146 / 764
-第ニ章-サマーオーシャン連合国-獣人の国編-
-第二章四十二節 怒り狂う火竜といつもの開き直りと脱力-
しおりを挟む辺り一面火の海となっている中!…中心に立つマサツグとドラゴンは
互いに倒す!と言った様子で対峙し合うと、ただ威嚇する様に睨み合う!…
二人の間にピリピリとした独特の緊張感が走ると、その光景はまるで映画の
ワンシーンの様な最終決戦感溢れる場面となり!…ドラゴンはゆっくり
マサツグの居る方に向かって歩いては間合いを詰め!…マサツグはそれに
反応し迎え撃つ様に刀をギュッと握ると、ドラゴンに身構える!…そうして
徐々に互いの間合いが縮まり!…距離にして約3~4mとなった所で互いに
攻撃が可能間な合いとなると、一瞬の判断ミスだけで大ダメージとなる
恐ろしい状況になり!…マサツグが更にドラゴンの動きを注視して居ると、
まずはドラゴンの方がマサツグに仕掛ける!…
__ズダァン!!…ズダァン!!…ゴアアアアアアアァァ!!!!
「ッ!?…来る!!…」
__ジャキン!!…ブォン!!!…バッ!!…
ドラゴンは更に間合いを詰めるようゆっくりとマサツグの方へ近付くなり、
腕を振り上げ出すと爪を立てる様に手を広げる!…そして怒りをぶつける
よう吠えてはその振り上げた腕をマサツグに向かって、一気に切り裂く様に
踏み込んでは頭上から真っ直ぐ爪を振り下ろすのだが、あからさまに
見え見えの攻撃であるが為!…マサツグは予見した様子でバックステップを
するとその爪を紙一重に回避し!…ドラゴンの攻撃が空振りに終わった
所で逆にその大振りの攻撃をマサツグは反撃のチャンスと受け取ったのか!…
ドラゴンの攻撃を回避すると同時にその場で踏み込んでジャンプし!…
ドラゴンの頭に向かい飛び掛かって攻撃を繰り出そうとする!…だが!…
__グッ!ダンッ!!…チャキッ!!…
「貰った!!!」
__ッ!?…ガアアアアアァァァ!!!
「ッ!?…なっ!?…」
マサツグはドラゴンの頭に向かって飛び掛かると勢いそのまま刀を上段に
構えて兜割りを繰り出そうとする!…自身の体重…重力をも味方に
付ける勢いで構えるのだが、ドラゴンは知恵を付けたのか逆にそれを
利用した様子で!…頭だけをマサツグの方に向かせると口をパカッと
開けて首を伸ばして噛み付く体勢を見せ!…マサツグもそれを見た
途端に慌て出すと咄嗟に緊急回避に打って出る!…
__ガアアアアアァァァ!!!…
「ッ!?…何とおおぉぉぉぉぉ!!!!」
__バッ!!…ゴロン!…ガチンッ!!……ッ!?…
ドラゴンは宙に浮いたマサツグに向かい首を伸ばして噛み付こうと
するのだが…マサツグは咄嗟にドラゴンの頭へ向かい右腕を伸ばすと、
ドラゴンの鼻の頭の角に手を掛ける!…そしてその角を握るとそのまま
引き寄せるよう腕に力を入れては片腕の力だけでドラゴンの頭の上へと
無理やり移動し、転がる様にして何とかドラゴンの噛み付きを回避する。
そのマサツグの回避行動にさすがのドラゴンも戸惑った反応を見せる!
