上 下
89 / 765
-第一章-スプリングフィールド王国編-

-第一章八十二節 一瞬の出来事と失意とピンチからの再起-

しおりを挟む



そして話はまた魔王戦の方へと戻り始める!…マサツグ達が如何バルデウスと

対峙するかで悩んで攻めあぐねて居ると、先に動き出したのはバルデウス!…

腰を深く落としては両腕を広げて見せ、モツに向かい踏み出し飛び出して行くと

それに慌てたモツが刹那を発動する!…


「…其方カラ来ヌノナラ!…コチラカラ行クゾ!!!」


__グググッ!…バシュンッ!!!…


「ッ!?…刹那!!…」


__ヴウン!!…ッ!?…


モツが刹那を発動するもある事に気が付くと驚きの表情を見せてはその場に

固まってしまう!…刹那は相手の動きがスローモーションに見えるだけでなく、

更に自身の反応速度も上げる強スキル!…躱す!…或いはカウンターを放つ事が

出来ると言った一発逆転のスキルでも有るのだが、その肝心の相手がスロー

モーションにならなくては意味が無い!…モツの視界には恐らく刹那が

反映された視界が映って居る筈なのだが、バルデウスは全然スローモーションに

なって居らずそのままモツが動けず固まって居ると、バルデウスはモツを

通り過ぎ様にラリアットを両肩部分に入れてはそのまま背後にあった柱へと

叩き付ける!…


__ドゴォッ!?…ッ!?!?!?…


「ウオオオオォォォォォ!!!!」


__バゴオォォン!!!!…


「ッ!?!?!?……ガッハァッ!!…」


「ッ!?…モツ!!!…」


モツが柱ごと破壊する一撃を貰っては大ダメージを受け、戦闘不能にならない

までも一定時間のスタンに似た痺れを感じると、柱に減り込んだまま

ピクリとも動かない!…エリクサーで全快した筈の体力も一気に危険域まで

削られてまるで全身から血を流す様に、その場に佇みその一連の様子を

見たマサツグが慌ててモツの名前を呼ぶが返事は帰って来ない!…リーナも

突然の出来事に戸惑った反応を見せてはバルデウスに身構えて居ると、今度は

マサツグを狙うよう最初のダッシュを利用した様子で低空飛行しながら

旋回すると、モツ同様ラリアットで鎮めようと向かって来る!…


__バシュンッ!!…ゴオオォォォ!!!…


「ッ!?…今度はこっちかよ!?…ガード!!…」


「ッ!…フン!!…ガードナゾ…押シ切ッテクレル!!…

ウオオオオォォォォォ!!!!」


__ドゴオオォォォ!!!…


向かって来るバルデウスにマサツグが動揺するも大剣でガードの構えを取ると、

モツの事を後回しにする!…幸い裂傷などの時間経過によるスリップダメージは

無いと判断しての苦肉の策なのだが、バルデウスは構わずマサツグに向かい

突っ込んで行くとその太い腕でモツ同様マサツグに強烈な一撃のラリアットを

繰り出しては薙ぎ倒す!…激しい衝撃音と共にマサツグが宙に浮くとそのまま

薙ぎ倒され…地面に転がされるとその一撃の重さに戸惑う!…


__フワッ…ッ!?…


「グウゥッ!!!…ガードしてもこれかよ!?…」


__ブォン!!…ドサァ!!!…ゴロゴロゴロゴロ…


「ッ!?…マサツグ!?…」


モツみたく柱に叩き付けられなくとも大ダメージ!…そのまま地面を転がると

教会廃墟の入口まで転がされ、マサツグもモツ同様ピクリとも動かなくなると

リーナが慌てた様子でマサツグに声を掛け出し始める!…一人は瀕死…

もう一人は動かない…そんな光景を目にしてリーナは戸惑いと焦りを隠せない

様子で交互に見詰め、さすがに二人も吹き飛ばした事により勢いを失った様子で

バルデウスが着地をすると静かにリーナの方を振り向く!…その際チラッとだけ

マサツグとモツの事見てはふぅ…と一息吐くのだが、退屈とばかりに言葉を

呟くとリーナに向かって足を勧め始める!…


__……ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…ヒタッ…


「……フゥ…何ダ?…モウ仕舞カ?…

折角本気ヲ出シタト言ウノニ…コレデハ出シ損デハ無イカ!…」


「ッ!?…貴様ぁ!!!…」


魔王が自分に向かって歩いて来る!…マサツグとモツがやられた!…

リーナの中で怒りや恐怖!…色々な物が入り混じっては何とも言えない

感情となり、ただ混乱しながらもバルデウスに対し剣を構えると

戦う意思を示して見せる!…それを見たバルデウスはリーナを強者として

認識し、ただその相手を叩き潰す!としか見ていない冷たい目で見下すと

リーナに向かい歩き続け、バルデウスの視線にリーナがビクッと恐怖するも

勇気を振り絞って剣を握り直すと、バルデウスに仕掛け始める!…


「クッ!!…アースランナー!!!」


__ザシュッ!!…ガキンッ!…


「ッ!?…エアロスライサー!!!」


__バシュンッ!!…ガキンッ!!…


「ッ!?!?……」


リーナがバルデウスに必死に剣技を放つが、無常にもバルデウスの骨格に

弾かれダメージが通らない!…やはり恐怖している分技に乱れが有るのか

ダメージが入って居る様には見えず、堂々と…一切防ぐと言った行動を

する事無くバルデウスがリーナを冷たい狂気の目で見下し、ただ近付き

歩いて行くと何かしたか?と言った様子で攻撃を受けた部位を掻いて見せる!…

その余裕ぶりにリーナが酷くショックを受けた様子を見せては徐々に絶望に

染まって行く表情を見せるのだが、まだ心は折れていないとばかりに

自分の得意な技をの構えを取り始める!


