフファミリアに

居るドレッグが今回のキーパーソン!…時期としてはマサツグ達が霊峰五合目位

に居る頃の話である!…その際オリハに頼まれた武器を作成し終え!…そして

マサツグにも前から頼まれてボロボロの刀の修復に着手しようとするのだが!…


「…うぅ~ん…やはり何度見ても見事なまでにボロボロ!…

辛うじてまだ峰が生きておるから持っている様なものの…

これを直すとなると中々に骨が折れそうじゃな!…」


__ジャリッ!……ッ…


ドレッグは刀の修理に着手する前に…改めてその状態を確認し出すと、まずは

鞘から抜いた状態で机の上に置き!…と、そこには何も状態が改善されていない

刀がそのまま…まぁ改善されて居る訳が無いのだが、それでもその状態を見て

自分でも直せるのか?と疑問を持ってしまう程に困惑すると、次にその刀を手に

取る…そして不思議な感覚を感じて行く!…それは別に人を斬りたい!と言った

衝動に襲われるとかそう言うのでは無いのだが、頭の中でその刀の本来の姿か

イメージが思い浮かび!…


「しかしやはり何か妙なモノを感じるのもまた事実!…

これはこの刀がまだ生きようとしている表れなのか?…

何かワシの中でイメージが描かれている様な気もする!…」


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


と、ドレッグとしてもそんなイメージが湧いて来る感覚と言うのは初めてらしく…

思わずその頭の中のイメージに子供の頃に戻った様なワクワク感を!…狂気ではなく

好奇心に揺り動かされる様なそんな感覚を覚えて行くと、まずは刀を炉に!…火に

入れてからの反応を見ようとして行く!…そして徐に刀を持って炉の前にスッと

移動をして行くと、その風化し錆び付いた刀を窯に入れようとして行くのだが!…


「…ふむ、ではまずは窯に入れてみるか!…

それこそこの状態では他の鋼と掛け合わせても結びつくとは到底思えん!…

いっそ溶かすつもりでしっかり火を入れて!…」


__……コオオォ!!…ボッ!!…!?…


それこそドレッグはもう一度材料に還元する勢いでその刀を炉の中へ!…

しかしその刀はろへ入る前に異変を起こし!…ドレッグの目の前でその刀身に

突如炎を纏って見せると、勿論ドレッグを驚かせて行く!…その際モツや

オリハのドラッケンナイト鉱石の武器とは違って然程激しく燃えて見せたりは

しないのだが、それでもそんな反応を見せた事にドレッグは勿論驚き!…


{な、何じゃ!?…こ、このオンボロに火が!?…

……ん?…?……ッ!?!?…

…この世にこうして火に翳すかざすだけで火が付く鉱石は一つしかない!!…

と言う事はよもや!!……だとするとなるとこれはトンデモナイ珍品!!…

そしてワシ自身もこんな物を今までに見た事が無い!…

…これは!…本格的にワシの手に負えるかどうかが怪しくなって来たな!!…}


となるとやはり何か引っ掛かりがある様子で思い当たる事が!…そしてそれを口に

出さずに心の中で!…炎を纏った刀を見詰めジッと考える様に思考を働かせると、

改めてその刀を珍品!と…トンデモナイ掘り出し物である事を悟って行く!…

その際マサツグから修理を任されている事も含めて手に負えるか?が疑問になるが、

