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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-
-第三章六十五節 レイヴンの大勝負とクラウスの授業とマサツグの助け舟-
しおりを挟む如何にも調べれば調べる程怪しい話が出て来る十貴族!…壁に減り込んだ
ディスカントは一旦客室へ連れて行かれるとそのまま監禁!…衛兵数名を
見張りに付けた後、再度クラウスについて話し合われる事が決まるのであった。
その際共謀者と言われていたマンセールはと言うと、マサツグのあの一撃に
気圧されたのか完全に沈黙!…とにかく我が身最優先と言った様子でそれ
以降余計な口を挿む事は無いのであった…さて気を取り直して会議室!…
クラウスとレイヴンが机を挟む様に円卓のテーブルに着くと、早速糾弾が
始まろうとして居た!…
「……ではこれより!…
クラウスの国家転覆を謀ったであろう話を始めたいと思います!…
…他にも色々と気になる事が有りますが…
その前にこの話だけはしっかりと如何言う事か説明して貰いましょう!…
…ではレイヴン殿…お願いします!…」
「は、はい!……では師匠?…いや、クラウス卿!…
貴方に問いたい事が三つあります!…嘘偽りなく答えて頂きたい!…」
「……ふむ…」
女王様が真剣な表情で始める号令を掛け!…議題であるクラウスの事に
ついて話すと、若干だが会議室内にどよめきが走る!…しかしそれも
長くは続かない様子で直ぐに収まり!…女王様がレイヴンにその説明を
求め出すと、レイヴンも緊張した様子で返事をする!…そしてクラウスに
対して嘘の無い答弁を求めるよう声を掛けると、まるで会議室内は
裁判を始める様な展開になるのだが!…クラウスは一切緊張していない
様子で返事をし!…ただ目の前に座って居るレイヴンに対してクールに
振舞って見せると、レイヴンはその様子に戸惑いつつも話を始める!…
「……ッ!…ではまず、先程話して居たこのスライムのコア!…
これはオークの集落で神隠し事件が有った際、その原因であるスライムの
体内より見つかった物です!…そしてそのコアに使われている術式!…
私の方で確認した所…その術式はここに居るクラウス卿が最も得意として
居る術式で有り、筆跡!…魔力痕も同じ物と判別出来た次第に御座います!…
これについてどう説明を!?…」
「……そうだな…確かに見た所それは私が作ったコアの様だ…」
__どよ!?!?…
「だが弁明させて貰うとそれは無くしたコアだ!…
別にオークの里を襲おうなど考えても居ないし!…
やった所で何の得になる?…
ハッキリ言ってこれだけで国を転覆させる等考えられないのだが?…」
まずレイヴンが話し出したのはオークの集落で見つけた…と言うよりも
倒して手に入れたスライムのコアで、やはり術式はクラウスの得意として
いた物らしく…その術式に書かれて有る筆跡…魔力痕も一致したと独自で
調べた様子でクラウスに突き付けると、クラウスは意外にもすんなりと
自分の物と認める!…すると当然それを聞かされた面々達からはどよめきの
声が上がる訳で!…だがクラウスは怯む事無くそのコアを無くした物と
言い!…態度を改める事無く一蹴し、今回の事件とは関係の無いものと
レイヴンの証拠を認めようとしないで居ると、更にレイヴンは続ける!…
「では何故このコアがあのオークの集落で見つかったのでしょうか!?…
…これはどう考えてもあそこに行ったから落ちて居たとしか!!…」
「……馬鹿弟子よ…さっきの言葉を聞いて居なかったのか?…
今回の事件にそのコアが如何関係して居ると言うのだ!?…
現に今回の戦いにおいてスライムなど出て来た様子は!…」
