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-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-

-第二章六十七節 レイヴンの行方とシロの誤解とマサツグの悲鳴-

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ギルドマスター専用の馬車で三倍は早くハーフリングスに辿り着いたのだが、

それでもさすがに時刻は夕暮れで…マサツグ・ロディ・フィアナにミスティーと…

とにかく現在広場でコント紛いな会話を繰り広げている面々を置いて、

シロは一人広場に居なかったレイヴンを探しにウロウロし出し…匂いを頼りに

王宮の外へと出て来ると、レイヴンの匂いがして来る修練場の方へと歩いていた…


__スンスン…ッ!…テテテテテテ!…


「…こっちの方からレイヴンさんの臭いがするのです!……

…でも如何してこっちからレイヴンさんの臭いがするです?…」


__テテテテテテ!……ウオオオオオォォォォ!!!…


「ッ!…誰か居ますね?…行って聞いてみましょう!…」


一度も行った事の無い修練場の方からレイヴンの匂いがして来る事に戸惑いを

覚えつつ…シロは修練場の方へと駆け出して行くと、その修練場へ近付くに

連れ勇ましい声が耳に入って来る!…その勇ましい声は男性の物だったり女性の

物だったり!…とにかく誰かが訓練をして居る事に違いないと言った様子で

耳に入って来ては、その掛け声に導かれるよう修練場の建物の中へと駆けて行き!…

細かい事等考えず!…そのまま修練場の通路を駆け抜けて行くと、そこで訓練を

する衛兵達やメイドさん…そしてレイヴンの後ろ姿を見つける!…


__テテテテテテ!…ぱああぁぁ!…


「ッ!…ここは!…ッ!?…レイヴンさん!?…」


__はぁ!…はぁ!……ふぅ!…ふぅ!…


「……ッ!?…レイヴンさんが危ないのです!!!…」


この時シロは全く気にする事無く通路を駆け抜けて来たのだが、その通路は

まるで闘技場に出るまでのあの何も無い通路に似ており!…修練場の客席・

一番上の席の出入口から出て来るようにシロが姿を現すと、眼下にはその

修練場の様子!…まるで円形状の闘技場の様な場所の光景が目に映っていた!…

そしてその闘技場中央では何故かレイヴンが孤立して、その周りを衛兵達が

円を描くよう取り囲んでおり!…模擬戦用武器を構えてレイヴンと敵対して

いる姿を見せて居た!…その際衛兵達とメイドさん達は息を切らして居る

様子が見て取れるのだが、明らかにレイヴンがピンチに陥って居る様にしか

見えず!…それを見たシロが慌てて階段を駆け下り、そんな事など知らない

レイヴン達は訓練を続けていた!…


「……はあぁ~…」


{……まだまだだな…一応タンク役を衛兵達に任せてはみたが、

まだまだ重さが足りて居ないのと魔法防御に粗が見える…

…まぁ…最初に比べて大分成長はしたがそれでも不安が残る仕上がりだな?…

……で?…その後方のメイドさん達による魔法支援だけど…

これもまた火力が…やっぱりここで出て来るは魔法適性か、

威力がイマイチ軽く感じられる……まぁ、その魔法を受けて

居るのが俺だから軽く感じられるのかもしれんが……さて?…}


__ジリッ!…ジリッ!……


{…体力的にもそろそろ限界か?……だとするとそろそろ今日は終わりに…}


さて、シロはレイヴンが襲われて居る!…と誤解した様子で慌てて駆け出して

居るのだが、当然これは何でも無いただの訓練で有り…レイヴンは地面に杖を

突いては自身の頭を掻きながら溜息を吐き…その構えている衛兵達、および

メイド達に目を向けて色々と反省点を考えていた…衛兵はまだまだ魔法防御に

粗がある事!…メイドさん達は魔法に威力が無い事!…それは自身が受けて居る

から弱く感じるのか?…等と色々考えて居る間にも衛兵達はそろそろ限界なのか、

その足は何処か覚束ず…その様子を改めて目にしたレイヴンが訓練を切り上げよう