突如頭に乗られた事で如何攻撃したものか?とドラゴンは若干
オロオロとした反応をするのだが、マサツグはその隙に態勢を整え!…
改めてドラゴンの頭を踏み台に!…再度高くジャンプしてすると仕切り
直しの兜割りを叩き込もうとする!…しかし!…
「っぶねぇ!!…だが今度こそ!!」
__フォンッ!!…ガキィン!!!…
「ッ!?…マジか!?……ッ~~~!!!…
クソ!!…変に刺さってる!!…」
__ゴアアァァ!?…ブンブンブンブン!!!…ポロッ…
マサツグは今度こそとばかりに再度ドラゴンの頭に向かって兜割りを
敢行するのだが、ドラゴンも黙ってやられては居られないと!…頭を
再度マサツグの居る方に向けようとする際、既にマサツグは兜割りを
繰り出しており!…丁度そのタイミングが重なる様に兜割りが鼻の
頭の角に入ると、刃が角に食い込んでしまってはマサツグの身動きが
止まってしまう!…刀を抜こうにも食い込んでいるので中々抜けず、
更に踏ん張ろうにも踏ん張れない!…宙ぶらりんの状況下でワチャワチャ
して居るので、余計に刀を角から抜く事が出来ず!…オマケに刀を
手放せば攻撃手段を失うので余計に手放せず!…ドラゴンもただこの
状況に困惑した様子で徐に首を左右に振り出すと、そのお陰かマサツグは
刀ごと解放され振り落とされる!…
「ッ!?…だああぁぁ!!…グハアァァ!!!……
いっつつつつ!……こりゃ頭を狙わない方が良かった…ッ!?…」
__バッ!!…ダァン!!!!…ゴアアアアアアアァァ!!!!
ドラゴンに振り落とされ…背中から落ちる様にしてマサツグが
地面に叩き付けられると、落下ダメージを負う!…幸い高さは
大したモノでは無かったのでダメージはまだ許容範囲内なのだが、
呼吸は叩き付けられた衝撃で乱れ!…ドラゴンの頭を狙った事を
後悔しつつマサツグが体を起こそうとして居ると、ドラゴンは
倒れているマサツグを踏みつけようと足を上げ出し!…そんな
様子を見てマサツグも慌てて転がる様にして回避すると、やはり
呼吸を整えずに急に動いたせいか思い出した様にその場で
咳き込み始める!…
「…はぁ!……はぁ!……ッ!!…ゲホ!…ゴホ!……あぁ~!…
まさに逆鱗に触れたって言った所かぁ?…まぁ貫いちまってるが…」
__……フォン!!…
息を整えようと咳き込みつつもマサツグは軽口を叩きながら戦闘態勢を
整え出すと、決してドラゴンから視線を外そうとはせずただ一つ一つの
動きを注視する!…逆鱗に触れた事に対しては今になって少し後悔した
様子を見せるのだが、戦う意思だけは捨てず!…目の前でもはや形振り
構わず暴れているドラゴンに対しただ冷静に討伐する方法を模索し出すと、
徐々に立ち上がっては刀を正眼に構える!…そして肝心のドラゴンはと
言うと血を流し過ぎたせいかもはや正常な判断も出来ていない様子で、
ただ目に付いたと言わんばかりに物を破壊しては天に向かい吠え!…
マサツグの事等目に入って居ない様子でただその場で暴れ出して居た!