「問題なのはそのコアを何故あのワイトが扱えたのか、なのです!!!」
「ッ!…何だと?…」
認めようとしない!…と言うよりも関係無いと!…そんなクラウスに対して
食い下がるようレイヴンはコアの話を続けようとするのだが、クラウスは
呆れた様子でレイヴンに苦言を言い出すと、再度関係無い言っては突っぱね
ようとする!…その際ユグドラド周辺の様子も見て来たのか、スライムが
出て来てない事をクラウスは事前に把握して居り!…だがレイヴンは関係
ある言い聞かせ!…問題なのはその首謀者がそのコアを使って居たと言う
事実について話すと、クラウスは驚いた様子で反応を見せる!…まるで
クラウス本人でないと使えないと言った様子でそのご本人さんは驚いて居り、
レイヴンのその反応を見て疑問を覚えた様な挙動を見せると、話を続ける…
「ッ!……確かにこのスライムのコアは師匠が使った物ではありません!…
これはユグドラドを襲撃して来たワイトが使って居た物です!…
では何故このコアがそのワイトに手に渡ったのか?…
…続いての証拠にそれが書かれて有りました!…」
__パサ……ッ!…
[早速あの日拾ったモンスターのコアに我が魔力を流し込み!…
近くに居る者を捕まえて来る様に命令した!!…]
「……この日記…何処で手に入れた?…」
レイヴンもクラウスがスライムを作ったとは言わずにワイトが作ったと言い…
ではそのコアが渡った経緯は?…と言って話しを続けると、徐にあのワイトの
日記を取り出して見せる…その際件のページを開いてはクラウスに突き付ける
よう見せると、クラウスもその日記のページをみて確認…更に自分の使って
いる日記に似て居ると直ぐに判別したのか、レイヴンに日記についてどこで
手に入れたのかと疑問そうに尋ねると、レイヴンは素直に答える。
「…オークの神隠し事件の原因であるスライムを倒して岩場の洞窟!…
その最深部に置かれて有りました!…
その日記の持ち主こそ今回の戦いにおける首謀者で!…
神隠しスライムを作った張本人!……もう一度聞きます!…
確かにこの日記には拾ったと書かれて有りますが…
これは本当に拾ったのでしょうか?…
だとしても何故そんな所に落ちていたのか?…
……一つ一つ答えて貰います!…」
「………ふぅ~…」
「ッ!!…師匠!!!…」
レイヴンが日記を手に入れた場所について答えると、その日記の持ち主に
ついても答え!…その話を聞いてクラウスは若干目を見開き!…スライムの
コアの話より日記の方で動揺を示すと、レイヴンは更に畳み掛ける!…
その際明らかに犯人扱いをする様な言動でクラウスを問い詰めるのだが、
やはりクラウスは全く動じず!…寧ろ脱力した様子で一息吐き!…
そのクラウスの反応を見てレイヴンがカチンと来た様子で声を荒げると、
机を叩く!…だがクラウスは全然態度を改める事は無くただ天を仰ぐ様に
脱力し続け、しばしの間沈黙を貫き!…その様子に当然レイヴンもイライラ!…
周りに居る女王様やマサツグも戸惑った様子で話を聞いて居ると、ただ一人…
マルティスだけは澄ました表情でクラウスの事を見詰めると、ある事を
言い出す!…
「……ふむ、あの男面白いな?…」
「ッ!…え?…」
「先程からその男の魂を見ているが揺れが見えぬ…まるで湖面の様だ…
全く動じて居らぬ…嘘も吐いて居ないと言う事だ…」
「ッ!?…え!?…」
マルティスはジィ~と天を仰ぐクラウスを見詰め…次に珍しくフッと笑って
見せると、クラウスの事を面白いと言い出す!…すると当然そのマルティスの
一言にマサツグや女王様も反応すると、如何言う事か?と言った様子で言葉を
漏らし…そんな二人の反応に答えてか、マルティスはクラウスの魂から動揺が
見て取れないと話すと、更には嘘を吐いて居ないと説明をする!…そうして