として居ると、それは遂にやって来る!…


__ンバ!!!…


「レイヴンさぁ~~ん!!!」


「ッ!…ん?…ッ!?…ヒィッ!?…

…って、あれ?…シロちゃん?…て事はマサツグ達も…

…とにかくおかえ…」


一気に観客席を駆け下りて来たシロは闘技場に向かって飛び出すよう大きく

踏み込むと、レイヴンの名前を大声で呼び!…その呼び声に反応して

レイヴンも声の聞こえた方へ振り返ると、そこで大の字で飛んで来る

シロの姿を見つける!…この時レイヴンはその飛んで来るシロを見つけるなり

今だトラウマになっているのか一瞬怯えた反応を見せるのだが…それでも

直ぐに立ち直って見せると、マサツグ達が帰って来た事に気が付き!…その

飛んで来るシロを迎え入れるよう挨拶をしようとするのだが、その飛んで来た

シロはと言うと、滑空して来る体勢のままその取り囲む衛兵達に向けて

攻撃の構えを取り出す!…


「レイヴンさんから…ッ!!」


「…へ?」


「離れなさ~い!!」


__バシュン!!バシュン!!…


「ちょ!?…何で!?」


明らかに何か誤解している様子で空中のまま攻撃態勢を整えるシロに!…

レイヴンが何事か!?と言った様子で戸惑っていると、シロは落下して来る勢い

そのままにお得意の竜〇旋風脚を繰り出し始め!…掛け声と共にその取り囲む

衛兵達目掛けてカマイタチを浴びせると、当然そのカマイタチを繰り出して

来た事にレイヴンが更に戸惑いの声を挙げる!…何故急にカマイタチを撃って

来たのか分かって居ないレイヴンはその飛んで来るシロを見詰めて困惑し!…

衛兵達は衛兵達でその飛んで来るカマイタチに対して防御すると言った事も

出来ないまま直撃したかの様に宙を舞い出すと、悲鳴を上げる!…


__ドガアァァン!!…ボガアアァァン!!!…ぎゃあああぁぁぁ!!!!…


「ッ~~~!!!……だ、大丈夫か!?…ッ!!…」


シロのカマイタチが地面に着弾すると同時に衝撃と土埃を巻き上げられ!…

それによって多少の風圧も巻き起こされると、レイヴンはその風圧に耐えるよう

ローブの袖でガードする!…そして徐々にその風圧も収まりレイヴンは慌てて

ガードを解くと、カマイタチを喰らったであろう衛兵達の心配をする様に

声を掛けるのだが!…シロはちゃんと最初から外して狙っていたのか、

カマイタチは衛兵達にではなく全て地面に着弾しており!…その様子を見て

レイヴンが更に驚いた様子を見せて居ると、そのまま衛兵達及びメイドさん達を

蹴散らしたシロは、レイヴンの目の前に着地して衛兵達に牽制し始める!…


__シュタッ!…ヴヴヴヴヴヴ!!!…


「ッ!?…ちょちょちょ!!!…ストップストップ!!!…」


「レイヴンさんは離れててください!…ここはシロが!!」


__シュバッ!!…ガッ!!…グオォ!!…


着地を決めたシロはレイヴンを取り囲む衛兵達にすぐさま威嚇するよう

唸り出すと、レイヴンは慌てて止めに入るのだが!…シロはレイヴンの

制止を聞かず、そのまま自分に任せろとだけ言ってその衛兵達に向かい

駆け出して行くと、次々に薙ぎ倒して行く!…その際一応手加減はして

居るのだろうが、そのシロの攻撃は容赦なく!…何処にそんな力が有る

のかダウンした衛兵の一人を持ち上げると、その持ち上げた衛兵を

ボールに見立てては束になって戸惑って居る衛兵達目掛けて投げ付け出す!…


「ッ!!…えぇ~い!!」


「え?…え!?…えぇぇぇぇぇ!?!?!?…」


__ブオォ!!…パッカアァァァン!!!…きゃああああぁぁぁ!?!?…


「ッ!?…マジか!?…てかこの幼女どうやって止めたら!?…

言う事を聞いてくれません!!」


当然その投げ飛ばされた衛兵は受け身を取る事も出来ずに宙を舞うと、

戸惑う衛兵達を薙ぎ倒す様に一緒に倒れ込み!…一体何が起きて居る

のかも理解出来ず!…ただボーリングの様に薙ぎ倒されたピンの如く

地面に転がって居ると、その様子を間近で見せられたメイド達も

慌て出す!…そうして更に暴れ出しそうな様子を見せるシロに、