「…クッ!!…ならば!!…エルレイド!!!…」


「ッ!…フンッ!…面白イ!…」


「ッ!?…ッ~~!!!…フルゥレェェェェ!!!!」


__ボウッ!!…ドガアァァ!!…


リーナが突きの構えを取った事にバルデウスが反応するも、全く意に返さない

様子で身構えようとはしない。まるで構える程の事は無いと言った様子で

余裕の笑みを浮かべてはワザとリーナの前に立って見せ、撃てるものなら

打って見ろ!と仁王立ちし始めるとバルデウスはリーナを見下し、もはや

勝負は着いて居るとばかりに両手を広げて見せる!…そんなリーナの突き技を

受け止める気で居るバルデウスにリーナは戸惑った反応を見せるのだが、

構わずバルデウスに向かい突き技を放つとその突き技は真っ直ぐバルデウスの

胸部に向かい飛んでは、バルデウスを押し始める!…しかし!…


「……フゥン!…ヤハリコノ程度カ…」


「ッ!?…え?…」


「……フン!!…」


__バギィン!!…


リーナの放った突き技はバルデウスの胸部に突き刺さるとその巨体を後ろにへと

後退させるも、ただ後退させるだけに留まるとバルデウスは期待外れと言った

様子でリーナの技を確認し終える…まるで再度力量を量る為にワザと喰らったと

言わんばかりの発言をするバルデウスにリーナが戸惑って居ると、バルデウスは

胸に力を入れるよう反って見せてはエルレイドフルーレを弾き飛ばし、自身の

最高の技が弾かれた事に最後の支えも折れた様子でリーナが目を見開きショックを

受け始めると、遂にはその場に崩れるよう座り込んでは項垂れてしまう…


「ッ!?…そ…そんな!?…」


__……ズルッ…カランカラン!…カクン…


リーナがエルレイドフルーレを放つ際…彼女の中には焦りや混乱と言ったモノで

溢れては既にとうに集中力も切れており、更に拍車を掛けるようマサツグとモツの

倒れる姿を見ては正常な判断が出来ない状態に陥っていた。そんな状態下で放った

技がバルデウスに通る筈も無く…結果、無駄にTPを消費しただけに終わると、

バルデウスがゆっくりリーナに向かい再度歩み寄り始める!…


「……如何シタ?…モウオ終イカ?…」


「………。」


「……ハアァ~…モウ少シハ楽シメルト思ッテ居タガ……

ヤハリコ奴ラ達デモ我ガ渇キヲ潤ス事ハ出来ナカッタカ…

……人トハ脆ク呆気ナイモノダナ?…幾多ノ時ヲ経テモ…」


バルデウスが項垂れるリーナの前に立って見せては抵抗する事を願う様な

確認をし始め、その問い掛けに対してリーナが全く動く事無く返事もする事無く

ただショックに明け暮れて居ると、バルデウスは呆れた様子であからさまに

ガッカリし始める。二階では謎の者がその散々たる状況を見ては徐々に怒りを

燃やし、バルデウスに仕掛けん勢いで睨み付けては殺気をガンガンに飛ばして

居ると、バルデウスもその殺気に気付いてかリーナから興味を失うとさっさと

始末しようと動き始める!…


「動カナクナッタ玩具ニ用ハ無イ!…消エ失セヨ!…」


{……マサツグ!…モツ!…彼らの命を失ってしまった!…

これは私の責任だ!!…彼らの協力無くしてここまで来る事は出来なかった!…

私が無力なばかりに!…もっと私に力が有れば!!…二人を!!……