マルティスからクラウスの事について聞かされると、二人は驚いた様子で言葉を
零すのだが…その一方でクラウスも頭の中の整理が付いたのか、フッと頭を
戻してレイヴンに向き直すと、徐に一言口にする…
__…スッ…ッ!……
「……なるほど…そう言う事か…今漸く合致した…」
「ッ!?…それは如何言う!?…」
「…結論から言うとその国家転覆の話…
…私が企てたモノでは無いと言う事だ!…」
__どよっ!?…
まるで何か引っ掛かりが有って!…そしてレイヴンの話を聞いた事でその
引っ掛かりが取れたと!…謎が全て解けて晴れ晴れとした様な笑みを浮かべ
出すと、クラウスは納得した様子で言葉を呟く!…すると当然レイヴンが
機敏に反応しては如何言う事かとクラウスに話を聞き出すのだが、クラウスは
クラウスでその問い掛けに対して話を遮るようレイヴンを睨み付け!…
次に無罪を主張し!…ここに来て漸く明確に自分から無罪を訴え出した事で
女王様達が戸惑った様子でどよめき出すと、レイヴンもそのクラウスの
気迫に圧されてか一度戸惑う!…
「ッ!?…それは如何言う?…」
「……これに関してはまず一から説明をしないといけないだろう…
だがそれを話す前に一つ確認をする!……女王陛下?…」
「ッ!…な、何でしょうか?…」
「あの事について触れるかもしれませんが…宜しいでしょうか?…」
__ッ!…ババッ!…
戸惑った様子で若干後ろに仰け反り!…それでも持ち直すようレイヴンは
クラウスに対して言葉を発すると、クラウスはメガネを掛け直しつつ説明を
しようとする!…だがその前にまだ気になる事が有る様で…その許可を
取る為に女王様へ声を掛け!…すると突如声を掛けられた事で女王様は
戸惑い!…若干付いて行けて居ない様子でクラウスに返事をすると、
クラウスは何か意味深な質問を女王様にする!…その際その意味深な事を
「あの事」と言ってはぐらかすと、その話を聞いた女王様は更に慌て!…
数秒悩んだ後…全員から視線を集めつつ諦めた様子で溜息を吐くと、
クラウスに許可を出す…
「ッ!…………はあぁ~…
これに関してはあまり触れて貰いたくないのですが…
致し方ありません…」
「…女王様の寛大な心遣いに感謝いたします……
では説明をする!…馬鹿弟子!…」
「ッ!?…」
まるで観念したようにも見える女王様の様子に…マサツグ達が戸惑いつつも
視線を送って居ると、その一方ではクラウスが女王様に感謝をする!…
この時礼儀も忘れて居ない様子で紳士の様に胸に手を当てつつ一礼をすると、
改めてレイヴンの方へ向き直すなり馬鹿弟子と!…当然馬鹿弟子と言われた
事でレイヴンは戸惑い!…一体何で!?…と言った様子で更に戸惑い様を
露わにして居ると、クラウスによる反撃の狼煙が上がり始める!…
「まずはそのコアについてだが…可笑しいとは思わないか?…
私の専攻する魔術は元素・四属性魔法が主だ!…だがそのコアは!…」
「ッ!!…そ、操作系魔術!…」
「そうだ!…
私は自身が興味を持った物以外は決して研究をする気はない!!…
故にそのコアの事に関しては専門外だ!…
だがこうして私が作ったコアが有る!…それは何故か!!…
…他でもない!…そのコアを作る様にご依頼されたのはここに居る女王様!…
その人だからだ!!…」
__えぇ~~~!?……モジモジ…モジモジ…
まずクラウスが話し出したのは自分が専門として居る魔術について!…
この時疑問を持たせるようレイヴンに説明をしながらそのコアの魔術に
ついて問い掛けると、レイヴンもハッと気が付いた様子で答える!…
するとクラウスもそのレイヴンの反応を見て満足したのか、まるで
授業をする様に説明を続け!…コアの魔術に関しては専門外とハッキリ
明言して見せ!…そのクラウスの言葉で更に会議室内がどよめき!…