レイヴンも言う事を聞いてくれないと嘆いては更に慌て出すのだが!…

シロは肩で息を切らしながら突如レイヴンの方に振り向くと、

慌てて駆け寄って来ては声を掛ける!…


__フゥー!…フゥー!……クルッ!…テテテテテテ!ッ!…


「レイヴンさん大丈夫ですか!?…さぁ、逃げますよ!?…

とにかく広場まで逃げる事が出来れば!…ご主人様達が!!…」


__ガッ!!…グイグイ!…


「ッ!?…シ、シロちゃん!!…」


突如駆け寄って来た事にレイヴンは今だ困惑した様子を見せるのだが…

シロはシロでレイヴンのローブの袖を掴むと、やはり襲われて居たと

誤解した様子で心配の言葉を掛ける!…そして次にシロは慌てた表情を

レイヴンに向けると、逃げ道を確保したと言い!…そしてその場から

逃げるようレイヴンの袖を引っ張り出すのだが、レイヴンもここで漸く

シロが誤解して居る事に気が付くと、シロの両肩を掴んで名前を呼び!…

シロも突如名前を呼ばれた事で吃驚して固まって居ると、レイヴンは

その隙を突く様に改めて誤解だと言い出す!…


__ガッ!!…ッ!?!?……


「…シロちゃん落ち着いて!…俺は襲われていない!…これは訓練!!…

皆正気!……OK?…」


「……え?…」


__キョロ…キョロ…ッ!…


突如両肩を掴まれた事でシロは吃驚するとレイヴンの顔を一点に見詰め出し…

その際若干怯えた表情を見せて居ると、レイヴンは改めてこれが訓練である事を

伝え出す…この時同時に衛兵達メイドさん達が正気である事を伝えると、シロは

その言葉に戸惑った様子で一言漏らし、戸惑った様子のまま辺りを見渡し

始める…すると如何だろう?…衛兵達はただでさえレイヴンの魔法を喰らい続けて

居たせいかフラフラして居たと言うのに!…シロのカマイタチが止めとなった

様子で、その場に大の字に倒れては死屍累々と…もはや見慣れた光景を作り

出してその救護にメイドさん達が当たっていた…


「だ、大丈夫ですか!?…」


「あ…あぁ…何とか…」


「え?…え?…」


__……ポンッ!…ッ!…チラッ?…


「…シロちゃん!…助けてくれた事には感謝する!…

……けどね?…ちょぉ~っとやり過ぎかな?…」


衛兵達はその場に倒れてピクピクと痙攣しており、メイドさん達の

問い掛けに対して何とか返事をして見せるが、それとは裏腹に立ち上がる

気配を見せないで居た!…そんな様子にメイドさん達も大慌てで如何しよう?…

と言った様子で言葉を口にし始めて居ると、シロも徐々に理解して来たのか

戸惑い出し!…そんな様子にレイヴンもシロの頭の上に手を置き出すと、

シロは反応するよう振り向き…レイヴンはレイヴンで改めて助けてくれた事に

お礼を言うのだが、同時にシロへやり過ぎと苦笑いするよう注意をすると、

そのレイヴンの言葉にシロは青褪めては慌てて衛兵達に謝り出す!…


__サアアァァァ!!…


「ご!…ごごご!!…ごめんなさあぁぁい!!!!」


「あたたたた……いやぁハハハ!…

まぁ勘違いされても仕方が無いよな?…

あんな状態だったんだし…」


「…それどころかさすがと言った感じだったな!……

…あの攻撃!……投げ飛ばして来たのにも驚いたが!…」


修練場に響く勢いでシロが慌てて謝り始めると、その場の空気は優しいモノに

変わり出し…先程までの緊張感も何処へやら…当然これ以上訓練が続けられる

状態では無く、シロの誤解に対して衛兵達も苦笑いをすると、改めてシロの

カマイタチに驚かされた反応を見せ始める!…その際投げ飛ばされた事に

対しても驚いた!と当本人が語り出すと、投げ付けられた者達の方も同調する

よう頷き!…とにかく衛兵達との誤解も解けた所でレイヴンがシロに声を

掛け出すと、マサツグ達が帰って来た事について質問をし始める。


「…とりま訓練はこれ位にして!…っで?…

ヤブと行った筈のシロちゃんがここに居るって事はヤブも帰って来たって事か…

如何?…ギルドの件大丈夫だった?…」


「ッ!…はいです!!…ご主人様とミスティーお姉ちゃんも一緒です!!

