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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-

-第三章五十節 遠足気分と知らない幼女とマルティスの秘密・前編-

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アルスの聞きたかった話や女王様からの和平の手紙の事より三日後…

マサツグ達はユグドラドへと戻る準備を整えた後、それぞれ頭を抱えて居た…

その頭を抱える原因と言うのも言わずもがな、マルティスを含む六森将達に

原因が有り…女王様の元へ辿り着くまでにトラブルを起こさないかと!…

エルフ達との小競り合いについてマサツグ達がそんな事を考えて居ると、

その間にもマサツグ達の元にはベルベッタとナターシャとマリーが集まり…

残るはジーナとレイネ…言い出しっぺのマルティスだけになると、マサツグ達の

不安は更に加速させられるのであった…


「……はあぁ~…やっぱ連れて帰る事になるのかぁ…

…まぁ、あの後何を言っても無駄だったんだけど…」


「だから言ったでしょ?…言うだけ無駄なんだって!…

マリーちゃん嘘つかない!……にしても何か遅くない?…

シャーマンの事だから誰よりも先に来てそうな感じがするんだけど?…」


色々マルティスへ説得を試みた事を思い出してはマサツグとレイヴンが脱力し…

その二人の会話を聞いていつの間にか仲良くなったマリーが相槌を打つと、

疑問を持つ…その疑問と言うのもマルティスがこの場に居ない事に理由が有り、

他のメンバー達も疑問を持つ程に時間に正確なのか…とにかく誰よりも先に

来ていない事にマリーが若干驚いたよう言葉を口にすると、ナターシャが

同調する様に悩み出す。


「…うぅ~ん……ッ!…も、もしかして急な病気とか!?…

だとしたら様子を見に行った方が!?…」


「……ある意味でこのまま来て欲しくないってのも有るけど…

確かに心配ね……よし!…

マサツグと私で見て来るからナターシャ達はここで待ってて!…

他のメンバーが着いたら説明を!…」


ナターシャは少し考えた後ふと思いついたよう病気なのでは!?と考える

のだが…それならそれで有難いと…ベルベッタが思わず本音を漏らすと、

やはり心配なのか見て来ると言い出す!…その際マサツグも一緒に付いて

来るようお願いをすると、マサツグはえ?と言った表情を浮かべるのだが…

そんなマサツグの事など御構い無しに!…同時に他のメンバー達が来た際の

指示もマリー達に出すと、その指示にマリー達は頷いて返事をする。


「わ、分かりました(分かったわ)!…」


「よし!…じゃあ行くわよ!」


「えぇ…俺同意して無い……まぁいいけど…」


「……フンッ!…」


二人の返事を聞いた所でベルベッタも安心するとマサツグを呼び、マサツグも

呼ばれた際同意して居ない…とぼやくのだが、次には反抗する事すら諦めた

様子でベルベッタについて行く…そうして二人…いや二人と一匹随伴でパーティを

離れて行くのだが、この時アルスは妙に機嫌が悪く!…マサツグとベルベッタの

二人を見ては鼻で大きく呼吸をし、睨み付けるよう二人の背中を見詰めて居ると、