では現にこうしてクラウスが作ったコアが何故ここに有るのか?…と
各々が疑問を持ち出して居ると、クラウスはその理由を答え出す!…
そしてその理由と言うのは先程の女王様に対する質問の意味でもあり、
コアは女王様の為に作ったと!…当然このクラウスの言葉で会議室内は
騒然!…女王様も居た堪れない様子でモジモジとして居ると、クラウスの
説明は更に続く!…
「……更に言うとそのコアは元々スライムを作る為に作ったのではない!…
ゴーレムを動かす為に開発したコアだ!…」
「ッ!!…」
「お前も知って居る通り…
コアと言うのはそれが有れば何でも出来る訳では無い!…
水を操るなら水に特化!…大地を操るなら地に特化と!…
その種族!…属性毎に作らねばならない!…」
「ッ!!…しかし現にそのコアはスライムから取れた!!…
師匠が間違えてスライム用に作った!…」
クラウスが言うには元々ゴーレム用に作ったコアだったらしく、スライム用では
無いと強く否定し!…するとそのクラウスの言葉にレイヴンは更に驚き!…
有り得ない!…と言った様子で戸惑い様を更に露にして居ると、そのレイヴンの
反応を見てかクラウスも話を続ける!…この時レイヴンも知って居る事を前提で
コアの説明をし始めると、各種類毎に作らないといけないと言うのだが…
その説明を聞いてマサツグはあれ?…と言った様子で疑問を持ち!…それを代弁
するようレイヴンが可笑しい!とクラウスに異議を申し立てようとすると、
クラウスは更に呆れた様子を見せる!…
「……はあぁ~…何処までお前は安直なのだ…
その無い頭でよぉく考えてみろ!…一度作ったコアはそれで終わりなのか?…
何故私が術式を一々書いたのか!…その理由は!?……」
「え?…えぇ~っと……ッ!?…」
「漸く分かったか?…愚か者め!…
コアに術式を書くと言う行為自体!…本来可笑しいのだ!…
これは錬金術における魔術封入の初心も初心!…
もしそれで完成なら書くのではなく!…
彫らなければ意味が無いのだ!…」
「………つまり如何言う事だってばよ?…」
レイヴンに対して思いっきり溜息を吐いて見せ!…更に馬鹿にするよう
言葉を掛けると、可笑しい所が無いかについて質問をする!…その際
強調する様に術式が書かれて有る事に疑問を持たせると、レイヴンも
戸惑いながらそれにハッと気が付いた様子で!…途端に確認するよう
コアを凝視し始め!…クラウスもそんなレイヴンの様子を見て愚か者
呼ばわりすると、錬金術における一部基礎を口にする!…しかしそれを
聞かされた所でマサツグからすれば何を言って居るのかが分からず、
シロと共に首を傾げ!…そして思わず某・忍者漫画に出て来る主人公の
様な困惑具合をして見せて居ると、マルティスが軽く説明をする!…
「……呪術における祝詞と言うのはその言葉に効力が宿るとされている…」
「ッ!…え?…」
「故に文字が消える…すなわち効力もそのまま消えると言う事だ…
長く強くその力を宿らせるならば文字が消えない様に…
書くのではなく…そこに刻み込まねばならん…
…あ奴はそう言う風に言って居る……そして…
その手順と言うのは何も錬金術だけではない…魔術…降霊…呪術と様々…
故に基本中の基本と言ったのだ…」
「……ワザワザ説明を如何も…
貴女の様な高位な者の手を煩わせてしまった事を、謝罪する…」
マルティスが説明し始めたのはその魔力をモノへ宿すに当たって必要な知識で、
言葉にその効力が宿ると説明し!…その突然の解説にマサツグは驚き!…
マルティスに戸惑った様子で言葉を零し視線を向けると、マルティスは更に
その文字が消える事についての説明も続ける…そして更に効力を強く発揮
させる為に先程のクラウスの言葉も含めて解説をすると、この刻むと言う
行為を全ての呪術における基礎と言い!…そしてその解説をクラウスは一緒に