…あッ!…あと帰って来る時一緒に黒いピカピカの人とボサボサのお姉さんも

一緒に来たのです!!」


「ん?…え?…く…黒いピカピカ?…ボ、ボサボサ?……

ま…まぁ、戻って来たんだったら良いんだ。

じゃあ、俺もマサツグの所に挨拶に行くかな…」


レイヴンは今日の訓練を終わりにする事を衛兵達に伝えつつ…シロに改めて

マサツグ達が帰って来た事を確認するよう言葉を掛けると、同時にギルドの

件についても質問をし始める。この時レイヴンは失敗する筈が無いと言った

様子で軽く尋ねると、シロはその問い掛けに対して笑顔を見せ!…何の問題も

無かったと言った様子で帰って来た事を報告すると、同時にロディと目隠れ

女史の事についても話し出すのだが…その二人の事は名前で呼ばず、見た目で

呼び…当然そんな風に紹介された事でレイヴンは一体誰!?…と言った様子で

戸惑いを覚えると、ただ意味が分からず困惑する。それでもとにかく帰って

来た事には変わらないと言った様子で理解すると、シロを連れてそのマサツグ達の

居る広場に向かおうとするのだが…その様子を見て衛兵の一人が反応を示すと、

徐にある事について質問をし始めるのであった。


「…ッ!……そう言えばレイヴン殿?…

勇者殿が帰って来たら伝える事が有ったのでは?…」


「え?……あっ……」


「ッ!…如何したのですか?…」


「え!?…い、いやぁ…とにかく急ごう…」


その衛兵がまるで思い出したようレイヴンに声を掛けると、何やら気になる

事を言い出し…その言葉を掛けられた事でレイヴンもハッと思い出した様な

反応を見せると、次には若干慌てた様子で言葉を漏らし固まる…そしてその

台詞を一緒に聞いたシロも不思議そうに首を傾げると、レイヴンの顔を覗き

込みながら一体何の事か?…と言った様子で質問をし…その際レイヴンは

ワイトなのだが、青褪めた様な反応を見せそのシロの問い掛けに誤魔化すよう

答え出すと!…次の瞬間その向かおうとしていた広場の方から爆撃音が響く!…


__……ボガアアアァァァァァン!!!!!…ッ!?!?…


「ッ!?…な!?…ひ、広場からです!!…レイヴンさん!!……ッ!…

レイヴンさん?…」


「……あぁ~…」


「ッ!?…ど、如何したのですか!?…レイヴンさん!?…」


「……本当に!…如何しよう?…」


広場から突如聞こえて来た爆撃音に!…修練場内に居た全員が驚いた反応を

見せ出すと、その広場のある方向に目を向ける!…するとそこには文字通り

何かが爆発したのか黒煙が真っ直ぐ空に向かって立ち上っており!…その光景を

目にしたシロは慌てた様子でレイヴンに声を掛けるのだが、そのレイヴン

からは返事が無く!…その事にシロが戸惑った様子でレイヴンの居る方に振り

向くと、そこには自身の顔に手を当て項垂れる様子を見せるレイヴンの姿が

あった…当然これにはシロも更に戸惑った様子を見せると、その項垂れる

レイヴンに事情を聴くよう声を掛けるのだが…レイヴンはも一つオマケと言った

様子で戸惑う事に意味深な言葉を口にし!…その台詞を聞いたシロがまたもや

困惑し出すと、今度は誰かの悲鳴が聞こえてくる!…


__ぎゃあああああぁぁぁぁ!!!!…


「ッ!…あぁ~…」


「ッ!?…ご、ご主人様!?…」


「……とにかく行ってみるか…」


「え?…は、はいです…」


修練場から広場まで約50m!…その叫び声が聞こえて来た事に驚くと同時に、

良くここまで響いて聞こえるもんだ…と思わず修練場内に居る全員が関心した

様子で感じて居ると、レイヴンはまるで最初から知って居た様に力無く更に