それよりも未知なる物への好奇心が勝っている様子で未だその炎を纏う刀をジッと

見詰め!…


__ゴオオォォ!!……ッ…


{…ふむ!…やはりドラッケンナイトを使っている節が見て取れる!…

…しかしこれは如何言う事じゃ?…よぉく見てみるとこの刀…

オリハルコンの材質も使われて居る様に感じられる!…

まぁ見つかった場所が場所だけに特段可笑しい事は無いのじゃが…

…だとしてもじゃ!!…この二つの他にまだ数種類!…

合わせて使ったモノとなると…トンデモナイ事を意味するぞ!?…

…言うなればまさに神話に出て来る様な武器!!…

が今ここにあると言う事を物語っておる!!…}


驚きが覚めて好奇心に変わり!…この時自分の目から見てまだ分かる範囲で色々と

刀の情報を把握し出すと、更にその違和感を感じて行く!…と言うのもこの一本の

刀を作るに当たって複数種類の鉱石が使われている事が分かって行くと、中には

自分が知らない鉱石も有るのかその正体に悩み!…何ならそれら全てを使ってきめ

細やかで滑らかな鋼を!…一体如何やって作り出したのか!?と疑問を持ち…

自分の知らない技術が今目の前にある事で!…更にドレッグが好奇心をムクムクと

芽吹かせる様に興味を持つと、興奮で震えが止まらない!…解明したい!と言った

欲求に駆られて行く!…そして今だ燃え続ける炎もドレッグを誘惑する様に

ユラユラと揺らめいて見せるのだが、次にはドレッグがハッと正気を取り戻し!…


__ゴオオォォ!!……ッ!?…フルフル!!…ッ…


{…だとするならワシは知りたい!!…

この刀に秘められしその力!…その構造を!!…

…フフフフ!!!…久々に血が滾る仕事に昂って来たわい!…}


「いいじゃろう!!…ワシが用いる技術全てを使って!!…

全身全霊の!!…完璧なる完全復活を遂げさせて見せようぞ!!!…

…まずはしっかり溶かして一度還元をせねばな!!…

不純物を取り除く作業から!!…」


一度意識をハッキリさせる様に首を振り!…しかしそれでも好奇心までは払え

なかった様子でそのままやる気を見せて行くと、ドレッグはその刀を炉に!…

一度素材に還元する事を選択する!…そしてそこから改めて一本の刀にする事を

心に誓うと、根気よくその窯の様子を見ながら作業に掛かり!…その際未知の

技術が使われている物品故、今まで以上に気を張る!…細心の注意を払いながら

その炉の様子を見守っていると、そこでも不思議な現象が!…


__ゴオオオオオォォォォ!!!……ユラァ!…ッ!?…


「ほ、炎の色が黄色から白に!?…こ、これは不味い!!…

これ以上直視して居ったら失明する!!…ッ~~!!…ッ!…

た、確かここに光を押さえる眼鏡なる物が!!…ッ!…あ、あった!!…」


と言うのもその刀を入れた炉の炎に変化が!…入れる前の炉の中の炎は色として

黄色く燃えており、温度としては3500度を超え!…が、刀を入れた後だとその

色は白に!…白に変わるとその温度も跳ね上がり約6500度!…それこそ太陽の

表面温度と変わらないレベルで発光すると、途端にドレッグも驚き慌てる!…

となるとその熱も相当なモノでかなり熱い物となるのだが、それよりも眩しい!