聞いていたのか、マルティスに会釈をしながら尊重するようお礼を言うと、
同時に謝罪も済ませる…まるで自分の説明不足…不備が有ったと認める様で、
マルティスはそんなクラウスを見てか…席に座りながらも一礼し、後の説明を
クラウスに任せ始めると、クラウスの授業は再開される!…
「幾ら専門では無いとは言え私とてそれ位は熟知している!…
なのにそれを曲げてでも何故そのコアにワザワザ術式を書いたのか!…
…答えは簡単だ!…そのコアは未完成で有り、試作品だからだ!…」
「なっ!?…」
「…女王様からの要望に応えるには魔力の許容量…
それに複雑性を持たせる事がそのコアには出来なかった!…
出来たとして命令の二つか三つだ!…
故に人を攫う程度の事しか出来ない!…」
「し、しかし既に書いた術式を別のモノに変える事は!!…」
クラウスは先程の説明を前提にそれ位は知って居ると声を強めると、何故
わざわざ術式を掘らずに書いたのかを説明し!…するとその説明を聞いて
レイヴンは驚き!…そんなレイヴンを置いてけぼりにするようクラウスは
続けて自分が作りたい物を話すと、自分のせいでは無い!と言おうとする!…
だがその言葉を聞いてレイヴンにはまだ異議があると、あり得ない!と
言った様子で反論し!…更にはその事を問い詰める様に指を差し!…まだ
完全に無実が決まった訳では無い!と言おうとすると、クラウスは更に
呆れる!…
「……はあぁ~…何処までも愚かな弟子よ!…
確かにお前には才能が有る!…
だが、こう言った応用に関しては全くダメなのだな?…」
「ッ!?…な、何だと!?…」
「……お前が言いたいのはその書いた術式を変えてゴーレムからスライムに!…
変える事が出来ないと言う事を言いたいのだろうが!…
それ位ならお前にでも出来る!…然るべき手順を踏めばそれこそ素人にでもな?…
…だが先程から話を居ればそれが何の証拠になる?…
さっきからお前の戯言に付き合ってはいるが…
国家転覆を謀るに当たって私が関与した証拠と言うのは一切出て居ない!!…
…お前は何が言いたいのだ?…」
弟子のレイヴンを思いっきりダメ出しすると頭に手を当て…一応フォローの
つもりで才能だけは認めると口にすると、それも基礎だけと言っては上げて
落とす!…するとレイヴンはまるで矛盾を突き付けられた時の成○堂みたく
戸惑い出し!…クラウスに対してあからさまな狼狽え様を見せると、更に
クラウスは追い打ちを放つ!…その際術式変更に関しては簡単に出来ると
呆れたまま口にすると、更には先程までの会話を全否定し!…何の意味が
有る?と!…まるで時間の無駄と言った様子で要点だけまとめるよう
レイヴンに文句を言い出すと、その言葉を受けてレイヴンはこれ程ないまでに
戸惑う!…
「ッ!?…グッ!!………ッ…」
「……如何した?…これで終わりか?…」
「……あのぉ~?……ちょっと良いスか?」
__ッ!…バッ!!…ッ!?……
恐らくレイヴンとしては滅多に無い師匠への反撃タイムと考えてこの糾弾に
挑んだのだろう!…だが見事にクラウスに気圧されては黙ってしまい!…
次には思う様に言葉が出ず!…その様子にクラウスもこれで終わりか?…
とばかりに見下すよう視線を送って居ると、ここでマサツグがふと助け舟を
出す。するとその会議室に居た全員が一斉にマサツグの方へ視線を向けると、
当然マサツグも視線を向けられた事で戸惑うのだが…レイヴンほど緊張は
していない様子で、本来聞きたかったであろう事についてクラウスに質問を
し始めると、淡々と話を進める。
「…そ、そんな凝視する様な目で見られても戸惑うんだが…
まぁ……ン゛ン゛!!……じゃあ、聞きたいのは三つ!…
何で俺達がそのコアを手に入れたのか?…
確かにこれはあのワイトが使って居ただけで直接的にアンタとは関係無い!…
だが事実こうしてワイトの手に渡って居る訳だからその原因について
話を聞きたい!…次にその日記!…その日記も確かにあのワイトが持って
居た物でこれまた直接的にアンタとは関係無い!…
でも似て居る物を持っている以上何か関係が有るのか?と勘繰ってしまうのが
人の心理!…これについても答えて貰いたい!…そして最後にこれが重要!…
あの防衛戦が有った間アンタは何処に行っていたのか!…
国の一大事だってのに不在…逃げて居たのならまだしもあの時女王様の部屋で
会ったアンタはまるで旅先から戻って来た様な口振りだった!…
オマケに俺達がこの国に辿り着いた際もアンタはここに居なかった訳だし!…
不在の理由は何と無く分かるけど改めて説明を求める!…って所かな?…」
「……ふむ…なるほどそう言う事か…
そこの馬鹿弟子より簡潔で分かり易い!…
良いだろう!…お答えしよう!…
…ではまずそのコアについてだが…」
マサツグは咳払いを一つすると、今回聞きたい話を簡略的に説明する!…
その際理由についても大体で話し、相手に圧を掛けないよう一つ一つ理由を
付けながら尋ねて行くと、クラウスもその話を聞いて徐々に理解を示す!…
この時その表情も少しだけ柔らかくなると、ふとマサツグの頭部が気になる
のか…会議が長くて寝落ちしているシロを見詰め!…アレは一体?と言った
様子で思わず視線を向けるのだが、キッチリ話は聞いて居り!…顎に手を
当てては目を瞑り!…少し考えた様子でレイヴンを小馬鹿にして行くと、
まずはそのコアについて話し出すのだが…
「……結論から言うと放棄した!」
__どよ!?……
「ッ!?…えぇ!?…」
「元々は若干の魔力を吸収出来る鉱石で試したのだが失敗…
この鉱石では駄目だと悟り放棄し、その場を後にしたのだが…
それがたまたまオークの集落が近かっただけ!…
別に意図して放棄した訳ではない!…」
クラウスは単刀直入にコアは放棄したと全く気にも留めて居なかった様子で
断言すると、マサツグを始めとする他の者達を戸惑わせ!…当然会議室内は
どよめき出し!…マサツグもその清々しい程のクラウスの返答に戸惑いの
言葉を漏らして居ると、クラウスはそのコアを廃棄した理由について説明し
始める!…その際コアを作ったは良いモノの失敗作らしく、コアを廃棄した
場所についても偶然と話し!…あのワイトと結託して事件を起こそうとは
していないと!…マサツグ達に授業をするようここがポイント!とばかりに
声を強めると、マサツグはクラウスにツッコミを入れるのだが!…
「い、いやいや!…危ないんじゃ!?…」
「…何の命令も彫って居ないコアなど別に危なくはない!…
ただ雨風に晒され劣化!…そのまま自然に帰るだけ…
…だが今回の様な事件が起きたのは確かに私の責任だ…
それは後日自ら出向いて謝罪をするとしよう…」
「えぇ~……」
マサツグのツッコミに対してクラウスは大丈夫とばかりに返事をすると、
癖なのかメガネを掛け直す様に弄り!…その理由についても命令は彫って
居ないと!…まるで最初から自然に還す様な口振りでマサツグ達に説明を
すると、多少は自責を感じているのか続けて反省をする…その際オーク達に
謝りに行く事を検討し始めると、その様子にマサツグは戸惑い!…そして
考えも纏まったのか、今度はマサツグの言う二つ目の疑問!…日記について
返事をし始める!…
「……さて、日記に関してだが……これは確かに私も持って居る物だ…
それも師匠に頂いた特別な仕様の日記なのだがな?…」
__パチンッ!…ボワンッ!…どよ!?……
「……内容を見た限り恐らく私の兄弟子か何か?…
それこそ正体は分からないが……ふむ…
如何やらこの日記の持ち主は私と同じ狂人の様だ!…
師匠も狂人!…その弟子も狂人!……皮肉なものだな?…
狂人を認めるが故に理性を保つのが困難だと言うのに!…
コイツは如何やら耐えられなかった様だ!…
そのうえ自分の無能振りを他人のせいにするとは!…
同じ師を持つ者として情けない!…死んで当然だな?…」
「し、辛辣!…てか自分のこと狂人って!?…」
クラウスはハッキリとその差し出された日記について似ている物を持って
居ると言うと、徐に指パッチンをして見せ!…するとそれが呪文とばかりに
突如煙と共に自身の日記が出現し!…まるでマジシャンの様なその日記の
取り出し方?…に会議室内がまた沸き上がるようどよめき始めて居ると、
クラウスはそれを手元に置いてはワイトの日記に手を伸ばす!…そして
自身の目でその日記の内容を確認するよう1ページ1ページ捲って目を通して
行くと、そのワイトの事を兄弟子と悟った様子で呟き!…詳しくは分からない
もののその内容を馬鹿にした様子で!…最後には死んで当然と辛辣な言葉を
平気で口にすると、そのクラウスの口振りにマサツグは更に戸惑う!…
さてそうして残された疑問はあと一つ!…何処に行って居たかで有り!…
マサツグ達はそのクラウスの様子にとにかく戸惑いっ放しで、クラウスも
その最後の質問に答えるよう読んでいたワイトの日記を机の上に置いて
見せると、最後の説明をし始める!…
「……さて、最後に何処へ言って居たかだが…
…それに関しては色々としか答えようが無いな?…
ある時は山に行ってコアとなる触媒を探し…
またある時は被害が出ても大丈夫な様に人気のない所へ…
それも全ては女王様の願いを叶える為で…
決して悪い事はして居ないとしか言えないが?……」
__……チラッ?…
「……嘘は吐いて居らぬ…全ての言葉は真実の様だ…
最初から…最後まで……」
「……決まりだな?…」
クラウスはそのユグドラドに居なかった時の事を実験をして居たと話すと、
その居場所についてもまるで転々として居た様子で説明しようが無いと答え…
全ては女王様の為にと!…証拠は無いもののこれが真実と言った様子で
マサツグ達に説明をすると、マサツグは徐にマルティスへ視線を向ける!…
するとマルティスもそのマサツグの視線に気が付いた様子で嘘は吐いて
居ないと言うと、視線を外す事無く真っ直ぐにクラウスを見詰め!…
最初から最後まで観察をして居たと!…そう言わんばかりにマサツグ達に
返事をすると、マサツグも納得した様子で言葉を呟く!…そうしてその
説明に女王様達も納得したのか、それぞれが頷いて反応を示し!…この瞬間
クラウスは無罪放免!…レイヴンの早とちりで処理される事となるのだが、
この時肝心のレイヴンはと言うと!…
「……そんな馬鹿な!?…
この悪魔が無罪!?…全部偶然が重なっただけ!?…」
と、自身の師匠を悪魔呼ばわりしては有り得ないと嘆き!…机に両手を着いて
項垂れショックを受けていた…そしてそのレイヴンの嘆きは当然クラウスの
耳にも入っており!…クラウスは嘆くレイヴンに対して視線を向けると、静かに
怒りを!…何なら如何罰してくれようか?…と言った目でレイヴンの事を
見下ろして居るのであった!…
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無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
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★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
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