そこへジーナとレイネが合流する!…


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……ッ!?…


「いやぁ!…待たせて悪かったね!…

昨日の夜何かワクワクして中々寝れなくてさぁ!!」


「遠足前の子供かよ!!…で、そっちの大荷物は?…」


「ぜぇ!…ぜぇ!……ふ、ふふふ!…魔術道具を揃える為に色々と!…

後、打倒レイヴンさんと言う事でこれまた魔術道具を!…」


「魔術関連の道具って!…後、打倒俺!?…」


二人がやって来るとその足音にレイヴンやオーディックが気付き…二人に

挨拶をしようと振り返ると、そこで夜逃げでもするのかと言わんばかりに

大荷物を背負って来たレイネの姿を見つける。当然そんな大荷物を

背負って来たレイネの姿にレイヴン達は驚くと、思わず言葉を失ってしまい!…

ジーナはジーナで手を振っては遅れて来た事に対して笑顔で謝罪をし、その際

その言い訳もまるで子供の様な言い訳を口にすると、すかさずレイヴンが

ツッコミを入れる!…そして更に隣に居るレイネに対してもツッコミを

入れるよう質問すると、その問い掛けに対してレイネは大荷物でしんどい

のか息を切らし…だがそれでも不気味に微笑んで見せると今後の為と語り!…

その際レイヴンもオマケと言った様子で打倒の言葉を掲げると、やはり

レイヴンはツッコミを入れる!…こうして残るはマルティスだけとなる

のだが、そのマルティスを迎えに行ったマサツグ達はと言うと…


__……コンコンッ!…


「……シャーマン?…そろそろ出発の準備を…」


__……しぃ~~ん……


「……シャーマン?…」


「…これ…無理やりにでも入った方が良くないか?…」


マルティスの家の前まで辿り着くとベルベッタが扉をノックし、中に居るで

あろうマルティスに声を掛けるのだが…中からは返事どころか物音一つせず、

その不気味な程静かな様子にベルベッタも思わず不安を覚えると、気弱そうに

マルティスを呼ぶ…しかしマルティスを呼んだ所で当然返事が返って来る事は

なく、マサツグも何か嫌な予感を感じ突入する事を決めると、扉を無理やり

にも開けようとする!…すると…


__ガッ!…ギイイィィ!……ッ!?…


「え!?…か、鍵が掛かって…」


「鍵は元々付いてないわよ!…でも…可笑しいわ?…

呼んだら大抵返事が帰って来るのに…」


「……失礼しますよぉ~?…」


マサツグはそれこそ扉に鍵が掛かっている事を前提に無理やり開けようとする

のだが、扉は何の抵抗もなく簡単に開き…勿論簡単に開いた事でマサツグは驚き

戸惑い!…鍵が掛かって居ない事に某・曜日サスペンス的な衝撃を覚えそうに

なって居ると、ベルベッタからツッコミを受ける!…しかしそれでも可笑しい

事には変わりないので、ベルベッタは更に不安を覚え!…やはり返事が無い事が

ネックなのか、戸惑い続け!…マサツグも中を警戒した様子で家の中に一歩足を

踏み入れると、ここで随伴のシロが有る反応を示す!…


__……スゥ~……ピクッ!…


「ッ!…ご主人様!…誰か寝てるみたいです!……

二階から寝ている声が聞こえるのです!…」


「ッ!…二階から?……ってか何だ…ただの寝坊か…

慌てて損した!…じゃあチャッチャと起こしますか!」


「ッ!?…えぇ~!!