__ガアアアアアァァァ!!!…ドガアァァン!!!…ボガアァァン!!!…
「ッ!?…もう…手当たり次第だな!…
それに多分あれはもう見えてねぇな?…
ただ感情のままに暴れてるって感じだ……っで?如何する?…
このまま放置って訳にも行かないだろ?…考えろ!!…俺!!…」
__ガアアアアアァァァ!!!…ブォン!!…ドガアァァン!!!…
尻尾で木々を薙ぎ倒し!…爪で岩を砕く!…蹂躙するようブレスを吐いては
辺り一面を更に火の海にし!…全てを灰にする!…ドラゴンの目は自身の
血で汚れては赤く濁っており、明らかに失明した様子を見せて居るが構わず
暴れまくり!…恐らくもう物の位置を把握する手段は嗅覚だけの筈なのだが、
見えて居るかの様にマサツグにも襲い掛かり!…マサツグも巻き込まれない
よう回避しつつ!…ただ暴れ回るドラゴンの倒し方を考え出すが、思う様に
策が出て来ない!…ただ悪戯に火傷を負いつつTPも消費して時間をも
浪費し出し、このまま放って置いても倒れそうなものだが?…と考えて
しまって思わず放置しようか?と考えるのだが、本当に放置する訳にも
行かず!…結局は戦う事になり!…ただドラゴンの攻撃を回避し続け一向に
策が浮かばない事に苦悩もし始めて居ると、突如としてドラゴンの様子に
変化が出る!…
__ゴガアアアァァァ!!!……シュゴオオオオオォォォォ!!…
「ッ!!…アッチぃし!…避け難いし最悪!!…って、え?…
炎を吸い込んでる?…」
__シュゴオオオオオォォォォ!!!!…
「ッ!?…何か!…物凄く!…嫌な予感がする!!…」
ドラゴンが突如マサツグの居る方に振り向いたかと思えば徐に大きく息を
吸い込み始める!…その際辺りの炎も一緒に吸い込む様に息を吸い出すと、
徐々に自身の腹部を膨張させ…マサツグも出来る限り火傷を嫌うよう
辺りの炎を避けながら立ち回り!…そのドラゴンが徐々に膨張して行く
光景を目にすると、思わず春野原でのあのトラウマを思い出す!…
膨張…特攻!…自爆!!…ウッ!…頭が!…等とマサツグは頭を抱えながら
口にしそうなモノなのだが、さすがに大爆発はしないのかドラゴンは
マサツグを追い駆ける様に移動する事無くただ息を吸い続け!…ドラゴンの
肺の許容量一杯になったのか、マサツグに向かいその吸った息を吐き出す
よう口を開けて見せると、次の瞬間マサツグに向かいトンデモナイ物を
繰り出す!…
__シュゴオオォォ!!…ッ!!…ゴッ!!!!!…
「ッ!?…ハッ?…」
__ドゴゴゴゴゴゴゴ!!!!…
「ちょちょちょちょ!!!!…まっっっってぇえええええ!!!!」
ドラゴンがマサツグに向けて口を開けた瞬間!…その口から特大級の火球!…
明らかに口の大きさに比例していないレベルの大きさの火球が出て来ると、
マサツグに向かいその火球は放たれる!…当然そんな物を目にしたマサツグは
今日一番の慌て具合を見せると、飛んで来る火球に対して全力の横っ飛び
回避をして見せるのだが…火球はマサツグの隣を掠める様に通り過ぎて行き、
そのまま重力に従うよう地面に向かい落ちて行くと次の瞬間!…大爆発を
起こす!
__バッ!!!…ドゴゴゴゴ!!……カッ!!…ドゴオオオォォォン!!!!…
「ッ~~~~~!!!!……うわあああぁぁぁぁぁ!?…」
ドラゴンの渾身のブレスか…そのブレスが大爆発を起こすと特大級の
爆風を巻き起こし!…マサツグを簡単に吹き飛ばしてしまうとそのまま
近くにあった木々ごと薙ぎ払っては、地面に叩き付けて転がす!…
その際マサツグの叫び声も爆風で掻き消され、ただ暴風の音しか
残らず!…少しの間吹き止まぬ様子で辺りは暴風域と化し!…
威力もあの自爆特攻の人キメラとイーブンと言った所か!…爆心地には
巨大なクレーターが出来上がっており、爆風の勢いで辺りに残って居た
火の海も鎮火されていた!…そして誰が見てもヤバいと言うその威力を
倒れながら目の当たりにしたマサツグは、ただその惨状に戸惑い!…
声にならない様子でその光景を見詰めて心の中で文句の言葉を漏らす!…
__バシュウウウゥゥゥ!!!……
{ッ~~~!!!!…嘘だろ!?…こんなんアリかよ!?…
冗談は止してくれ!!…只でさえ真面に攻撃が入らなくて
四苦八苦してる最中ってのに!…更にあの爆破ブレス!?…