……父上…母上……申し訳ありません!…任務を完遂!…約束を守る事が!…}


「ハアアアアァァァァ!!!」


{出来ませんでした!…}


バルデウスがリーナの頭上で腕を振り上げ始め…リーナはやはり抵抗の意思を

見せないままただ後悔の念に押し潰させそうになっていた!…マサツグとモツ…

二人の命を奪ったのは私の様な物だ!…そんな自責の念に囚われては

スティングとアムネスに対して謝罪の言葉を心の中で呟き、静かに瞼を閉じると

涙を流し始める!…その涙もバルデウスを止める事が出来なかった事に対しての

悔し涙なのか?…マサツグとモツ…国を守れなかったと言う意味での

悲しみの涙なのか?…リーナ自身何方かも分からないまま涙を流し続け…

その瞬間が訪れる事にただ何もする事が出来ないまま座り込んで居ると、

バルデウスが遂に振り上げた腕をリーナに向かい振り下ろそうとする!…


__ブォン!!…ズバシュッ!!!…


「ッ!!…ッ~~~~~!!!……え?……ッ!?…」


バルデウスが腕を振り下ろす音!…それに反応してリーナも目を閉じては

自身の死を覚悟するのだが、何も起こらない…ただ耳に響いたのは何か鋭い物で

何かを突き刺した様な生々しい音だけで、それが自分から発せられたモノでは

無いと自覚するとリーナは困惑し始める。今のは一体?…自分がやられた?…

でも痛くは無い…そんな疑問を覚えつつ恐る恐る顔を上げ始めると、そこには

自身の頭に向かって腕を振り下ろそうとするバルデウスの姿が有り、それと同時に

倒れて居た筈のマサツグが大剣でリーナを庇うよう割って入ってはガードの体勢で

固まっている様子が目に入って来る!…


「はぁ!…はぁ!…ギ、ギリギリセーフ!!…

まだ!…まだだ!!…」


「ッ!?………。

グッ!!…ヌオアァァ!!…バ、馬鹿ナ!…貴様達!!…マダ!!…」


ガードの体勢を取るマサツグの姿はボロボロで…リーナから貰った王国軍兵士の

装備一式は完全に大破し、後ろ姿だけでも分かる位に多数の出血が見て取れた。

自分の身を置いても守りに来たマサツグの姿にリーナが目を見開き酷く動揺した

表情を見せて居ると、何故かバルデウスは時間が止まった様に硬直して驚いた

表情でマサツグの事を見詰めており、バルデウスが間違い無くリーナの頭を

真っ二つに斬るつもりで振り下ろした腕はマサツグの大剣ガードから後数cmの

所で止まってプルプルと震え!…突如苦痛の表情を浮かべ意外と言った様子で

言葉を口にすると、モツが自身の剣に電気を纏わせては外骨格の間を縫うよう

背中から一突きしてはバルデウスの動きを止めていた!…


__バチィ!!…バチバチ!!…


「まだ終わらんよ!!…」


「ッ!?……クククッ!…」


バルデウスはモツの攻撃で瞬間的にスタンした様子で固まっては驚き、マサツグと

モツが二人揃って何処かのバ〇ーナの台詞を口にすると、闘志を漲らせる!…

ガードしている隙間から次の攻撃の隙を伺うマサツグの目に、後ろから

まだやれる!と言った様子で放つモツの殺気!……全然諦めていない!…

ただ勝つ事しか考えていないと言った!…如何戦うかを考える戦士の眼をした

マサツグとモツの姿にバルデウスが思わず畏怖を覚えると、同時に歓喜に似た