いやちょっと待って!!」


マサツグがマルティスの家に突入すると同時にシロも家の中に入り…そこで

誰かの寝息に反応するよう耳をピクっとさせると、マサツグのTシャツの

裾を引っ張り出す!…そしてマサツグもそのシロの様子に気が付いた様子で

振り返ると、シロは小声でハキハキと誰かが寝ている事をマサツグに教え!…

更にその場所も特定したのかシロは二階から聞こえると言い、その寝息の主は

マルティスだろうとマサツグも判断すると、途端に警戒を解いては安堵する…

そして本人も寝息を立てて居る事から無事と判断した所でさっさと起こそうと、

ズカズカ家の中に入って行き!…そのマサツグの様子にベルベッタも慌て出し!…

マサツグに一度止まる様に声を掛けるのだが、次の瞬間マサツグは固まる!…

何故なら…


__コッ…コッ…コッ…コッ…


「お~いマルティス~!…早く起きろぉ~!…置いて行く……ッ?…」


__スゥ~…スゥ~…


「……あれ?…」


「んしょ!……ッ?…女の子…です?」


ベルベッタの制止も振り切る勢いで階段を上り、起きるよう声を掛けながら

二階のフロアに辿り着いた所でベッドを見つけると、マサツグは戸惑う!…

恐らくそのベッドに寝ているのはマルティスなのだろうが、そこに居たのは

マルティスに良く似た子供で…歳も恐らくマリーやシロと近いモノが有り、

ベッドの中心で丸まるよう静かに寝息を立てて居ると、マサツグは予想が

外れたと言った様子で固まってしまう。そしてシロもマサツグの足元を潜り

抜けるよう二階に上がって来ると、同じ様にベッドの上で眠る女の子を

見つけ…シロもあれ?…と言った様子で不思議そうな表情を浮かべ、マサツグ

同様固まって居ると、そんな二人の気配に気付いたのか…ベッドの上の女の子は

目を覚ますなり眠い目を擦り始める。


「スゥ~………ッ?…んん…だぁれぇ~?…

おばあちゃん?……ふっあぁ~……あぁ…ンニャンニャ……ッ!…」


__じぃ~~~……


「……ッ!?!?!?」


「ッ!…あっ…お、起こしちゃってゴメンねぇ?…

えぇ~っと…ま、マルティスさんは何処かな?…

や、約束が有って呼び来たんだけど?…」


女の子はかなり寝惚けた様子で声を掛け出し、身内と勘違いした様子で大きく

伸びをしながら欠伸をすると、擦った目をシパシパとさせる…そしてその

気配の感じる方へと視線を向けると、そこで自分を凝視するマサツグとシロの

姿を見つけ!…女の子も一気に眠気が飛んだのか酷く驚いた反応を見せると、

マサツグもそんな様子を見てか落ち着くよう声を掛け出す!…その際マルティスを

呼びに来たと言いながら慌てて話すと、その様子はまるで不審者の様で!…

シロはそんなマサツグの様子を知ってか知らずか!…同じ様に釣られて慌て

始めると、身振り手振りで落ち着くよう何とか伝えようとする!…


__ワタワタッ!…ワタワタッ!…


「ヒィ!?……ッ~~!!!」


__バッ!…ガタッ!!…


「おばあ~ちゃ~ん!!!…助けてぇぇ!!!…

知らない人が!!…知らない人があぁぁぁ!!!」


「あぁ!!…ゴメン落ち着いて!!

