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-第三章-サマーオーシャン連合国-エルフの国編-

-第三章四十三節 怪我の心配と鬼ごっこバトルとマリーの奇策-

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相撲の試合と呼んで良いのか分からない戦いが終わり…次にシロとマリーの

一対一による鬼ごっこが始まろうとして居た!…最初はシロが逃げる側、

そして肝心のマリーの方が鬼となり!…互いに配置に就くよう先程の相撲

同様!…若干間を開けて向き合うよう身構え出すと、マルティスがその間に

立つよう杖を突いていた。その際もうオーディックの叔父は憑いて居ない

のか、いつもの冷静な様子に戻っており!…そのマルティスの様子に

オーディックも気になった反応を見せ、何故か隣にジーナを寝かせ周りから

見守られる状態で鎮座して居ると、マサツグは一人シロに声援を送って居た!…


「シロォ~~!!!…いいかぁ~!?…

怪我だけは負わせるんじゃないぞぉ~~!!」


「………相手の事心配してるし…

そもそもシロちゃんの事は心配じゃないのか?…」


「ッ!…え?…いや、心配に決まってんだろ!?…

怪我でもしたら!!…」


「いやそうじゃなくて!…シロちゃんが負けたらとか考えないのか!?…

普通自分の娘が目の前で戦おうとしてるのに!…

その父親と来たら相手の心配ばかり!…

…そんなんじゃまたシロちゃんに頬っぺた膨らませながら

顔に張り付かれるぞ?…」


他のダークエルフ達を凌ぐ声量!…もはや運動会の日に娘の応援(本気ガチ)をする

父親の様に叫んでおり、そのマサツグの応援ぶりにダークエルフ達がギョッと

した反応を見せて居ると、呆れた様子でレイヴンが話す…その際口にしたのは

マサツグが発している応援の言葉の内容であり、その内容と言うのは如何にも…

ただ相手を心配して居る様に聞こえてしまい…シロは良いのか?とレイヴンが

戸惑った様子で質問をすると、そのレイヴンの言葉に対してマサツグも

引っ掛かった反応を見せては反論をする!…そして当然そんな訳ない!と言って

返事をすると、やはり怪我の心配をし始めるのだが!…この時やはりシロの事を

明言せずにただ心配をしており!…レイヴンはそうじゃないと!言って更に

ツッコミ!…シロがヤキモチを焼くと言ってマサツグに注意を促すよう

言葉を掛けると、次にはマサツグがキョトンとした表情を浮かべては

こう言い出す…


「……ッ?…へ?…シロが負けるかもしれないって?…

いやそれは無いだろ?…絶対?」


「ッ!…絶対?…」


レイヴンからの問い掛けに対してマサツグは若干戸惑った様子でキョトンと

すると、レイヴンの言葉を復唱し…その後答えを告げるよう直ぐに苦笑いを

して見せると、レイヴンの言葉を否定する!…この時マサツグは滅多に

使う事の無い[絶対]と言う言葉を使って否定をすると、その言葉が出て来た

事にレイヴンは若干驚き!…そしてそんなレイヴンを余所に!…マサツグも

続けて心配をしている理由をレイヴンに話し出すと、シロとマリーの実力差に

ついて説明をする。


「寧ろ心配なのは相手の方だ!……正直…シロの相手じゃない!…

ダンチだ!!…それ位差が有る!…うっかりシロが本気を出したら!…」


「……だから心配をして居ると?…」


__……コクリッ!…


…まぁ説明と言っても極端に簡単な物で、その差を見せる様に両手で

ジェスチャーをし…そして改めてシロが本気になった時の事を考えて

身構え出し、レイヴンもその話を聞いてマサツグに再度確認するよう

言葉を掛けると、マサツグはシロ達の方を見たまま無言で頷く!…