確かに発射までに時間は有るが迂闊に中断させる事は出来ないだろ!…
中断させたら如何なるか!?…ンなモン考えたくもねぇっての!!!…}
__……シュゴオオオオオォォォォ!!!!…
「ッ!?…また打つ気かよ!?……」
その凄惨たる光景を目の前によくこんなモンスターを作ったな!と…
ただ運営に対して文句の言葉しか出ないのだが…マサツグがゆっくり
立ち上がり出すと、ドラゴンはまた息を吸い込み始める!…アレだけの
モノを放っておいてクールタイムも無い!…そんなぶっ壊れブレスに
マサツグは更に頭可笑しいだろ!?…と言いたくなるのだが、言った
所でドラゴンは息を吸う事を止めず!…ただその息を吸う様子を見て
迂闊に手出しが出来ないとマサツグは困惑し…その場で一応刀を構え
悩み出すと、自身の頭の中ではまるで走馬灯の様に色々なモノが
駆け巡り始める!…聞いた話ではこれとは別の上位種に単身戦いを
挑む猛者が居ると言う話を聞いた事は有るが、その話を徐に思い出すと
一体如何やって倒したんだ!?…と言う疑問を持ち!…そんな疑問を
マサツグが覚えている間にもドラゴンはまたもや自身の腹部を膨張させ、
刻一刻と発射準備を整える!…
__シュゴオオォォ!!…
「……ッ!?…イッツツツツ!!……
そろそろ不味いか?…このまま逃げても多分死ぬし…
逃げなくても死ぬ!……目の前では刻一刻と俺を消し炭にしようと
腹膨らませてる奴も居るし!!…毎回如何してこうなる!!…
……あぁ~もう!!…こうなりゃ自棄だ!!」
__チャキッ!!…
「……真っ向から叩っ斬ってやる!!!…
それで死のうが生きようが関係ねぇ!!…
ただリスポーンするだけだ!!!
大体こうなったのはあのクソネズミのせいだ!!!…
一発と言わずにタコ殴りにしてやらぁ!!!!」
目の前で息を吸い続けるドラゴンに対してマサツグはダメージを
負いつつ!…徐に今の状況を整理し出すと自身の置かれている
状況について絶望し始める!…そしていつもいつも波乱万丈!と…
人より苦労している様な気分になって来ると、徐々にマサツグは
ドラゴンに対して苛立ちを覚え!…更にゲスデウスの事も思い出した
様子でその鬱憤の先がゲスデウスにまで飛び火し始めると、
マサツグはいつもの様に開き直る!…別に死ぬ事を覚悟した
訳では無いのだが、一泡吹かせてやる!と…息を吸い込むドラゴンに
対しマサツグは刀を上段に構えると、そのドラゴンのブレスに
真っ向勝負を挑もうとする!…
__シュゴオオオオオォォォォ!!!!…
「ハアァ~……集中!…真っ直ぐに斬る事をイメージするよう!…って、
あれ?…こんな通知?……ッ!!…悩んでいる暇はねぇ!!!…
ついでにぶっつけ本番で試してやる!!!…来い!!!!」
ドラゴンもそろそろ息を吸い込み切ると言った所か…マサツグがドラゴンの
様子に全集中して居ると、ふと雑念が混じる様にある通知を目にする!…
それはマサツグが夏海刀を抜刀出来た事で新たに覚えた技の一つなのだが、
マサツグはそれを目にするとついでと言った様子で試す事を考え!…頭の
中でその技のイメージをし始めると目を閉じ、約二分の時間が経過すると
遂にその時はやって来る!…ドラゴンの肺はパンパンになった様子で
マサツグをジッと見下ろしており!…マサツグも技のイメージが出来たのか
目を開くと、目の前のドラゴンを見据える!…そうして互いに向き合う様に
して構え出すと、先に動き出したのはドラゴンの方で!…ドラゴンは
マサツグに向かい先程のブレスを吐き出すと、さすがに二回連続はキツいのか
その場にバテる!…
__シュゴオオォォ!!…ッ!!…ゴッ!!!!!……ドサァ!!…
「ッ!?…来た!!……」
__チャキッ!!!…
この時のマサツグはあの特大級の火球を斬る事で頭が一杯になっており
気付いてなかったが、実は二発目の火球は一発目のモノより更に規模が
大きく!…威力も高いモノとなって迫って来ていた。しかしマサツグは
一歩も退かずにその火球を見据えおり!…刀を上段に構えて真っ直ぐ
振り下ろす事をイメージし!…ただ再び全集中してドラゴンの特大火球が
自身の攻撃間合いに入って来るのを待ち構えて居ると、そのブレスが
攻撃間合いに入った瞬間!…マサツグは渾身の一撃をその特大火球に
向かい放つ!