怪しくないからぁ~!!!…」


マサツグとシロが必死に宥めようとするが、その女の子は完全にパニック状態

なのか!…ワナワナと恐怖に引き攣った表情を浮かべ出すと、次には立て掛けて

有ったマルティスの杖に向かい一直線!…杖を手に取るなり助けを訴える!…

その際まるで雨乞いをする様に杖を天井に掲げて振り回すと、お祖母ちゃんに

助けを求め!…マサツグもそんな様子を見て更に慌て出し!…女の子にひたすら

誤解を解くよう謝り出すと、もはや収拾が付かなくなる!…その際一階では

ベルベッタがやっぱり…と言った様子で頭を抱えており、如何収めたものかと…

その間にも女の子の振る杖には魔力を溜まって行き!…次の瞬間魔法を発動する

よう溜まった魔力がカッと輝くと、驚きべき光景を目にする!…


__コオオォォ!!…カッ!!!…


「ッ!?…眩し!!……」


「ピカピカですぅ~~!!!」


__パアアアァァァ!!!!……シュゥゥゥン!!!……


「ッ~~~~!!!……ッ!?…」


杖の先端から突如強烈な光が放たれ、その光にマサツグとシロは怯み!…慌てて

光を隠す様に手で覆うのだが間に合わず!…その間にも光の向こうでは何か変化が

有るよう影がチラチラと蠢くと、その変化も徐々に収まりを見せる…それと同時に

強烈な光も徐々に収まり、マサツグ達も怯みから解放され…解放された所で次に

目にしたのはマルティスが完全装備で立っている姿であり!…当然いつ現れた

のかとマサツグが驚いて居ると、マルティスは何事も無かったかの様マサツグ達に

声を掛ける…


「……待たせたな…では参ろうか…」


「ッ!?…え!?…あっ…いやあの女の子は?…」


「…女の子?…何の事だ?…」


「ッ!……あっ…ふぅ~ん……

いや、見間違いだったかも?…」


ただ待たせた事を謝るよう一言口にすると、マルティスは先を急ぐ様に言い…

だが当然それよりも気になるのは先程の出来事についてで、マサツグが

驚いたよう先程の女の子について尋ね出すと、マルティスはその問い掛けに

対して知らないとばかりに返事をする。その際マサツグはマルティスの目を

チラッと見るのだが、その時のマルティスの目はまるでそれ以上聞くな!と

警告して居る様に見え!…マサツグもそれに戸惑った反応を見せるのだが、

次には察した様子で…マサツグも誤魔化すよう言葉を掛けると、マルティスの

目から警戒の色が消える…そうしてシロもいつの間にか女の子が消えて

マルティスが立って居る事に気が付くと、驚いた反応を見せるのだが…

マサツグはそれを誤魔化す様に声を掛け…マルティスと共に二階から降りる

よう手招きすると、シロ共々先導する。


「ッ~~~!!……ッ?…あれ?…あれ!?…

あの女の子!…」


「ッ!…シロ行くぞぉ?…レイヴン達が待ってる!…」


「え?…あっ…はいです……」


__……チラッ?……ッ!…じっ……


マサツグがはぐらかす様に声を掛けるとシロは戸惑い!…それでもマサツグの

言葉に返事をすると、階段を降りようとする…しかしやはり先程の事が

気になる様で、マルティスをチラッと見ては何かを確認し!…振り向かれた事で

マルティスも反応し…いつもの死んだ魚の様な目でシロを見詰めると、シロは

やっぱり分かんない!と言った様子で首を傾げる。そしてマサツグに付いて行く

よう足早に階段を下りて来ると、マルティスもゆっくりと降りて来て!…

ベルベッタの姿を見つけるなり手を上げて挨拶をし、ベルベッタも挨拶をされた

事でお辞儀をすると、マルティスに挨拶をする。


__…スッ……ッ!…


「おはようございます…シャーマン!…

既に他の者達は揃っております!…」


「……うむ、待たせてすまない…さぁ行くか…」


ベルベッタは畏まった様子で挨拶をすると、準備は整って居るとマルティスに

言い…そのベルベッタの言葉に対しマルティスは先程のマサツグ同様!…

待たせた事を謝ると、スッと先を急ぐ様に呟く!…さてこうしてマルティスも

目を覚ました事でマサツグ達はレイヴン達の居る場所に戻ろうとするのだが、

その道中で…何やらマルティスはマサツグとシロを気にした様子でチラチラと

視線を送り…その様子にマサツグ達も気が付いた様子で戸惑うと、次には