そうしてマサツグとレイヴンが話している一方で、マルティスは最終的な

ルールを確認し!…それらを二人に説明するよう…改めて二人から同意を

求めるよう話し掛けると、いざそのバトル制の鬼ごっことやらが始まろう

として居た!…


「……では改めてルールを確認する…制限時間は五分…

鬼から触れられた者を鬼に…最終的に鬼だった者を敗者とする…

その際鬼はまずマリーから…触れる方法としては何でも有りとし…

相手を死に至らしめる事が無ければ武器の使用も可とする…」


「ッ!?…ちょ!?…ぶ、武器って!?…

確かに何でも有りって言ったけど!?…」


「…最後に確認をする……両者ともそれで良いのだな?…」


「構わないわ!…このマリーちゃんが負ける訳ないもの!」


「シロも大丈夫です!!…どんと来いです!!…」


マルティスが詳しいルールについて説明をする…その表情からはやはり

何も感じられず…ただ淡々と説明がなされると、最後には何でも有りと…

武器の使用も認められる事を話し出し、それを聞いてマサツグやレイヴンが

戸惑った様子で言葉を漏らして居ると、そんな二人を置いてマルティスは

進行を続ける…その際二人に大丈夫かの最終確認をすると、マリーは今だ

余裕たっぷりの笑みを浮かべては明らかにシロを侮った態度で返事をし!…

それに対してシロもやる気を漲らせた様子で返事をすると、マルティスは

頷き!…二人の間から若干距離を取るよう!…数歩後ろに下がって後方から

二人の様子が観察出来る間隔を取ると、次には杖を二人の間に通すよう

突き出す!…


__……コクリッ…ザッ…ザッ…ザッ…ザッ……スッ…


「……よろしい…では構え!…」


「ッ!!……」


合図を出す為か杖を構えるとマルティスは二人に構えるよう声を掛け!…

その声に反応してシロとマリーは互いに見合い!…腰を低くくいつでも

飛び出せるよう身構えると、これまた相撲の時同様緊張感が辺りに走る!…

そして二連続で六森将戦が見られるとあってか、ダークエルフ達も興奮した

様子で見守っており!…マサツグとレイヴンは不測の事態に合わせて

身構え!…ただこの空気に同調して違う緊張感をヒシヒシと感じて居ると、

遂に鬼ごっこと言う名の戦いの火蓋が切って落とされる!…


「……始め!」


__ッ!!…バババッ!!!…どよ!?…


「ふふ~ん!!…最初は軽く甚振って上げる!!」


「やれるモンならやって見るのです!!!」


突き出していた杖が振り上げられると、同時にマルティスが開始の声を上げ!…

それと同時にシロとマリーの両者が動き出すと、鬼ごっこが始まる!…この時

シロは初動バックステップ!…マリーはシロへ向かって駆け出して行くのだが、

その勢いは凄まじく!…その両者の脚力にダークエルフ達がどよめき戸惑った

声を漏らして居ると、早速マリーが仕掛ける!…その際マリーは様子見!と言った

様子で言葉を口にすると、懐から苦無に似た投げナイフを取り出し!…シロも

それに気が付いた様子で!…向かって来るマリーに対し、マサツグに似た口調で

挑発をすると、そのマリーの挙動に目を向ける!…そしてマリーも取り出した

投げナイフをシロに向けて投げようとするのだが!…


「フフフ!…」


__バシュン!!…ッ!?…


「き、消えた!?…」


「ど、何処に!!……ッ!?…」


__チャキッ!!…ッ!!!…バババッ!!


不敵に笑って見せるとマリーはただ真っ直ぐに向かって行くのではなく、シロの

目の前で姿を消して見せ!…マリーが姿を消した事に周りの観戦者達も驚いた

様子で言葉を漏らし!…シロ自身も何処に行った!?とマリーの姿を探して

居ると、シロは途端に何かに反応した様子で上を見る!…するとそこにはやはり

不敵な笑みを浮かべながら上空から奇襲を掛けようとするマリーの姿が有り、

マリーはシロ目掛けて投げナイフを構え!…シロはシロでマリーの様子に気が付き、

その場から逃げようとするのだが!…シロが逃げるよりも早く!…マリーは

余裕と言った様子で遅い!と言うと、シロに向かい投げナイフを投擲する!…


「遅いわよ!!」


__バババッ!!…サアアアァァ!!!…


「ッ!?…シロォ!!…」


「ッ!…問題無いのです!!」


マリーの手から投擲された投げナイフはちゃんと計算された様に!…ただ密集

させて投げられたのではなく全体に降り注ぐよう!…回避困難な状態で雨の如く

シロに襲い掛かると、幾ら負ける心配をして居ないとは言えマサツグを心配を

させる!…そして思わずシロの名前を呼んで逃げるよう声を掛けようとする

のだが、シロはその場から逃げず!…寧ろその場で若干腰を落とし出し!…

身構えるよう構えて問題無いと言うと、次の瞬間十八番のカマイタチを放つ!…


__グッ!!…バシュン!!…どよ!?…


「ッ!…へぇ~?…」


__キキキキン!!…サクッ!…サクサクッ!…どよどよ!?…


「ッ!?…なっ!?…何だ今のは!?…風の刃!?…

いやにそれにしてもあの幼子の何処に!?…」


構えたシロが自身の頭上に向かいカマイタチを放って見せると、周りからは

どよめきが上がり!…マリーもそのシロのカマイタチに若干驚いた様子で…

シロが放ったカマイタチは投げナイフを弾き!…一本としてその被弾を許さず

凌ぎ切ると、更に周りのダークエルフ達を驚かせる!…何なら身内からだと

アルスが目を見開いて驚いて居り!…あの幼女の何処にそんな実力が!?…と

言った様子で周りの視線を集めて居ると、シロもドヤ顔をする!…しかし!…


「…どんなもので!…ッ!?…」


「よそ見してても良いのかしらぁ?…」


__ッ!?…フォンッ!!……


「あっぶないのです!!…」


「ッ!…へぇ~?…反応も良いじゃない!…」


シロがドヤ顔を見せている間にマリーはいつの間にかシロの背後に回って

おり!…そして奇襲を掛ける様に猛スピードでシロへ接近し!…その手に

持っているダガーでシロの事を斬り付けようとすると、シロも背中を

反って機敏に反応する!…この時まさに紙一重!…後コンマ数秒遅れて

居れば斬られて居たかも知れず!…シロがギリギリ服一枚で回避をして

見せると、危ない!と自身の危機を口にする!…そしてこれまた自身の

攻撃が避けられた事にマリーが若干の驚きを見せて居ると、マリーは

シロを通り過ぎ様にワザとらしく側転で距離を取って構え出し!…シロは

シロで服を斬られた事に気が付き!…若干怒った様子でプクゥ~!っと

膨れ始めると、マリーに文句を言う!…


「あたたた…ッ!?…あぁ~~!!!…

何て事するのですか!!!…

折角ミスティーお姉ちゃんに貰った服なのにぃ~!!!」


「ッ!……ふん!…そんなお下がりの服が何だって言うのよ!!…

その余裕も今に無くしてあげるんだから!…覚悟なさい!!…」


「……襲られたのに服の事気にしてるし…

何か本当にヤブに似て来たと言うか…

…てかそんな生活が苦しいのか?…」


「ッ!?…い、いやぁ…ただ倹約してるだけでぇ……

…シロちゃぁ~ん…

出来れば人の懐事情が分からない様におねがぁ~い!…」


襲われた事に怒るのではなく、服を斬られた事に対してシロは怒りを燃やし!…

そしてその言葉を聞いて何故かマリーはピクッと反応し、そのシロの文句に

対して馬鹿にするよう言葉を掛けると、またダガーを手に身構え始める!…

その際マリーの表情から少し余裕の様子が薄れた様に見られると、その一方で

レイヴンはマサツグに対して疑問を持ち!…勿論シロの事にも驚くのだが

それよりもマサツグの様で…徐に懐事情について言及するよう尋ね出すと、

マサツグは答え辛そうにしながらもボソボソと律義に答える…この時同時に

シロへお願いをするよう情けない声を掛けると、レイヴンもそれを察してか

以降は聞かず…そんなマサツグ達のやり取りを余所に!…また一進一退の

攻防が続けられそうになって居ると、ここでマリーが作戦を考え始める!…


{…思ったより動ける様ね?…それにあの風!…何なの!?…

マリーが投げたナイフ全部弾くし!…

それ所か木々の間に穴を開けてるじゃない!…

…でも不意は突けてる!…後は工夫次第なんだろうけど!…

寸前の所でバレる!…まずはそれを何とかしない限りは!!…ッ!…}


馬鹿にはして居る様だが一応は真剣らしく!…今までの事を整理するようシロの

パターンを一つ一つ思い出して行くと、厄介な所をピックアップして行く!…

まずはカマイタチ!…投げたナイフを弾くだけでなく、木々の間に穴を開ける

位の威力が有り、直撃すれば死は免れない!…そして不意を突く事に関してだが、

不意を突く事は出来る!…ただ寸での所でバレる!…何を基準に自身の気配を

察知しているのか、その事について色々と思考を駆け巡らせると、マリーは

工夫を!と考えるのだが…ここでふとシロの耳と尻尾に目が行き、それが狼の物で

ある事に気が付くと、途端にマリーはハッとする!…そして!…


__……スッ……ッ!…


「ねぇ?…これ何か知ってる?…」


「……何ですか?…それ?…」


マリーは投げナイフ同様徐に懐から手のひらサイズの袋を取り出し!…

それを差し出す様にシロへ見せると、笑いながら物を知って居るか

どうかを尋ね出す!…するとその問い掛けに対してシロも律義に

知らないと返事をすると、当然その袋に若干警戒した様子を見せ!…

だがそんなシロの様子に対してマリーは構わないとばかりに!…

その袋を手に大きく振り被り!…シロへ目掛けてぶつけるよう袋を

投擲すると、自信満々にこうする為と口にする!…


「これはねぇ?…こうする為に有るのよ!!」


__バッ!!…


「ッ!…」


__スッ……ぶわさぁ!…



投げられた袋は真っ直ぐにシロへ目掛けて飛んで行くのだが、当たらなければ

意味が無いので…シロはそれを普通に横へ逸れる様にして回避し、投げられた

袋は地面へ…その後何事も無かったかの様に鬼ごっこは再開される筈だった

のだが…マリー一人だけが掛かった!…と言わんばかりに笑みを浮かべて居ると、

突如としてシロに異変が起きる!…それはその袋が地面に落ちてからの事で

あった!…


「……ッ!?…ッ~~~~!!!」


「ッ!?…シ、シロォ!?…」


__どよッ!?…ザワザワ!…ザワザワ!…


「ふふん!…思った通り!…」


投げられた袋は地面に落ちると中身を零し!…その中身が辺りに漂うよう粉末を

辺りに巻き散らすと、軽い土埃を上げる!…そこまでは良い!…そこまでは

良かったんだがその土埃が起きた瞬間、シロは何かに反応するよう目を見開き!…

そして途端に自身の鼻を押さえ何かに悶える様な仕草を見せると、マサツグを

戸惑わせる!…単純にその仕草だけを見ると何か嫌なモノでも嗅いだ様な表情を

見せており、当然その様子に周りのダークエルフ達も戸惑い!…何なら鼻が効く

者も数名居る様で、そのシロと同じ匂いを嗅いだのか何やら同じ様に鼻を押さえ

嫌そうな表情を見せて居ると、マリーはシロの様子を見るなりほくそ笑む!…

…ではマリーは何を投げたのか?…その正体は分からないまでもシロの動きを

封じる何かで、シロの動きが鈍ったのを見て摩耶余裕を見せ始めると、攻撃を

再開する!…


__……バババッ!!…ッ!?…


「その匂いは効くでしょ~?…」


「ッ!?…」