興奮を覚え始めては何故かたじろぎ、それを見たマサツグがすかさずパリィで

バルデウスの振り下ろさんとして居た腕を弾いて見せると、すぐさまモツが

続けて動き出す!…


「ッ!?…今だぁ!!…」


__ガキイィン!!…


「ッ!?…シマッ!?…」


「ウオオオオォォォォ!!!!」


マサツグのパリィを食らったバルデウスが後ろに仰け反るようバランスを崩すと、

モツが瞬時に背中から剣を抜いては駆け抜け様のダッシュ斬りをバルデウスの

横腹に向けて放つ!…勿論外骨格を間を縫うよう斬って見せるとバルデウスの

横腹から鮮血が噴き出し、バルデウスがそのダメージで怯み更に隙を産み出して

居ると、モツがバルデウスの前に回り込んでは更に追撃の剣技をバルデウスに

向けて放って見せる!


__ザザザッ!!チャキッ!!…


「天昇剣!!!…」


__ザクゥ!!…


「ッ!?…やっぱ前は外骨格みたいなのでガチガチか!…」


モツがジャンプすると同時に剣を縦に構えてはバルデウスを斬り上げて見せるが、

やはり外骨格が有るせいか思う様に刃が通らず浅い傷に終わると、モツが反省した

様子で着地を決める!…その際モツはバルデウスの腹部から胸部に掛けて斬って

見せたのだが、胸部辺りは外骨格が何重にも重なり合うよう強固に守られては

まるで墨入れの溝を掘った程度にしか傷が付かず、バルデウスはただ衝撃を

受けた事で更に仰け反るとその仰け反りを利用するよう…一度マサツグ達から

距離を取り始める!…


__バッ!!…ザザザザァ!!…


「グッ!!…余所ニ気ヲ回シテ居タトハ言エコノ様ナ!!…

…ソノ体デマダソレダケノ事ヲヤッテ見セルトハ!!…

……油断シタ!……ダガ……ククク!…ククククク!!…

……クハハハハハハ!…面白イ!!!…実ニ面白イ!!!!…」


「攻撃箇所さえ間違えなければダメージは与えられる!!…

……まだ可能性はある!…」


「こっからが本番だぜ?この野郎!…

こちとらその手の理不尽には慣れてんだ!!…

やれると分かった以上!!…このまま押し切らせて貰う!!!…」


マサツグとモツが突如復活した事!…更にその傷も癒えていないのに向かって

来た事の二重の意味で驚かされ、出血しながらも二人のポテンシャルに

バルデウスが面白がり改めて二人が好敵手である!と認め始めて居ると、

マサツグとモツもバルデウスを見据えてやる気を見せ始める!レベル差が

有っても攻撃箇所・方法によっては真面にダメージを与えられる!…

そう解った瞬間ゲーマーとしての性なのか勝てるかもしれないと言った

自信が溢れて来てはバルデウスに対して何の恐怖も迷いも感じなくなり、

イケイケ状態になり出すと今までの鬱憤を晴らすと言った様子で武器を

構え始める!…後は相手の行動速度!…反応に攻撃と色々難点はまだ残って

いるのだが、其処ら辺は追々順応して行くと言った様子でとにかく闘志を

漲らせてバルデウスと対峙し、その現状の様子に…何よりマサツグと

モツが復活した事にリーナが驚いてまだ呆気に取られた様子でその場に

へたり込んで居ると、マサツグがリーナの方を振り返る事無く突如名前を

呼び始める!


「……リーナ!!!」


「ッ!?…は、はい!…」


「今は反省会をしてる場合じゃない!!!