とドレッグは慌て!…その際炉の心配は全然全く気にして居らず!…さも慣れた

様子でそのまま放置…それよりもこれでは炉の様子が見れない!と…一旦その場を

離れて何か探し物をし始めると、直ぐに見つけた様子でそれを手に!…自身の目に

ソレを掛ける!…因みにソレと言うのは!…


__…カチャッ!!…ッ!…


「おぉ~!!…これは良いな!…これで炉の中が良く見れる!…

にしてもここまで発熱するモノを入れたのはいつ振り位だろうか?…

窓を全開にせねば!…あぁヨイショッと!…」


__ガションッ!!…ゴゴゴゴゴゴ!!!…ギュウウウゥゥゥゥンンン!!!…


まるでメガネの様なモノでレンズは黒く、もっと簡単に言うとサングラスで!…

何なら今まで使った事が無いのかドレッグは掛けるなり驚きを露わに!…それは

とてもノリが軽く!…現在進行形で炉の中が白く発光をしているのを見てもさも

楽しそうに反応をすると、次にはその熱気を気にし始める!…それは勿論炉の中で

収まる事無く外にも漏れ出るよう熱気を放つと、その熱さからか引火しそうな

感じで燃えるモノは燻ぶり!…が、それでもドレッグは慌てる事無くカラクリを

動かし!…一気に換気を!…それこそ一気に酸素が流れ込み!…今にも大爆発を

起こしそうなそんな様子を見せて行くと、ドレッグは更にカラクリを!…まるで

読んで居た!とばかりに動かして行く!…


「ほい!…」


__ガションッ!!…ッ!!!…ドッゴオオオオォォォォォォンンンン!!!!…


「ッ!?!?…な、何じゃこれはぁ!?!?…まさかこの世の終わり!!!…」


「……ッ!?…お、おい!!…アレを見てみろ!!!…」


…当然これが現実リアルの出来事ならば今頃ドワーフファミリアは吹き飛んで

いる!…しかしそこはご都合主義ゲームの中!…ドレッグはカラクリで炉に蓋をして

しまい!…その行き場のない圧力が炉の煙突を登って噴火!…辺り一帯に衝撃波!…

及び轟音を立てる事になって行くと、勿論そんな轟音に町の人達は気絶してしまい

そうな程に驚き!…その轟音の聞こえて来た方をバッと振り向く!…するとそこには

ドレッグの工房の煙突より白い炎が立ち昇っているのが煌々と見られ!…


「ッ!?…な、何じゃあの白い炎は!?…それにあの煙突!!…

ッ!!…ドレッグの奴か!!…」


「…と言う事は何かまたトンデモナイ物を作ろうとして居る!?…

……そう言えばこうしてあの白炎を見るのはいつ振りじゃろうかぁ…」


「んな事を言って居る場合か!!!…ワシャ文句を言いに行くぞぉ!!…

やるならやるで!!…一声掛けてからにせいと言うたのに!!!…」


それを見て町の者達も何故か不思議と納得をしてしまい!…何ならあの光景を見る

のはいつ振りか?と…初犯で無い事を思い出し!…ドレッグがまたトンデモナイ物

を作ろうとして居る事を悟って行くと、各々怒りを燃やしたり興味を持ったり!…

とにかく野次馬と化して行く!…そしてその様子を見ようと空いている窓からその

中の様子を見て行くと、そこには全く悪びれる様子を見せる事無く作業をする

ドレッグの姿があり!…


「…ふいぃ~!…相変わらずおっそろしいもんじゃのぉ~!!…

…あぁ~…外に被害が出て居なければいいがぁ~…

…さてとにかく!…これで作業を続けられる!…

…それにそろそろ還元も出来て居るじゃろうて!…

久々に溶岩竜の作業着を着て!…って、ンン?…なんじゃ?…ワシに何か用か?」


この時ドレッグも先程のはそれなりにビビって居た様子で、しかしその畏怖の念も

直ぐに消えてなくなり!…となると続きが出来る!と次には喜びを露わにし出し!…

炉の様子が落ち着いて居る事を確認!…確認した上で何やら専用の作業着に着替え

ようとその場を後にしようとすると、そこで野次馬達の姿も確認!…まるでツッコミ

を入れる様に声を掛ける!…するとそんな呑気を見せて居るドレッグに対して先程の

文句があるドワーフがカッとなると、当然の如くドレッグに対して文句を!…


「ッ!!!…用が有るもクソも有るか!!!…

お主と来たらまた久々にトンデモナイ轟音を立ておって!!…

町の外壁に凹みが出来たぞ!!…如何するつもりじゃ!!!」


「ッ!…あぁ~ん?…凹みくらい今更どおって事は無いじゃろうが!!…

…それよりもワシは今から忙しいんじゃ!!…小言なら後にしてくれ!!…」


それは古くからドレッグを知っている様子で文句を口に!…その際先程の轟音に

驚いた!と…何なら確認をしたのかあの真鍮で出来て居る外壁の柱に凹みが出来て

しまった事も続けて話すが、ドレッグは真面に取り合わない!…それよりも

忙しい!と言って流してしまう!…それはまるで目の前のモノに没頭したい!と