__バッ!…フォンッ!!…バシュン!!…


怯んで居るシロを見てマリーはチャンス!と喜び!…また消える様に加速して

シロに襲い掛かると、シロも反応しては身構える!…その際その匂いは目にも

来るのか、シロは若干目に涙を溜めており!…それを見ているのかマリーも

シロに感想を聞くよう言葉を口にすると、次の瞬間シロの目の前に姿を現しては

斬りかかる!…だがシロも素直に攻撃を喰らう訳には行かないので、咄嗟に

回避し!…だが攻撃を回避した所でマリーはまた姿を隠し!…辺りを走り回る

ようシロに姿を見せないよう努めると、先程の粉末について少し触れ始める!…


「ふふふ!…あの粉末はねぇ~!…

この大陸でいちばぁ~ん臭い花のエキスを粉末にした物なの!!…

加工するのも大変だし!…採取するのも大変だし!…

意外と貴重な物なんだけどアンタに使ってあげる!!…

もうここからはマリーちゃんの姿を捉えられない!!…覚悟しなさい!!…」


「うぅ~!!…くしゃいのですぅ~!…卑怯なのですぅ~!…」


__……バババッ!!…ッ!?…フォンッ!!…


マリーは徐に先程の粉末について触れ出すと、その粉末は臭い花のエキスと言い…

意外と貴重である事も話してはその臭いが狙いとシロに話し!…辺りを走り撹乱

しながら自身の居場所はもう特定出来ないと笑いながら言うと、次の攻撃に備えて

構え出す!…その一方シロはと言うと、話を聞いていたか定かでは無いのだが…

とにかく鼻を押さえては臭いと悶え!…辺りをキョロキョロと見回し必死に

マリーの姿を探すが、捉え切れずに困惑して居た!…そしてシロが困惑して居る

間にもマリーはシロの隙を見つけると、攻撃を繰り出し!…だがシロも早々

簡単には攻撃を喰らわないよう!…ヒラリと身を躱してこれまた何とかマリーの

攻撃を紙一重に回避して見せると、必死の抵抗を見せていた!…


「ッ!!!……うぅ~!…匂いが分からない!…」


「ッ!?…チッ!…鼻を潰してもまだあれだけ動ける!…

やっぱり一筋縄じゃ行かないって訳ね!!……でも!…

鼻を潰された事からやっぱり反応は遅れてるみたい!…

これなら!!…」


マリーの狙いはドンピシャだった様子…シロは如何にもマリーの匂いを頼りに

索敵していた様で、辺りが臭い出した事でマリーの動きが特定出来ず!…ただ

鼻を押さえてはその場から動けず固まってしまうのだが、それでもシロは嘆き

ながらもマリーの攻撃を回避すると、必死にマリーの姿を目で追おうとする!…

その際マリーもまだ攻撃を回避出来るシロの反射神経に驚かされると、更に

スピードのギアを上げては攻撃の姿勢を強め!…確かな手応えを感じた様子で

これまたニヤリと笑い!…執拗にシロの隙を狙い始めシロの周りをグルグルと

走り回ると、シロもただ戸惑った様子で辺りを見回す!…そして必死にマリーの

姿を目で追い続けて居ると、そこからマリーの怒涛の攻撃が飛んで来る!…


__バババッ!!!…フォン!!…フォン!!…


「ッ!?…うぅ~!!…」


「ッ!!…クッ!!…まだ当たらない!!…これだけ攻撃してるのに!!!…

…でも確かに手応えは有る!!!……あと!…少し!!…」


{……ヤバい!!…ヤバ過ぎる!!!…今にも止めに入りたい!!!…

あぁ~でも!!………とにかく時間よ!!…早く過ぎてくれ!!!…}


まるで弾丸の様に辺りを走っては跳弾の様に切り返し!…シロに幾度となく

攻撃を加えるがシロはそれを悉く躱し続ける!…その間シロは必死に鼻を

押さえては唸り続けており!…マリーからの攻撃を一斉受ける事無く躱し

続けるのだが、どれも紙一重で危うく!…徐々にその被弾・深さも増して

行き!…更にシロの着ている服も見るも無残にズタボロになると、その柔肌が

色々と露わになり始める!…そしてマリー自身も徐々に焦りを覚え始める