__…ッ!!…ザッ!!…
「四季刀剣術!!!…海裂の型!!!…
大波断ちいぃぃぃぃ!!!!」
__ドヒュッ!!…ズバアアァァァァ!!!!…
真っ直ぐ向かって来る特大火球に対しマサツグは大きく前へ一歩踏み出すと、
寸分の狂い無く縦に力を込めて刀を振り下ろす!…それはまるで文字通り海を
斬り裂く様な攻撃モーション!…これが新たに覚えた「居合い剣・海裂の型」
であり、技の名前を叫びながら繰り出したその一撃は飛んで来た特大火球を
さながらモーゼの何やらの如く真っ二つに切り裂き!…その後斬られた
ブレスは左右別れて流れる様にそれぞれの方向へ飛んで行くと、マサツグの
後方へにて着弾し爆発する!…マサツグを避ける様にして爆風を巻き起こし、
肝心のマサツグにはノーダメージ!…そしてドラゴンは今だ息を切らしては
その場でバテており、マサツグも刀を振り下ろした状態だが直ぐに斬り返す
よう態勢を整えると、千載一遇のチャンスを得る事に成功する!…
__チャキッ!!…バッ!!!…
「覚悟!!!」
__グガガガガ!!!…
「オオオオオオォォォォォォォォォォ!!!!!」
倒れているドラゴンに止めを刺すようマサツグは声を荒げ!…刀を下段に
構えると一直線にドラゴンへ向かい駆け出す!その際駆けて来る様子は目が
見えなくとも感じられるのか、ドラゴンも必死に立ち上ろうとするのだが
ブレスの反動からか立ち上がるに立てず!…藻掻く様に足を滑らせてただ
唸る様子で声を漏らして居ると、走るマサツグは最初の時とは逆転した
様子で吠える!…そして遂に決着の時が来る!…マサツグは瞬時に下段横薙ぎに
斬り上げるようもう一つの居合い剣をドラゴンに向かい繰り出す!…
「四季刀剣術!!!…疾風の型あああぁぁぁぁ!!!」
__ズオオォォ!!!…ズッ!…バアアアァァァン!!!!……
マサツグは風を巻き込む様にして夏海刀に風を纏わせ!…一気にドラゴンの
元まで駆け抜けては首を刎ねる様に刀で斬り上げる!…この時首を斬った際
の斬撃音が辺りに響き渡ると、技の勢いも余ってかドラゴンの首はまるで
風に煽られるよう宙を舞い!…マサツグも斬ったと言う感覚が手に残って
いるのか刀で斬り上げた状態で固まっては暫くの間動かなくなる!…そして
首を斬られたドラゴンの首元からは当然なのだがあの風穴の出血より更に
酷い出血が見られ!…まるで雨が降る様にドラゴンの血が辺り一帯に
降り注ぐと、そのドラゴンの鮮血で戦闘エリアは真っ赤に染め上げられる!…
そして少しの間時間が停止した様にマサツグは固まって居たのだが、徐に
態勢を整え出すと血糊を飛ばす様に刀を一振りし!…ワザとらしく格好を
付けて刀を鞘に仕舞うと、空から斬ったドラゴンの頭が振って来る…
__……フォン!…スウゥゥ…チャキン!……ヒュウウゥゥゥ…ボスンッ!!…
「これで終わりだ!…
俺の…勝ち!!!…」
__サアアアアァァァァ!!……カクンッ!…ドサァ!…
今だ雨が降り続く様にドラゴンの血が辺り一帯に降り注ぐ中…マサツグは
一人静かに勝利宣言をすると、その場で棒立ちしては辺りを見渡す…辺りは
ドラゴンのブレスで大火災が起きた様子が丸々残っており、見るも無残な
焼け野原が広がり…硝煙が彼方此方から立ち昇っていた。木々は薙ぎ倒され
まるで嵐が過ぎ去った様に他の木々にもたれ掛かり、地面は爆撃でも受けた
かの様に荒れ果てていた。たった一体のドラゴン…それもまだ幼体でこの
有様と改めてマサツグが驚いて居ると、突如スッと下半身の力が抜け…
その場にへたり込む様にして脱力すると緊張の糸が切れたかの様に、体力の
限界と言った様子で独り言を口にする…
「……し、死ぬかと思ったぁ~!…はあぁ~…
…は…ははは……もうデッカイトカゲはお腹一杯だぞ?…
この大陸に来てワイバーンにドラゴンて!……