サッサと立て!!!…でないとやられるぞ!?」


「ッ!?…ま、まだ戦う気なのか!?…

マサツグやモツだってボロボロ!…

さっきの攻撃だって偶然隙を突いた様な物だから入ったもので…

今の私達では倒す事は出来ない!!…」


マサツグはまだヘタレているリーナに対し檄を飛ばす様に呼び出し、その呼び方に

反応するようリーナが素の返事をすると、マサツグは早く構えるようバルデウスを

睨んだまま指示を出す!…まだ勝算はあると言った様子で話すマサツグにリーナは

困惑の表情を浮かべると、やはり先程のショックがまだ残っているのか完全に

自信を失って勝てる訳が無いとマサツグに話し出し、その話を途中ながらも

聞いたマサツグがピクッと反応するとリーナに対してこう話し始める!…


「……はあぁ~…何をしおらしくなってんだ!?…

えぇ!?…イノシシ姫さんよ!?…」


「ッ!?…な、イノ!?…」


「そうだよ!?…いつもは何も考えずにまず突撃して行く癖に?…

自分より強いのが現れたら大人しくなる!…お前は野生動物か!?…」


「な、何おう!?…一体それは如何言う!?…」


マサツグが一回溜息を吐くといつもの様にリーナを子馬鹿に…煽るよう言葉を

口にし始めてはその言葉にリーナが案の定引っ掛かり、マサツグの後ろ姿を

凝視しては戸惑いの表情を見せて居ると更にマサツグの煽り言葉は続く。

今のリーナの状態を指してはイノシシ呼ばわりし、更に先程のリーナの言葉に

準えナヨナヨしている様子を見ては野生と馬鹿にする!…当然その言葉を聞いた

リーナは瞬時に反応すると慌てた様子で立ち上っては声を荒げてマサツグに

文句を言い出し、その手に剣を握り構えはしないでも動ける様になって見せると、

それに感付いたマサツグがリーナの話を中断させては更に話を続ける。


「いいか!?よく聞け!!」


「ッ!?…」


「アイツを事を考えるんじゃねぇ!……

アイツに事を考えるんだ!!!」


「え?…」


リーナの文句を聞く気は無いとばかりに話の腰を折るとマサツグは更にリーナへ

勢い良く話し掛け、その勢いにリーナが圧倒され驚いた反応を見せて居ると、

次にはマサツグが突如頓智の様な事を言い出し始める!…当然そんな話を聞いた

リーナは意味が分からず戸惑い、マサツグに対し困惑の表情を向けては

如何言う事か?と尋ねようとするのだが、それを察してかモツがマサツグ同様

振り返る事無くリーナに説明し始める!