一方で、攻撃が掠っている事に自信を持ち!…更にスピードのギアを上げては

トップスピード!…自身の最高速でシロを撹乱し続けると、そろそろ本気を

見せ始める!…当然その光景を目の前で見せられて居るマサツグからすれば、

心配しか無く!…マサツグも珍しく天に祈る様に時間が早く過ぎる事を祈り

出して居ると、遂に最大の危機の瞬間を迎える!…


__バババッ!!!…フォン!!…フォン!!…


「クッ!!…何で当たらないのよ!!!…

マリーちゃんのフルスピードなのにぃ!!!…」


「うぅ~!!…うぅ~!!…」


__タッタッ…ガクゥ!!…ッ!?……あぁッ!?…


まだ反応出来るだけの何かを持っている様子で!…シロは必死にフルスピードの

マリーの攻撃を躱し続け!…当然これにはマリーも更に焦りを覚えた様子で!…

ひたすらに!…我武者羅にシロへ攻撃を空かされ続けると、怒りも覚え始める!…

その際まだ何かをするつもりで懐に手を入れ、アイテムを弄るのだが…アイテムを

取り出すよりも前に!…シロが限界と言った様子で唸りつつ!…足を縺れさせて

居ると、遂にはバランスを崩して転けてしまう!…当然これには周り者達も驚きの

声を上げて戸惑い出し、マサツグも慌て!…マリーは苛立ちからかチャンスと

狙い!…踵を返してシロに向かい駆けて行くと、ダガーを構える!…


__ッ!…バシュン!!…


「このタイミングで転けるなんて!!…アンラッキー!!…

そして私はとてもラッキー!!!…」


__チャキッ!!…ゴオオオォォ!!…ッ!…


真っ直ぐに向かって行くマリーはフルスロットル!…相手の不幸を喜ぶ様に

笑みを浮かべながら言葉を口にすると、続けて自分に運が巡って来たと

喜び出す!…そして相手を突き殺しかねない勢いで肘を曲げて腕を畳むと、

ダガーを突き出す様に構えては勢いそのままに突っ込んで行き!…この時

シロは今だ地面に横になっており!…突っ込んで来るマリーに対して中々

体勢を整えられずに居ると、遂にはそのマリーがシロを間合いに入れる!…

後は腕を突き出すだけ!…その際相手の生死などもはや考えて居ない様子で

自分の勝利しか考えて居らず!…シロも漸く上体を起こし!…地面に手を

着いてその迫って来るマリーの様子に気が付くと、絶体絶命のピンチを

迎える!…


「これで終わりよおおぉぉ!!!!」


「マ、マズイシロちゃんが!!!…おいヤブ!!…ッ!?…」


「刹那!!!…」


__ヴウン!!!…バシュン!!!…


この状況にはマサツグとレイヴンも勝負云々を抜きにしてシロがヤバい!と

感じると、マサツグへ助けに向かうようレイヴンが声を掛けるのだが!…

レイヴンが声を掛けるよりも早く!…マサツグが刹那を発動して飛び出して

行くと、一目散にシロの元へと駆けて行く!…だがマサツグがシロの元へと

辿り着くには少し距離が有り!…何ならもう間近にマリーが迫って居る様な

物なので!…マサツグが刹那を発動して駆け出して行くには遅く!…誰もが

間に合わない!と言った危機的雰囲気を感じて居ると、そこはマサツグの

子供なのか!…シロはまだ諦めて居ない様子でその向かって来るマリーを

見据えると、逆転の行動に打って出る!…


__ッ!!……スッ…


「ッ!!…何をしてもむ!!…」


「てええぇぇぇい!!!」


__フォン!!…パキャアァ!!!……どよッ!?…


「ッ!?…なっ!?…」


シロは向かって来るマリーに対してその足に視線を向けると、何かを確認し!…

地面に着いている手を支えに!…まるでブレイクダンスでも踊るよう徐に体を

回転させようとすると、その反応に気が付いた様子でマリーが無駄だと言おう

とする!…その際マリーは攻撃が飛んで来る事を察知した様子で構えると、