ハード過ぎだろ?ったく!……すぅ~…はあぁ~…」
__ピッ!…ピッ!…ヴヴン!…
「ッ!?…うわぁ!…ギリッギリも良い所じゃねぇか!?…
…はあぁ~道理で視界が妙に赤い訳だ!…これ瀕死って事だもんな?…
…ッ!?……体が!?…重!?…」
その場で疲れたとばかりに大きく深呼吸をし始め、徐に自身に残ったHPとTPの
確認をしようとステータス画面を開き出すと、そこには残りHPが一割未満と…
TPも最後ドラゴンの首を飛ばした時点でスッカラカンとなった状態が表示され、
それを見てマサツグは本当にギリギリだったんだな!…と言った青褪めた表情で
ステータス画面を見詰めて居ると、後からドッと疲労感に襲われる!…
それもそうである…防具も無いまま無謀な戦いに挑み!…何度も死にそうな
目に遭い!…ある意味極限状態の戦いの中!…集中力に緊張感と…尋常じゃ無い
程に感じては今までのストレスが一気に解放され、マサツグの身に降り掛かって
来て居るのであるから!…自身の体に鉛を付けている様な急激な体の重さに
戸惑いを覚え始め…マサツグがその場に倒れそうになって居ると、突如として
何かが近付いて来る様な物音を耳にする!…
__…ガサガサ!…ガサガサ!…
「ッ!?…おいおい!…もうこれ以上の戦闘は無理だっての!?…
それなのに何かがこっちに向かってる!?…冗談は止し子ちゃんだぜ!?…」
__…ガサガサ!…ガサガサ!…
「……チッ!…もう一踏ん張りってか!?…
…ッ!…感知を使える位には回復してるか……感知!!…」
突如として聞こえて来たその物音はまるでこちらに向かい進んで来ている
様子で、マサツグも疲労感からか奇妙なテンションで可笑しな口調を口に
すると、ただその物音の聞こえて来る方に警戒を向ける!…そして面倒事は
御免と言った様子で心の中で願うのだが、マサツグの願いは天に通じず!…
徐々に近づいて来る物音にマサツグが覚悟を決め出すと、TPが有る程度
回復して居る事を確認しては感知発動する!…敵か味方かだけでも分かれば
御の字と言った様子でマサツグはその物音の聞こえる方に目を向けるのだが、
意外な事に…マサツグの視界は赤く表示されるも向かって来て居るのは
如何やら人で…青い影で表示されては友好モブである事が確認される。
__ピーン!…ヴウン!…
「…ッ!…え?…人?…何でこんな所に?…
冒険者って訳でも無さそうだが?…」
__ガサガサ!…ガサァ!!!…
「ッ!?…居たぞ!!…あの囚人だ!!!」
森の中で友好モブ…それも人型…マサツグはこんな森の中で人影を
見つけた事に驚いては思わず原住民的なモノを連想するのだが、
ここの原住民は獣人達である事をふと思い出し…じゃあ誰?…と
言った様子で戸惑い、ただその近付いて来る人影の方に視線を
向けて居ると、藪を掻き分けるよう突如人の顔が出て来ては一緒に
犬耳もコンニチワする。そうして突然の犬耳獣人男性の出現に
マサツグが驚いた反応を見せて居ると、向こうはマサツグを探して
居た様子で!…マサツグを見つけるなり仲間を呼ぶよう背後に
振り返っては誰かに声を掛け出し、その呼ぶ声に反応してか
ゾロゾロと獣人の衛兵達が藪の中から姿を現すと、その目の前の
惨状に戸惑い出す!…
__ガサガサ!!…ガサガサ!!…
「ッ!?…な、何だこれは!?…」
「ッ!?…ま!?…まさかこれを一人で!?…」
「馬鹿な!?…相手はドラゴンだぞ!?…」
獣人の衛兵達は藪を抜けた先の光景を目にしてはただ驚き!…
戸惑いと困惑を隠せない様子でマサツグを確認してはその光景に
思わず疑いを持ち出す!…何故なら目の前にはドラゴンが!…
あの先程まで猛威を振るって居たドラゴンは首を刎ねられて
その場に死んでおり、光に包まれてアイテムをドロップして
居たからである!…