「…あぁ~っとだな……要は今無理に倒そうとするんじゃなくて!…

退すれば良いって話だ!」


モツがリーナに説明し始めたのはこのゲームに置けるもう一つの勝利方法!…

『撃退』と言うものであった。説明は言わずもがな相手を撃退すると

言うものであり、この勝利条件が達成出来る戦闘はこう言った魔王・レイド・大型

モンスターと言った一癖ある戦闘に付き可能とされている!…

当然相手を撃退するに当たって相手のHPを一定値以下にまで減らさないと

成り立たず、魔王やレイドとなると更に細かな設定が付いており…その難易度は

高く達成は困難とされている!…こう言った特殊条件での勝利をやった者は

ある種で勇者と冒険者プレイヤー達に持て囃されるがやった者は少なく…

その条件も不明となっているせいか誰も挑戦しようとは思わない!…

まさに無謀に挑戦しようとマサツグとモツが意気込んでいる訳なのだが、

そんなシステムなど知らないリーナは単純に…魔王を撃退すると言う言葉を

聞いては戸惑いを露にする!…


「なッ!?…」


「確かに今の俺達じゃとてもじゃないが倒す事は無理だろう!…

レベル差的にも!…実力差的にも!…

けど何らかの方法で足止めをする方法さえ思い付けば時間を稼ぐ事は出来る!…」


{……と言ってもゲームのシステム的に出来るって話し出し…

何よりそっちの方が難しかったりするし…大変な事に限りは無いんだがな!?…}


マサツグとモツもバルデウスに勝てないと理解しているからこその苦肉の

策なのだが、当然何の作戦も無く…行き当たりばったりに決めては

ほぼ自暴自棄になっていた!…だからと言ってワザと負ける気もサラサラ無い!…

運が良ければ勝てるかもしれない!…やるからには本気で!!…ただそれだけが

マサツグとモツを突き動かしては闘志を燃やし!…心の中で難しいと呟きながらも

マサツグとモツの目からは輝きが絶える事は無いのであった!…そしてマサツグと

モツの闘志を燃やす背中を見てリーナも何か感じる物が有ったのか、徐々に先程の

絶望の表情から気力を取り戻して、元の凛々しい顔に戻り出すとまるで二人が

自分の小さい時に読んでいた絵本に出て来る英雄達の様に見え始める!…


__チラァ……


「ッ!?……ッ!!」


__スゥ…パァン!!……チャキッ!!…


「ッ!…やっとやる気になったか?…イノシシ姫?…」


マサツグとモツがかつて自分が憧れた英雄達の様に見えると徐々に心強さを覚え、

一度は戦意喪失した自身を恥じる思いで徐に両手で自分の頬を叩くと戦う意思を

改めて持ち始める!…感化された様子でリーナが剣を手に構え始め、その様子に

気が付いたマサツグが笑いながら軽口を叩くと、リーナは元の調子に戻った様子で

マサツグを睨み付ける!そんな光景を後ろ目で確認しつつマサツグが安心した

様子で笑みを零して居ると、自身のアイテムポーチから小瓶を数本取り出し…

封を切ると徐にモツとリーナがそのアイテムの範囲内に入るよう頭上に向かい

投げては中身をばら撒く!…


「……おぉ、怖い怖い!……さぁて、じゃあ!!…」


__ブン!!…パシャッ!!…サアアァァァ!!!…


「ッ!…これは…治癒の雨!?…これ結構高い奴じゃ!?…」


「いざって時用に買って置いた!!…

…まさかこうも早々に使う事になるとは思わなかったけど……」


マサツグが投げた小瓶の中から優しい色をした緑色の雨雲が出て来ると、

マサツグ・モツ・リーナを対象に雨が降り出し…その今まで受けた傷を

癒し始めると、その効力にモツが驚いた表情を見せてはアイテム名を口にする。

まるで珍しいアイテムを使ったと言わんばかりの驚きようを見せるモツに、

マサツグは自信満々の表情で備えておいたと言うのだが…如何にもこんな

早くに使うとは思っても居なかった様子で次には戸惑った表情を見せると、

頭を掻いてはモツに続けて返事をする。そうしてマサツグ達のHPが

回復した所でバルデウスもその間大人しく待って居たのか…雨が晴れると

同時に何が可笑しい!とツッコまれん勢いで笑い始めると、マサツグ達を

称賛する様な言葉を掛け始める!…


「……クハハ!!…クハハハハハハ!!!…

アァ~ッハッハッハッハッハッハッハ!!!!…

良イ!!…実ニ良イゾ!?…本当ニ愉快ナ者達ダ!!…

久シク忘レテイタコノ痛ミ!!…感覚!!…

…我ヲ二度モ謀ッタソノ知略!…見事ナリ!!…

ソレデコソコノ本当ノ姿ニナッタ甲斐ガ有ッタト言ウモノダ!!!…」


「……コイツ…情緒不安定か?…それともドM…」


「ははは……まぁ…何はともあれ…第三ラウンド!…

おっぱじめようか!?…魔王様よぉ!?」


「こうなりゃとことん付き合ってやるよ!!…

お前が参ったって言うまで!!…何度だってぶっ飛ばしてやる!!!…」


バルデウスはもはや興奮で我を忘れそうになる程ヒートアップしており、

高笑いをしては魔王らしく謎の波動を体全体で放ち始める!…マサツグ達に

影響の無いタイプの波動ではあるのだが不気味さを同時に放っており、

モツが思わずバルデウスの感情表現に困惑した様な事を言い出すと、そのモツの

言葉にマサツグは苦笑いをする。そして仕切り直すよう武器を構え直しては

バルデウスを見据えて喧嘩を売るような言葉を口にし、それに乗っかるようモツも

若干自棄になった様子で剣を構え直してはバルデウスを睨み付ける!…

そんな二人の様子にバルデウスも構え始め!…場の空気が一気に緊張感に

包まれ始めると、この時リーナは自身の中で改めて決意を固め直して居た!


{…私は弱い!……一度攻撃が効かない位で弱気になり…

マサツグとモツが倒れた途端この為体!…あれ程師匠に強く出たと言うのに!…

情けない!!…しかし!…それでも!!…}


__スゥ…フォン!!!…


「護りたい物が有る!!!」


自身の心の弱さを悔いる様に反省し!…改めて自分が弱い事を理解すると

静かにその場でショックを受け始める!…それでも最初の目的である

皆を護りたいと言う気持ちだけは変わっていないとばかりに、その迷いを

断ち切るよう剣を一振りして見せるとバルデウスに対して剣を構え出す!…

この時!…先程まで完全に弱気になり戦意喪失していたリーナの姿は無く、

吹っ切れた表情に相まってか凛とした姿でバルデウスを睨みつけ…

剣を構える姿はまさに勇ましくも美しい姫騎士の姿であり、それを見た

バルデウスがリーナの復活に歓喜し始めると笑みを零す!…


「ッ!…ホホゥ?…イイダロウ!……

コノ様ナ状況ニ置イテモマダ諦メヌソノ勇気!…

我モ礼ヲ尽クシ本気デオヌシ達ヲ叩キ潰ソウ!!!

サァ!全力デ来ルガ良イ!!!…我ニ勝利セントスル豪ノ者達ヨ!!!!」


「さぁ!…泣いても笑ってもこれがラストだぜ?…

気合入れろよ!?」


「言われなくても!!…」


「分かって居る!!!」


一応治癒の雨である程度は回復したとは言え今だ満身創痍の二人…

勿論真面に一撃貰えば確実即戦闘不能と言った極限状態になっているのだが…

マサツグとモツはそれでもかまわないとばかりにバルデウスを睨み付ける!…

そうしてマサツグ・モツ・リーナVS魔王・バルデウス…どちらも本気で

ぶつかろうとしている戦いが今目の前で行われようとしては、その場の空気は

極度の緊張感に包まれ!…本当の意味での魔王との戦闘後半戦が今幕を

開けようとしていた!……それを二階からハラハラとした様子で見詰める者…


{……一時は如何なるかと思ったが…まさかあの状況から起きるとは!?…

それに撃退する!?…圧倒的力量を前にしても引かぬその根性!!…

ほんに面白き男よな!…ますます気に入った!!…}


__ドドドドドドド!!!…


「熊五郎急ぐのね!?…気配は……こっちなのね!!…」


「へ!…へぇ!!…これでも全速力何でやすが!?…」


マサツグ達の奮闘ぶりを見ては更に気に入った様子で戦闘を見守る何か…

そして前節の熊五郎が引く荷車は無事マサツグ達と合流出来るのか!?…

荷台の中のカチュア達も不安の様相を見せてただひたすらにマサツグの

気配を辿り…熊五郎を急かすのであった!…

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】烏公爵の後妻〜旦那様は亡き前妻を想い、一生喪に服すらしい〜

七瀬菜々
恋愛
------ウィンターソン公爵の元に嫁ぎなさい。 ある日突然、兄がそう言った。 魔力がなく魔術師にもなれなければ、女というだけで父と同じ医者にもなれないシャロンは『自分にできることは家のためになる結婚をすること』と、日々婚活を頑張っていた。 しかし、表情を作ることが苦手な彼女の婚活はそううまくいくはずも無く…。 そろそろ諦めて修道院にで入ろうかと思っていた矢先、突然にウィンターソン公爵との縁談が持ち上がる。 ウィンターソン公爵といえば、亡き妻エミリアのことが忘れられず、5年間ずっと喪に服したままで有名な男だ。 前妻を今でも愛している公爵は、シャロンに対して予め『自分に愛されないことを受け入れろ』という誓約書を書かせるほどに徹底していた。 これはそんなウィンターソン公爵の後妻シャロンの愛されないはずの結婚の物語である。 ※基本的にちょっと残念な夫婦のお話です

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

皇太子の子を妊娠した悪役令嬢は逃げることにした

葉柚
恋愛
皇太子の子を妊娠した悪役令嬢のレイチェルは幸せいっぱいに暮らしていました。 でも、妊娠を切っ掛けに前世の記憶がよみがえり、悪役令嬢だということに気づいたレイチェルは皇太子の前から逃げ出すことにしました。 本編完結済みです。時々番外編を追加します。

処理中です...