言った具合に憎まれ口を叩いて行くと、その言葉にそのドワーフも更に怒りを

覚え!…


「ッ!?…な、何じゃとぉ~~!?…ゆうに事欠いて小言じゃと!?…

ワシはなぁ!!…お主に迷惑じゃと言うておるのじゃぞ!!!…

大体昔から!!!…」


「それを小言じゃと言うておるんじゃ!!!…いいか!?…

こっちは今トンデモナイ珍品を扱っておるんじゃ!!!…

…それこそその世の鍛冶の常識を変える!!…そんな世紀の遺物をな!!…」


__どよぉ!?…ザワザワ!…ザワザワ!…


勿論治まる事無く更に文句を口に!…それこそドレッグに迷惑!とはっきり

言葉を続け!…何なら昔の事まで掘り起こそうとして行くと、ドレッグが

その言葉に対して更に反論を!…時間が無い!とばかりにあしらって見せる!…

その際自分が今何をしているか?についても話し出すと、今やって居る事を

正規の発見!と言って逆にそのドワーフを邪魔扱いし!…となるとその

ドレッグの言葉に他の野次馬達も興味津々!…しかし見えるのは白く発光する

炉の様子だけで!…他に何かしている様子が全く見られず各々が戸惑った

反応を見せると、一方でドレッグと喧嘩をしているドワーフが更に文句を!…

絶対に折れない姿勢を露わにする!…


「だからと言って他人に迷惑を掛けて良い筈が無いじゃろうが!!!…

…やるにしても迷惑を掛けるな!!!…

他人を巻き込む様な事をするでないわあぁ!!!!…」


「あぁ~あぁ~分かった分かった!!!…今度からは気を付ける!!…

…これでいいか?…何度も言うがワシは忙しいんじゃ!!!…

…これはなぁ!…どんな事をしてでも!!…

どうしても仕上げねばいけない仕事なんじゃ!!!……!!…」


と言うのも勿論こっちのドワーフが言う事も尤もであり!…さも自身が皆の意見

代表とばかりに更に吠えて文句を言うと、ドレッグももう相手にするのに疲れた

様子!…やはりあしらう様に適当な返事を口にする!…何なら子供さながらに

開き直る態度まで露わにすると、こっちもこっちで絶対に折れず!…その際最後に

決意の言葉を!…マサツグの事を言っているのだろうか友人の為!と口にすると、

その言葉を聞いたドワーフは途端にハッ!と…何か察した反応を露わにする!…


「ッ!!…フン!!!…相変わらずの減らず口をぉ!!!…

いいか!?…次やりおったらただじゃおかんからなぁ!?…フン!!!…」


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…どよぉ!?…ザワザワ!…ザワザワ!…


それはやはりドレッグの事を知っている様子で最後の最後まで文句で〆ると、

言いたい事は言った様子でスッとその場を後に!…一方でドレッグはそんな

ドワーフの事など如何でも良く!…時間を無駄にした!とばかりに作業着を

見つけると、急いで着替えを終えて行く!…さて着替え終えてからもドレッグは

休む事無く炉の方へ!…そこでもはや刀の原形を留めていない謎の灼熱の液体

金属を見つけ!…


{……ッ!…うぅ~む…やはり、[混合合金]で出来て居ったのか!…

そしてこの感じはオリハルコンにドラッケンナイト…

あと少量のミスリルも入っているか!……しかしこれは一体?…

この鋼鉄だけはワシも今までに見た事が無いぞ!?…

何ならこれらそれぞれの鋼鉄を合わせる上で!…

一番の要となって居る鉄の様にも見える!…その正体がこれ…うぅ~む…

…いや、とにかくこれだけでも分かっただけ良しとするか!…

そして幸いな事にこれなら何とかワシでも打ち直す事が出来そうじゃ!!…

…若干鋼が足りん様に感じるから…ここはアダマンタイトを足して…}


この時固い石で出来た撹拌棒を手に!…炉の底に溜まったそのドロドロの液体

金属を掻きまわしながら様子を見ると、次にはその内容物を改めて確認!…

するとそこにはオリハルコンの他にやはりドラッケンナイトが!…ミスリルも

少量ながら含まれている事が分かって行き…その上でもう一つドレッグ自身も

分からない未知の金属が使われている事が判明すると、やはりドレッグは

困惑!…と、同時に勿論興味を持つ!…その際それら鋼鉄を一つにしているのは

その知らない鉄で間違い無い様で、マジマジ見詰めてはまるで水あめを作る様に

練って行き!…と、ここまで分かった所で何とか出来る!と…だが元の刀に戻す

には鉄が足りず!…その際マサツグのオリハルコンとアダマンタイトの両方を

その足りない分だけ同じ量で入れて行くと、更に奇妙な光景を目にする事に!…


__ガラガラッ!!…スッ…ゴオオォォ!!!…


{ッ!?…さすがにこの高温となるとあのアダマンタイトでもすぐに溶けるか!…

まるで氷の様に!…ッ!?…}


幾ら耐熱耐火性のある作業着とは言え、それでも熱いものは熱いので!…これまた