逆にカウンターを放つ体勢を見せるのだが!…シロが回転を始めると狙いは

若干外れた様で!…確かに思惑通りに攻撃をして来たのだがその攻撃はノー

マークのマリーの足首目掛けて跳んで来ると、見事にクリティカルヒットの

足払いを受けてしまう!…それも駆けて来るタイミング!…踏み下ろす計算も

絶妙に噛み合って居り、実質回避不可能で!…シロの足払いを受けてマリーが

驚き戸惑って居ると、マリーはそのスッ転んだ勢いでかシロの体の上を通過し!…

攻撃を与える事が出来ないままバランスを崩すと、地面に叩き付けられるよう

弾んでは受け身を取る!…


__ヒュン!!……ドサァ!!…ザザアアァァ!!!!…


「ッ~~~~!!!!…クッ!!…」


「……うぅ~!!…まだ臭いのです!…」


「シロ!!!」


当然弾丸みたいな勢いで走り回って居る状態で地面を転がったので、マリーは

深手を負い!…それでも体勢を立て直してはダガーを地面に刺して受け身を

取り!…必死に痛みに耐えるよう歯を食い縛りシロの方へ視線を向けると、

そこで体勢を立て直したシロの姿を見つける!…恐らくさっき足払いをした

際に勢いを付けて立ち上がったのだろうが、シロは何ともない様子で!…

ただ辺りがまだ臭いと言った様子で唸っては文句を言い!…飛び出した

マサツグも漸くシロの元へと駆け寄る事に成功すると、ここで違う事故が

起きる!…


「ッ!…あっ…ごしゅじん…」


__ガバァ!!!…ドゴオオォォ!!!………え?…


「……シ、シロぉ?…ぶ、無事か?…」


「は、はいです……って、それよりもご主人様が!?…」


それはほんの数秒の出来事であった…シロは向かって来るマサツグに対して笑顔で

返事をし、マサツグの方へ振り向くのだが…この時マサツグは刹那+全速力で

走っており!…マリーに負けず劣らずの弾丸振りでシロを回収すると、そのまま

止まる事無く近くに生えている木に自分ごと叩き付ける!…勿論シロには被害が

及ばないようエアバッグの様に抱え込むと、身を丸め!…シロへの衝撃を最小限に

抑えると、自分だけが大ダメージを受けるのだが…当然その一瞬の様な出来事に

周りの者達は戸惑い!…マサツグも案の定深手を負った様子でシロに無事か

どうかの声を掛けると、シロから返事を受けては心配をされる!…まぁ確かに

刹那+全速力で走って居た為ブレーキは効かないのだが!…そのマサツグの様子に

レイヴンは呆れ…マサツグはマサツグでシロが無事である事を確認すると、

事切れた様に気絶する…


「そ、そうか!…無事でよかったぁ……グフッ!!…」


「ッ!?…ご、ごしゅじんさまあぁ~~~~!!!」


「な、何!?…何が起きたの!?…ッ!!…ッ~~~!!…」


「……丁度今で五分…これ以上マリーも続けられそうにない故…

この勝負!…シロと言う者の勝ちとする!…」


「なっ!?…はあぁ!?…」


マサツグがぶつかった木は今だその衝撃の凄まじさを物語るよう揺れており!…

シロは気絶したマサツグの体を揺すっては必死に泣きながら呼び掛けるのだが、

当然マサツグからの返事は無い…これにはマリーも状況が飲み込めず困惑して

居ると、やはり傷が痛むのか苦痛に表情を歪め!…丁度五分の時間も過ぎたのか…

マルティスが先程の事を見て居なかったかの様に冷静に勝負をシロの勝ちで

判断すると、それを聞いたマリーは不服そうに言葉を漏らす!…最後の最後で

締まりの無い結果に終わると、周りのダークエルフ達もぽか~んとし!…もはや

誰も何も言わない様子で!…ただただその場の空気が困惑に包まれて始めて

居ると、ただ一人!…アルスだけは次は自分の番!と言った様子で闘志を漲らせる

のであった!…

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