項垂れ出し!…シロはシロでその悲鳴が誰の物なのか分かった様子で更に慌て

始めて居ると、レイヴンは色々と諦めた様子で広場へと移動するようシロに

声を掛け出す…そんなレイヴンの言葉にシロは戸惑いながらも返事をするのだが、

この時レイヴンが慌てて居ない事に違和感を感じ!…そんなレイヴンに戸惑いを

覚えつつ!…とにかく急ぐ様にその広場へと駆け出して居ると、更なる爆撃音と

共に悲鳴が聞こえて来る!…


__ボガアアアァァァァァン!!!!!…ぎゃあああああぁぁぁぁ!!!!…


「ッ!?…またです!?…」


「……先にシロちゃんに話しとくね?…」


「ッ!!…え?…」


「…実はこれ……えぇ~っと…

時間帯的にはシロちゃん達が馬車に乗っている時かな?…

とにかくこっちに帰って来ている時に…」


また聞こえて来た爆撃音とマサツグの悲鳴に!…シロは心配の表情を浮かべて

またその二つが聞こえて来た!…と話して居ると、レイヴンは若干悩んだ様子で

徐にシロへ話し掛け出し…突如話し掛けられた事でシロも戸惑った反応を見せる

のだが、レイヴンの話が気になったのか耳を傾け出して居ると、レイヴンは

申し訳なさそうにその事の成り行きをシロに説明し始める!…それはまだシロや

マサツグ…ミスティーがロディを連れてハーフリングスに戻って来る前の話で

あり…レイヴンはこの話をする際、自身の頬を人差し指で掻きながら自分でも

困惑した様子を見せて居た。


__マサツグ達の乗る馬車がハーフリングスに到着する数時間前……


「……魔術師様!!」


「ッ!…ん?…」


「そろそろ他の魔法を覚えとう御座います!!…

ご教授を!!」


「ッえ!?…えぇ?……」


それはほんの些細な事から始まった悲劇の出来事であった…この日はいつも通り

衛兵や他のメイドさん達の訓練にレイヴンが付き合って居ると、突如後ろから

声を掛けられ…レイヴンも声を掛けられた事で返事をして後ろに振り返ると、

そこにはメイドさん達が数人が立っていた…中でもその後ろから声を掛けて来た

メイドさん達はハンディキャップ魔法適性を物ともせず、レイヴンが教えた魔法を逸早く

モノにした猛者達で有り!…そんな彼女達は目を輝かせてレイヴンに上目遣いを

して見せると、更なる魔法の教授を訴えていた!…まるで少年漫画ばりの熱血

具合をその瞳に宿し!…魔法に真っ直ぐ取り組む姿勢をメイドさん達はレイヴンに

見せて居たのだが、レイヴンはそんなメイドさん達の様子を見て戸惑いを感じて

しまうと、その魔法を教える事に躊躇いを覚えてしまっていた!…何故なら…


{…教えるのは構わないんだけど……

こうもポンポン教えて良いモノなのだろうか?…

これが原因でもし何かしらの問題が出れば色々と不味いし…と言うか面倒だし…

…まぁもし駄目だったら既に運営から止めるようお達しも来てる筈…何だけど…

とにかく物をって言うのは大丈夫なんだろうか?…

…余りの上達具合が面白くて下級魔法を全部教えてしまったけど…

これ以上となると迂闊な事を教える訳には行かないし……うぅ~ん…}


レイヴンが躊躇って居る理由と言うのはそのメイドさん達に魔法を教えると言う

行為であり!…最初は何も考えずに魔法を教えて居たのだが、よくよく考えると

これはある意味でデータの書き換えの様なモノなのでは?…と考えてしまうと、

色々とレイヴンの中で躊躇いが生まれる…確かにメイドさん達の習得スピードは

異常なまでに速く!…魔法を暴発させると言った事もほとんど無い!…レイヴンに

取ってこれ程までに教えがいの有る門下生は他に居ないのだが、やはり本来

メイドさん達は非戦闘員であって…一応は身を護る術など簡単な事は覚える仕様に

なってはいるのだが、魔法を覚える事に関しては恐らくイレギュラーで有り!…

幾らNPC一人一人がAIで動くにせよ、勝手に教えて良いものかと考え始めては

一人唸って悩み出して居ると、そんなレイヴンの様子を見たメイドさん達は

目をウルウルとさせながら更に訴え出す!…


「………何かまだ修練が私達に足りないのでしょうか?…

それとも、何かを危惧しているのでしょうか?……」


「え?…あっ…いや…」


「……魔術師様に誓って捧げます!!…

私達は私利私欲で魔法を使わない事と!!!…

この魔法は女王陛下様を守る為に!!…

強いてはハーフリングスを守る為に!!!…」


{案の定戦闘キャラみたいな事言ってるし!?…

やっぱこのままだと不味いか!?…}


メイドさん達のウルウルとした…某・金融会社のCMに出て来るチワワばりの

視線でレイヴンの事を見詰め出し、その視線にレイヴンはその場から逃げ

出したくなる!…その際楽になる方法としてメイドさん達に魔法を教えそうに

なるのだが…これはオンラインゲーム!…と考えると、やはり魔法を使える様に

なったメイドさん達は言わばゲームの仕様を書き換え…バグを作って遊んで

居るのと同じ!…と考えてしまっては、メイドさん達に対する受け答えもしどろ

もどろになる!…そしてそんなハッキリとしないレイヴンにメイドさん達も

何か思う所が有るのか、レイヴンに誓うようまるで騎士の様な勇ましい言葉を

口にし出すと、やはりその台詞を聞いたレイヴンは改変されている様に感じて

しまい!…心の中でメイドさん達にツッコミを入れつつ、如何やってこの場を

乗り切るか考えて居ると、そこへ視察に来たのかフィアナがやって来る。


__ザッ!…ザッ!…ザッ!…ザッ!…


「……先程から何を揉めているのだ?…」


「ッ!?…じょ、女王様!!…ッ!……」


「あぁ…女王陛下…どうも…」


先程までの様子は外にまで聞こえていたのか、フィアナは若干戸惑った様子で

レイヴン達の方に歩いて来ては声を掛け…そのフィアナの声に反応するよう

メイドさん達もフィアナの方に振り向くと、慌てた様子でフィアナに会釈を

し始める!…そんな慌てるメイドさん達の様子にフィアナは手を上げて楽にする

ようジェスチャーをすると、レイヴンもフィアナに挨拶をするのだが…

そのレイヴンの様子はゲッソリとしており、フィアナはそんなレイヴンの様子を

見て驚いた反応を見せて居ると、何事かと尋ねる!…


「ッ!!…あ、あぁ…今日も精が出て居るみたいだな!…

……何でそんなにゲッソリしているのかは分からんが…

とにかく如何したのだ?…」


「ッ!…あ、あぁ…実は…」


「魔術師様に新しい魔法をご教授願いましたらこの様に渋られ!…」


「やはり私達に魔法の才能が!!…」


フィアナはレイヴンの事を労わりつつ…先程から揉めている理由について話を

聞こうとすると、レイヴンが答えるより先にメイド達が答え出し!…決して

悪気は無いのだがフィアナにレイヴンが魔法を教えてくれないと嘆き出すと、

その言葉にフィアナは戸惑う!…その際メイドさん達は自分達に才能が無いと

言った様子で嘆き出すのだが、レイヴンから見ればとんでもない話で!…

そんなメイドさん達の様子にレイヴンが戸惑って居ると、フィアナもその

レイヴンの様子を見て感じたのか、メイドさん達を励ます様に声を掛ける!…


__オロオロ!…ワタワタ!…ッ~~……


「……そんな事は無いぞ?…」


「ッ!……え?…」


「余はちゃんと見て居る!…

そなた達は余達の世話をするだけにあらず!…王宮の家事全般を熟し!…