石で出来たペンチの様なモノで鉱石を掴んで投入!…その足りない分の鉄を足して

一つの鋼鉄を作ろうとすると、そこで熱を受けて溶ける!…まるで氷の様に素早く

溶けて行く鉱石の様子を目にして行く!…何ならあのアダマンタイトでさえ完全に

溶かすのにはそこそこの時間を要するのだが、瞬く間に溶けて消え!…と、それを

見てドレッグも思わず驚きを露わに!…炉の中の温度に思わず若干の恐怖を感じる

と、更にそこでもまた恐ろしい!…奇妙な光景を目にして行く!…


__ジンワアァ~~~!!!……ボコボコボコボコ!!!…


{す、直ぐに順応した!?…や、やはりこの鉱石は一体!?…

いやそれよりもまるで捕食して我が物として居る様な!?…

…ワシは…ワシはもしかしなくても…

今トンデモナイ物を本当に相手にしているのでは?…}


それは先程入れた鉱石が溶けて底に溜まる液体金属と合わさって行くのだが、その

順応速度が異様なまでに速く!…と言うのも物によっては合う合わないと言うのが

勿論あり!…それらを確かめる!…或いは合わせるに当たってその特殊な条件を

見つけたりするのがある筈なのだが、その肯定をすっぽかす様にしてスッと一体化

し!…それはまるで生きて居るかの様に感じられ!…先程入れた鉱石がまるで餌!…

思わずそんな風に感じてしまう程の順応振りを目にすると、やはり改めて驚いて

しまう!…さてそうして一応順応はしているのだが、念の為撹拌棒で掻き回し

ながら様子を見!…そして幾ら掻き回し熱を入れてもそれ以上の変化はなく!…

一度それを取り出す様にしてインゴットの型に!…流し込み二本のインゴットに

変えて行くと、今日だけで何度目となるか分からない驚きを!…ドレッグは一人

露わにする!…


__…インゴットの型に移して12時間後…


「…本来ならまる二日三日は掛かると思って居ったんじゃが…

ここまで来ると何と言うか…」


__……スッ…ガゴン!!…コッコッコッ…ゴトンッ!!…


「…見事に冷えて固まって居る……一体何なんじゃこれは?…

太陽の様に熱を放ったかと思えば…今度は夜の砂漠の様に急に冷える!…

…こんな鋼鉄見た事が無い!…そしてその硬度は…」


約6500度のアッツアツのモノを自然冷却するとなると、当然の事ながらかなりの

時間を要する!…筈なのだが?…時間にして約12時間後!…ドレッグがふと

インゴットからの熱を感じなくなってその様子を確かめると、インゴットは

触れられる程に冷えて居り…仕舞にはその型より外せる位に固まってしまう!…

となるとその異様な熱の伝わり方にドレッグももはや可笑しい!と感じ出すと、

更にはある事を確認し出し!…


__……スッ…ッ!!…ガイイィィン!!!…


「ッ!?…グオオオォォォ!?!?…ッ~~~!!!…

う、腕が!!!…ッ~~~……ぜぇ!!…ま、間違い無い!…

強度で言えばアダマンタイト以上!!…

性質はそのままオリハルコンのそれを言った所!……そして!…」


と言うのもドレッグは徐にハンマーを手に!…そしてそのインゴットを見据えて

思いっきりハンマーを振り上げると、そのインゴットを叩いてしまう!…すると

その叩いた反動と言うのはビリビリと反射する様にドレッグの腕を伝って行くと、

堪らずドレッグも後退りをして怯み!…何なら握っていたハンマーを落とす始末!…

しかしこれでドレッグは分かった!と…ちゃんとオリハルコンとアダマンタイトの

性質を引き継いでいる事を理解すると、更にもう一つある事も確認し!…


__…スゥ…コオオオォォ!…ボオォ!!!…


「ッ!?…やはりドラッケンナイトの属性付与も生きて居る!…

…となるとあのミスリルは魔力伝導率を上げる為の物?…

…とにかくこんな化け物鋼鉄!!…今までに見た事が無い!!…」


それは腕の痺れが治まって来た所で行動を開始!…と言ってもそのインゴットを

手に取り!…徐に先程まで使用していた炉の前へと移動をすると、その炉の中の

炎にインゴットを翳す!…すると案の定インゴットは突如ボッ!と発火し出す!…

それこそ錆び付いていた時よりも轟々と炎を立ち昇らせると、ドレッグも改めて

その様子に驚きを露わに!…と言っても火が付いた事に対してではなくその性質が

残っている事に!…今の所全て問題無く継承しており…一つとして欠けているのが

無い事に有り得ない!と漏らして行くと、ふとミスリルが混入していた事にも

推察を!…そして化け物鋼鉄と言ってその存在を疑い始める!…それこそ白昼夢を

見ているのか?とばかりに疑うのだが、そのインゴットから感じる熱は本物で!…


__ゴオオォォォ!!!……ジュウウウゥゥゥ!!!!…


「何て恐ろしいモノを!!…