ベルベッタも気が付いた様子で声を掛ける…


__ザッ…ザッ…チラッ?…ザッ…ザッ…チラッ?……


「……あのぉ~…ど、如何かしましたかシャーマン?…」


「……いや、何でも無い…」


{……何でも無かったらそんなに振り向いて様子を

確かめる様な事はしないと思うけどなぁ?…}


大体五歩歩いたら振り返るマルティスにベルベッタが戸惑いながら声を掛け、

そのベルベッタの問い掛けにマルティスもピクっと反応すると、直ぐに前へ

振り向いては何でも無いと返事をする…この時やはり動揺を見せないのか

表情はポーカーフェイスを貫いて居るのだが、挙動からはあからさまに動揺が

見て取れ!…その様子にマサツグとベルベッタも気づいて居り!…思わずその

マルティスの挙動にツッコミを入れそうになるのだが、心の中で留める!…

そしてその後一応気を遣ったつもりで二人は気が付かない振りをするのだが、

やはりマルティスは気になるのかこの後も何度も振り返り!…その様子に

マサツグ達も居た堪れず!…遂にはベルベッタがマルティスに話を聞かれない

ようヒソヒソ話をし始めると、マサツグに訳を聞き出す!…


「……ねぇねぇ!…何が有ったの?…

明らかに何かシャーマンの様子が可笑しいのだけど?…」


「ッ!……いやぁ…これはちょっと…

言って良いのか分からないんでノーコメント…

ただ一つだけ言っておくと大した事は無いっちゃ無い…」


「え?…それって如何言う…」


__ザッ…ザッ…チラッ?…ザッ…ザッ…チラッ?……


やはりマルティスの挙動不審具合に戸惑いを隠せないのか、その原因を握って

いるであろうマサツグに話し掛け!…単刀直入に如何言う事かを聞き出し!…

マサツグもそのベルベッタからの問い掛けに対して如何答えたものか?と悩むと、

一応本人の意思を尊重してかはぐらかす様に答える…その際ベルベッタを

安心させるようただ大した事は無いとだけ話すと、ベルベッタは更にその言葉で

悩み!…その間にもマルティスの目はまるで監視する様にこちらへ向けられて

おり!…その様子にシロも不思議そうにじぃ~…っと見詰めると、次の瞬間

パンドラの箱を開けてしまう!…


「……うぅ~ん……お姉さん!…

あの子は連れて行かないのですか?」


「ッ!…あの子?…」


「ッ!?…し、シロちゃぁ~~ン!?」


「あの子です!…ほら…お姉さんのお家で寝てた!…」


子供故かそれとも怖いもの知らずか!?…シロは全くの恐れを抱く様子も無く

マルティスを呼ぶと、マルティスの家の二階で見つけた女の子について尋ねる!…

すると当然このシロの言葉にマルティスもピクっと反応し!…マサツグも

そのシロの蛮勇ぶりに青褪めシロの名前を叫び出して居ると、更にシロはその

はぐらかそうとしているマルティスに対して質問をする!…しかも今度は

ハッキリとマルティスの家で見かけた子供と明言すると、そのシロの言葉に

ベルベッタもえ?…と言った様子で反応し…その様子はまるでマルティスに

子供は居ない…と言った様子で困惑しており、マルティスも更に誤魔化すよう

言葉を続けようとすると、シロは更に子供の特権を行使する!…


「……我にその様な子を授かった覚えはない…

…フェンリルの幼子よ…汝が見たのは幻…」


「……ッ?…そうなのですか?…うぅ~ん…

…ご主人様も見て居たと思うんですが?…」


__ッ!?!?…


「え?…えぇ?…」


マルティスは余程あの女の子の事について触れて欲しくはないのか、シロに

子供は居ないと言うと幻と言い聞かせ…だがシロはやっぱり見た事が

忘れられないのか悩み出し!…マサツグの真似をするよう腕を組み出すと、

次にはマサツグも見た筈と公言する!…これには当然マサツグも突然の

キラーパスで酷く戸惑った様子を見せると、次にはマルティスやシロから

視線を向けられ!…何なら先程隣でヒソヒソ話をして居たベルベッタからも

戸惑いの視線を向けられて居り!…もはや包囲されたも同然でマサツグが

戸惑って居ると、マルティスから冷たい声を掛けられる!…


__ダラダラダラダラ!…


「……ほう?…では問うてみるとしよう…

汝…我が家で幼子を見たか?…

我は言うが子供を授かった覚えはない…」