__パアアアアァァ……
「…いやしかしアレは先程のドラゴン!…見間違えようが!?…」
「それにこの跡は!?…こんな惨状の中を生き残ったと言うのか!?…」
__バッ!!…じぃ~~!……
オマケに戦場となっていたであろう森の一角はまるで嵐でも
通ったかのよう見事なまでに荒れており!…そんな惨状を
目の当たりにして衛兵達は一体如何やって!?と…生き残る
方法について疑問を持ち出し、マサツグに対して若干の
畏怖の念を持ち始めると、衛兵達は一斉にマサツグの方へ
振り返っては困惑の視線を向ける!…そしてそんな視線に対し
マサツグも困惑し出すと、衛兵達に声を掛けようとするのだが…
「…え?…何でこんな視線を集め…ッ!…」
__ドゴスッ!?…
「ッ!?…ハッ!…い、いかん!…
とにかくこの者をハーフリングスに!!…
急いで救護を頼む!!!」
「ッ!?…あっ…あぁ!…すまない!!…分かった!!…」
衛兵達に声を掛ける際マサツグは前傾姿勢で話し掛けようとするのだが、
地面に手を着いた瞬間腕に力が入らず…そのまま前屈みになるよう
バランスを崩し、母なる大地に向かい倒れるとそのままヘッドバッドを
繰り出す。そしてその様子で我に返ったのか衛兵達はハッとした表情を
見せると、慌ててマサツグを助ける様に駆け寄り!…ハーフリングスに
連れて行くよう一人の衛兵が慌てて指示を出すと、その指示に反応して
二人の衛兵が動き出し!…マサツグを挟む様にして屈むとそれぞれ
片方づつ肩を貸しては立ち上がり始める。
「勇者殿大丈夫ですか!?…私達の肩に!!…」
「……ばぁ!!…あぁ~すまない!…助かる!…」
「何を言いますか!……礼を言うのは我々の方です!…
勇者殿が現れなかったら今頃!…もっと被害が出てた上に最悪!…
放棄も考えられました!…なのに我々共と言ったら!!…
とにかく安静に!…今すぐハーフリングスに連れて行きますので!!…」
__ザッ!…ザッ!…ザッ!…ザッ!…
二人の衛兵に心配されながら…マサツグは助け起こされる様にして
立ち上ると、顔を上げては肩を貸してくれて居る二人にお礼を言う。
二人それぞれ左右の肩に腕を回すよう組み付いてはそれを支えに
歩き!…この時自身の心の中では締まらないなぁ…と思いつつ、
衛兵二人に担がれる様にしてハーフリングスへと向かい出すのだが、
その際マサツグのお礼の言葉に反応するよう衛兵Aがお礼を言うと、
その言葉にマサツグは戸惑いを覚える!…何故ならその衛兵Aが
言い出したお礼の言葉と言うのは如何にも懺悔して居る様に聞こえ、
別に懺悔される様な事をしていない…とマサツグは疑問を感じたから
である。
{……え?…そんな謝られる様な事なのか?…
……いつも通りにやっただけなんだが?…}
衛兵Aからすれば自分達を卑下してただ情けないと反省する様に
マサツグへ話したのだろうが、如何にもマサツグはその事が
気になり…もはや普通と言った感覚もマヒした様子で折角の
お礼の言葉も右から左へ…流れて行く様にスルーしてしまうと、
一人疑問を持っては悩み出すのであった。…そしてこの時
マサツグはまだ知らなかった!…この先まだまだ面倒事が溢れて
居ると言う事を!…更にシロがドラゴンの存在に気付き!…
マサツグが倒しに行ったと言う事実を知ったと言う事を!…
0
お気に入りに追加
563
あなたにおすすめの小説
目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。
桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。
公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)
音爽(ネソウ)
ファンタジー