更にレイヴン殿より魔法を習っている!…その魔法を一つ覚えるにも

相当な時間が掛かると言うのに!…家事を熟しつつ訓練に励み!…

そして物にしている!……これは才能が無ければ出来ない事だと余は思うぞ?…」


「ッ!!…じょ、女王様!!…勿体なきお言葉!!…」


慌てるレイヴンを余所にフォローに入るようフィアナが声を掛けると、

その言葉にメイドさん達は若干戸惑い…更に続けるようフィアナは日々の

メイドさん達の働きを見て居るとばかりに笑顔で語り出すと、良くやって

いると褒める!…その言葉を聞いてメイドさん達が目を見開き感涙し

始めると、フィアナにお礼の言葉を言い出し!…その様子を見て落ち着いたと

レイヴンは安心するのだが、フィアナの言葉はまだ続き!…その続きの言葉で

トンデモナイ事を言い出すと、それがあのマサツグの悲鳴に繋がるのであった!…


「……ッ!…そうだ!…では、こうしたら如何であろうか?…」


「……え?…」


「レイヴン殿はその実力を知らないから次の魔法を教えるか如何かで

迷って居るのではないか!?…

ではその今の実力をレイヴン殿に証明すればいい!!」


「ッ!?…ちょ!!…ちょっと待て!?…」


フィアナが言い出したのはトンデモナイ誤解提案で!…本人も良かれと思い提案を

し出したのだが、それを聞いてレイヴンはハッピーエンドから一気に暗転し!…

フィアナは続けて誤解している様子でレイヴンが恐らく悩んでいる理由を語り

始めると、それを聞いたレイヴンは当然慌て出す!…レイヴンが悩んで居るのは

システム的な物であって、実力的な事にあらず!…それを慌てて伝えようと

待った!と声を掛けるのだが、フィアナとメイド達は止まらず!…レイヴンの

話を聞かないまま更に進む!…


「そうだなぁ…例えばマサツグとか!!」


__ッ!?…


「マサツグを一度でもギャフンと言わせる事が出来れば!…

レイヴン殿も認めて下さる事だろう!…

何せ我が国を救った英雄であるからな!」


「ちょ!!…ちょっと待って!?…本当に待って!?…」


その実力を証明するに当たって白羽の矢が刺さったのはまさかのマサツグ!…

何でレイヴンでは無く何の関係も無いマサツグになったのかと言う理由も、

ただ単にマサツグが勇者だからと言うトンデモナク簡単な理由で有り!…

フィアナがそれをメイド達に嬉々として提案をして居ると、レイヴンは当然

必死に止めに入ろうと声を掛け続ける!…こんなのマサツグに知られたら

色々と不味い!…てか、普通に危険!!…と言った具合にレイヴンは止めに

入り続けるのだが、フィアナが言った言葉は絶対順守の彼女達はそれを信じて

しまい!…一人のメイドが返事をするとそれを皮切りにメイドさん達は

アンチマサツグの殺人兵器キリングマシーンと化す!…


「分かりました!!!…」


「うぇ!?…」


「では必ずや勇者様を!!…私達の手でギャフンと!!…」


__ザッ!!…ッ!?…


「「「私達の手で必ずや勇者様をギャフンと言わせて見せましょう!!!」」」


フィアナの言葉を鵜呑みにした様子で一人が返事をすると、その返事をした

メイドさんにレイヴンは驚き!…そのメイドさんが返事をした事で徐々に

伝染するよう他のメイドさん達もやる気を見せ始めると、その勢いはもう

止まず!…仕舞いには軍隊のようフィアナの前に整列して見せると、フィアナに

会釈をしながら全員が打倒マサツグを誓い出す!…その様子にレイヴンは

もはや何も言う事が出来ず固まってしまうと、メイドさん達の様子は豹変し!…