「え…えぇ~っとぉ?…如何だったかなぁ~?…

俺ボォっとしてたからなぁ?…」


{シロちゃんなんてパス出すの!?…

危うくご主人様の心臓がぶち抜かれそうだったよ!?…}


この時マサツグは某・奇妙な冒険よろしく冷や汗を掻いて居り!…マルティスから

吹き荒ぶ吹雪の様なトーンで声を掛けられると、完全に逃げ場を失って居た!…

あの時二階で向けられたマルティスからの視線は、他言無用と言った絶対的圧が

感じられ!…マサツグもそれを理解した上ではぐらかして居たのだが!…さすが

フェンリルと言った所か!…その吹雪すらものともしない様子でマサツグに

真実を確かめるよう純真無垢な視線を向けると、マサツグの心に負荷を掛ける!…

だがマサツグもそんなシロの視線に耐えると深入りしてはいけない!と言った

様子で、更にはぐらかし!…心の中ではシロに対してツッコミを入れ!…目で

シロに訴えるようそれ以上の追及は止める様に訴え!…マサツグ自身もシロを

回収しようとするのだが、違う所に飛び火する!…


「…と、とにかくシロ?…こっちおいでぇ~?…肩車を…」


「シャ、シャーマン?…子供とはどういう事ですか?…」


__ピシッ!!!…


{今度はお前が引っ掛かるんかぁい!!!…}


マサツグがシロに肩車をすると言うと、シロは喜んだ様子で耳をピクっと

させてはマサツグに向かって駆けて行き!…マサツグもそのシロの反応を

見てはぐらかせたと思うと、シロの腋に手を入れ抱えようとするのだが!…

次には隣でベルベッタが気にした様子で!…しかも一大事と言わんばかりに

何やら慌てた反応を見せると、マサツグはシロを中途半端に抱えたまま

固まってしまう!…そして今度はベルベッタに対して心の中でツッコミを

入れるのだが、当然そこから先止められる筈もなく…


「…子供が居るのなら跡を!…後継者として教育を!…

シャーマンにはやはりこの場に残って頂かないと!!…」


「…何度も言わせるな……我に子供は…夫も居ない…」


「隠れて誰かと逢瀬をしたのなら何とでも言えます!!…

…これはこの里の存続に関わる重要な話です!!!…

さぁ、ハッキリしてください!!…居るのか!…居ないのか!!…」


「ッ!……」


ベルベッタは真実を聞く様にマルティスへ問い掛けると、その声を珍しく荒げ!…

だがマルティスはまだ誤魔化そうとするのか、寧ろウンザリした様子でベルベッタ

に居ないと答えると、無理やりにでも話を切ろうとする!…しかしベルベッタは

何か核心を持って居るのか、話を無理やり切ろうとするマルティスに対して

詰め寄り!…その際サラッとトンデモナイ事を口にし!…色々とダークエルフ達

にも事情が有るのか更に糾弾するよう声を荒げると、そんなベルベッタの様子は

初めてなのかマルティスもたじろぐ!…そうしてレイヴン達と合流する筈が

いつの間にか集落の存続の話へと発展し、マルティスとベルベッタが足を止め!…

マサツグはマサツグでそんな二人にもう面倒臭いと言った様子で呆れるとシロを

肩車し…早く終わる事を願う様に外野からその様子を見守って居ると、

レイヴン達が遅いと感じたのか様子を見に来る様に合流する!…


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ…


「おぉ~い!…遅いから見に来た…って、何この状況?…」


「こっちが聞きたいよ!…

何かマルティスに子供が居るとか居ないとかで…」


マサツグ達を見つけた所でレイヴンは合流するなり声を掛け、そして様子が

可笑しい事にも気が付くと、戸惑いながらもマサツグに問い掛けるよう

言葉を続ける…この時その光景は当然レイヴンだけでなくオーディックや

ジーナ達の目にも映っており、この状況に誰もが一体何が!?…と言った

戸惑いの表情を浮かべて居ると、マサツグが思わずポロっと漏らす!…

そのポロっと漏らした話題と言うのはまさにマルティスに子供が居ると

言う話で、それを聞いたジーナ達は激震が走ったよう驚いた表情を見せると、

途端にマルティスへ詰め寄る!…


__どよっ!?…バババッ!!…


「「「如何なんですか!?」」」×4


「ッ!?…うえぇ!?…こっちも!?…」