記憶持ち転生者は元定食屋の息子。
魔法ありファンタジー異世界に転生した。彼は将軍を父に持つエリートの公爵家の嫡男に生まれかわる。
だが授かった職業スキルが「パンツもぐもぐ」という謎ゴミスキルだった。そんな彼に聖騎士の弟以外家族は冷たい。
見習い騎士にさえなれそうもない長男レオニードは廃嫡後は冒険者として生き抜く決意をする。
「ゴミスキルでも美味しい物を狩れれば満足だ」そんな彼は前世の料理で敵味方の胃袋を掴んで魅了しまくるグルメギャグ。
だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)
みなせ
ファンタジー
転生先は、ゲーム由来の異世界。
ヒロインの意地悪な姉役だったわ。
でも、私、お約束のチートを手に入れましたの。
ヒロインの邪魔をせず、
とっとと舞台から退場……の筈だったのに……
なかなか家から離れられないし、
せっかくのチートを使いたいのに、
使う暇も無い。
これどうしたらいいのかしら?
【本編完結】転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
【完結】え、別れましょう?
須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」
「は?え?別れましょう?」
何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。
ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?
だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。
※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。
ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。
神々に見捨てられし者、自力で最強へ
九頭七尾
ファンタジー
三大貴族の一角、アルベール家の長子として生まれた少年、ライズ。だが「祝福の儀」で何の天職も授かることができなかった彼は、『神々に見捨てられた者』と蔑まれ、一族を追放されてしまう。
「天職なし。最高じゃないか」
しかし彼は逆にこの状況を喜んだ。というのも、実はこの世界は、前世で彼がやり込んでいたゲーム【グランドワールド】にそっくりだったのだ。
天職を取得せずにゲームを始める「超ハードモード」こそが最強になれる道だと知るライズは、前世の知識を活かして成り上がっていく。
お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26
弟のお前は無能だからと勇者な兄にパーティを追い出されました。実は俺のおかげで勇者だったんですけどね
カッパ
ファンタジー
兄は知らない、俺を無能だと馬鹿にしあざ笑う兄は真実を知らない。
本当の無能は兄であることを。実は俺の能力で勇者たりえたことを。
俺の能力は、自分を守ってくれる勇者を生み出すもの。
どれだけ無能であっても、俺が勇者に選んだ者は途端に有能な勇者になるのだ。
だがそれを知らない兄は俺をお荷物と追い出した。
ならば俺も兄は不要の存在となるので、勇者の任を解いてしまおう。
かくして勇者では無くなった兄は無能へと逆戻り。
当然のようにパーティは壊滅状態。
戻ってきてほしいだって?馬鹿を言うんじゃない。
俺を追放したことを後悔しても、もう遅いんだよ!
===
【第16回ファンタジー小説大賞】にて一次選考通過の[奨励賞]いただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる