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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-

-第三章四十五節 アルスの風剣とナターシャの影歩きと試練の結末-

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二度の気絶から帰って来たマサツグ達を放置し…円の中心ではアルスとナターシャ

による決闘が続けられていた。最初の鍔迫り合いでは恐らくナターシャが演技を

して居たのだろうが、寸前の所でアルスが看破し!…看破された事でナターシャも

手早く逃げ!…互いに硬直状態の隙を伺う展開へと発展すると、辺りは再度緊張感

に包まれるのであった。尚気絶から復帰したマサツグはと言うと、意識をハッキリ

させた所でマリーの治療に掛かるのであった。


__ざわ!…ざわ!……チャキッ!!…


{……クッ!…最初の立ち合い!…

アレは間違いなく演技と見ていいだろう!…

現に私は弾き飛ばされ今こうして見合って居る!…

まさかここまで達者だとは!…

さすが六森将と呼ばれる事だけは有るか!…}


{……一気に勝負を着けようとしたのが失敗だった!…

やっぱりあの時みたく直情的じゃない!…

…寧ろあの時は運が良かったと考えた方が良さそう!…

相手も警戒して迂闊に打って来ない!…

…とは言え、このままだと決着は着かず仕舞い!…

何か不意を突ける良い手は!…}


辺りはその膠着状態の二人を見てザワ付き、アルスとナターシャも互いに

攻めあぐねては如何攻撃するかで考え続ける!…ただ相手の動きばかりに

気を取られては迂闊に動く事が出来ず!…互いに取り敢えず相手の動き方から

その戦闘スタイルについて改め直すと、ある事に気が付こうとして居た。

そしてそれはマサツグやレイヴン達の目から見ても分かる様で!…マサツグが

治療をしつつ余所見で膠着状態の二人に視線を向けると、まるで直ぐに状況を

理解した様子で言葉を呟き出す!…


「……あぁ~…相性が悪いようですねぇ…」


「ッ!…え?…急に如何したんだ?…」


「え?…いや…

アルスの戦闘スタイルって切り込み隊長みたいな感じなんだよな?…

自分から突っ込んで行く!…みたいな?…

っで、一方のナターシャはカウンター型…それも確実に絡めてからの

一撃必殺タイプで…言うなればルーティンが長い訳!…

だからアルスみたいに感の良い奴が相手だと絡め辛くて!…

互いに相性が悪いと言った様子で今膠着状態なんだなと…」


マサツグの何気ない一言にレイヴンが反応し、その際マサツグの手が止まって

いる事にも気が付いた様子で視線を向けると、マサツグもレイヴンに声を

掛けられた事で返事をする…この時まるで解説をするようアルスとナターシャの

戦闘スタイルから説明をすると、互いに攻めあぐねて居ると直ぐに察した様子で

更に説明をし!…最後に今膠着状態にあると!…アルスとナターシャが共に

苦戦を強いられている様子でマサツグが言葉を口にすると、レイヴンはある

意味でマサツグに感心をする!…だが…


「ッ!…ふぅ~ん?…近接戦闘者だから分かる状況って奴か…

まぁそれは良いとして…とにかく今は治療に専念してくれ?…

俺はオーディックの背中の手当てで忙しいんだ!…」


「えぇ~?…それを言うなら俺も病み上がりなんだが?…」


「マサツグの場合は自業自得だろうが!…確かに危機的状況ではあったが!…

後先考えずにやらかした結果アレだろうが!!…」


レイヴンはマサツグの観察眼に感心をするのだが、今はそれ所では無いと!…

とにかく治療に専念するようマサツグに言い、自身もオーディックの毟られた

背中に忙しいと苦言を口にすると、そのレイヴンの言葉を聞いてマサツグも

自身の事を負傷者と言う!…しかしそうレイヴンに言った所でレイヴンは更に

呆れた様子を見せると、手を動かしながらマサツグに自業自得と言い!…

アレはマサツグが悪いと言った様子で!…考え無しにも程が有ると更に苦言を

口にすると、そのレイヴンの文句に対してマサツグが引っ掛かりを覚える!…


「その言い方はちょっと引っ掛かりを覚えるモノが有るぞ!?…

てかこの子も何でこっちに来てるんだ?…」


「え?…いや、ヤブ幼女好きだろ?…」


__ッ!?…ザザッ!!…


「ッ!?…ちょっと待て!!…その言い方は語弊がある!…

てか、ベルベッタも真に受けんでくれぇ!!!」


その際レイヴンに対して若干馬鹿にされた様な感情を持つと、ムッとした表情を

見せ!…更に自分の足元にマリーが転がっている事にも疑問を持ち、その事に

ついてレイヴンへ確認するよう言葉を掛けると、レイヴンの口からトンデモナイ

有らぬ誤解の言葉が出て来る!…当然その言葉に対してマサツグがツッコミを

入れて否定をして居ると、その隣ではベルベッタが若干引き気味にマサツグを

避け出し!…何ならマサツグからマリーを遠ざけようと!…治療を置いても

抱えて逃げる体勢を見せようとして居ると、マサツグはベルベッタに向かい

誤解と叫ぶ!…そうして治療組の方でワチャワチャと揉めている一方で、再び

決闘をして居る二人の方へと話は戻り!…互いに睨み合っては動かず仕舞いで

相も変わらず!…徐々に精神をも摩耗させ始めると、アルスは我慢の限界と

言った様子で動く!…


「……ッ!…このままでは埒が明かない!…

かくなる上は!!…」


__チャキッ!!…スウウゥゥ!!…どよッ!?…


「…すまないが本気を出させて貰う!…

我が剣の神髄!!…とくと見よ!!!」


「……ほう?…」


アルスは何を思ったのか攻撃の構えを一時解くと、自身の眼前から突き出すよう

右手で剣を水平に構え!…更に気合の入った様子で左手にピースサイン!…

と言っても指の間を開くのではなく閉じて構え!…そのピースサインを剣の

鍔より先端に向けて!…徐にスッと撫でるよう指を滑らせると、剣に緑色の光を

纏わせる!…宛らそれは某・ダークでソウルなゲームに出て来るムーンライト!…

特殊攻撃をする前触れの様に見え!…ダークエルフ達はそれを見て戸惑い!…

ナターシャも例外なく警戒し、アルスも本気と再度剣を構えながら声を掛けると、

その様子にマルティスも反応する。まるで感心したよう言葉を漏らすと、アルスの

剣を見詰め!…その間にもアルスは攻撃態勢に入り出し!…ナターシャも受けて

立つよう腰を低くし向かって行く姿勢を見せると、次の瞬間ナターシャの予想を

裏切る攻撃が飛んで来る!…


__チャキッ!!…コオオオォォ!!!…


「はあああああぁぁぁぁ!!!!」


__バシュウウウゥゥゥ!!!…


「ッ!?…これは!!…ッ!!…」


ナターシャが構えて居ようが関係無いとばかりにアルスは剣を振り下ろそう

とする!…この時緑色に光る剣は風を纏い出し!…何やらその緑色の光も

強くなったよう更に発光すると、その剣を振り下ろす音をも変化させる!…

まるで強風の中風を切り裂こうとしている様な音が聞こえて来ると、アルスも

掛け声と共に剣を振り下ろし!…その瞬間アルスはその場から動く事無く

ナターシャへ向けて斬撃を放ち!…ナターシャも慌てた様子で直ぐに横へ

跳び退き斬撃を回避しようとすると、更にトンデモナイ事が起きる!…


__ババッ!!…コオオオォォ!!!…クンッ!…


「ッ!?…え!?…」


__ブワアァァ!!!…ッ!?!?!?…


「な!?…何で!?…」


確かに直撃する事無くナターシャはアルスの斬撃を回避したのだが、次に

襲って来たのはその風圧!…放った剣圧ではなく風圧で、回避した後体勢を

立て直そうと地面に手を突いた瞬間!…ナターシャの体は突如宙を舞い!…

まるで強風に煽られたよう錐揉み回転しながら上空に軽くポーンと投げ

出されると、本人及びダークエルフ達は驚きを露わにする!…その際周りを

囲んで居るダークエルフ達は思わず絶句し!…打ち上げられた本人も何が

起きたのか理解出来ていない様子で宙を舞って居ると、アルスは更に追撃を

放つ!…


__チャキッ!!…


「もう一撃!!…行くぞおおぉぉぉ!!!!」


「ッ!?…不味い!?…」


「はあああああぁぁぁぁ!!!!」


宙を舞って居るナターシャに狙いを付けるとアルスは再度剣を構え!…勢いに

乗るよう掛け声を上げると、再度剣を振ろうとする!…当然宙を舞っている

状態で回避など出来る訳もなく!…何なら錐揉み状態で更に具合が悪く!…

この状態であの攻撃を喰らうのは!…とナターシャが焦りを覚えて居ると、

アルスはそんなナターシャの事など御構い無しに追撃を放つ!…この時気合の

入った掛け声と共に斬撃が繰り出されるのだが、可笑しな事に!…最初に

放った斬撃よりも如何にも威力が低く!…規模も小さくナターシャの所まで

射程が届いていない様子で空を斬ると、今度はアルスが焦りを覚える!…


__バシュウウウゥゥゥ!!……ッ~~~!!!………ッ!?…


「ッ!?…しまった!!…最初に力を入れ過ぎた!!…」


__ドサアァ!!…バババッ!!…


「かひゅ!…かひゅ!…はぁあ!…はぁあ!…

…こ、こわかったぁ!……何故かは知りませんが!…

助かりましたぁ!……と、とにかく呼吸を!……ッ!?…」


ナターシャも被弾を覚悟した様子で宙を舞いながらガードを固めるのだが、

結局当たらず!…その際アルスの斬撃はナターシャの眼前にまで迫り!…

ただトラウマだけを与えてノーダメージに終わってしまうと、宙を舞って

居たナターシャも地面に叩き付けられては慌てて受け身を取る!…この時

アルスからも距離を取ると、ナターシャは過呼吸かと言いたくなる位に

激しく息を切らし!…やはりその斬撃が目の前まで迫って来て居た事に

恐怖したのか、青ざめた表情ながらも何とか息を整えようとして居ると、

その目の前ではアルスがまた剣に光りを纏わせる!…


__チャキッ!!…スウウゥゥ!!…


「今度こそ決める!!…やり辛い相手ほど早期に決着を!!…」


「かひゅ!!…ッ~~~!!!…させません!!!」


__バシュ!!…ッ!…ギイイィィン!!!…


今度こそ決めると意気込み!…アルスは同じルーティンで剣に光りを纏わせ、

同時に風も纏わせようとするのだが!…ナターシャもこれは不味い!と

感じたのか!…自身の呼吸が整って居ないにも関わらず飛び出して行くと、

アルスに対して鍔迫り合いを持ち込む!…この時競り合う力も残って居ない

程に呼吸は乱れ切って居るのだが、アレは危険と!…あの技をさせる方が

厄介と言った様子でほぼタックルに近い状態で向かって行き!…逆にこれが

功を奏したのかアルスも中断出来ない様子でナターシャを受け止めると、

バランスを崩す!…


__ギギ!!…ギギギッ!!…グッ!…


「ッ!!…体重を掛けて来るか!!……クッ!!…

今度は何をする気だ!!…」


「はぁあ!…はぁあ!……な、何とかしないと!!…」


これまで激しい打ち合い等一回もない!…ただ有ったのは鍔迫り合いだけで、

その鍔迫り合いも今と合わせて二回目!…ハッキリ言ってここまで消耗する事は

あまり無いのだが、ナターシャは元々体力が無いのか消耗しており!…

酸素不足も出て来て居るのか目の焦点も怪しく!…脱力に近い状態でアルスに

圧し掛かるよう鍔迫り合いをして居ると、アルスもさすがに厳しいのか押し

返せずに居た!…その際ナターシャが寄り掛かって来ている事に対しても深く

考えて居る様で、迂闊に動けないと歯を食い縛り!…ナターシャはナターシャで

その先を考えて居らず!…とにかく状況を打開したい!と言った様子で辺りに

視線を向けて居ると、ここで天はナターシャに味方する!…


__………ゴゴゴゴゴ!……


「…クッ!!……ッ!…雲行きが怪しくなって来た?…」


「ッ!…チャンスッ!!…」


アルス達の戦っている場所は森の中でも日が差し込む場所で、先程まで晴れている

様子が伺えたのだが…徐々に雲が出て来ては日が陰り…辺りに暗い影を作り出し

その様子に押されていたアルスも思わず注意を逸らしてしまうと、そのアルスの

言葉にナターシャが反応する!…ナターシャは息絶え絶えながらもチャンス!と

叫ぶと、一気に嗾けるようアルスを圧し!…その手にしているダガーを必死に

突き付けようとし始め!…それに合わせてアルスも身の危険を感じて必死に抵抗を

すると、油断したとばかりに言葉を漏らす!…


「ッ!?…しまッ!!…だがこのままやられる訳には!!」


__グッ!!…クンッ!!…


「ッ!?…まさか!?…」


ナターシャが息を吹き返したと錯覚したアルスは慌て出し!…それでも

負けられない!…とばかりにそれこそナターシャの事を弾き飛ばそうとすると、

奇異な事が起きる!…それはアルスが思いっきり腕に力を入れてナターシャを

弾き飛ばそうとした瞬間!…ナターシャの体はまるで風船の様に軽く簡単に

弾き跳んだ事であり!…アルスもその軽さに違和感を覚えた様子でハッ!とし!…

何か嫌な予感を覚えた様子でまさか!と言葉を零すのだが、それに気が付いた

時には既に遅し!…


__ガキイイィィン!!!……フッ……


「ッ!?…す、姿が!?…消えた?…」


__どよッ!?…どよどよッ!!…


ナターシャはそのままアルスに弾き飛ばされると、雲が作り出した影の中へと

飛んで行き!…そしてフッと闇に紛れて消えるよう!…ナターシャはその姿を

慣れた様子で隠して見せると、辺りに居る者達を驚かせる!…この時ただ

その場で聞こえるのはアルスの慌てる声とダークエルフ達のどよめきだけで…

肝心のナターシャからは足音一つすら聞こえない!…ただ影に消えて行ったと

言う印象だけを残して行くと、その場に居る者達へ更に謎の緊張感を与える!…


「……気配も感じられない…さすがと言うべきか!…

だがそれも雲の下だけ!…恐らくは影の下で無いと!…」


__キラッ!…フォフォフォン!!…


「ッ!?…何ぃ!!…クッ!!…」


__ズアアァ!…キンキンキン!!…


さすが影歩きと言った所か…その気配すら消してしまうともはや何処に潜伏して

居るかが分からず!…アルスも剣を構えながら戸惑ってしまうと、ただ雲の下の

影ばかりに視線を向けていた!…その際相手が何処から攻撃して来るのか

分からない!…と言った恐怖を覚えるのだが、あくまでもそれは雲の下の影だけの

話で…影にさえ近寄らなければ大丈夫と!…アルスはそう自身に言い聞かせ心の

平静を保とうとするのだが、突如その影の下より投げナイフが飛んで来る!…

当然投げナイフが飛んで来た事にアルスは驚くと、咄嗟に剣でナイフを切り払う

のだが!…影が無くとも攻撃出来る事に!…ナターシャが本領発揮して来た事で

更に焦りを覚えて居ると、場面はアルスにとって最悪な方へと進んで行く!…

何故なら!…


__ゴゴゴゴゴ!!……


「……クッ!…天は奴を味方して居ると言う事か!…

このままでは!…」


__ジリ…ジリ……キラッ!…フォフォフォン!!…


「ッ!!…クッ!!…」


ナターシャの姿を隠した雲は静かにアルス達の上空を覆い!…徐々に日の光を

遮って行くと、ジリジリとアルスを追い詰める!…当然雲が動くのと一緒に

アルスも徐々に後退し始め!…その雲の流れが速い事にアルスも文句を言うよう

言葉を漏らして居ると、再び雲の下より投げナイフが飛んで来る!…その際

アルスは目を凝らしナターシャの姿を捉えようとするのだが、やはりその姿は

一片たりとも捉えられず!…再び飛んで来たナイフを切り払い!…更に追い

遣られるよう後ろへ後退させられて行くと、遂に!…


「……何か!…何か策は!!…」


__ジリ…ジリ……トンッ!…どよッ!?…


「ッ!?…い、いつの間に!?…」


徐々に後ろへ追い遣られる!…そして自身の周りはダークエルフ達が囲む様に

陣を作っており、当然後ろに下がれば下がる程その陣を作っているダーク

エルフ達の方へと近付いて行く!……これは即ち逃げ場が無くなって行くと

言う意味で有り、案の定背後に居たダークエルフ達と接触!…最終的には

逃げ場のない!…互いにぶつかった事で驚き言葉を漏らして居ると、ここで

アルスも逃げ場が無くなった事に漸く気が付く!…そして慌てて前へと振り

返りそのナターシャが潜伏している影を確認すると、その雲の影は眼前まで

迫っており!…まるで影に中に見た事が無い化け物が居るよう!…何かゾッと

する得体の知れない恐怖を感じると、更にアルスは焦りを覚える!…


__…ゴゴゴゴゴ!……ッ!!…


{…クッ!…これ以上は!!…

…如何する!?…後方に退路はもう無い!…眼前は包囲されている!…

有るのは底知れない影の恐怖だけ!…

しかしそこへ一歩でも足を踏み入ればそれは奴の領域!…

…何処から攻撃して来るか分からない地獄に!…足を入れろと言うのか!?…

……クソ!!…何か打開策は!!……ッ!…}


__ゴゴゴゴゴ!……


{……雲は全体を覆う程に大きくはないのか?…

奥の方に日の光が見える!…いやしかし!…}


刻一刻と迫って来る雲の影に戸惑いつつ!…改めて退路が無い事に焦りを更に

感じると、目の前の影に恐怖する!…目の前に有るのは何の変哲も無いただの

影の筈なのだが、誰かが潜んで居ると分かって居るとそこはもう魔界の様に

感じられ!…迫って来る雲に対して足を踏み出せず!…ただ打開策は無いかと

アルスが辺りを見回して居ると、その雲の影の奥より光を!…日の光が差し

込んで居るのを見つける!…そして改めて頭上を通ろうとしている雲に目を

向けると、その規模を確認し!…走ればその日の光まで辿り着けると確信する

のだが、やはりナターシャが脅威で!…辿り着く前にやられる事を予想して

しまうと、やはり踏み出す事を躊躇わせるのであった!…そして!…


__ゴゴゴゴゴ!……


{……クッ!!…もう後が!…

私が躊躇っているばかりに!!……覚悟を決めるしか!!…}


__どよっ!…どよどよっ!…


「……ッ!!…えぇい!!…ままよ!!」


アルスが躊躇っている間にも影は迫り!…更にその猶予を削って行くと、遂には

円の中…アルス一人分だけの日の光を残してしまう!…そして影の奥の方では

徐々に日の光が強まると、雲の切れ間を確認出来!…アルス自身ももう悩んでいる

場合では無いと!…辺りに居るダークエルフ達からどよめかれながらも覚悟を

決めると、言葉を口にして影の中を駆け抜けようとするのだが!…当然そこには

待って居たとばかりにナターシャが待ち構えており!…ナターシャは影の中に

踏み入って来たアルスに対して万全の態勢を整えると、一気に襲い掛かる!…


__ダッ!!…ッ!…ババッ!!…


「…ようこそ!…私の世界へ!…待って居ました!…」


「ッ!?…クッ!!…やっぱり来たか!!…」


「逃がしませんよ!!!…」


アルスが覚悟を決めて影の中へと飛び込んで行くと、その影の中からナターシャの

声が聞こえ!…この時自身が有利な立場に居る事からか!…若干強気に出るよう

言葉を口にすると、その言葉に反応してアルスも走りながら辺りを見回す!…

しかし幾ら見回した所でやはりナターシャの姿を捉える事は出来ず、ただ不安に

駆られ!…その間にもナターシャは逃がさないと言い!…アルスに向かいまずは

直接攻撃をするのではなく!…投げナイフなど間接的にジワジワと仕留めに

掛かるよう攻撃を開始すると、確実に始末するよう自分のペースを守る!…


__スチャッ!!…フォフォフォン!!…ダダダッ!!…


「グッ!!…足を!!…」


__ズシャアアァァ!!!……


「……クッ!…まだ!…まだぁ!!…」


自分の姿を捉えられて居ない事をフルに活用し、まずは影の外へ逃げようとして

居るアルスの足へ向かい投げナイフを投げると、アルスの左脚!…太腿や脹脛に

ナイフを突き立てる!…するとその痛みでかアルスはバランスを崩すと、ヘッド

スライディングをする様に転んでしまい!…そこから足に力が入らないのか藻掻き

出し!…それでも何とか這ってでも影の外に逃げようとすると、ナターシャから

更に追撃を受ける!…


「これで貴方は走れない!…次にもう剣を握れない様に右手と左手!…」


__スチャッ!!…フォフォン!!…ダスダス!!…


「グッ!!…コナクソ!!…」


「ッ!…まだ動けるのですか!……驚きです!…」


__ざわざわ!…ざわざわ!…


地面を這ってでも逃げようとするアルスにナターシャは無慈悲な追撃を!…

それぞれ右手と左手に向かいナイフを投げ付けると、両手とも貫通させては

剣を握れない様にする!…その際地面にも刺さる勢いでナイフは深く刺さる

のだが、それでもアルスは抵抗し!…それこそ自力でナイフを地面から抜き!…

ナイフを手に刺したままナターシャから逃れようとすると、そのアルスの

根性の入り様にナターシャも驚く!…当然その様子は円の外から見ている

ダークエルフ達の目にも届くと、ナターシャ同様周りの者達を驚かせ!…

何なら普段優しい子があんな風に!…残忍な方法で人を痛め付けて居ると

言った光景にも驚いた表情を見せて居ると、遂にナターシャが止めを刺すと

言い出す!…


「……ですがこれで終わりにしましょう!…」


__ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……ドカッ!…


「グッ!!…ガハァ!!………ッ…」


アルスに止めを刺すと言うと、這って居るアルスの隣に立つよう…ここで

初めて足音を聞かせ!…アルスも近付いて来る足音に反応するよう動きを

止めると、次の瞬間ナターシャに横腹を蹴られる!…蹴られると言っても

仰向けにするよう蹴り転がされたもので、アルスも堪らず苦痛の声を

漏らし!…何の抵抗も出来ないままナターシャに仰向けにされると、身動き

一つ取れずに天を仰ぎ…その際眼前には今だ雲が滞留しており、日の光が

差し込む気配を見ないで居ると、突如自身の体の上に何かが乗る感覚を

覚える!…


__ギシィ!!…ッ!!……


「……苦しめてゴメンナサイ…痛め付けてゴメンナサイ…

でも…それももうこれで終わり…貴方の負けです…」


「ッ!……見事な物だな…侮ったつもりはなかったがこうも…

ここまでやられたのはいつ振りだろうか?…」


「……負けを認めます?…」


身動き一つ取れない相手へ更に抵抗の隙を与えないよう!…ナターシャは恐らく

アルスへ馬乗りになって居るのだろう…全体重を掛ける様にアルスの体に圧を

掛け!…アルスも苦しいと言った様子で表情を歪ませると、またナターシャの

声が聞こえて来る…その際ナターシャが口にし出した内容と言うのは、アルスへの

謝罪で…同意の下決闘をしたのだが傷つけたとアルスへ謝罪し!…最後にこれで

終わりと自身の勝利を同時に宣言すると、動けないアルスに対してダガーを

構える!…馬乗り状態で一気に心臓目掛けて振り下ろし突き刺す様に、両手で

ダガーを握り!…その様子は何と無くアルスから見ても分かるのか…見事にして

やられたと言った言葉をナターシャへ口にすると、ナターシャも負けを認めた?…

と声を掛けるのだが…アルスはそのナターシャの言葉に対して首を左右に振り!…

まだチャンスは有ると言った言葉を口にすると、最後の大勝負に出る!…


__……フルフル…


「…いや、最後に勝つのは私だ!」


「ッ!?…何を言って!?…ッ!?…

ま、まさか!?…ッ!!…」


「…気付いたようだがもう遅い!!」


マウントを取られて身動き一つ出来ないのに!…それでもまだ折れて居ない様子で

苦しそうに不敵に笑って見せると、アルスは勝利を確信する!…当然そのアルスの

言葉にナターシャも驚くと、アルスに如何言う意味かを尋ねるのだが!…

その言葉が出るよりも先に何かに気が付いた様子で!…途端に慌てた表情を見せて

アルスから跳び退こうとするが、アルスは遅いと言ってはその最後の作戦に打って

出る!…その作戦と言うのは!!…


「《我を護りし風よ!!…吹き轟け!!…

如何なる曇天をも消し飛ばし!…その猛威を振るって見せよ!!!

テンペスト!!…ランス!!!!》」


__コオオオオォォ!!!…ボッ!!!!……バシュウウウウゥゥゥゥ!!!!…


「ッ~~~!!!……きゃあああああぁぁぁぁぁ!!!!…」


「うわあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!……」


倒れているアルスを中心に突如魔法陣が現れ出し!…緑色の光を放ち如何にも

ヤバいそうな雰囲気を漂わせると、アルスは最後の詠唱をする!…その魔法陣も

いつの間に用意したのか?…そんな所が気になるのだが当然言ってる場合では

なく!…ナターシャは慌てて逃げようとするのだが、アルスに両足を掴まれては

逃げられず!…ただ動けない様子でマゴマゴして居ると、次の瞬間アルスは

自分ごとを巻き込む様に魔法を炸裂させる!…その瞬間辺りに暴風が吹き

荒れると、竜巻の様な上昇気流が立ち昇り!…その煽りを受けるようアルスと

ナターシャは宙を舞い!…互いに大ダメージを受けた様子で悲鳴を上げて居ると、

短時間だけなのかその魔法も落ち着きを取り戻しては収まって行く!…


__ゴオオオゥ!!!…バシュン!!…コオオォォォ……ヒュ~~~…


「ッ!?…ふ、二人とも落ちて来るぞ!?…」


「お、おい!!…ピクリともしてないぞ!?…」


当然魔法が収まると言う事は二人も落下し始める!…同じ様に魔法の煽りを

受けて居たダークエルフ達も戸惑い!…収まった所で慌てて注目をアルスと

ナターシャに向けると、互いに大ダメージを受けた様子で落ちて来る二人の

姿を見つける!…その際二人は気絶しているのか…何方も頭から落下しては

受け身を取れる様な状態を見せて居らず!…各々がそれぞれ慌てており!…

一体如何する!?と言った反応を見せて居ると、マルティスだけはあの暴風の

中影響を受けて居なかったのか!…杖を突いた状態で悠然と立っており!…

落下して来る二人の姿を見上げると、徐に魔法を唱え出す…


「……《高き所へ我を運べ…自由自在に動く風の台をここに…

エアリフト!…》」


__シュウウゥゥ…ぼぼふんっ!…しゅぱぱぱぱ!……おぉ!!…


マルティスは落ち着いた様子で魔法を唱え出すと、二人を助ける為の風を

作り出し!…その風はまるで小型の竜巻のよう!…宙に浮かせて気絶して

いる二人をその竜巻で受け止めると、ゆっくりとドローン飛行をする様に

地面へと降ろし始める!…するとそんなマルティスの魔法にダークエルフ達は

さすが!と言った様子で感嘆の声を漏らし出すと、羨望の眼差しを向け!…

だがマルティスはそんな視線など一切気にする事無く、ただアルスの事を

気に掛け思った事をポツポツと零すと、最後には引き分けと勝負の結果を

口にする。


「……無茶をする…最後まで勝ちに拘る者とは分っては居たが…

我が身の犠牲まで厭わぬとは………両者とも戦闘不能!…

よってこの勝負は引き分けとする!…」


__どよっ!?…ざわざわ!…ざわざわ!…


「……まぁ当然の結果だよな?…

あんな暴風を巻き起こして…無事な訳がねぇ…

…それよりも……」


「…まぁた患者が増える感じですかねぇ?……はあぁ~…」


まぁ当然の結果と言えばそうなのだが、この時思わずなのかダークエルフ達は

ざわつき!…そんな勝負の結果にマサツグ達も内容を聞いて居た様子で、

最後はド派手だったと感想を口にするよう最初は呑気をするのだが…その勝負の

結果より負傷した二人がこっちに運ばれて来るのではないか?…と考えると、

二人は思わずアルスに対して文句を言いたくなるのであった…

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