さながら熟練の暗殺者の様なスイッチの切り替えようで元のメイドさんに戻って

見せると、その様子にレイヴンは恐怖する!…


__……カチッ!…ゴオォォォン!!…ゴオォォォン!!…


「ッ!…いけない!…夕食の準備を!!…」


「私は下ごしらえが!!…」


「手伝うわ!!…」


「ッ!?…うわぁ!……マジかよ!?…」



__………そして現在…



「……って事が有ったんだ…これって俺の責任だと思う?…」


「ッ!?……ッ!?!?…」


当然この時帰って来ているマサツグは全然この事を知らず!…帰って来て

数分後にこうして叫ぶ事になっているのだが…その一連のレイヴンの話を

問い掛けられる様に聞かされたシロは困惑してしまうと、何も答えられなく

なってしまう!…ただ脚だけは急いでそのマサツグが悲鳴を上げている

広場に向かっているのだが、この後予想される展開等…シロとレイヴンには

全くの予想が出来ていないのであった。

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不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

異世界は流されるままに

椎井瑛弥
ファンタジー
 貴族の三男として生まれたレイは、成人を迎えた当日に意識を失い、目が覚めてみると剣と魔法のファンタジーの世界に生まれ変わっていたことに気づきます。ベタです。  日本で堅実な人生を送っていた彼は、無理をせずに一歩ずつ着実に歩みを進むつもりでしたが、なぜか思ってもみなかった方向に進むことばかり。ベタです。  しっかりと自分を持っているにも関わらず、なぜか思うようにならないレイの冒険譚、ここに開幕。  これを書いている人は縦書き派ですので、縦書きで読むことを推奨します。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

【第1部完結】悪役令息ですが、家族のため精一杯生きているので邪魔しないでください~僕の執事は僕にだけイケすぎたオジイです~

ちくわぱん
BL
【11/28第1部完結・12/8幕間完結】(第2部開始は年明け後の予定です)ハルトライアは前世を思い出した。自分が物語の当て馬兼悪役で、王子と婚約するがのちに魔王になって結局王子と物語の主役に殺される未来を。死にたくないから婚約を回避しようと王子から逃げようとするが、なぜか好かれてしまう。とにかく悪役にならぬように魔法も武術も頑張って、自分のそばにいてくれる執事とメイドを守るんだ!と奮闘する日々。そんな毎日の中、困難は色々振ってくる。やはり当て馬として死ぬしかないのかと苦しみながらも少しずつ味方を増やし成長していくハルトライア。そして執事のカシルもまた、ハルトライアを守ろうと陰ながら行動する。そんな二人の努力と愛の記録。両片思い。じれじれ展開ですが、ハピエン。

公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。 魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。 だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。 見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。 「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。

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