まるでベルベッタに加勢するようジーナやナターシャ達が詰め寄ると、同じ様に

マルティスへ答えの有無を求め!…その様子にマサツグも驚いた様子で!…

思わず跳び退くよう驚いた反応を見せて居ると、徐々にマルティスは諦める様な

素振りを見せ始める…その際詰め寄って来る六森将達それぞれの顔を見ては

溜息を吐くと、次には何か考える様な感じで若干俯きながら目を閉じ…そして

悟った様な表情を浮かべては決意した様子で目を開け、六森将達に話をするよう

前を向くと、一言言葉を漏らす…


「……なるほどな?…今朝の啓示はこれの事を言って居たのか…」


「……ッ?…何を訳の分からない事を言って居るのですか!?…

はぐらかそうとしたって私達は!!…」


「娘は居ない!……だが孫は居る…」


「……は?…」


「娘は居ない!……だが孫は居る…」


諦めが付いた表情でマルティスが一言漏らすと、続けて意味深な言葉を口にし…

そのマルティスの言葉にベルベッタ達は戸惑い!…またはぐらかそうとして

居るのかと勘繰ると、三度真実を求める様に言葉を掛けるのだが!…マルティスは

はぐらかして居ないと言った様子で娘は居ないとベルベッタ達に断言すると、

孫は居ると答える!…当然そのマルティスの言葉にベルベッタ達は自身の耳を

疑うと、再度聞き直す様に言葉を漏らすのだが…マルティスから帰って来る

答えは同じ言葉で、マルティスも吹っ切れた様子で何処と無しか清々しい表情を

見せて居ると、ベルベッタは詳しい話を求める…


「え…えぇ~っと…その……ま、孫と言うのは?…」


「……ッ?…我の娘の娘で血縁上我は祖母…」


「いやそう言う事を聞きたいのでは無くて!…

そのお孫様は何処にと聞いて!…」


マルティスに孫が居ると言う話を聞いてベルベッタ達は更に戸惑い!…娘どころか

孫が居る事に衝撃を隠し切れないで居ると、如何言う事かと尋ねる…するとその

問い掛けに対してマルティスもワザとか、孫の説明をし始め!…だが当然聞きたい

のはそう言う事ではなく!…その孫は今何処に居ると言った様子でベルベッタが

ツッコミながら問い掛けると、マルティスはキョトンとした反応を見せてはこう

答える。


「…目の前に居るでは無いか……」


「ッ!…え?…」


「我…この[マルティス・フラフィ・ベラドッナ]がその孫で有り!…

その体に憑依する我こそが先々代族長!…

[バーバラ・フラフィ・ベラドッナ]である!…

故に孫は能力を開眼した際手にしたのがこの降霊術で有り!…

我を憑依させる事でこの集落の治安を保って来た!…

今でこそ我を憑依させているが…この子の能力は歴代最強!…

如何なる世代の者であろうとその魂を呼ぶ事が出来!…

覗く!…触れる事すらも容易とする!…我はただそれを借りているだけ…

この子が一人前になるまでは我が指揮を執り!…

独り立ちの儀を行うモノとして居る!……理解出来たか?…」


「………。」


マルティスは自分の体をベルベッタ達に見せるよう両腕を広げて見せると、

自分が孫だと名乗り…だが当然そんなマルティスの言葉に!…ベルベッタ達も

全く理解出来ない様子で固まってしまうと、戸惑いの言葉を漏らし出す…

しかしマルティスはそんな反応すら予想出来て居た様子でスッと元の冷静な

態度に戻ると、改めてベルベッタ達に自己紹介をし始め!…その際依り代の

方を孫だと紹介してはフルネームを語り、そして中身の方に関しては先々代の

族長の魂と紹介すると、更にベルベッタ達を困惑させる!…そこから更に

マルティスの本当の能力についても語り出すと、その能力は歴代族長の中でも

トップクラスと魂は話すのだが!…それ以上に現状を飲み込めないベルベッタ達は

フリーズしてしまい!…唯一その話に付いて行けるマサツグだけがあの幼女が

寝ていた事も含めて現状を理解すると、そのベルベッタ達の状態も含めて反応に

困るのであった…

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 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

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