…いや、ワシも復活させてしまったんじゃ!!…

…これは世に出して言い物なのじゃろうか?…」


__…頼んだぜ!!…ジッチャン!!!……ッ!!…ッ…


と、いつまでも炎を纏わせる訳にも当然行かず!…一旦水桶の中に入れて炎を鎮火…

それからカウンターの上に置いて改めてトンデモナイ物を拾って来た!とばかりに

マサツグの豪運に驚いて見せると、次には自身もそれを復活させてしまった事に

戸惑い!…となるとそんなインゴットだけでもはや兵器の様なモノ!…世間に出して

良いのか!?と思わず本来の目的を忘れそうになって行くと、次にはフッと頭の中で

マサツグの声が!…それは最後にここを後にする際仕事を頼んだマサツグの声で、

ドレッグもそれを思い出した事でハッと我に返り!…


「…いや!…完成させねばならんのじゃ!!!…

これはあの者の為に!…そしてワシのプライドがそうさせる様に!!…

…よし!!…覚悟は決まった!!…これが最後の仕事になろうとも!!…

ワシは一切の悔いを残さん!!!…生涯最後となるやもしれないこの仕事を!!!…

完璧にこなしてそして!!…後世にその技術を残してくれ!!!…」


__パアアアアァァァァ!!!…


それはまた使命感に燃え出すとマサツグの為にも!と、そして自身の職人としての

プライドがそうさせる!と続けて漏らし!…すると次にはギュッと拳を握って

天井を仰ぎ!…決意を新たに最後までこの仕事を完遂する事を心に決めると、更に

もう一つある覚悟を!…悔いは残さない!と更に決める!…それは自身が廃業する

かもしれない事を示唆するのだが、それでも構わない!とばかりにそのインゴット

の置いてある方へ振り向き!…するとそこには七色に若干光を放つインゴットが

二つ!…それはまるで早く元の姿に戻してくれ!とばかりに輝き!…ドレッグも

そんなインゴットの意を察した様子でハッとすると、思わず笑みを!…


「ッ!…フフフ!…本当に…世にも奇妙な金属よ!…

…さぁそうとなれば作業再開!!…

ここからは気の遠くなる作業になりそうじゃわい!!…

あぁっはっはっはっは!!!…」


不思議とそんな意を感じられた事でもはや笑いが!…となるともうこれ以上驚く事も

無くなって行き!…とにかく今からやる作業も不思議と楽しみになって来ると、言葉

数が徐々に増えてくる!…それは誰かと会話をして居る様な気分になる!…その際

勿論その場に居るのはドレッグだけで他に誰も居らず!…と、この時未だ窓の外には

野次馬の影が!…当然その光るインゴットが気になる様子で凝視しており!…同時に

ドレッグの独り言が増えた事にも気が付いて行くと、耄碌もうろくしたのか?と…思わず心配

になるのであった!…


尚この刀が完成するのはもう少し先の事で有り!…この頃マサツグ達はと言うと、

七合目に挑戦しては幻覚を見る等して居り!…とまぁそんな事は如何でも良く!…

その際ドレッグの言った言葉と言うのはドワーフファミリア全体に激震を走らせ!…

ドレッグを慕う者は失敗しろ!と…ある者はそのインゴットを盗もうと画策する事に

なるのであった!…


因みにドレッグと喧嘩をしていたドワーフの正体はと言うと、かつてのドレッグの

ライバルで有り!…今はもう引退して自身の息子に工房を引き継がせた者で!…


「…チッ!!…相変わらずいけ好かない奴め!!…

なぁにが世紀の遺物じゃ!!!……にしても…あ奴がとは!…

あんな口を聞いたのはいつ振り位じゃろうか?…

…まぁそれだけ奴にとっても本気と言う事か…

…あ奴アレを本当に作り終えたら死ぬんじゃないじゃろうな?…」


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……ガチャッキイィィィ…バタン!…


「…やれやれ…確かにあ奴は気に食わんが…

あの謎に光る鋼鉄が何なのかはワシも気になった!…

…ふむ…どぉれ?…久々にあ奴にちょっかいを出して見るか!…ふっふっふ!…

…となるとアレは何処にしまったかのぉ?…

引退してからもう触って居らんからなぁ?…まだ使えると良いんじゃが?…

…ッ!…おぉ~い!!…ばあさんや!!…

ワシのアレ!!…何処にしまったかのぉ~?」


何だかんだ言いながらも気に掛けている様子!…ドレッグが[友の為!]と言った事を

気にしており!…それはドレッグがあの言葉を使った意味を知って居る様で!…

その際気合の入れようが違った事も察しており…久しぶりにドレッグが本気になった

姿を見て何か不安を感じて行くと、とにかく自身の家に戻る!…そしてそのドワーフ

も静かにある準備をするのであった!…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

処理中です...